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2005-11-11

[science][politics]BSE問題における「政治的配慮」とは

先日妥当ではと評した食品安全委員会プリオン専門調査会答申(webmaster注:先日取り上げたのはその原案でしたが)ですが、中西先生が不当であると評していらっしゃいます。もちろんリスク評価についてwebmasterが中西先生よりまっとうな判断ができるなどとは想像もつきませんが、どういう観点から見るかでこの評価の違いが出たかと考えれば、実はBSE問題について語られる政治的配慮とは世の中のそれとは全く逆ではないかという仮説が成り立ちます。無粋を承知で全く逆とは何かを書けば、アメリカ産牛肉は危険なのに圧力をうけ輸入再開に踏み切るという配慮ではなく、アメリカ産牛肉はそれほど危険でないにもかかわらずいかにも危険そうだといわなければならない配慮ということです。

かねてからwebmasterも認めることですが、アメリカの特定危険部位除去は日本のそれに比べて不十分ですし、アメリカでは日本のように全頭検査はしていませんし、検査を行う一部(月齢20ヶ月以上)に該当するかどうかの見極めも万全とは言いがたいものです。にもかかわらず上記の仮説を導き出した所以は、次の中西先生の指摘につきます(中西先生も、アメリカ産牛肉が日本産牛肉よりリスクが高いことは無論認めていらっしゃいます、というか、この問題に興味を持っていながらそのことを否定する人はいないでしょう)。

では、リスクはどのくらいか? それを簡単に実感できる事実がある。30ヶ月齢以下については、日本への輸入肉のような危険部位除去を行わず、また20ヶ月齢以下という条件のない牛肉を食べている米国の状況を見ることである。

米国からの輸入牛肉で、日本に100年に1人の変異型クロイツフェルトヤコブ病の患者が出るリスクがあったとしよう。とすれば、牛肉の消費が日本よりはるかに多い米国では小さく見ても、2000年代初頭から始まる100年間に1000人強の患者が出るはずである。もちろん、こんなこと起きてはいない。申し訳ないような気もするが、米国人が食べていることは、1000倍以上の検出力で試験してもらっているようなものなのである。

このような状況であるが、調査会が独自の見解でリスクが大きいと考えるとすれば、それはそれで耳を傾けたい。しかし、調査会の今回の結論が、もし「評価できない」というのであれば(実はここがはっきりしないのだが)、それは重大な問題だと思う。

(略)

厳しいことだが、どんなにデータが少なくとも、リスク評価はある結論を出さねばならないのである。したがって、もし、調査会としてリスクについて判断できないという見解ならば、一刻も早く解散し、新しい調査会を組織すべきではないだろうか。(以上毎日新聞)

雑感323-2005.11.8「米国輸入牛肉のリスク:プリオン専門調査会は解散した方がいい」

さてプリオン専門調査会の判断ですが、一定の前提(=アメリカでの特定危険部位除去がきちんと行われる等)でリスクは大差ないと評価し、ただその前提の蓋然性を評価していないので、結果においてリスクを評価していないわけです。よって、リスクを評価しろと言われたのにそのミッションを果たさないようでは存在価値がない、という中西先生の批判はしごくまっとうです。日本と全く同じではないけどそれに近いことをすればリスクも近いレベルにとどまるでしょう(乱暴な要約で失礼します)、ということぐらい誰でもいえるだろうと。

・・・って、お前は妥当といったろうということですが、では中西先生のようなリスク評価がなされたとして、それが社会的に受け入れられたかと考えれば、かえって混乱を招くだけだったように思えるからです。結局のところ、アメリカ産牛肉についてのリスク評価としては、素人考えとしては「日本産牛肉よりもはるかに大きいが、にしても大したものではない」というあたりではないだろうかと思うのですが、前半がある限り輸入再開に反対する人は一定の支持を集めるでしょうし、かといって後半がある限り輸入再開を拒み続ける理屈が立ちません。

ましてプリオン専門委員会は合議体で、一部委員にはアメリカ産牛肉の輸入再開に反対する者もいます(その主張の是非をwebmasterが判断できるものではないことはお断りします。つまり、輸入再開すべきでないというのは正しいかもしれません)。それら委員はプリオン専門委員会の議事運営や結論を批判しているわけですが、中西先生のような判断を多数決で採用すれば、そうした批判はさらに強いものとなるとの想像は容易です。食品安全委員会のサイトを見ればご理解いただけるように、同委員会はBSE問題のみを取り扱っているものではありません。BSE問題を契機に他の分野での判断にも疑いの目を向けられるようになるのはできるだけ避けたいと考えても自然でしょう。

となれば、アメリカ産牛肉は危険だと宣言してある種の身の証を立てた上で、でもその危険性を回避する策がきちんと講じられるなら大丈夫だから、あとは政府の責任でその回避策をきちんと確保してね、というロジックを採用するのはある意味合理的です。本来ならアメリカ産牛肉は危険だなどと言われれば波風が立ちかねませんが、今は輸入再開の方がよほど重要でしょうから、それで再開されるならどうでもいい話でしょう。他方で危険だとは言っているわけで、危険なものを危険でないかのように判断したという批判は回避できます。

そうした判断の根っこには、おそらく専門委員会の多数派は中西先生と同様のリスク評価をしていたということがあるのではないかとwebmasterは思います。本当に危険なものを危険でないというのは絶対に拒否するでしょうけれど、それほど危険でないものを危険といったところで、だけど輸入再開できる方法があるのですよとしておけば、実際にはなんの問題もないじゃないかと。中西先生は環境ホルモン問題などの教訓として、危険なものを危険でないというのと同じぐらい危険でないものを危険というのは不適当だとお考えでしょうし、それが正しい姿勢であるのは言うまでもないのですが、にしても、と。

もちろん曲学阿世かと問えばそのとおりというのが答えになるわけですが、そのような配慮をしたくなった気持ちはわかるような気がするのです。

#今日は本業が多忙ゆえ、エントリのみで失礼させていただきます。コメントいただいておきながら恐縮ですが、時間ができたら何がしかの対応はいたしますので。

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米国産牛肉輸入問題はなにやら愉快な方向に向かいだした。このまま行くと、輸入がOKになって店頭に並んでも誰も買わない事態になりそうだ。そうか、これが政府が考えているシナリオなのかと合点がいく。アメリカには輸入禁止を解いた事で顔が立つ。でも実際には売れない。..

11月4日、食品安全委員会主催で、 食品に関するリスクコミュニケーション(東京)- BSEと牛肉の安全性 - http://www.fsc.go.jp/koukan/risk171104/risk-tokyo171104.html が行われ、行って参りました。(資料は上記参照) フランスの原子力委員会でBSEを研究されていた..

■羊の炎症乳腺に異常プリオン ”牛の炎症部位”は大丈夫? 私がいつも勉強させていただいている農業情報研究所さんのサイトに、日本で全然報道されないネイチャー論文(11月4日)の新情報があります。 スクレイピーの羊の炎症をもつ乳腺に異常プリオン http://www.juno.dti...

■狂鹿病問題:鹿ハンターからヤコブ病26名発生 狂鹿病に感染した鹿の写真 http://www.cwd-info.org/index.php/fuseaction/resources.photos 10月24日の食品安全委員会で、北本哲之委員がこう発言しました。 「北米ではCWD(狂鹿病)が大発生、大・大問題となっていて、 ..

結論です。マックにお願いしたいこと。 こんな広告を出して欲しいのです。 『これか


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