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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-11-02

[politics][WWW]F尺度測定改訂版

cloudyさんがF尺度測定につき、Javascriptのバグフィックス版を公開されています。どのようなバグフィックスかの説明等、blogにて関連エントリも立てられていますので、感謝の言葉などはぜひそちらにお願いします。

#遅ればせながら、cloudyさんblog開設おめでとうございます。

[politics]21世紀のマーケッターは彼(女)らをB層と名付けた

不勉強で恥ずかしい限りなのですが、次のテキストを読むまで「ルンペン」の語源を知りませんでした。

マルクスは『フランスにおける階級闘争』において、客観的にもっとも収奪されていながら、主観的に彼らを収奪する体制イデオロギーにもっとも深く親和している階層を「ルンペン・プロレタリアート」と呼んだ。
レーニンは『帝国主義』において、自らは収奪されている労働者でありながら、植民地住民からの収奪の余沢に浴しているせいで、資本主義イデオロギーを支配階級以上に深く内面化してしまった社会階層を「ブルジョワ的プロレタリアート」と呼んだ。
マルクス、レーニンのような天才でさえ階級理論との不整合にてこずって「別のカテゴリー」を作ってそこにねじ込まなければならなかった社会階層に似たものが現在の日本に発生しているのかも知れない。
21世紀の社会理論家たちは彼らを何と名づけることになるのだろうか。

「「下流生活者」たち」(@内田樹の研究室11/1付)

ボナパルティズムを持ち出して小泉政権を語ろうとした割にはうかつな話なのですが、遅ればせながらぐぐってみても、なぜルンペン・プロレタリアートたちがナポレオン1世ないし3世の支持基盤の1つとなったのか、その分析は見つかりませんでした。閉塞感を切り開く可能性を見出したが故なのか、寄る辺を失った身として帰属先を見出したが故なのか、そのぐらいしかwebmasterには思いつかないのですが。

といってこれでは不勉強であるとのみ公にすることで、それこそチラシの裏に書けというレベルにとどまってしまう(いつもそうかも・・・)ので、「ルンペン・プロレタリアート」をぐぐる中で見つけた興味深いページを紹介いたします(webmaster注:強調は原文によります)。

ここには、小泉総理と若い層が「真ん中」の層をサンドイッチにして「文化大革命」をしかけている、という新鮮な構図が。

「◆政局マニア系◆ フリーターと新しい自民党との革命的可能性(1)」(@竹中平蔵 公式ウェブサイト: とてもマニア〜なコーナー10/29付)

フリーターこそ終身雇用!!雇用概念の消滅!!

これこそ、一般常識を180度ひっくりかえす革命的発想といえるでしょう。これなら確かに、フリーターが自民党を支持してもおかしくない。

マルクス・エンゲルス「共産党宣言」の「ルンペン・プロレタリアート階級」観的偏見の遺伝子を引継いだ「フリーター=負け組」論で思考停止に陥りつつ、自らは規制やみえざる障壁で身分を守られ実力以上の生活水準を謳歌している「労働貴族」は、「雇用概念の消滅」という表現におののくことでしょう!

近い将来、新しい自民党は以下のような「宣言」(DAS MANIFEST)を出す日が来るかもしれません。

「フリーターは、『夢』以外に失うものを持たない。彼らが獲得するものは『成功』である。全国のフリーターよ、自由民主党のもとに結集しよう!」

「◆政局マニア系◆ フリーターと新しい自民党との革命的可能性(2)」(@竹中平蔵 公式ウェブサイト: とてもマニア〜なコーナー10/30付)

サイト名からご賢察いただけるとおり、竹中大臣公式サイト中のスタッフが運営しているblogからの引用でしたが、さすがに大臣自身が目を通し、OKを出したものだとは信じたくないです・・・。

#目を通していればB層問題で懲りた彼がOKを出すはずはないと思いますが、そういう算盤勘定でなく信条として違うと言ってほしい・・・。

[politics]続・第三次小泉改造内閣発足 その1:ご紹介を受けて

昨日のエントリをfinalventさんに取り上げていただいたのですが、そこであわせて取り上げられているessaさんのエントリ小谷野先生のエントリ、いずれも読んでよかったと思うものですが、若干異論を挟みたい部分があります。まずはessaさんから。

二階俊博経産相のような微妙な人事は前原さんにはできないだろう。対中強硬派を外相と官房長官に置いて、経産省に親中派。ひとつは親中派という「間違った」人も使える所に使ってしまおうということ思う。それと、世論が親中に傾くなら、そちらへ行ってもいいということで、それが福田さんを閣外に置いた意味でもある。

あくまでwebmasterの個人的観測ですが、おそらく小泉総理にとって外交問題のプライオリティというのは相当低くて、親中派を「間違った」人だとは思っていないでしょう。二階経済産業大臣は、衆・郵政特委の委員長として郵政民営化に尽力したことで評価がなされ、親中派であることなどそれに比べればあまりにも些細な話ではないかと思われます。

#外交問題を重視しているなら、田中真紀子外務大臣なんて人事があり得るはずもなく。

おそらく中国・南北朝鮮への姿勢をもって小泉総理を評価しようとしている人々がその行動に時として戸惑うのは、彼(女)らのそれら諸国への思いに比べれば小泉総理の思いはあまりにも軽いということがわかっていないからだとwebmasterは考えています。小泉総理にとってその行動原理である友敵関係にたまたまはまったからこそそれら諸国に対して強く出ているだけで(はまることとなったきっかけは靖国問題でしょうが)、つまりは型どおりの行動をとっているだけなのですが、そこから意図を逆算して過大評価になっているのでしょう。靖国問題以外では、小泉総理にとってそれら諸国はどうでもいい存在に近いのではないでしょうか。

essaさんのエントリからはもう一点。

小泉さんは、完全に来年で引退する気なのだろう。

だから、スクリプトというかバッチプログラムを仕掛けて、後のことは全て自動実行するようにした。これで一年仕事をさせれば、おのずと答えが出る。小泉さんはそれを見守るだけで、干渉する気はない。次の人が自分の路線を継承しようが逆を向こうが関係ない。「この期末試験で一番成績のいい人が次をやってくれ」という遺言だ。

スクリプト説には同意なのですが、路線の継承には大いにこだわるとwebmasterは見ています。かねてから自民党をぶち壊すと公言してきた小泉総理ですから、ここでいう自民党=かつての田中派から橋本派につらなるスタイルの復活はまったく許す気がないでしょう。小泉総理にとって「構造改革」とはこのスタイルの撲滅にほかならず、その象徴が郵政三事業だったというのがwebmasterの観測です。

ではスクリプト説にどのような観点から同意しているかといえば、この「構造改革」路線を自動実行するようにしたというところからです。選挙直後に書いたように今回の総選挙、そしてその後の民主党の路線変更により、政権交代したところで大差ない、ないしはより先鋭的な路線であることは揺るぎなさそうになりました(その結果はろくでもないことになりそうですが)。

小泉総理はanima politikosにしては珍しく帰属集団への思いが薄い人ですから、この路線さえ守られるなら自民党はもちろんのこと、森派や「小泉チルドレン」だってどうなってもかまわないと考えているでしょう。民主党を含め「構造改革」路線がマジョリティとなった今、この路線への唯一と言ってよい脅威は高い人気を獲得できる政治家が、その人気を利用して路線変更を図ることだけです。

人気が低ければ低いほど「構造改革」路線に純化せざるを得ない枠組みが確立した今となっては、そうした路線変更を可能とする人気を獲得する可能性のある政治家=安倍官房長官こそが最大の脅威ですし、それほどの一般受けはしなさそうな経歴を政府系金融機関改革・増税を含む財政構造改革で補って次を襲うであろう政治家=谷垣財務大臣こそがもっとも望ましい後継者だとwebmasterは小泉総理の心中を忖度しています。

続いて小谷野先生のエントリから。

私が「官房長官をやらせればいい」と書いた安倍晋三がホントに官房長官になった。

しかしこれを「次期総理へ向けての抜擢」と見るべきではないだろう。官房長官は、毎日国民の目にさらされ、瞬時の判断を要求される職掌だから、二、三ヶ月内に、安倍が「頭が悪い」ということが多くの国民に印象づけられ、安倍の次期総理待望論はしぼむだろう。つまり謀略人事である。

安倍官房長官は次期総理の可能性を低めるための人事という見方は昨日示したように同じなのですが、ご指摘のような径路を通じてのものではないでしょう。なぜなら、そのような径路が存在するなら今もなお小泉総理の人気が高い理由が説明できないじゃないですか(笑)。

[politics][economy][BOJ]続・第三次小泉改造内閣発足 その2:竹中大臣は更迭?

与謝野経済財政・金融担当相は1日の閣議後会見で、日銀が量的緩和政策の解除の可能性について「06年度にかけて高まっていく」とのリポートを出したことについて、「政府としてとやかく注文をつける立場にない」と述べ、来年にも見込まれる解除を容認する考えを示した。「頑固なデフレが続いている」と解除を牽制(けんせい)し続けてきた竹中前担当相と正反対の姿勢を示したことになる。

朝日「与謝野経財相、量的緩和解除を容認 日銀政策は注視」

竹中大臣の総務大臣への横滑りについては、昨日は出世であると受け止めて論じたのですが、実は小泉政権内でもっとも親リフレである竹中大臣をマクロ経済担当から外す、というのが最大の目的だったりして(笑・・・えませんねぇ)。

#引用記事中の日銀のリポートについては、すでにドラめもんさんが詳細にご紹介(11/1付)ですので、そちらをご覧いただければ幸いです。

[economy][government][politics]週刊東洋経済2005/11/5号

なかなか面白い記事が並んでいました。特に気になったものを以下ピックアップしてみます。

土居丈朗「一般財源化では地方に春はこない」(p11)

国と地方の税財政改革である三位一体改革に関連して、中央教育審議会は義務教育費国庫負担制度を維持する答申を打ち出した。(略)地方6団体は、文部科学省のひも付きの補助金である義務教育費国庫負担金を削減し、使途が自由に決められる一般財源(地方税や地方交付税)に振り替えれば地方分権が促されるというが、地方分権に対する勝手な妄想にすぎない。

そもそも、補助金の対象である義務教育費は、自治体が義務的に支出を強いられるものだ。その財源が一般財源化されて自由にできるというのは勘違いだ。(略)税源移譲で地方税収が増加するとなると主に都市部では税収増となるが、大半の地方部の自治体では収支が悪化する。税収増よりも削減される国庫負担金の額が多いからだが、それでも、地方側が国庫負担金削減を強弁できるのは、財源を地方交付税に依存しようとしているからだ。

(略)

本来、義務教育とは国が最低限保障すべきナショナルミニマムに属する行政サービスである。(略)三位一体改革は、3兆円規模の税源移譲のためにはどの補助金を削減すれば達成できるか、という発想で国から地方自治体への補助金の要不要を決めようとしている。極言すれば、地方にとって必要性は低いが税源移譲に役立たない補助金は温存され、地方にとって重要でも税源移譲に役立つ補助金は真っ先に削減対象にしようとしている。国と地方のナショナルミニマムの観点を考えれば、義務教育費国庫負担金は本来削減対象にすべきでないのに、税源移譲の生け贄として、最優先で削減されようとしている。

だから、義務教育費国庫負担金を削減し一般財源化すれば地方分権の春が来る、とはとてもいえない。(後略)

三位一体がらみでは珍しい(笑)まっとうな意見です。ちなみに何がまっとうかと言えば、まず税源移譲額ありきという部分。義務教育費国庫負担金といっても、今回の議論の対象はあくまで中学校部分に限ったもので、小学校については税源移譲対象には挙げられていない(webmaster注:「第二期」に求めるとされています)のが何よりの証拠です。小学校まで入れたら、それだけで2.5兆円になってしまって他の補助金の多くが対象外になってしまうから、という以外の理由があったら教えていただきたいものです。

でも、今の雰囲気では義務教育費国庫負担金は税源移譲対象になるでしょう、多分。大臣も変わりましたし。財源は当然、指摘のとおり地方交付税でしょう。

「今週の気になる数字/10.7%‐完全失業率を大幅に上回る潜在失業率(05年4〜6月期)」(p27)

四半期ごとに公表される同調査(webmaster注:労働力調査)の詳細結果を見ると、今年4〜6月期平均で就業を希望している非労働力人口は、同期間の完全失業者299万人より170万人多い469万人。このうち勤務時間や賃金、勤務地などの面で「適当な仕事がありそうにない」という理由から求職活動をしなかった人は175万人で、しかもうち70万人は「適当な仕事があればすぐに就ける」という状況にある。

こうした潜在的な失業者を含む「潜在失業率」を試算すると、「就職希望者」全員を算入した広義のケースで完全失業率(4.5%)を6.2ポイント上回る10.7%。「適当な仕事があればすぐに仕事に就ける」人を参入(ママ)した狭義のケースでも、1ポイント高い5.5%となる。(後略)

鍋象さんの作業を受け継いで行っている「真の失業率」試算(直近は9月分・第3四半期)と同じ問題意識による指摘ではないかと。ちなみにwebmasterの試算では、第3四半期の「真の失業率」は8.9%でした。

「座談会 中堅・若手公務員たちの"本音"トーク/縦割りで改革論議もタブー/住民への情報発信も不足」(pp41-43)

河田(webmaster注:国土交通省総合政策局交通計画課専門官) 僕が直接担当しているわけではないですが、まさに今、うちの役所の道路局が関係する道路特定財源の問題が出ているじゃないですか。(略)それこそ、バスでも、路面電車でも何でもいいんですが、お年寄りになっても使えるようなものにお金を使ったり、社会保障の分野に使ってもいいんじゃないのと、普通思いますよね。そういった議論すらタブーみたいな感じになっている。ある種、軍隊みたいなところを感じます。

道路を作るために特別に徴税しているのが道路特定財源なのですから、道路を作る必要がなくなったら廃止するのが筋だと思います。なんでわざわざ財務省に塩を送るようなことをいうのやら(笑)。構造改革原理主義者の通弊として、やたらと財政危機を深刻に捉えているということがありますが、要求側と査定側の議論を通じてどちらがベターかを考えるべきところ、要求側と査定側が同じ立場に立ってその余の観点を切り捨てるなら、それこそ官僚独裁以外の何者でもないという気がするのですが、彼(女)らの「改革」の狙いってそういうもの?

野口悠紀雄「通説粉砕 WOW! WOW! 経済塾/第1回 財政赤字を家計の借金にたとえるのは間違いだ」(pp120,121)

国債発行に関して重要なことは、「年収600万円のサラリーマンが毎年400万円の借金をするようなもの」と騒いだり、「国債発行額を30兆円以内に抑える」という類の公約をすることではない。

必要な第一は、国債で調達された資金が、将来の日本人の所得を増やすような目的に使われているかどうかを監視することだ。(略)

そして第二には、野放図な国債発行を防止するための制度的裏づけを確保することだ。とりわけ、日銀引受けの国債発行を絶対に認めないことである。「財政規律の確保」という目的を達成するために本当に必要なことは何かを、われわれははっきりと認識する必要がある。

家計に例えるなら夫婦間の借金になると説く野口先生、「必要な第一」まではよかったのですが、「第二」に至ってあれまあという感じです。デフレは放置しておいてかまわないという所論の先生ですから、日銀による国債引受に抵抗があってもそれはそれで整合的なのですが、ファイナンスについて著書のある方がプライマリー市場だけを問題視してセカンダリーならいいと言わんばかりの主張はいかがなものかと。といいますか、そもそも現在だって満期を迎えた日銀保有国債は乗り換え、つまり償還に見合った額の引受をしているわけで、悠長なことを言っている場合ではありません。まさかご存じないなんてことはないですよね(笑)。

山口二郎「ポスト郵政民営化の政治課題/自民大勝で始まった新たな官僚支配」(pp126,127)

官僚や諮問会議が国民に無断で政策の根本をなす価値観の選択(webmaster注:社会保障費の対GDP比キャップ)を行い、選挙ではそれを隠蔽したうえで与党が巨大な多数を取り、その後に政策の全体像を示すというのは、民主主義の否定である。選挙では劇的な形で民意が表現され、与党は国民からの強い負託を得たはずであるが、現実には新しい形での官僚支配が始まっているのである。

(略)まず、民主党は小さな政府という同じレールの上で、どちらがより過激な数値目標を示すかなどという無意味な競争をやめるべきである。対案と政権構想は違う。当面の課題について中途半端な議員立法などをするより、経済財政諮問会議が示すのとは別の国の形を示すことに全力を傾注すべきではないか。(略)

ここに書いてあることだけ読めば一理あると思いますが、現在の状況を官僚支配と位置づけているところに認知的不協和回避の言い訳を感じざるを得ません。かつて山口先生は、日本を滅ぼす経世会支配といい、小泉首相は議院内閣制の運用に関して、旧来の常識を突き崩し、政策の実現に向けて内閣の凝集性を高めるという新たな仕組みを作ろうとしている。政策内容は別にして、小泉首相の政権運営の手法には賛意を評(ママ)したい小泉総理の手法を評価してきたわけで、ここで述べられている「新しい形での官僚支配」とは、実は官僚支配でも何でもなく山口先生がかつて示した「改革」の行き着いた先なのです。

今なお「改革」を支持するのであれば、以前のように「政策内容は別にして、小泉首相の政権運営の手法には賛意を表」すべきですし(社会保障費の対GDP比キャップなど、選挙以前からさんざん諮問会議で取り上げてきた話題です。選挙で「隠蔽」されたように見えたとしたら、それはメディアその他の責任に帰すべきです)、小泉総理の手法を難じるのであれば、そもそも「改革」を相対化、つまり小泉総理の手法を悪いないし失敗した「改革」であるとしてどこかに真の「改革」があるはずという思考から脱却しなければならないでしょう。そうでないと、今度は「日本を滅ぼす小泉支配」打倒のために次なる改革者=次代の敵を呼び込むだけです。遼を滅ぼすために手を結んだ金に遷都を強いられ、金を滅ぼすために手を結んだモンゴルに滅ぼされた宋を思い起こさせますなぁ・・・。

ポール・モルティマリー「改革に消極的なEU国民/ユーロ高再来で景気後退」(pp136,137)

03年の金融緩和過程で、ECB(欧州中央銀行)の利下げは不十分だった。景気回復が軌道に乗っていないにもかかわらず、インフレ懸念からECBは利上げをほのめかした。債券市場は反応したが、利上げは行われなかった。その後も景気回復の兆しが出るたびに、ECBは利上げを示唆し、景況感を悪化させた。これが、EUが低成長から抜け出せない理由の一つだ。

9・11テロの後の米Fed(連邦準備制度)や日本銀行のように、ECBも実質金利を非常に低い水準にすべきだった。しかし、すでに手遅れだ。債券市場は利上げを織り込んでいるが、コアインフレ率が1.3%と低い状況で、継続的な利上げに踏み切るとは考えにくい。利上げをするにしても25ベーシスポイントずつ、2回のみという小幅なものにとどまるのではないか。

中期的にも欧州経済の見通しは暗い。根源的な理由は構造問題に進展が見られないことだ。成長率が低く、どの国でも国民は不満を募らせている。一方、低成長ゆえに、構造改革は必要以上の痛みを伴ってしまう。構造改革のペースの遅さが、問題の根源にある。その解決には成長の加速が不可欠だが、構造改革が進んでいないために成長も加速していない。それなのにEU国民は強力な政治的指導者を拒否している。まさにジレンマである。

ヨーロッパも大変です。インフレ率が1.3%なのにさらに利上げするなんていうのは自殺行為にしか見えません。最適通貨圏ではないのではという通貨統合の理論的問題以前の問題でしょう、これは。しかし通貨統合=金融政策統合といい、その条件としての財政政策の制約といい、EUってのはヨーロッパにとっての古き良き時代=19世紀への復古主義運動なのでは、という気もしてきます。であるならイギリスが「栄光ある孤立」を守るのもまた必然ということで(笑)。

しかしこの筆者、イングランド銀行OBで、かつこれだけECBのダメさがわかっているというのに、なんで構造改革が処方箋だとしてしまうのでしょうか。

本日のツッコミ(全19件) [ツッコミを入れる]
cloudy (2005-11-02 05:56)

紹介いただきありがとうございます。
素人なりにこの分野での自分の比較優位を模索しつつ書いてみたいと思います。

Baatarism (2005-11-02 10:11)

「構造改革」路線を脅かす可能性としては、安倍よりも麻生の方が上だと思うのですが。
リフレ派としては麻生首相は歓迎すべきなのでしょうか?

すなふきん (2005-11-02 10:50)

麻生さんはケインジアンだとか聞いたんですが、本当ですか?

truly_false (2005-11-02 11:43)

内田センセは訝しんでおられますが、そんなに珍しいことでしょうか。その昔、都知事選において、親は憲法学者で高文試験委員の功績が認められた勅撰の貴族院議員で、みずからもハーレーを乗り回していた美濃部亮吉を支持し、零落商家の出身で、苦学して日大の夜学に通い高文試験に合格し、警視総監まで登りつめた秦野章を、“給仕上がりが”と蔑んだ東京都民というケースがあります。つまりは、“人はパンのみに生くるにあらず”ってことでしょうか。

whitematsutake (2005-11-02 14:10)

リフレ派のものです。竹中大臣が親リフレ派と書かれておりますが、そうだったのですか?個人的にはとてもそのようには思えないのですが。そして与謝野経済財政・金融担当大臣は、やはりリフレ派からすると、残念人事ということなのでしょうか?

Baatarism (2005-11-02 14:51)

与謝野氏については、本人のホームページにこんな文章がありますね。インフレターゲット反対なだけでなく、自分の頭でインフレターゲット実現の可能性を考えることもせず、日銀の言いなりのようです。w
http://www.yosano.gr.jp/article/koizumi2002074.html
http://www.yosano.gr.jp/policy/keizaizyousei.html

いなば (2005-11-02 16:22)

その辺はボナパルティズム研究の基本ですな。WEBはともかくまともな文献を読めば一応の分析はあるでしょう。古いところではアレントの『全体主義の起源2 帝国主義』てのもありますが。

sunandsun (2005-11-02 23:06)

>小泉総理にとって「構造改革」とはこのスタイルの撲滅にほかならず、その象徴が郵政三事業だったというのがwebmasterの観測です
>小泉総理にとって外交問題のプライオリティというのは相当低く
同感ですw。ただ、外政とその民主的統制は、日本において難しいという私個人の観測もあります。加えて、高坂さんは、日本が国際政治においてリアリズムを無くしてしまう事に、軽い失望感があったようです。

ニートそのものに関しては、言葉に内実する意味と比べて、現状が多様化していて、一概に語る事はできないと思います。しかし、ニートを貧困層である面を捉えるならば、サミュエル・ジョンソン氏の「愛国心は悪漢の最後の避難場所である」(だったっけ(苦笑))という警句が、今尚それなりの説明力を有していると考えています。私は、貧困層=悪漢という図式は成立するとは考えていません。ただ、貧困が犯罪率の増加を上げる事も事実ですから、その面への配慮は忘れるべきではないと思います。

bewaad (2005-11-03 08:26)

>cloudyさん
比較優位の成果、きちんと勉強させていただきたいと思います。

bewaad (2005-11-03 08:29)

>Baatarismさん、すなふきんさん
麻生大臣は行革やメディア関係ではなかなかいい発現をしていると思いますが、経済関係ではにわかにスタンスを思い出せません。構造改革を信じ込むタイプではないと思いますが。

bewaad (2005-11-03 08:32)

>truly_falseさん
人気不足に悩んだエリート家系佐藤栄作と今太閤田中角栄のようなパターンもありますから、外部の状況やキャラクタにもよる部分があるのだろうと思います。

bewaad (2005-11-03 08:35)

>whitematsutakeさん
デフレを明確に克服すべき対象としていること、そのためには日銀の積極的な金融緩和が求められるとしていること、それらを一貫して主張していること、以上から竹中大臣はリフレ政策に理解があることは間違いないでしょう。問題は、他の政策にも理解があることで(笑)。参考までに「エコノミスト・ミシュラン」では、政策プロモーター、つまり独自のスタンスはないと分類されていました。

bewaad (2005-11-03 08:37)

>Baatarismさん
日銀以上に総理の意向を尊重するでしょうから、仮に総理が反日銀となれば反日銀になると思います。問題はその仮定があまりにも現実的でないことだけで(笑)。

bewaad (2005-11-03 08:38)

>稲葉先生
ご教示ありがとうございます。自らの基礎知識のなさには嫌気がさしますが、そうはいっても始まらないので少しずつでも勉強していきたいと思います。

bewaad (2005-11-03 08:49)

>sunandsunさん
民主政においては外交の難しさは日本に限った話でないと思います。

ニートについては、リフレ派では若年失業・無業問題が過半であるというのが共通認識で、先日の本田先生の論説もその傍証ではないかと。

韓流好きなリフレ派 (2005-11-03 10:14)

僕のまわりにも竹中支持・竹中利用できる派などいろんな人いますけど、僕は一貫して懐疑度100%で眺めてます。マスターがいみじくも(日本語これでいいかな?)冗談以上で指摘したように、他の政策に理解ありまくりなために、景気対策もなんでもオールマイティといってた与党の郵政民営化政策への「理解」をかわれての転身でしょう。その意味ではこの人事は「適材適所」です。苦笑。

bewaad (2005-11-04 03:24)

だったら竹中外務大臣の可能性もあったということですね(笑)。

ドラめもん (2005-11-14 12:01)

竹中大臣のWeb、当該秘書のコーナーをリニューアルするという名目でトップページからのリンクを削除しましたね。なんだかな〜。

bewaad (2005-11-15 08:31)

そういう対応となると、やっぱり竹中大臣は事前には見てなかったんでしょうねぇ、アレ。

本日のTrackBacks(全8件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20051102]

昨晩小泉首相の記者会見を見ていましたが、外務大臣と官房長官に「対中朝韓強硬派」の双璧、麻生太郎氏と安倍晋三氏を起用したところが「保守反動右翼・軍国主義的」ブロガー(私もそうなるのかな?)の間では大喝采を博しています。一方、一部のブロガーの間で大顰蹙を買..

竹中大臣もバカなスタッフ抱えて大変だな。 今月は月刊現代で古傷ほじられるし。 http://bewaad.com/20051102.html#p02

もーおバカ過ぎて笑いが止まらなくなってきた。 お腹痛い。 http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/20051101/p1 資料。 http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/keikaku/genderhyougen.pdf ニート分析。http://jinjibu.jp/GuestSmnrArticle.php?act=dtl&id=41 「下流」がらみ..

bewaad institute@kasumigaseki21世紀のマーケッターは彼(女)らをB層と名付けたより 内田樹の研究室「下流生活者」たち >人道主義も左翼的社会理論も、ふたつながらに影響力を失ってしまい、かつ「下」が消費文化やグローバリズム・イデオロギーの「主導者」であるとい..

第三次小泉内閣がスタートして二日が過ぎた。ブログ界隈では早くも秀逸な分析がたくさ...

さて、先日[http://bewaad.com/20051102.html#p02:title=bewaadさんが取り上げていた]竹中平蔵ブレーンによる[http://takenakaheizo.cocolog-nifty.com/mania/2005/10/post_6c27.html:title=「革命的フリーター論」]を、コメント欄でのすなふきんさんの指摘でいまさらな..

(竹中)フリーターこそ終身雇用『夢』以外に失うものはない獲得するものは『成功』だ

竹中大臣の公式ウェブサイトで、フリーターを推奨しています。◆政局マニア系◆ フリーターと新しい自民党との革命的可能性(2)http://takenakaheizo.cocolog-nifty.com/mania/2005/10/post_c9e1.htmlでもねぇ、、、フリーター と フリーランサー(フリーランス) ...


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