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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-03-27

[law]人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その7)

というわけで本日からtrackbackをいただいたページについて触れていきたいと思います。どういう形で触れていくか(例えばエントリ順とか、trackbackの時系列ですとか)はいろいろと考えましたが、複数回いただき、しかもこれまでwebmasterが取り上げてきていない論点について問題提起をされているサイトであるいい国作ろう!「怒りのぶろぐ」にて公表された、一連のエントリからスタートしたいと思います。

trackbackをいただくようになってから、これまでに次の5つのエントリが公表されています。

  1. 人権擁護法案擁護論への疑問1(以下「疑問1」と略します)
  2. 人権擁護法案擁護論への疑問2(以下「疑問2」と略します)
  3. 人権擁護法案擁護論への疑問3(以下「疑問3」と略します)
  4. 人権擁護法案はどうなるか(以下「どうなるか」と略します)
  5. 人権擁護法案はどうなるか2(以下「どうなるか2」と略します)

全体的に、行政が信じられないから強大な権限は与えられないというトーンで、信じられないというものを信じてくれといっても意味がないでしょうから、別の観点から議論してみたいと思います。テーマは勧告の公表の「強さ」についてです。というのも、「どうなるか2」の最後において、まさに次のような指摘がなされているからです。

こうした行政庁の低い信頼性を鑑みれば、その権限は限定的なものに留めておくのが望ましいことは明らかであり、現段階での人権擁護法案のような権限は到底持たせられない、ということです。最低限、法案自体に検討機会や司法判断を仰ぐ機会が規定されているべきであり、他の行政指導における「勧告」と「公表」の統一性が図られているべきです。

#「人権擁護法案のような権限」とは勧告の公表のことです。

まず法的な整理としては、「弱い」という整理です。是非についてのご意見は多いでしょうけれど、事実としてはそうだということはまず押さえていただきたいと思います。「疑問3」で人権擁護法案における勧告と独占禁止法における(公正取引委員会が行う)勧告について、後者の方がより慎重な手続である旨論証されていますが、これが「強い」ものの典型です。具体的な効果を見てみましょう。

独占禁止法第48条第1項の勧告は、同項に規定する法律違反があったと公正取引委員会が認めるときに発出されるものですが、この法律違反はいずれも刑事罰を伴っています。つまりは勧告を無視して対象行為を継続していれば、独占禁止法違反として刑事訴訟を起こされる可能性があるのです。その量刑は次のようなものです。

罰則違反した条項
3年・500万円(5億円)第3条、第8条第1項第1号
2年・300万円第6条、第8条第1項第2号−第4号
1年・200万円第10条第1項、第11条第1項、第13条第1項、第14条、第17条
200万円第8条第2項−第4項、第9条第5項・第6項、第10条第2項・第3項
罰則なし第9条第1項・第2項、第13条第2項、第15条第1項、第15条の2第1項、第16条第1項、第19条(ただし、第20条により行政処分で差止め等が可能)

#年が単位のものは懲役、円が単位のものは罰金です(いずれも最高限度)。なお、(5億円)は違反行為をした個人が属する法人への罰金刑の上限です。なお、「罰則なし」のグループについては、第19条を除き(行為自体は罰しなくとも)行為の報告・届出義務違反には刑事罰が科されているほか、それらの行為(株式保有や合併等)により第3条・第8条第1項第1号違反となれば、上記の最高刑が適用されることもあり得ます。

公正取引委員会が行う勧告は、これらの刑事訴訟から刑の執行に至るまでのプロセスの代替措置、つまり勧告に従って違法状態を解消すればそれで許してやるというものですから、まさしく準司法機関の名にふさわしい強権ですし、だからこそ手続にも刑事訴訟に準ずる厳格さが要求されていると考えられます。

#なお、勧告そのものについても、応諾したにもかかわらず無視した場合には、2年以下の懲役・300万円以下の罰金が科されます。また、これらは刑事罰ですから、容疑者となれば勾留もされ得ますし、家宅捜索や各種押収の対象にもなり得ます。

また、勧告は行政指導だとwebmasterが言ってきたことが若干ミスリードだったようにも思うのですが、人権擁護法案における勧告は、行政手続法の解釈で言えば紛う方なき行政指導ですが、行政手続法が想定している典型的な行政指導ではありません。ここで言う典型的な行政指導とは、上記各エントリでまさくにさんが引いている業務停止等の処分に先立つ行政指導や許認可に先立つ行政指導です。

つまり、後に処分(許認可をする/しないも処分に含まれます)が控えていて、処分に先立って行政の意見表明として行われるからこそ、行政手続法において「行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。」と規定されているわけです(第32条第2項。「不利益な取扱い」は、ニアリイコールで処分における不当な判断になります)。

こうした処分にはほとんどの場合行政罰(過料)がセットになっていますから、業務停止処分を受けて業務を継続していたり、許認可が受けられなかったのに営業を開始したりすれば、行政罰が科されることになります。

以上とは異なり、人権委員会による勧告の公表は、それ自体は何ら強制力を有するものでもなければ、身体の拘束や罰金等の支払義務を生じさせるものでもありません。また、手続にしても、確かに公正取引委員会によるそれよりは(強制性の弱さ故に)手続の厳格さに劣りますが、上記の典型的な行政指導に比べれば遙かに厳格な手続を求めています(典型的な行政指導においては、窓口の一係員の独断ですら可能なのですから)。

勧告の公表にまで至る過程をシミュレートしてみれば、乱暴に分類すればある行為について、行為があったかどうかを争う場合と、行為の違法性を争う場合の組み合わせとなります。前者の典型はDVやセクハラの有無でしょうけれど、痴漢冤罪のケースを見れば明らかなように、むしろ刑事手続における勾留等の強制性が冤罪の淵源となっています。強制性の極めて弱い人権擁護法案上の特別調査手続において、「加害者」が事実を否認しているにもかかわらず「加害事実」があったと認めるに足る証拠を集めることは極めて困難でしょう。

#ちなみに法務省人権擁護局による現在の対応を見ると、このような事態においては、勧告のようなある意味「加害者」の善処を待つ形の対応ではなく、多くの場合「被害者」の隔離等により対応を図っていますので(もちろんそのようなケースではそちらの方が実効性が高いでしょう)、そもそも勧告に至らないケースがほとんどではないでしょうか。

また、違法性の争いについては、人権委員会もリスクを負うことになります。例えば石原都知事の第三国人発言ですとか(これはwebmasterは、少なくとも「第三国人」という言葉を用いたこと自体については、差別だとは認識していません。その是非はさておき)、オウム真理教徒の転入拒否ですとか(これは差別でしょう。これまた是非については議論があり得ますが)、こういった差別かどうか、またその是非についての見解が分かれる行為について、それが公知となったときに必ずしも差別をしたとされる側の人間が社会的制裁を受けるとは限りません。まあ、以前にも触れた弁護士会のピントはずれの「勧告」のような羽目に陥ることも考えられるわけです。

かく考えるに、もちろん勧告の公表は社会的制裁を伴うリスクがゼロではないことは認めますが、それがどれほどヘッジしなければならないのか、現状の一般の行政指導に比べれば格段に厳しい要件ではヘッジとして不十分なのかについては、善し悪しの判断は人それぞれだと思いますが、箸にも棒にもかからない手続上の欠陥であるとは言えないようにwebmasterは思います。以前紹介したように「被害者」が提訴すれば同じ事ですし、情報公開法に基づき(「被害者」に)公開された情報をメディアに持ち込まれても同じ事であることに鑑みればなおさら。

最後に、事実関係その他についての指摘をいくつかさせていただきます。

  • 会計検査院関連(「疑問1」ほか)

    彼(女)らは法の執行組織であるという意味においては行政ですが、内閣を頂点とする(狭義の)行政府には含まれませんので、行政の代表として取り扱われるのは霞が関の住人としては違和感があるのですが(笑)、まさくにさんご指摘の数々は、会計検査院による法の恣意的な運用というよりはむしろ、組織のキャパシティの問題であるように思います。850人の検査官で行った昨年度の検査実績を見るに、ある一つの事件のみを徹底的に追及することを求めると、他の指摘事項を諦めざるを得ないのではないでしょうか。

    例えばまさくにさんご指摘の警察の裏金事件への追及にしても、数ヶ月間をかけて警察側は準備をしていた(それをさせるほどの厳しさだった)わけで、その準備を見破って違法行為の手がかりをつかむのは、あの人員では困難でしょう。告発的な義務を果たせないことについて、「捜査機関ではないから、実質的に無理だ」との会計検査院長の発言は、法を恣意的に解釈するが故のものではなく、自分たちの能力が不足しているが故のものであるようにwebmasterには思えます。予算・定員を大きく増加させれば、多分実効性は向上するでしょう。

    非常に刺激的な言い方をすれば、会計検査院は独立性・中立性はあるけれども、実力が(少なくともまさくにさんの期待に応えるほどには)ないのです。
  • 公正取引委員会の勧告の公表(「疑問3」)

    独占禁止法第43条を根拠として行っているのではないでしょうか。
  • 法の恣意的運用の危険性(「どうなるか」)

    はっきり申し上げれば、しょせん人間が運用するものである以上、それは程度問題です。恣意性でいうなら、裁判官こそ最高の恣意性を憲法で保障されています。司法府に対する信頼が一般に厚いものであることは喜ばしいことではありますが、およそ恣意的で危険な行政府と、公正中立で国民の庇護者である司法府と決めつけられるのは、前者の構成員であるwebmasterとしてはソースを出してくれ、と言いたくもなります(笑)。
  • 新法制定と法律改正の難易(「どうなるか」)

    手続的には全く同じものが求められているので、改正がより容易だといわれても・・・。
  • 人権委員会の勧告についての諾否・意見表明の機会(「どうなるか」)

    それで十分かどうかはともかく、有無で言えば存在します(人権擁護法案第60条第2項、第61条第2項(それぞれ第64条第2項で準用する場合を含みます))。
  • 国民側が「その事例は差別的表現ではない」と主張する言論を行おうとした時に、それが例え正当であると思われても、メディアを封殺してさえいれば一個人の声など広く知られないし、権力に対抗できる言論ともなり得ないでしょう。(「どうなるか」)

    であれば、むしろ公表されないケースの方が問題ではないでしょうか。
  • ストーカー規制法における禁止命令と人権擁護法案における勧告の相違(「どうなるか2」)

    禁止命令は紛れもなく行政処分そのものですし、違反すれば刑事罰(1年以下の懲役・100万円以下の罰金)が科せられます。
  • 行政指導の公表の基準(「どうなるか2」)

    前提として2点一般論があり、1つは行政指導といっても千差万別(極端な例を挙げれば、許認可の申請において字が汚くて読めないからもう少しきれいに書き直してくれ、というのも行政指導です)ですから、一律に公表基準を定めることは不可能です(何でもいいから作ればいいなら不可能ではないでしょうが、解釈の余地が多分にあるものにしかなり得ないでしょう)。

    もう1つは行政の透明性確保の観点から、とにかく少しでも公表部分を増やせという行革の流れがあることです。この観点からすれば、少なくとも人権擁護法案は、勧告をして従わないからといって人権委員会が独断で公表することは禁じているとも言えます。

    さらに個別論としては、人権擁護法案における勧告については、勧告の実効性確保の手段として刑事罰や行政処分と公表のいずれを是とするのか、という論点があります。少なくともパブリックコメントにおいては、勧告やその公表にとどまらず、刑事罰や行政処分を求める声があったわけですが(当然これらは、より「加害者」に対する強制力を持たせたいという観点からのものです)。

#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。

  1. 人権擁護法反対論批判 前編
  2. 人権擁護法反対論批判 後編上
  3. 人権擁護法反対論批判 後編下
  4. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その1)
  5. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その2)
  6. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その3)
  7. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その4)
  8. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その5)
  9. 人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その6)
  10. 人権擁護法反対論批判 法案分析編(その1)
  11. 人権擁護法反対論批判 正誤訂正編(その1)
  12. 人権擁護法反対論批判 法案分析編(その2)

[politics]続々・政策羅針盤(Political Compass日本語版)

trackbackいただいてしまいました。回答者の識別情報と切り離した形でなら回答を集計しても問題ないと考えていたwebmasterよりも、sakidatsumonoさんはとっても良心的で、かつ、十分な検討を経て問題も練り込まれていたということで、大変失礼なことを申し上げてしまったと思います。

で、ソースの使い方をご教示いただけたというのは、webmasterにも作ってみろと、そうすればいかに作るのが難しいかわかるぞというご指導でしょうか(笑)。

#でも、作り出したらはまりそうで怖いです(笑)。

[law][book]長尾龍一「リヴァイアサン」

いろいろ考えさせられるところの多い本で、軽々に内容を紹介することをためらわせますが、webmasterごときでもおやっと思うのが、世界秩序や国際的公共性への楽観です。共産主義という世界秩序の下主権国家の主権に制約を加えたブレジネフ・ドクトリンの前例を見れば、主権国家に成り代わって世界秩序が世を覆ったところでどうなるというのでしょう。

国家の強制力をサポートする民衆の支持(本書でも引用されるトクヴィルによる、アメリカの「人民」による独裁との見方に代表される、絶対君主を上回る民衆による強権の付与)や、(国家を含む)各種の組織の統制技術は、主権国家が独占するものではありませんから、世界秩序の僕たる帝国であっても、それらを駆使して主権国家的に振る舞うことができます。

そして、これらのことを長尾先生がご存じないとはおよそ想定できません。にもかかわらず、その楽観はどこからくるのか。「あとがき」に到達して、なんとなくその一端に触れたような気がします。深いなぁ、実に深いなぁ・・・。

#でも本書読了後、一番読みたいと思ったのは長尾先生の他の著作ではなく(もちろんそれらも読みたいですが)、和仁陽「教会・公法学・国家」でした。でも、品切れっぽいですし、仮に絶版になってなくても高い・・・。

[comic]機動戦士ガンダム THE ORIGIN(@ガンダムエース5月号)

シャアの設定をそうしますか・・・まったく予想外。でも、そういう展開なら(エースの)表紙は1ヶ月早すぎではないかと。

[sports]K-1 HERO'S

中量級(といってもライト級だよなぁ)をプレイアップしたことといい、短い時間で出場者をかき集めたことといい、前田日明のこの世界での企画力・人脈はまだまださすがと思わせる大会でしたが、いいかげんサップは切った方がいいんじゃないでしょうか。不慣れな新人をあてがってその将来の展開を狭めることが中長期的に割のいいこととは思えません。PRIDEからうまくババをつかまされた感が漂いますが、長期契約しちゃったのかなぁ・・・。

#昨年末のDynamiteの進行役は山田優・井上和香のコンビだったのが、今回は井上和香がピンで進行役をしていました。彼女は決して嫌いなタレントというわけではないのですが(不幸の法則での長井秀和との掛け合いなど、いい仕事していると思います)、格闘技大会をピンでまかせるキャラじゃないでしょうに。

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トニオ (2005-03-28 13:38)

失礼します。
汚いものを置いていくようで恐縮ですが、
笑い話のネタにでもどうぞ。
http://hobby.2log.net/zk1/archives/blog814.html
>セコク法案に関する詳細を、重箱の隅を突付くように議論している自称元官僚の方ぐらいだ。
だそうです。
やっぱり、コイツとは一生分かり合えないな、と思いました。

bewaad (2005-03-29 06:22)

>トニオさん
本件については個別にレスはしない方針だったのですが、名誉を守るために一言、「元」じゃないぞ!(笑)

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まず始めに、貴重なお時間を割いてなおかつ丁寧な検討を頂き、誠に有難うございました。以前に、年金改革についてのご意見や日銀の札割れ・国債買いオペに関してもご教示頂いたことを遅ればせながら厚く御礼申し上げます。またお返事が遅くなり、お詫び申し上げます。 あ..

前の続きです。 私は誤解から会計検査院も”行政の仲間”として扱ってしまいましが、別物というご指摘を頂きました。ひょっとしてこれだけ他の場所にあるのですか?(笑)検査職員は他の省庁からの出向者がほとんどかと思い、今まで行政組織の一派と思い込んでおりました。..


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