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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2005-11-19

[economy]談合されても問題が少ない入札

今般の成田空港に関する談合をめぐり、山口浩さんが「比較的低コストでそこそこ有効な談合防止策に関する思いつき」と題して大変興味深いご提案をなさっています。それが何かはぜひともリンク先をご覧いただきたいのですが、その成否には次のような重要な前提が必要です。

原則に立ち返って、発注者のほうが強い、ということを思い出そう。本当に発注をやめたとして、より深刻な状態になるのは企業のほうのはずだ。これは一種のチキンレースといえる。勝ち負けはどちらが本気かで決まる。ならば発注側が「本気」でやればいいのだ。

「比較的低コストでそこそこ有効な談合防止策に関する思いつき」(@H-Yamaguchi.net11/18付)

仮に発注をやめて施設の整備ができない空港側が、発注がなくても他で食べていける等の要因がある企業よりも「より深刻な状態」になってしまえば、このご提案は成立しないからです。本件においていずれが「より深刻な状態」であるかはwebmasterにはわかりませんが、とにかく発注者側より受注者側が発注がないと困る状態であることが前提です。では別の方策はないのか考えてみましょう。

そもそもなぜ談合を行うのか、当然その方が受注者にとって得だからですが、どのように得かと整理するに当たっては囚人のジレンマが補助線として有用です。蛇足かもしれませんが、以前のエントリから囚人のジレンマとはどのようなものか念のために再掲します。

共犯二人がともに自白すれば二人とも懲役十年、どちらか一方が自白すれば自白した者は司法取引で懲役一年、しなかった者は改悛が認められないとして懲役二十年、どちらも自白しなければ証拠不十分で逮捕のきっかけとなった微罪のみが問われ懲役二年という状況(懲役の具体的年数には意味はありません)にあれば、相手が自白しようとしまいと自分は自白したほうが得(相手が自白するなら懲役二十年が十年に、自白しないなら懲役二年が一年になる)なので二人とも自白し、どちらも自白しなかった場合の二人とも懲役二年という両者をあわせ考えればベストの状態ではなく、二人とも懲役十年という結果になってしまうというのが囚人のジレンマです(。)

「バブル崩壊の知られざる後遺症」

これを談合に当てはめると次のような対応となります。

  • 両者が連絡をとりあって自白しないよう示し合わせて二人とも懲役二年になった場合=談合により高値で受注
  • 両者の連絡がとれずそれぞれにとっての合理的な判断で二人とも懲役十年になった場合=談合がなく安値で受注

#片方のみが自白したケースは談合破りでしょうか(笑)。

囚人のジレンマが成立するにはいかにお互いが疑心暗鬼になるかに依存して、典型には囚人ですからお互いを連絡が取れないよう隔離しておけばよく、それでめでたくそれぞれを懲役十年の刑に処することができるのですが‐競争入札でいえば、談合取締りが隔離と、安値での発注成立が懲役十年と同じ役回りになります‐、談合のケースでは受注側を囚人のように本当に隔離してしまうわけにもいかず、さらには実態として談合のやり方も高度化しているようで、なかなか「隔離」もきちんとするのは難しいといわざるを得ません。

ここで発想を逆転させてみます。談合すれば「懲役十年」が「懲役二年」になってしまうことが問題であるとするなら、談合しても「懲役二年」ではなくもっと長い刑期‐理想的には十年‐になるなら問題は相当程度解決可能です。ここで鍵となるのは「懲役二年」は入札という仕組みをとる以上、実は「懲役二年」ではなく「懲役○年」であり、必ず受注側が「二」や「三」といった札を入れて確定することになります。ここでできるだけ「十」に近い数字を札に書かせるインセンティブ設計をすれば、談合をこの世から消し去らなくても弊害は限りなく小さなものとなります。

とここまで書いておいてなんですが、実はそのようなインセンティブ設計は既存の入札にも組み込まれています。それは予定価格で、それ以上の価格では入札不成立とするものですが、囚人の例でいえばともにだんまりの場合には自主申告の懲役期間とするけれど、その申告期間が囚人には知らされていない「予定期間」より短かったら懲役十年にするようなものです。この場合、下手に短すぎる期間を申告すれば十年になってしまいますから、限りなく申告する期間は十年に近づいていくはずです‐「囚人には知らされていない」という条件が守られている限り。

よく官製談合といわれますが、この構造からそもそも官製でなければ談合は成立しないことがわかります。予定価格がわからなければいくら受注者側で示し合わせても入札できるとは限らないわけで、談合による超過利潤を享受するためには事前に予定価格を入手することが必須です。予定価格が入手できなければ、談合したところで入札価格は限りなく談合がない場合に札に書き込む価格に近づいていくのは、先の「予定期間」と同じメカニズムです。

官僚として申し上げるのは何ですが、ここで発注側が身を正せば良いという案は採らないほうが無難です。それができるならそもそも談合事件は起きないわけで、浜の真砂は尽きるとも世に談合の種は尽きまじ、やりたいと思えばできるならやる誘因は遍在しているのですからやる可能性は根絶できず、であるならやりたくてもできないようにするしかありません。

どうしたらできないようになるのか。答えは簡単、事前に決めなければ事前に知らせようもありません。「予定価格決定委員会」でも立ち上げて、入札が始まってから協議を開始し予定価格が決まったらそれを入札会場に伝えて開札するようにすれば、仮に談合があったところで「懲役十年」に極めて近い相場で価格は決定せざるを得ないでしょう。

#もちろん委員の買収防止など、現実に運用するにはそれなりの工夫が必要ですが。

ちなみに成田空港の件は6社での談合で、事実上それらしか受注できる能力がなかったので寡占状態だったわけですが、この手法はそうした場合でも有効です。入札は事前にスペックを公表して行われるので、供給量や製品差別化では競争できず、価格のみが唯一の変数となります。こうした条件下での寡占競争が行われた場合の結果(ベルトラン=ナッシュ均衡)は、完全競争市場での均衡価格=超過利潤ゼロとなりますので。つまり、「懲役十年」が短すぎるといった事態は起こらないのです。

[economy]JR西日本中間決算に見る安全性向上の損得

さる11/8、JR西日本が中間決算を発表したのですが、かつて福知山線事故に関連して次のようにwebmasterは仮説を立てたので、それを検証したいと思います‐JR西日本の中間決算が出たら取り上げなければと思っていたのが見逃していて、10日以上放置になってしまっていました。

さらに、これはまったくの憶測なのですが、以上のように安全性を向上させることのベネフィットが小さいことに比べ、そのためのコストが高すぎるのではないのでしょうか。企業にとって合理的な経営判断として、今のレベルの安全性にとどめているのだとすれば、そういう構造が背後にあることになります。それを是正しようとするなら人為的に、安全性を向上させたときのベネフィットを増加させるか、そのためのコストを負担するか、安全性が相対的に劣ることに対してコストを負荷するしかないのではないかと、webmasterは思うのです。

「福知山線事故について考えてみた(上)鉄道の安全性」

ここでいう「安全性を向上させることのベネフィット」は事故により生じた損失を避けられたという形で現れますから、逆に事故により生じた損失からどの程度かを推し量ることが可能です。具体的に見てみましょう。まずは直接のコストです。

特別損失「その他の損失」のうち、福知山線列車事故に伴う支出額は3,405百万円であります。また、今後事故に伴う補償などの支出が見込まれますが、これらの費用については、現時点では金額等を合理的に見積もることが困難であります。

平成18年3月期 個別中間財務諸表の概要(p30)

他方で売り上げ減少という逸失利益もまた費用としてカウントすべきですから、それを推計してみます。鉄道事業の概況は次のとおりです(単位は百万人キロ、10億円)。

年度200020012002200320042005上2005上×1.97(輸送人キロ)、2.01(運輸収入)
輸送人キロ52,58852,55152,64751,67452,14226,70252,602
運輸収入773.6772.7769.9752.0750.3379.5762.8

#ソースは中間決算及び2004年度年次報告書、今年度について年度計数を推計するための掛け目(輸送人キロについての1.97、運輸収入についての2.01)は、中間決算と年度決算の過去3年間の比率(2004年度は1.96と1.99、2003年度は1.97と2.02、2002年度は1.99と2.03)の算術平均値。

いずれをとっても前年度より改善が見込まれますが、どの程度の改善かの基準として、2004年度までの5年間で回帰式を導出して(xは2000年度=1とした場合の何年度目か)これまでの延長線上にある数値を計算すると次のとおりです。

回帰式R-squared6をxに代入して得られるy(a)2005上×1.97、2.01(再掲)(b)b-a
輸送人キロy = -176.9x + 528510.459451,79052,602812
運輸収入y = -6.73x + 783.890.8483743.5762.819.3

人キロ・収入ともに伸びていますが、トレンドからの乖離で見れば193億円の収入増があったことになります。

外部環境による改善ということも考えられますので同業他社(阪急、阪神、南海、近鉄)を見てみますと、中間決算を公表しているのは南海のみで、阪急阪神近鉄はまだ業績予想修正のみですが、それらは次のとおりです。

会社対前中間期売り上げ増備考
阪急1.9%持株会社連結ベース売上高。業績予想上方修正の理由として「阪急電鉄(株)における旅客運輸収入の増加」との記述あり。
阪神5.2%連結ベース売上高。業績予想下方修正の理由において特に鉄道事業についての言及なし。
南海0.1%鉄道事業営業収益。
近鉄9.7%単体ベース売上高。業績予想下方修正の理由において特に鉄道事業についての言及なし。

これらから鉄道輸送需要の伸びを推測するのは乱暴ですが、他にこれといった指標もないので算術平均をとれば4.2%増、他方でJR西日本の対前中間期の運輸収入伸び率は3,767億円から3,795億円で0.8%増ですから、その差3.4%ポイントを事故の影響による収入減と観念すれば130億円程度の逸失利益があったとも言えますし、きちんと比較できる南海のみを対照事例として考えるなら0.7%ポイント上回っており外部環境要因で運輸収入が伸びたわけではないとも言えます。

とあれこれ関連データを見るに、単なる山勘ではありますがやはり逸失利益は数十億のオーダーにとどまるような気がします。今後の補償など関連して生じ得る将来の費用を勘案しても、「安全性を向上させることのベネフィット」はキャッシュフローベースで1事故当たり200億円には届かないのではないでしょうか。

他方で「そのためのコスト」ですが、5月末発表の安全性向上計画ベースで4年間で600億円の増、その後増加させる方向で検討中とのことなので、1年当たり150億円以上のキャッシュフローが必要だということになります。

・・・やっぱり、そろばん勘定では安全性の向上は割に合わない可能性が高いのではないでしょうか。残念ながら。

[economy]アカロフ先生の講義録

kaikajiさんがこれから連載とのこと。英語論文を読めば内容はわかるとのことですが、怠惰なwebmasterとしては連載を大いに楽しみにさせていただきたいと思います。というのも、題材が次のようなものとのことですから。

こういった従来のマクロ経済学における'Missing Motivation'の典型例として、アカロフ氏は、「5つの中立性(neutrality)」に関する問題を挙げる。これは、各ミクロ経済主体の行動が政府の財政・金融政策などによって影響を受けない(経済政策はミクロ経済主体の行動に対し中立的である)ことを示す以下の5つの定理または仮説のことを指しており、いずれも新古典派的な政策的インプリケーションを導く理論的前提として重要な意味を持ってきた。

  1. リカードの等価定理
  2. フリードマンの恒常所得仮説
  3. M-M(Modigliani= Miller)定理
  4. 自然(失業)率仮説
  5. 合理的期待形成仮説

アカロフ氏は、これらの「中立性」に関する定理もしくは仮説は、実は個々の経済主体の「動機づけ」を考慮していないものだとして、その理論的脆弱さを批判する。そして、これまで「ミクロ的基礎付け」を欠いているといわれてきたケインズ経済学の伝統的な見解(「中立性」とは正反対の結論を見出す)こそ、このような「動機付け」に関する新しい理論的知見に整合的であるだとする。つまり、「ミクロ的基礎づけを書いているのは実はそっちのほうだ!」とケインジアンの立場から新古典派に「逆襲」するような内容になっているのだ。

「ケインズ経済学の逆襲!」(@梶ピエールのカリフォルニア日記。11/18付)(webmaster注:機種依存文字は変更してあります)

そもそもアカロフが啓蒙書において筆不精なのは人類にとって重大な損失だとwebmasterは思っていますので(クルーグマンやスティグリッツ並みにとは言いませんから書いてほしいなぁ・・・)、kaikajiさんの試みは知的遺産としての価値があります、とまで言い切ってみたいと思います。

本日のツッコミ(全19件) [ツッコミを入れる]
night_in_tunisia (2005-11-19 08:56)

>囚人のジレンマが成立するにはいかにお互いが疑心暗鬼になるかに依存して、典型には囚人ですからお互いを連絡が取れないよう隔離しておけばよく、

細かい突っ込みかもしれませんが、囚人のジレンマにおけるナッシュ均衡戦略は「支配戦略」なので隔離しようと何しようと相手の行動にかかわらず自白が有利な戦略になりますよ。

bewaad (2005-11-19 09:42)

ご指摘ありがとうございます。

最初はそのあたりもきちんと書こうかと思ったのですが(協議→裏切った場合の報復ルールでペイオフが変わるので、といった具合に)、迂遠かなぁと思って割愛してしまいました・・・といって、よくよく考えてみれば間違った形で略しちゃだめですね。ごめんなさい。

(2005-11-19 10:15)

night_in_tunisiaさんにあえて付け加えれば、業界の付き合いが長く続くことを考えれば、隔離されようがされまいが合理的な結論として談合を続けるという選択肢があります。参考↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9A%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E

もうお暇しようと思っていたのに釣られてしまいました。bewaadさんお上手なんだから。

鍋象 (2005-11-19 10:27)

「談合する=高値受注」というのがそもそもの問題意識で、本来の目的は安く受注してもらう事にあるわけで、「談合を抑止する」というのは手段の目的化じゃないかなと。
制度設計的には談合しようが何しようが、将来にわたって安定的に安く受注してもらえる仕組みを考えるべきかなと。

鍋象 (2005-11-19 10:44)

あ、最後まで読んだらそういう内容でしたね。
指摘のとおり、公共事業などは買い手独占ですから入札側が談合して初めて価格交渉力ができるんですよね。
昨今流行のインターネット使った逆オークションで調達している企業も、あんまり安い値段をスタートで提示しすぎて、入札不成立が目立ってますので要注意。

(2005-11-19 11:13)

価格決定権はあるが、入札側の不満が大きすぎると政治家が動き出してワヤな事になる。と、単純化してしまえば最後通牒ゲームになりますかねえ?

梶ピエール (2005-11-19 19:31)

>kaikajiさんの試みは知的遺産としての価値があります、とまで言い切ってみたいと思います。
 それは私がそういうプレッシャーに弱いということをご承知の上のご発言でしょうな? それはともかく、最初は共同研究者のKranton女史のウェブサイトで公開されている論文と内容がかぶるかと思っていたのですが、それらはもっと特定化された問題を扱ったもので、こういった形で包括的に新古典派的な政策命題を批判するような内容のものは今のところまだ公開されていないようですね。というわけで結局責任は重大だ、ということになってしまいそうですが・・

ko-ji (2005-11-19 19:32)

 平均落札率97%って本当に高いのかがそもそも疑問ですが、談合による高値受注を防ぐには不特定多数が入札に参加できるようにすることが有効だと思います。

>ちなみに成田空港の件は6社での談合で、事実上それらしか受注できる能力がなかったので寡占状態だった
 これがそもそも嘘だと思います。公団が信頼できるのがこの6社だけというのが実際でしょう。
 空港は日本以外にもあり同様の施設もあるので外国企業でも施工可能でしょう。さらに、常識的に考え最も安く確実に施工できるのは6社であっても、下請でこの6社を入れればゼネコン等でも施工可能なはずです。一般競争入札であれば、これらの社が談合をして超過利潤を得ていることが判れば、誰かがさらに低い価格で入札を行い必要に応じてこれらの社に下請にだすことになります。
 したがって、談合をしてもそんなに無茶な価格を付けることはできません。
 一方で、この6社以外が入札したときには公団が技術的なチェックを細かく行う必要が出てくる可能性が高く、結局高くつくかもしれません。また、公団にチェックできる自信がなければ官製談合へのインセンティブが働きます。発注側の体制整備も必要です(公務員等の削減の流れとは逆なんですよね(W )。

 以下、単なるツッコミになってしまいますが、
>官製でなければ談合は成立しない
>予定価格がわからなければいくら受注者側で示し合わせても入札できるとは限らない
 予定価格が判らなくても入札に参加するメンバーがわかっていれば談合は可能であり、不落札(=やり直し)になる可能性が少し増えるだけです。
 また、予定価格は、その作成に使う単価や歩掛(作業に掛かる標準的な工数)等の多くを公開しており積算ソフトも市販されているので、工事内容にもよりますが談合が可能な程度の精度で推測可能です。
 このケースでは重電6社しか施工できないとして指名競争入札としていることから、単価の多くがこの6社からの見積もりになっている可能性も高く、また、電気工事で土木工事に比べ不確定要素も少ないので、むしろ平均落札価格が97%と3%も外していることのほうが不思議なくらいです。

>「予定価格決定委員会」
 低価格入札を防ぐために、それ以下の価格での入札を無効とする最低落札価格をランダムに決めていた例はありますが、予定価格をランダムに決めるのには無理があると思います。
 予定価格を事後に決めるといっても、積算は事前に行うのでしょうし一般管理費(利益率)を動かす位しかできないでしょう。しかも委員会が気まぐれで率を掛ける訳にもいかないでしょうし。事前の積算結果が判れば談合できそうです。

 bewaadさんほど予定価格には信頼がおけないんです。実のところ、特殊な工事ではメーカー以外は適切な見積もりができません。コンサルが聞きにいったりしているのが実情のようです。
 予定価格を、その根拠も含めて公開して、これまでに詐欺的行為をしたもの以外は誰でも入札に参加できるようにすれば、談合をしようがしまいがそれなりに適切な価格となると考えます。

鍋象 (2005-11-20 02:03)

お役所が発注すると、相手にあんまり利益が出てると、納税者がうるさいのでコストマークアップが価格設定の根拠になっているようですが、そもそも論として売買価格は需要と供給で決まるわけで。
談合問題といわずに、いかにしてコストマークアップ価格で発注するのか?という役所の発注戦略の話にした方が良いような気がします。談合とかリベート授受の類は、別途罰則と取り締まり強化をすれば良いわけで。
でも、きっとコストマークアップの価格しか絶対にもらえないとわかったら、参入企業が長期的には減っていくでしょうね。

bewaad (2005-11-20 13:57)

>とさん
あまり書くと墓穴を掘りそうな気が大いにするのですが、談合をするのが合理的である以上、その防止はいたちごっこにならざるを得ず、なら談合されてもいいようにすれば、というのが思いつきの端緒でした。その狙いがエントリできちんと達せられているかどうかはともかく・・・。

bewaad (2005-11-20 14:01)

>鍋象さん
価格交渉力がある=プライスメイカーですから、プライステイカーの世界とは違っているのではないでしょうか。「売買価格は需要と供給で決まる」というのも、両者では振る舞いは異なるはずで、ここではプライステイカーが受け入れざるを得ない価格に近い価格をプライスメイカーにメイクさせるためにはどうすれば、という観点からあれこれ書いたものです。

ちなみにコストマークアップ価格についてですが、その価格が完全競争均衡価格よりも高い限りにおいて超過利潤が少ないとはいえ発生するわけですから、長期的には減っていくということはないと思います。

bewaad (2005-11-20 14:03)

>梶ピエールさん
あまり雑音は気にしないでいただければ、と雑音をたてた人間が言うべきせりふではないのですけれども。

ただ、いくら論文で世に出ているものであっても、その成果を私のようなアマチュアが享受するためには「翻訳」が必要なわけで、それをアカロフが自分ではサボっている(笑)のですから、代わりに行うという作業は本当にありがたいものだと感謝している次第です。

bewaad (2005-11-20 14:12)

>ko-jiさん
もちろん一般競争入札ができればそれがいいのでしょうけれども、それが無理だとしたら、という前提で検討させていただきました。

特殊な工事においては情報の非対称性が大きいので適切な価格をあらかじめ算定するのは難しいというのはご指摘のとおりかと思うのですが、予定価格を信頼しているというより、むしろ信頼していないからこそ情報を持っている側(メーカー)があまりに超過利潤をとらない方が合理的となり自主的にそう仕向けることとなる枠組みができればいいのでは、とあれこれ考えてみました。

鍋象 (2005-11-20 19:55)

>>bewaadさん
曖昧な書き方ですみません。役所=プライスメイカーですよね?だからこそ、予定落札価格の97%とかいう数字が恒常的に出てくるわけです。予定落札価格が正しいのであれば、僕は「金銭の授受を伴わない」談合があっても全然構わないと思っていたりします。金銭の授受が発生する理由は、予定落札価格を事前に知るためですので、オープンにしちゃえという指摘には賛成します。
また、ここで書いたコストマークアップというのは役所の発注ですのでマークアップ率0%を想定していました。で、ある程度の利益をぶら下げてあげないと、合併が進んで入札参加企業が減っちゃうよという事が言いたかったわけです。ここら辺の議論が曖昧なまま、談合=悪いという所だけが注目されすぎている気がします。

ko-ji (2005-11-21 00:25)

>>鍋象さん
 予定価格をオープンに、はbewaadさんではなく私の意見では?

 この問題を考えるうえで、談合自体の善悪と、官製談合(官が特定の者に予定価格を漏洩するなどして仕事を割り振る)という2つの観点を分けて考える必要があると思います。

 談合自体についてですが、現在、公共事業で多く取られている入札の方法は、事前に業者の能力等を考えて入札に参加できる社の数を10社程度に絞り込んでから行っています。理由としては、業者側で入札する金額の算定の手間が過度にならない(10回に1回はとれる)ようにする、技術力の無い業者がとれないようにする、など妥当な点もありますが、入札参加予定者が特定しやすく、参加者全員による談合となり入札の意味がなくなるケースがでます。談合に参加していない者が入札に参加する可能性が必要です。
 (で、今後は小額のものを除き事前の絞込みをしない方向のようです。)
 
 なお、予定価格は、現場で使用する資材等の価格、想定される人件費、機械の減価償却費用などの平均的なコストを足し合わせたものに、平均的な工場の管理費の率や、本社の事務経費や利潤の率を掛けて算定します。この価格以下で入札した場合にのみ有効となるものです。したがって、大局的にみれば予定価格どおりに落札していけば薄いながらも利潤はでます。一方、あくまで平均値なので物によっては利益は出ないかもしれませんし、工夫をすれば通常より儲かる可能性もあります。

 で、予定価格をオープンに、というのは、入札参加者の負担を減らすというメリットもあります。
 
 もうひとつの官製談合については、金銭の授受に関わらず弁護の余地無く問題だと考えています。例えば、日本道路公団の橋梁の件でも「天下り先」の確保が目的で公団が情報を漏洩していたものですが、これでは全く入札の意味がなくなってしまいます。

鍋象 (2005-11-21 02:54)

>>ko-jiさん
失礼しました。僕もko-jiさんと同様に談合の問題は、
1)価格競争の阻害
2)付随する利権の発生
の2点にわけて考えるべきだと考えています。その点で全く同意です。

1)については談合そのものではなく、政府発注のモノで特定少数の受注者が利益を上げる事の是非が問題だと考えます。現状の予定落札価格とほぼ一致した水準が妥当なのかどうかはわかりませんが、ko-jiさんの言うとおりなら妥当なのでしょう。逆に予定落札価格の70%の入札があったという事実をもって反論する人もいますが、場合によっては限界利益=0水準まで戦ってしまう企業もいますので、これはむしろダンピング認定した方が良いかも知れません。これはとても難しい問題です。
2)は、罰則強化でデメリットを大きくするのが良いと思います。天下り自体は別に専門知識を生かした再就職という面もあるので否定しきれないものですが、その専門知識が官製談合だったというのが言語道断なわけです。
で、2)についてはとっととやって、1)の適性価格って何?という所に早く議論をシフトした方が良いのかなと思うのでした。

民間でも、大手と中小の取引だと似たような問題がおきます。理想的な状況を想定してコストマークアップで利益率=0(現実には確実に利益<0となる)で設定した価格を押し付けられて、断ると嫌がらせを受けたり、取引関係をネタに人を送り込まれたり増資を強要されたり、トンネル会社経由で利益を掠める人もいますし、個人的な便益を要求されたりもします。でも、下請法ってのもありまして、たまには助けてもらっていますし、一応他に売り先をシフトする事もできます。
逆に、国や地方自治体という1社のガリバーと取引をしている人達の苦労はどうなのかなと。下請け法的な制度はあるのかわかりませんが、業界的には完全にアゲンストで悪者扱いされていますから、中立な評価がなされているのか良くわかりません。

bewaad (2005-11-21 03:30)

>鍋象さん、ko-jiさん
ここで書いたあれこれは、基本は寡占市場分析から入っています。プライステイカー・プライスメイカーという用語を使ったのもその流れで、通常寡占市場では供給調整や製品差別化によりプライスメイカーとして供給者は振舞うことができるのですが、エントリで書いたようにその双方ができないという特殊な状況下において、寡占市場均衡価格が完全競争市場均衡価格に等しくなると。となるとカルテルを結んで寡占市場ではなく独占市場とすることでしか超過利潤は享受できず、入札で言えばカルテル=談合ということになります。

で、独占市場では限界収益=限界費用となる価格・供給量にプライスメイクされるわけですが、やはりここでも供給一定(逆に言えば価格を上げても需要が減らない)なのでそのプライシングが成立せず、青天井に価格を上げるインセンティブのみが働くはずということになります。

でそれへの対策が予定価格ですが、つまり完全競争市場均衡価格と予定価格の間に価格を押さえようというインセンティブを付与することになります(前者より後者が大きいことが前提になりますが)。情報が非対称だから完全競争市場均衡価格はわからないとすると、予定価格が思ったより下かもという逆の情報の非対称性を作り出してそこそこの超過利潤で満足させよう、つまり超過利潤をゼロにはできないかわりにそれほど多くもさせないというのがエントリのバックグラウンドになります。

こうした観点からすれば、予定価格をオープンにというのは、予定価格が完全競争市場均衡価格より高ければ予定価格どおりに、低ければそれでは受けられないということで入札不成立となり、結局は予定価格に落札価格は収束します。エントリの枠組みの場合、後者は変わりませんが、前者について入札者が安全を見込んでそれほどは完全競争市場均衡価格からは乖離しないでしょうから、その分だけ価格は低くなると考えられるのではないでしょうか。

鍋象 (2005-11-21 17:49)

例えば予定落札価格からスタートする逆オークション方式など考えてみましたが、談合を許容しちゃうと結局予定落札価格が正しいか否かにかかってくるわけで。
この分野ってゲーム理論適用して、情報を完全にオープンにして協力ゲームにさせちゃうのか、それとも談合摘発のコストを払って非協力ゲームにするのかを考えたらどうかなと思ったりするのですが、利得関数が上手く考えられずに曖昧なままです。

bewaad (2005-11-22 05:57)

関数の話になるとこちらの手にも余ってしまって定性的にぐだぐだ書くだけです。トホホ・・・。

本日のTrackBacks(全2件) [TrackBack URL: http://bewaad.sakura.ne.jp/tb.rb/20051119]

先日の「追記」に書いたように、イエール大学のウェブサイトに講演当日配布されたものと同じペーパーが掲載されていたようで、たぶん僕よりも正確に読んでくれる人が出てきてくれるだろうから、[http://bewaad.com/20051119.html#p03:title=「知的遺産」というような大層..

そういえば建築に居る友人に構造力学⊂⌒~⊃。Д。)⊃って愚痴ったら言われた 「大丈夫だよ、漏れら構造計算よりヌードデッサンのほうが重要だから」 冗談が冗談で済まない節があるんだがな。それでいいのか 構造より意匠がもてはやされるっていったいどういうことなんだ..


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