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2005-04-13

[politics][economy]中国の反日運動と経済見通し

他のどこにも喧嘩を売れないから日本に喧嘩を売っているのだ、という仮説を立ててみます。

まず、国内が不安定だという前提があります。反日デモの裏で、死人が出るような3万人単位の別の暴動が起きていたりします。どこかに向けてこのガスを抜かなければと政府が考えるのは選択肢として合理的でしょう。ガス抜き先とするには、国民にとって存在感があるだけの大国か特殊事情が必要ですが、それに当てはまるのは次の5ヶ国です。

  1. アメリカ
  2. 台湾
  3. ロシア
  4. インド
  5. 日本

消去法でいくと、まずアメリカが外れます。下手にアメリカに喧嘩を売って軍拡競争に陥れば絶対に中国経済は破綻しますし、軍拡競争で限界まで背伸びさせられたことがソ連崩壊の直接の原因であると知っている共産党指導部にはそのことはよくわかっているでしょうから、アメリカと決定的な対立関係になりかねないリスクはとことん回避するはずです。

次に台湾が外れます。下手に反台湾運動をあおると、したくもない戦争をせざるを得ない事態になりかねません。今の中国に戦争などという贅沢は許されるものではありませんし、まして勝ち目は薄い(中国対台湾でも危ういところ、もし台湾が負けそうになれば絶対にアメリカが直接介入するでしょう)のですから、やはりガス抜き先には適しません。

ロシアとインドも選びがたいです。陸続きでしかも核保有国同士ですから、これまた本当に対立関係になってしまえば、どれだけコストを食われるかしれたものではありませんし、偶発的に紛争が勃発してしまうおそれもあります(ダマンスキー島事件や中印紛争という前例もありますし)。

中印共同声明も出たことですし。

というわけで残るは日本ですが、残念ながら一番無難なのは否めません。戦争に発展する可能性はゼロと考えて差し支えないですし、アメリカ傘下にある限り、軍拡競争の懸念もないでしょう。

ただその前提は、日本が許容できるようなレベルのデモにとどまることです。端的にはもし日本人に死者が出るようなことになれば、日中関係は一気に緊迫するでしょうし、他国だって日本に同調するでしょうから、重大な局面に直面することになってしまいます。

その際、国際的孤立を避けようとすれば国内の不満分子を弾圧せざるを得ませんが、となると不満分子がそのまま反政府勢力になってしまうわけですから、国内の不安定さは格段に増加するでしょう。かといって義和団のときのように排外主義に阿れば、短期的にはともかく中長期的には待つのは経済的破滅のみです。

以上を踏まえると、中国政府は必死になって反日デモのコントロールに努めているであろうことは容易に想像できます。感情的に煽りはしても、実際の行動については暴発を極度におそれ、かといって暴発を力で押さえ込めば政府が日本に与したことが明らかになってしまいますから、できるだけ統制のとれた、整然としたデモにすべく公安をこき使っているのでしょう。極めて難しいオペレーションを強いられているわけですが、彼の国ではなく我が国の官僚でよかった(笑)。

とまあ短期的にも厳しい状況の中国ですが、中長期的にはもっと厳しい(少なくとも日本より)状況がまっています。上でアメリカと軍拡競争すれば経済破綻するとか、戦争という贅沢は許されないとか書きましたが、その話です。景気のいい話がよく伝わってくる中国経済ですが、先を見通すと日本以上のスピードで迫る高齢化という問題を内包しています。どのくらいのスピードかと言えば、rietiの吉冨所長の言葉を借りますと、中国は日本のような所得水準に達する遙か以前に高齢化してしまうということになります。

具体的に数字で見てみましょう。まずスタートラインということで、少しデータは古いですけれど2000年における日本と中国の購買力平価ベースの一人当たりGDP格差を見ると6.7倍になります。次に今後の両国の経済成長の推計として、昨年9月発表の島澤諭・細山英俊「アジア経済における少子高齢化の影響に関する数量分析」を見ると、中国の「高度経済成長」は2030年には終わることになります。

#脱線ですが、現在地球規模での資金の出し手(=経常黒字国)である日本、中国等のアジア各国が軒並み高齢化を迎えることにより、国際的な資金供給が滞る、すなわちマンデル・フレミング・モデルでいう世界利子率の上昇につながるのではないかという気がするのですが、これは杞憂なのでしょうか?

同論文からそれまでの間の(グラフ表示なので目分量ですが)数字を拾うと、中国の平均経済成長率はだいたい6%、同期間の日本はだいたい1.8%ぐらいでしょう。これで複利計算しますと、2000年から2030年まで6%成長を続けても約5.7倍にしかならず、つまり2030年の中国でも2000年の日本に追いつけない(約85%)ということになります。

平均経済成長率は国全体で、2030年までの間中国の人口は増加し続けますから、本当はもっと低い数字になりますし、加えて経済成長により購買力平価で換算する際の「ボーナス」もなくなるので更に低い数字になるでしょう(そもそも前提について、GDPの底上げ計上疑惑や闇人口といった下方修正要因もありますし)。逆に言えば、そこまで底上げしても今の日本にすら追いつけないということです。

他方、2030年の日本は2000年の約1.7倍になりますから、同じ2030年で比べれば、中国の一人当たりGDP(購買力平価ベース)は日本の約半分でしかないことになります・・・30年もの間平均6%成長を続けてもまだ半分、それだけの差が日中両国にはあるのです。

フロー所得からストック水準に目を転ずれば、さらに状況は悲惨です。為替レートを無理矢理押さえつけるために国内投資が抑制されているので、十分な自前でのストック形成ができていないのです。中国の巨額な外貨準備(日本について世界第2位)は有名ですが、巨額の外貨準備を持つという現象は同様でも、両国の文脈は全く異なります。

日本の場合は、国内で使い切れない(=投資機会を充足してなお余る)貯蓄が広義の(=国全体の)資本収支赤字として海外に出ていて、その一部が国による流出分として外貨準備にカウントされています。つまり民間部分の帳尻、すなわち狭義の資本収支もまた赤字です。

しかし中国は、国内の投資を外資導入により進めており、狭義の資本収支は黒字であるにもかかわらず外貨準備が積み上がっています。これがどういうことかと言えば、目先の収益(経常黒字)を稼ぐために将来の収益(中国国内の投資から今後生じる利子・配当)を犠牲にして元安を維持し、しかもその見返りは国債金利=リスクフリーレイト、つまりもっとも低い金利でしかありません。

それが直ちに悪いというわけではありませんが(所得を今増やすことには意味もあるので)、間違いなく言えることは、所得の伸びが鈍ったときには全く余裕がないということです。日本の半分の所得で中国が高齢化社会を迎えたときには、売却できる資産も少なく(=既に外資が所有しているので)、天然資源が豊富というわけでもなく、対外債権からの収益も少なく、もう一度先進国の植民地になるというのが半分冗談、半分本気の選択肢になってしまう(笑)ような状況が想像されるわけです。

#裏がとれそうにないので可能性の指摘にとどめますが、国内の所得再分配も難しくそれがより事態を面倒にしそうな気がします。なぜなら、高所得者層の海外脱出のハードルがとても低いでしょうから。

経済のみを考えるのであれば、戦前の日本において石橋湛山が提唱した処方箋が、今の中国にとってはベストであるように思います。内蒙古、ウイグル、チベットといった「植民地」を捨て(つまりは、明代以前のもともとの漢民族の居住地に戻ることになります。内蒙古を手放せばロシアが影響力を伸ばして北京は危なくなるでしょうから、上海にでも遷都しますか(笑))、軽軍備主義をとり、植民地への投資や軍事費を国内ストック形成に充てつつ、親米(・親日)路線で経済開放をもっと進めていくというものです。

しかしこの政策も、共産党の正統性に瑕がつき、「植民地」からの「帰還者」問題が社会不安を招き、軍部は反動を企て、といった経済以外の副作用を考えると、フィージビリティは非常に低いでしょう。あちらを立てればこちらが立たず、やっぱりwebmasterは彼の国の官僚でなくてよかったとしみじみ思います(笑)。

ああいう大きな国が倒れると影響が大きいですし、やけっぱちになってもらっても困るので、できればソフトランディングして欲しいんですけれど。結果論の最たるものですが、大躍進と文化大革命がなければ、もう少し事態はましだったんでしょうねぇ・・・。

本日のツッコミ(全17件) [ツッコミを入れる]
梶ピエール (2005-04-13 12:51)

大変興味深く拝見いたしました。個人的には、今回の騒ぎを奇貨として政治・外交的な(多くの場合不毛な)談義だけでなく中国のマクロ経済状況に関する議論がネット上でも盛んになるといいな、と思っています。さて、ISバランスと外貨準備に関する話などはまた考えがまとまりましてからTBさせていただきたいと思いますので、とりあえず些細な点について。これは非常に多くの方が誤解しているのですが、確かに中国のGDP成長率にはたえず過大評価の疑惑がついて回りますが、絶対額に関しては実はかなり過小評価されているというのが専門家の一致した見解です。要は第三次産業のカバレッジが非常に不十分なのです。むしろ、カヴァレッジを絶えず拡大していく過程で以前の数字との間に整合性が取れなくなり、成長率統計の信頼性が落ちているとも考えられるわけです。また、企業所得税制度が整備されるにつれ、個々の企業にはむしろ生産を過小申告するインセンティヴが働いているということもあります。ということで、後の点についてはまたブログで。

竜一郎 (2005-04-13 17:40)

反日デモは、中国政府の策略であり日本をバカにしている結果だと思います。デモ隊の首謀者らしき人は、靖国神社爆破するぞと、まで叫んでいた。もっと日本政府は、強い態度で出て貰いたいと思う。

よしだ (2005-04-13 23:29)

中国に対するODA(経済援助)は、国民の血税の無駄使いだから、即やめるべき。

よしだ (2005-04-13 23:49)

 中国に対するODA(経済援助)は、国民の血税の無駄使いだから、即やめるべき!今まで散々ODAの支援を行っても、中国国民に公表するどころか、ひた隠しにして、それで得た財を反日教育に費やし、日本政府は「冷静な対応」をと!日本政府が冷静な対応で何か変化しているのか?(日本国益の為に、今までの弱腰の外交では、全く意味がない!現在の政治家に10〜50年のビジョンでものを観れる政治家が、いるのか?→皆無)
 10〜100年後の後輩(日本国民)に石を投げつけられるのが、現在の日本国そのもの(現在の政治家)
 もっと、しっかりしろよ!

bewaad (2005-04-14 07:37)

>梶ピエールさん
ご指摘ありがとうございます。ボランティア(ないし人民公社等の共同体内での非市場性取引)部分が市場機構に組み込まれる中で、サービスの需給が顕在化している、というイメージでいいのでしょうか?

ちなみに佐藤本、いま夢中で読んでおります(笑)。

kaikaji (2005-04-14 11:14)

もともと80年代まで国民所得計算体系としてSNAではなくソ連式のMPSを用いており、サービス産業の多くの部分はカバーされていませんでした。その後段階的にSNAへの移行が行われ、特に90年代半ばの第三次産業センサスで事態は大きく改善されたといわれていますが、まだ個人住宅の帰属家賃、国有企業内部の自給的なサービス部門や零細的なサービス業者が生み出す付加価値の算定が不十分だと指摘されています。なにしろ、2000年の公式統計で中国のGDPに占める第三次産業比率は約34%で、これだとエチオピアやカンボジアなみになってしまいますので・・

bewaad (2005-04-15 06:15)

>kaikajiさん
確かに帰属家賃なんてめちゃくちゃ怪しいかも(笑)。

(2005-04-16 20:51)

>内蒙古を手放せばロシアが影響力を伸ばして北京は危なくなるでしょうから、

ロシアは平均寿命が短いのに少子化と人口流出が進んでいるし、
旧ソ連諸国が次々親米政権に変わっているわけで
2,30年後のロシアにはそういう余力はないのでは?
そのうち中東のように極東でも民主化ドミノが起きるかもしれないし、
数年以内に共産党政権が倒れて、案外すんなり中国に親米民主政権ができるんじゃないかと思います。

bewaad (2005-04-17 08:27)

>●さん
確かにロシア側の事情を失念しておりました。人口問題も、イスラムを考えるとロシアの方が深刻ですし。シベリアの資源や極東に核基地を置くことの意味を考えると、そう簡単にウラル山脈以東から手も引けないでしょうから、ロシアの官僚も大変だ(笑)。

中国の民主化はすんなりできるかもしれませんが、その後においても親米になるかどうかは予断を許さないように思います。共産党の党利党略からくる冷静な計算を代替するものが、民主化後の政権にあるかどうかが鍵となるでしょう。

cloudy (2005-04-18 00:27)

[日本の場合…狭義の資本収支もまた赤字です]についてですが、
ここ二年については中国と同じく狭義の資本収支は黒字化しています。理由はwebmasterも御存知のように、例の大規模為替介入によって外貨準備が大幅に積みあがった(赤字が増えた)ためです。
参考:国際収支の推移
http://www.mof.go.jp/bpoffice/bpdata/s1bop.htm

bewaad (2005-04-18 03:45)

>cloudyさん
最近はご指摘のとおりですね。ミスリードを避けるため、日中ともに資本黒、経常黒で外準赤ですが、日本は一時的要因、中国は継続的にそうなっている、ときちんと書いたほうがよかったように思えてきました。

Baatarism (2005-04-18 11:14)

近頃の中国の官僚はこんなことにも気を遣わなければならないようです。
日本のバブル期の新人採用じゃあるまいに。
こんな奴らに阿らなければならないほど、共産党は権威が低下してるのかと思うと、ちょっと悲しくなりますね。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/america/news/20050418k0000m030095000c.html

bewaad (2005-04-19 05:50)

>Baatarismさん
今日(4/19)のエントリにも書きましたが、やはり日本は怖い存在なんだと思います。

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