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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-10-02

[economy][politics][government]バブル崩壊の知られざる後遺症

昨日予告のとおり、日銀はインフレ率をコントロールする自信がなく、財務省は財政規律を維持する自信がないのではないか、という徳保さんの問題提起について、webmasterが考える可能性について論じてみたいと思います。最初の手がかりは日銀・須田審議委員の挨拶から次の部分です。

他方、実際のインフレ率が目標インフレ率の範囲からはずれている時期に物価安定の数値を公表するとどうでしょうか。それが中長期的な物価安定の定義ということで導入されたものであっても、なかなかそこに到達しないというのであれば短期的な政策目標にされるリスクがあります。いつまでも目標から離れていますと信認を損ないかねませんので、アグレッシブな政策対応を余儀なくされますと、かえって実体経済変動が不安定化し、信認が失われかねません。金利がついていたとしても非常に低く、政策手段も十分に手元にない場合には、金融政策が物価に波及するメカニズムやタイムラグに大きな不確実性がありますので、なおさらです。またその間、物価安定目標の数値化・公表化でインフレ率の期待形成が目標値の近辺で安定するように最終的には収束していくとしても、それまで期待インフレ率が過去のインフレ率の影響を大きく受けていたことを考えますと、そこへ収束するスピードは信認の程度にも依存して人それぞれだと思いますので、当面はインフレ期待が拡散してしまうかもしれません。こうしたことを考えますと、このような形での物価安定の数値公表化は避けるべきだと思います。

デフレ下においてインフレーションターゲットを導入すべきでない、という主張のコアでそれ自体にはいろいろ反論の余地はありますが、興味深いのはここでの姿勢です。「・・・リスクがあります」「・・・失われかねません」「・・・不確実性がありますので、なおさらです」「・・・かもしれません」と様々な可能性を指摘していて、断言しないのは知的な誠実さのあらわれだと思いますが、とまれ、これらに共通するのは日銀への非難へつながり得る事態を回避する姿勢です。

というだけではわかりづらいかもしれませんが、もう一つの材料として、財務省の最近のスタンスについて2ちゃん・経済板「最大の罪は郵政省でなく財務省にある?その1」スレの次の書き込み(webmaster注:一部改行位置に手を入れています)をご覧いただきたいと思います。

330 名前:金持ち名無しさん、貧乏名無しさん[] 投稿日:2005/09/30(金) 18:05:19

平成不況の元凶である「不動産総量規制」を大蔵に発動させたのは誰ですか?
わけのわからん「財政と金融の分離」騒動を起こして日銀を「関東軍」にさせ金融庁というチンピラ官庁をつくったのは誰ですか?
護送船団をやめて銀行は淘汰させるべきだとかいい加減なことを言ったのは誰ですか?

  お  ま  え  ら  「 愚  民 」  だ  ろ

まったく ふざけるな!  腹がたつ

財務省はもう愚民の世話なんてみる気はないんだよ

332 名前:金持ち名無しさん、貧乏名無しさん[] 投稿日:2005/09/30(金) 18:33:08

>>300

>>大蔵に発動させたのは誰ですか?

知っているのなら教えて。その当時、企画立案したのはだれですか?

333 名前:330[] 投稿日:2005/09/30(金) 18:47:09

「地価が高騰してサラリーマンがマイホームをもてない」とかなんとかマスコミがキャンペーン張ったんだよ。世論もそれを支持した

総量規制には当初、大蔵は猛反対した
でも結局大蔵は「民意」に従ったんだよ。当然不況になる
不況が長期化したらバブル潰しを煽動していた連中が「大蔵が悪い」「大蔵省を解体しろ」うんぬん叫び始めた。極めつけは「財政と金融の分離」騒動。これで日銀は関東軍になったし、チンピラ官庁もできた。

はっきりいって

「 強 い 大 蔵 省 」が存在していたならばここまで不況は長期化しなかった

335 名前:金持ち名無しさん、貧乏名無しさん[sage] 投稿日:2005/09/30(金) 18:54:28

>>333

どうだろう?その「強い大蔵」が果たして景気への責任を自覚してくれるだろうか?バブル崩壊は浮かれた日本への天罰ってアホ論調に屈しそうな気が。分離した事によって誰も責任とらなくなったってのは同意。

336 名前:330[] 投稿日:2005/09/30(金) 19:08:29

>>335

>>バブル崩壊は浮かれた日本への天罰ってアホ論調に屈しそうな気が。

大蔵がしっかりしていれば総量規制自体発動されなかったよ
俺がいいたいのはなんでもかんでも大蔵のせいにしたがる連中がいるということだよ
信じてくれないかもしれないが、いわゆる橋本行政改革で一番打撃をうけたのは大蔵だよ。接待なんとかで大蔵も反省すべきとこはあったが、あの大蔵バッシングは明らかにやりすぎだ。あれで組織的にも精神的にも大打撃をうけた
小泉さんの経済政策を仕切っているのは財務省うんぬんいわれるけど
ようは「自分の庭の掃除」しか、しなくなっただけの話。

337 名前:金持ち名無しさん、貧乏名無しさん[] 投稿日:2005/09/30(金) 19:53:53

まあ確かに、大蔵には大蔵の言い分があるだろうなー。愚民から「大蔵は余計なことするな」とかつて言われて、今になって「自分の庭先しか掃除しない」と言われたら、そらブチキレたくなる気持ちもわかる。

ただ自分の庭の掃除しかしなくなった財務省が小泉のもとで強くなるのは危険だと思うが
まあそれも愚民の望んだ結果だと言われればそうだけどね

細部の評価はともかく、事実認識としてはwebmasterはこれにほぼ同意していて、そして総量規制を三重野元総裁による強烈な金融引き締めに置き換えれば、ここでの大蔵省=財務省にとってのインセンティブの変化は日銀にもほぼ妥当すると考えています。不十分ではあったかもしれませんが、それでも経済全体を悪くしてはいけないというインセンティブはかつては存在したわけです(政府の失敗があり得るので、結果が出るかどうかとはイコールではありませんが)。

ところが、そうした姿勢がバブル崩壊により叩かれたがゆえに、今では局所に引きこもってしまっているわけです。典型がプライマリーバランスの議論で、プライマリーバランスを回復させたところでドーマー条件(名目成長率>名目金利)を満たしていなければ財政赤字は発散するわけで、その事実は財務省も認めているわけですが、名目成長率も名目金利も財務省にとっては外生変数だとしてしまっているわけです。仮にドーマー条件を満たしていないがゆえに財政赤字が発散したとしても、財務省としては名目成長率や名目金利のせいであって、自分たちは悪くないと言い訳することでしょう。

日銀にしても、デフレの害はフィリップスカーブが示すように端的には失業率に表れるわけですが、失業率は他の誰かが責任を持つことだと割り切れば、わざわざインフレにしようとするはずもありません。デフレスパイラル=マイナスのインフレ率(デフレ率)の継続的悪化は止めなければならないにせよ(それでは局所的利害に反するので)、一定レベルで安定さえするのであれば、デフレが続いていてもそれで事足れりということになってしまいます。

こうした構造の下、財務省・日銀(その他の部局もそうですが)は囚人のジレンマ状態に陥っています。共犯二人がともに自白すれば二人とも懲役十年、どちらか一方が自白すれば自白した者は司法取引で懲役一年、しなかった者は改悛が認められないとして懲役二十年、どちらも自白しなければ証拠不十分で逮捕のきっかけとなった微罪のみが問われ懲役二年という状況(懲役の具体的年数には意味はありません)にあれば、相手が自白しようとしまいと自分は自白したほうが得(相手が自白するなら懲役二十年が十年に、自白しないなら懲役二年が一年になる)なので二人とも自白し、どちらも自白しなかった場合の二人とも懲役二年という両者をあわせ考えればベストの状態ではなく、二人とも懲役十年という結果になってしまうというのが囚人のジレンマですが、これと同様に、景気が良くなろうと悪くなろうと今の路線を維持することがお互いに合理的で、その結果として全体が落ち込んでしまっているわけです。

何もバブル以前の大蔵省・日銀体制を正当化するものではありませんが、彼(女)らからマクロ経済の要素を外部化した以上、どこかに内部化しなければ、囚人のジレンマ状態から抜け出すことはできません。世界一の借金王という汚れ役をあえて演じた小渕元総理の下では財務省も財政支出増に踏み切ったように、マクロ経済を好転させるために局所的利害の「害」を肩代わりする人がいるなら、彼(女)らも行動を変えるでしょう。そうでない限り、日銀はインフレにするのは難しい、財務省は財政規律を維持するのは難しいとしておくことこそが合理的ということになるわけです。

本来その役回りは経済財政諮問会議が担うというのが橋本行革の前提なのでしょうけれど、それがあの体たらくではねぇ・・・。

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vicinity (2005-10-02 13:00)

現在訳あって(私もBewaadさんと同業者なので、理由は想像に難くないと思いますが)米国に滞在している者です。

こちらの不動産バブルも危険水域?になっていて、高騰を抑える政策を打つべきか、あるいは放置してバブルを自然崩壊させるべきなのか、という議論をビールを片手に大学院の同級生としています。日本の教訓?から言えば、強制的に破裂させるのは止めた方がいいのかな、というのが多くの意見ですが・・・どうなることやら。

とはいえ、米国の賃貸価格は、NY等のごく一部の大都市を除き極めて安いので(官舎ほどではありませんが)住んでいるぶんには実感しにくいのも事実です。

kumakuma1967 (2005-10-02 22:56)

 バブル時代から現在までマスコミが一貫して主張している事があります。「貧富の差が広がる」ぶっちゃければ「貧困層に属する人が増える」っていう指摘です。
 で、バブル期も、デフレ期もだいたい実態はそのとおりで、「地価は右肩上がり」にかわる新たな神話になっている気がしますね。小泉政権は列島改造に変わってこの神話を「痛みに耐える」と言い換えて強化している訳ですが(笑)。

 もう一つ神話がありました。「ビューロクラシー/テクノクラシーは悪である」って奴ですね。

 近代化によって経済テクノクラートが「まともに」発達していれば、それなりの対応も取れたかもしれませんが、日本政府では少なくともバブルの頃以降は制度的にアンチテクノクラシー的な姿勢が定着していたと思います。一部を除いて技術系テクノクラートの排除はとっくに進んでましたしね。大蔵省解体も意思決定過程からのテクノクラート排除が経済部門にも及んだだけのような気がします。

 テクノクラシーは必要だから政府部門でも非政府部門でも発達するのであって、うまく発達させれば有用だけれど下手に発達すると害をなす訳です。しかし、我が政府もマスコミも共通して「テクノクラシー自体を悪と見なしている」様に見えます。
 ビューロクラシーの弊害を避けるための非ピラミッド型組織の提案を見ると、構成員が優秀なテクノクラートである事を前提としていたりしますね。アメリカなら優秀なテクノクラートを外部からとってくれば良いのですが、我が国の社会ではピラミッド型時代に育成された人材がつきた時点で困難に直面しそうです。

 経済テクノクラートから見れば「問題があるっていう指摘は正しいが、指摘される問題点が問題の本質ではない」とか、「提案としての対策が珍妙」ってのが横行するのが愚民呼ばわりの理由なのでしょうか....
 それでも、国民は嫌でも責任を取らざるを得ません。その代表や扇動者の責任は追求する意義があっても、「愚民」という言葉遣いは生産的でないような気がします。
bewaad氏はそのへん違う立場のような気がしますが....細部と言って軽視してしまうとアンチテクノクラシーを加速していく気がします。

bewaad (2005-10-03 03:21)

>vicinityさん
9/25に紹介したブラインダーらの考えですと、グリーンスパン流でいくならバブルは意図的に破裂させるものではない、ということになろうかと存じます。

bewaad (2005-10-03 03:26)

>kumakuma1967さん
バブル期の「貧困」は多くが相対的なもので、増えたパイの取り分が少ないというものですが、現在の「貧困」は多くが絶対的なもので、減ったパイの取り分を争っている状況なんですけど、そのあたりデフレも悪いがバブルも悪いといっしょくたにする報道はいかがなものかと思います。しかもバブル期もすべてがバブルだったわけではないというのに・・・。

愚民云々は気をつけたいと思います。ご理解いただいていると思いますが、自分だって専門外のことは「愚民」なわけで(専門もそうならないようやらなければならないことは多いですが)、ヒトの情報処理能力に限界があることを嘆いても仕方がないと思っています。

Hicksian (2005-10-03 07:43)

コメントのタイミングがずれてるかもしれませんが(9/25時点で書き込むべきだった)、vicinityさんとbewaadさんのやり取りにかこつけて。macroblogで紹介されてたブラインダーらの見解(論文)がネットで読めるようになってます。http://www.kc.frb.org/PUBLICAT/SYMPOS/2005/pdf/BlinderReis.paper.0804.pdf

紹介しときながらなんですが私はまだ読んでません。なんせ100ページ近くありますから(文字が大きいんで分量的にはそれほどでもないんでしょうが、あいにく暇がなくて・・・と言い訳してみたりorz)。

bewaad (2005-10-04 06:15)

Happy Newsみたいにどこかに翻訳が掲載されたらいいんですけどね(笑。他力本願です)。

ちなみにこのエントリ、最初はHicksianさんの強迫観念のエントリにからめようと思っていたのですが、書いているうちに脱線してしまい上記の次第となっております。

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デフレ脱却のためにリフレーション政策を採用すべきかどうかを巡っていろいろ議論があります。ブログでは、http://bewaad.com/20051002.html などが、包括的な議論になっています。

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