archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2005-06-30

[law]人権擁護法反対論批判 リジョインダー編(その15)

法案分析編(その7)で次のようなことをwebmasterは書きました。

(前略)行政府における法の遵守の担保ですが、内閣法制局の存在が外部の方々が思うよりよほど霞が関には重いということが挙げられます。各省庁の法の運用について、それが条文に沿ったものかどうかを国会で聞かれますと、内閣法制局は各省庁の大人の事情(笑)などはまったく斟酌せずに答弁しますので、仮に人権委員会が過去の判例等と矛盾した勧告をし、それが国会で取り上げられ内閣法制局に質問があれば、内閣法制局は間違いなく矛盾していると平気で答えますし、そうなれば政治問題化して大騒ぎになるのは必定ですから、いくら個々の人権委員が「これは人権侵害だ」と騒いでも必死で事務方は止めようとするはずです。

本エントリは、それに対してお示しいただいた、次のan_accusedさんのご疑問への回答です。すぐお答えするはずだったのですが、1ヶ月以上経過し大変遅くなり恐縮です。

◆ an_accused (2005-05-21 23:47)

(略)

政府部内に籍を置いた経験のない私にはいま一つ実感できないのですが、内閣法制局にはおそらくかなりの「重み」があるのでしょうね。いただいたご回答につきましては、

1)立法過程においては、内閣法制局は高いハードルとなって各省庁の前に立ちはだかることになるのでしょうが、一旦成立した法令の解釈権は、ひとまずは法律所管官庁が有することになるのではないか。

2)法的に疑義の生じるような個別案件における法解釈については、内閣法制局は後々司法判断が示される可能性があるうちはその解釈の当否について積極的に述べようとはしないのではないか。

といった疑問がさしあたり浮かんできますが、過去の法制意見のありようなどを勉強することによって、私なりに理解に努めたいと思います。

なんとなく身に付いているものを改めて客観的に説明可能とする材料はなかなか見つからないものですが(笑)、あれこれ渉猟する中でようやく格好のものを探り当てました。今年の5/16の参議院決算委員会での次のやりとりです(強調はwebmasterによります)。

○松井孝治君 要するに、平成十三年以降、今何年ですか、平成十七年ですね、もう十三、十四、十五、十六、十七と足掛け五年間、工業再配置計画は策定されてない。工業再配置計画を策定して誘導する、そのこと自体がひょっとしたらもう時代からいってどうだろう、見直さなければいけないという議論があるのに、策定されてないんですね。

法制局においでいただいていますが、これ別に私、違法とかそういうことをここで言うつもりはありませんが、法律上、これ工業再配置計画が策定されてないというのは適切なのか不適切なのか、あるいは法律が想定している状態なのか。一番最後の質問に答えてください。法律は工業再配置計画が五年間策定されていない状態を想定していますか。

○政府参考人(梶田信一郎君) お答えいたします。

法制局といたしましては、お尋ねの事案につきまして、必ずしもその詳細につきましては承知しているわけではございませんので、御指摘のございました状況が工業再配置法に照らしまして問題であるかどうかという点につきまして一般論として申し上げたいと思いますけれども。工業再配置法の第三条一項では、経済産業大臣は工業再配置計画を定めなければならないと、今御指摘ございましたような趣旨の規定が定められておるところでございまして、相当の期間にわたりまして工業再配置計画が定められていない、そのことにつきまして特段の合理的な事情がないということでございますれば、そうした状況はこの三条一項の規定の趣旨に反するのではないかというふうに思います。

○松井孝治君 法制局のお立場ではそれ以上言いにくいでしょうね。要するに、合理的な事情がなければ法律にやはり反するおそれがあるということだと思うんですよ。

それで問題は、これは合理的事情があるかどうかという点なんですね、大臣。私は、正直申し上げますと、昔、お役所に勤めておったこともありますから、いろんな人に話を聞きますよ。それはやっぱりもうそろそろこういう時代ではない、そういうことは恐らく経済産業省の役所の人も気付いてはいる。気付いてはいるけれども、じゃどうしたものか。自治体の首長さんなんかの集まる、やっぱりこの補助金を出してくれという、そういうグループもあるわけですね。

(中略)

ですから、ここで私としては、役所の従来の工業再配置法を見ている部署が計画を作っていない、それを、じゃ、本当は法律義務違反じゃないかみたいなことを言うというよりは、やっぱりこれをそろそろいい機会なので見直していくべきではないか。会計検査院の検査の結果も、やはりそれは見直すべきではないか、再考を促していると思います。

ここで経済産業大臣、そして恐縮ですが、財政担当でもあり、地域としてこういう問題、肌で感じておられる財務大臣の順番で結構ですので、この問題について見直していこうじゃないかという政治的な答弁をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(中川昭一君) 今までは、松井委員御指摘のように、現時点で計画がないということは、形式論かもしれませんけれども、一つは全総が今ない時代に入ってきているということで、今までは全総にのっとった形でこの工業再配置という政策を取ってきたことはもう松井委員も御存じのとおりだと思います。

(中略)

松井委員も御勤務されました経済産業省は、そういう時代のニーズに的確にスピード感を持って対応できる役所だというふうに思っておりますので、そういうニーズにこたえられるような政策を今後も推進していきたいというふうに考えております。

工業再配置促進法第3条第1項においては「経済産業大臣は、関係行政機関の長に協議し、かつ、産業構造審議会の意見をきいて、工業再配置計画を定めなければならない。」と規定されていますが、以上のやりとりはこの解釈の問題です。an_accusedさんの1つ目のご指摘のとおり一義的には法令を所管する省庁がその解釈をするのですが、上記のように法制局に対して解釈を求められることはあります。そのようなケースにおいては、強調部分のように実態がどうであれ法律上はこうなるという一般論を答えることになります。

その根拠ですが、法案作成時に法案審査を行うのは第二部から第四部までですが、第一部において意見事務というものが分担されていまして(上記答弁を行っている「梶田信一郎君」は内閣法制局第一部長です)、この国会答弁はその意見事務の一環です。意見事務とはなんぞやということを内閣法制局のページから引用すると次のとおりです(根拠規定は内閣法制局設置法第3条第3号になります)。

  • 法令の解釈は、その法令を所管し、その執行に当たる各省庁において行っていますが、法令の解釈に関して各省庁において疑義がある場合や関係省庁間において争いがあるような場合に、各省庁から求めがあったときは、内閣法制局は、これに応じてその法律問題に対する意見を述べることとされております。このような事務を意見事務と呼んでいます。
  • 法令の解釈は最終的には裁判所の判決を通じて確定されることになりますが、少なくとも行政部内においては、内閣法制局の意見が出されることによって、その解釈が統一されることになります。
  • また、政府又は内閣法制局としての意見の表明に必要な法令解釈に関する問題の検討を行っています。特に国会において、憲法以下の現行法令の解釈など法律問題につき意見を求められた場合に、その答弁を行うことなども重要な業務となっています。

2つ目のご指摘についても、裏は取ってませんが工業再配置促進法第3条第1項について判例があるとは思えませんので(笑)、司法判断がないものについても解釈を述べているわけです。ご理解いただけると思いますが、行政府=法令の執行部門ですから、どのように解釈して執行しているのかと問われたときに、司法判断が出ていないので解釈できませんとは答えられません。司法判断でないので絶対ではありませんが、という留保はつくにせよ、行政府としての受け止めを答えざるを得ません。

以上のような国会での質問のほか、質問主意書への対応についても内閣法制局第一部の審査を経て政府見解となります。国会質問で行政委員会が所掌する法令についての法制局見解の例は見つけることができませんでしたが、質問主意書では独占禁止法の解釈問題について答弁した例が見つかったのでご紹介しておきます。上記のように経産省の事情を斟酌せず回答したように、この主意書についても内閣法制局はあくまで条文にそってのみ審査します。仮に公正取引委員会が独占禁止法は自分たちが所掌しているのだといって独自の解釈を主張したところで内閣法制局は解釈を枉げませんし、内閣法制局がOKしなければ主意書の答弁たり得ません。

とはいっても、国会で質問されるなり主意書を出されるなりしてはじめて内閣法制局に出番が回って来るに過ぎず、通常の業務運営においていちいち内閣法制局が関与するわけではないから、個別の事例において人権委員会が暴走するのではないかという懸念があるかもしれません。

しかし、質問や主意書の対象とはならないとは誰も保証できません。そのリスクがある以上、事務方はグレーゾーンの個別案件を処理する際には内閣法制局に相談に行きます。自分たちはこのように法令を解釈しており、その解釈をこの事実に当てはめるとこのような対応となるが、問題ないでしょうか、と。外部にそれを出してから確認に行って、そんな解釈はダメだ、受け入れられないと言われてしまっては取り返しがつきませんから、そのようなリスクヘッジをするのは官僚の性です。

結局、人権擁護法案を見れば「人権委員会は」といった規定があり、あたかも人権委員会が自由に振る舞えるかのように条文上は見えますが、先に紹介の工業再配置促進法において「経済産業大臣は」と規定されていても大臣が経済産業省という組織を背負っているのと同様に、「人権委員会は」と規定されていても、委員会は事務局という組織を背負っているのです。事務局の官僚のビヘイビアを考えたり、人権委員会と事務局の関係を考えるに当たっては、人権擁護省とその大臣を仮定して理解してもらってかまいません。その「大臣」が複数の者から構成され、独断では何も決められず過半数により意思決定をする点においてのみ異なるだけの話なのです。

これまで、中曽根総理や小沢自民党幹事長といった名だたる有力者たちが内閣法制局を押し切って集団的自衛権の合憲解釈を導くことができなかった(肩書きはいずれも当時)ように(これがトラウマになって、小沢民主党副代表は内閣法制局廃止論者になったのですが)、内閣法制局は憲法解釈において極めて保守的ですし、かつ、行政府内で内閣法制局の見解を力ずくで排除することは不可能といっても過言ではありません。

法律の文言は、これまでの解釈の積み重ねや判例によって自ずとその意味は定まりますし、行政府内においてその幅は内閣法制局が行政府内においては最終的に判断します。内閣法制局が最高裁判例に逆らうことはあり得ませんから、一般的にはいくら曖昧に見えても、判例等により隠された定義がなされているにもかかわらず、曖昧だからもっと厳密な定義をなんて言い出すと、過去の判例や内閣法制局見解の総量以上の字数が必要になりますが、それはいったい何字になるのでしょうか(笑)。

#このエントリは、以下の一連のエントリの続編です。

本編
前編(3/13)後編上(3/14)後編下(3/15)趣旨説明編(3/29)faq編(4/9)
リジョインダー編
1(3/17)2(3/18)3(3/19)4(3/20)5(3/21)6(3/22)7(3/27)8(3/30)9(3/31)10(4/2)11(4/4)12(4/5)13(4/8)14(6/11)
法案分析編
1(3/24)2(3/26)3(4/1)4(4/10)5(4/11)6(4/14)7(5/21)
正誤訂正編
1(3/25)2(4/6)
百地教授編
1(4/20)2(4/21)
マスメディア編
1(6/10)2(6/14)

[comic][movie]Mr. Cromartie vs Cromartie High

7月に公開予定の映画「魁!!クロマティ高校THE☆MOVIE」に無断で名前を使われたとして、元巨人で米独立リーグ「サムライ・ベアーズ」監督のウォーレン・クロマティ氏(51)が29日、配給元のメディア・スーツ(東京)を相手に、公開差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。

クロマティ氏が映画の公開差し止めを請求

名称変更自体をネタにする、に一票。

本日のツッコミ(全4件) [ツッコミを入れる]
アングラ (2005-06-30 18:55)

つまらないツッコミで恐縮ですが、ウォーレン・クロマティ氏のラストネームのスペリングはCromartieのようです。

bewaad (2005-07-01 04:46)

お恥ずかしいo.......rz
早速訂正させていただきました。ご教示ありがとうございました。

トニオ (2005-07-01 14:41)

法学板よりです。

303 法の下の名無し sage New! 2005/07/01(金) 02:59:13 ID:f1K++3Lh
反対論批判の批判 1
http://bewaad.com/20050315.html
>人権擁護法が差別と定義する行為は、これまでも上記民法の規定に基づき不法行為とされていたものの
>部分集合ですし、今後のその解釈についても、これまでの不法行為に関する判例・学説の蓄積に基づき
>行われることとなります。確かに第2条・第3条の規定は曖昧ではありますが、それはこれら判例・学説の
>蓄積を条文化することが困難であるが故(条文化すればそれだけでどれほどの長さになるものか・・・)。
>行為の範囲・法の適用の基準は、それらを総合して考えれば、十分に合理的なものと言ってよいと思います。


>人権擁護法が差別と定義する行為は、これまでも上記民法の規定に基づき不法行為とされていたものの
>部分集合ですし

>。確かに第2条・第3条の規定は曖昧ではありますが、それはこれら判例・学説の
>蓄積を条文化することが困難であるが故(条文化すればそれだけでどれほどの長さになるものか・・・)。

AとBが矛盾してることがわからない奴が、部分集合とかの数学的
用語を使うとか。笑わせる。

>差別と定義
>部分集合
>規定は曖昧
こんな矛盾した言葉を並べて必読なんて言わないでください。
頭痛がします。

>行為の範囲・法の適用の基準は、それらを総合して考えれば、十分に合理的なものと言ってよいと思います。
第2条と第3条の規程の実際の適用範囲が、今までの判例に縛られるわけじゃないでしょ。
裁判所はこの法律というあらたな法律を新たに解釈して
適用範囲を決めるんでしょ。

なんでこういう詭弁を平気で書くの?

>行為の範囲・法の適用の基準
しかも、この法の適用範囲を画するのは行政訴訟になるけど、
その場合、裁判所は行政の判断を
一時的には尊重する傾向があるから、今までの判例の
基準がそのまま適用されるとしても、
事実認定などの面で、事実上の訴追側となる行政の判断が
大きくなるのは明白じゃん。

詭弁に詭弁を重ねてるなあ。

bewaad (2005-07-02 08:20)

当然そのスレは見てまして、そのレスも見てます。どう矛盾するか等について具体的に論理展開していただけたらと待っている状態です(笑)。

本日のTrackBacks(全2件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20050630]

Bewaadさまのところで私がコメントさせていただきました[http://bewaad.com/20050521.html#c07:title=以下の疑問] 何度も丁寧なお答えをいただき、本当にありがとうございます。 政府部内に籍を置いた経験のない私にはいま一つ実感できないのですが、内閣法制局にはおそ..

立法の中枢 知られざる官庁・内閣法制局
西川伸一が「立法の中枢」「知られざる官庁」と形容するところの「内閣法制局」とは何か。
まずは引用から。
●現役官僚BewaadさんのBlogから拾いますと、
「行政府における法の遵守の担保ですが、内閣法制局の存在が外部の方々が


トップ «前の日記(2005-06-29) 最新 次の日記(2005-07-01)» 編集