archives of BI@K

CSS: default alternative
(要cookie)

toppage memoranda

(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2005-08-11

[economy]平成17年度経済財政白書のつまみ食い

明日で取り上げる予定の「ESP」7月号座談会で大竹先生が昨年までの「経済財政白書」は、かつての「経済白書」と異なり、小泉政権のプロパガンダの役割を果たしていたと思います。(略)ところが、今年の白書は、重量級の経済分析が満載で、本当に読み応えのあるものになったと思います。(pp6,7)と評するように、構造改革の結果として今の景気回復があるのだという俗耳に入りやすい議論をひっくり返しかねない興味深い記述が見られます。

#竹中大臣が郵政民営化に専念しすぎて白書に向けるエネルギーが減った故でしょうか、プロパガンダ色が抜けたのは(笑)。

以下、景気の現状を分析した第1章と、構造改革の対象である「大きな政府」を分析した第2章から、ざっと目を通して特に気になった点をピックアップしてみました。

第1章 景気回復の長期化を目指す日本経済

第1節におけるバブル崩壊以降、日本経済は3つの過剰問題が成長の大きな制約となってきた。それは過剰雇用、過剰設備、過剰債務であり、これらはほぼ解消したと考えられる。との見方は竹中大臣見解に共通するものですが、雇用と設備を個別に見ていくと「解消」の意味するところに含みがあることが透けてきます。

#債務については白書でそれほど深く掘り下げられていませんので(金融機関側から見た債権としてはいろいろ書いてありますが。反転していない以上論じたくても無理なのでしょうけれど(笑))、触れないこととします。基本は設備の裏側の話で、設備投資がフリーキャッシュフローを超えて伸びれば底打ちにならざるを得ないということになるかと思います。

個別に論じる順としてまず設備ですが、設備投資が増えたといってもあくまでキャッシュフローの範囲内でしか行っておらず、以前webmasterが推測したように、設備の老朽化は依然として進行中であることが示されています。やはり手持ち資金の範囲内で、使い物にならなくなった設備をリプレイスするのが最近の設備投資の傾向で、それが増えているというのは単に使いつぶされた設備が多くなってきていることを表しているに過ぎない可能性があります。

で、結びの言葉が企業の期待成長が高まれば、今後も効率性の高い資本を中心とした資本ストックの増加余地は十分にあると考えられる。ですが、「高まれ『ば』」、つまりあくまで条件付シナリオに過ぎません。って、期待成長が高まれば資本ストック(設備量)が増えていくのは当然です(笑)。資本ストックが十分に成長軌道にあると言えないのに、本当に過剰設備が解消されたと言えるんでしょうか?

次に雇用ですが、白書で比較される各種雇用関係指標を見ると、景気回復と言いながら実質定期給与が低調であるのが目立ちます。危うし「ダム論」といったところでしょうか(笑)。これについては2005年に入ってからパートタイム労働者比率は頭打ちとなり、新卒採用の増加ともあいまってフルタイム労働者が7年ぶりに前年比増加に転じるなど正規雇用を中心とする雇用増加の動きが定着してきており、賃金の動向にもプラスの影響を与えるようになっている。と先行きを明るく描いていますがどうでしょう。

例えばリクルートワークス研究所による最新の求人予報を見ると、首都圏求人広告件数伸び率においては「社員系」は2004年初頭にピークに達して右肩下がりとなり、同年前半中に右肩上がりを続ける「パート・アルバイト系」に追い抜かれて以後、その格差は1990年以降の最高水準を維持しています。白書が記述する2005年の動向は2004年までの「社員系」の高い求人需要の反映に過ぎず、今後は再度パートタイム労働者比率が上昇して実質賃金が相変わらず伸びないおそれは多分にあるのではないかとwebmasterは思います。

これらを見るに、今回の景気回復が改革の成果による成長だというのは羊頭狗肉の疑いを拭い切れませんが、海外景気と我が国経済の関係をみると、相関性が高まっており、海外景気が好調だと国内生産も増加しやすい構造にある(付図1−1)。他方、これは、世界景気が鈍化すると、それ以上に輸出が鈍化することを通じて我が国の国内生産が鈍化しやすい構造にあることを示している。2004年後半から踊り場にある我が国の景気動向にも、こうした構造が影響している。という指摘は示唆に富みます。結局、経済停滞の原因は供給要因ではなく需要要因だということじゃないですか(笑)。

第2章 官から民へ−政府部門の再構築とその課題

第1章は改革と景気についての小泉総理的なワンフレーズが妥当しない可能性をかいま見せていましたが、この章では逆に、そうしたワンフレーズを弁護しようとして泥沼にはまって(笑)います。第2節以下で如何にすれば政府を小さくすることが可能かを縷々論じているわけですが、その前提として現状が大きすぎるとの認識があってしかるべきです。

ところが第1節を見るに、かねてから指摘されているとおり、まず国際比較をした場合に一般政府支出で見ても国民負担率で見ても、日本は小さな政府であることが示されます。ちなみにこれらは対名目GDP・国民所得比率で表されていますから、仮に名目GDPピークの1997年(521兆円。ちなみに2004年の名目GDPは505兆円です)から名目ゼロ成長を維持できていれば3%ほどさらに小さい値でしたし、いわんやプラス成長だった場合をや。

こうした数字ではなく規制・介入において大きな政府であるという反論はよく見かけますが、これもOECDの調査結果によると日本は小さな政府の部類に入るという結果が示されています。これはOECD加盟国の中でということですが、G7諸国で比較しても4番目と真ん中(イギリス、アメリカ、カナダ、日本、ドイツ、フランス、イタリアの順)で、少なくとも大きい部類には入りません。

結局、このように実証データでは大きな政府であると示すことができないため、白書が選んだ道は今後国民負担率が増えていくという試算(「日本21世紀ビジョン」がベースです)を示して、今は小さくとも将来大きくなるとすることでした。

ここでも国民負担率は対名目GDP比率で表されるわけですが、比率とはつまりは2変数の関係ですから、1変数のみを取り上げて分析するのは明らかに片手落ちです。わかりやすく言えば名目GDPが推計値以上であるなら国民負担率は下がるわけです。白書の前提は実質GDP成長率が1%台半ばというものですが、その妥当性が問われることになります。

検討の材料としてESRI(白書をまとめた内閣府所管の経済研究所です。念為)が一昨年開催したパネルディスカッションをみますと、白書と同様にサプライサイド要因で潜在成長率が押し下げられているとの立場の宮川先生らも参加されての議論ですが(他に日本の経済成長率低下は需要要因であると説くジョルゲンソン先生や元橋先生も参加されていますし、経済財政諮問会議委員である吉川先生も参加されています)、そこでは日本の潜在成長率は2%台前半であるとのコンセンサスが得られています。内閣府としてはどちらで嘘をついているんでしょうかね?(笑)

#全く異なるアプローチとして、クルーグマンがオークンの法則から90年代までの日本の潜在成長率を3%程度と推計しています。今後の人口推移を考えれば、この推計と2%台前半という見通しは整合的と考えられます。

どちらでも嘘をついていないとすれば、潜在成長率は2%台前半であっても実現される成長率は1%台半ばだということになります。これを合理的に解釈すれば総需要不足で潜在成長率を実現できないということですが、内閣府は自分の仕事をさぼって総需要不足を放置するので大きな政府になりますということでしょうか(笑)。思い出してみれば、既述のとおり外需の伸びで経済成長率が上昇したことは内閣府も認めていますが、サプライサイドの制約で経済成長率が頭打ちならそんなことが起こるはずもありませんし(笑)。

というわけで、白書をいくら読んでも日本がいかなる意味において大きな政府であることは論証されないのですが(内閣府の任務懈怠を除いて。笑)、それでもなお構造改革をして小さな政府にしないと日本はお先真っ暗だという主張はどのように正当化されるのでしょうか? 実は第1章よりもさらに込み入った手段として、とことんワンフレーズをサポートしてみることで、逆にそのおかしさを浮き彫りにするという内閣府官僚の良心の呵責の跡だった・・・なんてことはあり得ないかな、やっぱり。

[politics]やっぱり解散総選挙はプレビシット(少なくとも武部幹事長の主観では)

武部氏は首相との会談後、記者団に「公明党が出ていない全選挙区に郵政民営化賛成の改革派を立てる。国民投票をお願いするわけだから、改革派候補がいなければ国民の選択の余地がない」と強調した。

産経「造反全選挙区に対抗馬 まず小池環境相を擁立」

強調はwebmaster自身によるものですが、昨日書いたような受け止めをされる可能性など思いつきもしないのでしょうね・・・。

[politics][media]政局報道に異を唱える民主党

一方、平野博文幹事長代理は報道各社に「ここ一両日の報道ぶりには自民党内の報道が多く、偏りが見受けられる」として「公正、中立な報道」をするよう文書で要請した。民主党執行部は「野党であることを割り引いても、メディアでの『露出度』が自民党より著しく低い」と不満を募らせていたが、正式に「善処」を求めたのは異例。

産経「政権公約づくり着手 自公「郵政」 民主ぼかす」

今までの選挙でさんざんメディアのそうした姿勢の恩恵を受けてきたくせによく言えるものです(笑)。

[book]ダイヤモンド社「経Kei」発見

日土地ビルの文教堂書店にありました。霞が関住人で探している方がいれば、ここでぜひ。飯田泰之先生(当サイトをご覧の方々はご存じかと思いますが、もしご存じでない場合のためご紹介しますと、読んでハズレなし絶対お薦めの「経済学思考の技術」の著者です)の連載「経済政策は誰のために」は評判どおりのすばらしさでした。

ちなみにp44からp47までの佐和先生の「説得力を欠く『経済財政白書』」は、本日の最初のエントリとは違った角度から(重ならないよう努めはしましたが)白書を批判しています。過半においてwebmasterも頷くご指摘で、ご関心の向きにはご一読をお薦めいたします。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
名無之直人 (2005-08-11 15:16)

どうもお久しぶりです。いつも記事拝見させて頂いてます。

私も経済白書買ってつらつらと眺めていたのですが、bewaadさんもご指摘されていた条件付の景気展望とか、パート・アルバイト系の給与やその分布などに関しては違和感を感じてました。(特に若年層の低所得者層の増加とか反映してるのかなぁとか)

あと、日本は大きな政府か小さな政府かと言われると、一般会計ベースの各指標で見れば確かに小さな政府の部類に入るかと思います。

小さな政府とは本来低負担低福祉(最低限の公共サービス)を意味する筈が、小さな負担で高福祉(最大限の公共サービス)を実現する為に、表面上は小さな政府規模(低負担)を保ちつつ、公債発行で実際の高福祉を実現してきた結果が現在の累積債務の状態ではないかと私は認識しております。

郵政民営化の本来の目的は、その低負担高福祉を実現していた最大のカラクリ(の一つ)を外しましょうという事なのであって、小さな政府を実現しましょう、というよりは、そのカラクリを使うのも限界が来ているんですよ、という行政側から国民側へのメッセージじゃないかなと私は受け取っております。

(平成17年度6月末で郵貯簡保資金331兆の7割の231.7兆が国/公債購入や地方/公団貸付で埋まっている状態を指して「小さな政府、過大な支出」という事は可能かと思います。(年間の税収規模に比べて))

最近の景気回復をデフレからの脱却の兆候として捉えられているのかどうか、最近の金利上昇が意味する所などに関してもご意見お聞かせ頂ければ幸いです。

bewaad (2005-08-12 04:22)

累積債務にはそれなりに理由があるのだ、ということを12日付縁とりで書いてみましたので、よろしければ議論にお付き合いください(笑)。

景気回復については、潜在成長率推計が悪くない線であるなら、それを超える実質成長率を維持できればGDPギャップの縮小を通じてデフレ脱却にもつながり得ると思いますが、維持できるかどうかは神のみぞ知るといったところでしょうか。

金利については・・・市場のミクロファクターもありますから、ドラめもんさんお読みでしたらお願いします!

(2005-08-13 02:15)

ボナバルティズムもプリビシットも初めて聞く言葉だったのですが、WWWを徘徊した上で読み直してみると、なるほどな〜という感じです。
この問題の本質は、「我々が政治的な判断を行うに足るだけの理性を、常に備えているとは限らない」ということだと思うのですが、だとすれば、特に今回は、抑止力が見当たらないですね。
民主党も、朝日も、赤旗も、反自民勢力全体が、自身及び自身が代表する(と思っている)市民の無謬性みたいなものを、(無意識に)仮定してしまう習性があり、"国民の審判を仰ぐ"ことそのもへの批判なんて発想は、思いつきようもありません。
自民党内の、郵政民営化反対派が、そんなことを言っても負け犬の遠吠えにしか聞こえませんし。
一般論としては、日本人の判官贔屓体質は、この種の行為への抑止力になりえると思いますが、参院での否決に至る過程での、反対派のハシャギっぷりが、あまりに醜かったので、今回は期待できないでしょう。
解散なんて自殺行為だ、とあの時点では思いましたが、これで小泉自民党が大圧勝して、、、なんて展開になるようなことがあれば、確かにヒットラーが射程圏に入ってくるような気もします。

bewaad (2005-08-13 07:11)

むしろ構造改革にこそ、不当な既得権を維持する敵を想定しての判官贔屓をさそう部分があると思います。敵が強大だからこそ、それに対抗し得るだけの権力を与えよ、と。

すなふきん (2005-08-13 09:56)

すでに日本は集団ヒステリーに突入してしまったのではないでしょうか?少しでも異議をさしはさむという行為自体、「改革の意識が徹底していない。」わけで(笑)。文革やポルポト、赤軍派を連想するのは私だけ?

本日のTrackBacks(全2件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20050811]

「Bewaad Institute@Kasumigaseki」の「平成17年度経済財政白書のつまみ食い」というエントリの中で、日本は実は小さな政府である、というようなことが書かれている。このblogに書いてあることは(少なくとも)概ね間違っていないと思うので、このエントリも概ね間違って..

『医療費の一定額を保険対象外に、患者負担重く・厚労省案』 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20051016AT1F1500G15102005.html 前に、インドに住んでいたときのメイドが、自分の娘の薬代を出せなかったという逸話を書いた。医療保険が整備されている日本でも、これに..


トップ «前の日記(2005-08-10) 最新 次の日記(2005-08-12)» 編集