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2006-01-31

[economy][pseudos]トンデモ#13:毎日新聞に流れる親デフレの血

昨日メディアの言説をトンデモとして俎上に載せましたが、lukeさんより活きのいい別のネタをご教示いただきました。トンデモ経済評論ウォッチャーの間ではその名も高い玉置和宏・毎日新聞論説委員の最新作、「政治語としての『デフレ』」がそれです。

「デフレ」というのは経済のテクニカルタームだと思っていたらこれは政治言語だということを知った。「悪魔の辞典」のアンブローズ・ビアス風に表現するなら「『デフレーション』とは金融の正常化(引き締め)を遅らせたい場合に主としてポピュリズム(大衆迎合)的な政治家が使う一種の政治語である。大政翼賛型経済学者、エコノミストがそれをさらに追認する。自らの生活擁護的な言語と見られる」とするのが至当である。

もちろん新聞マスコミ言語の一種であることは明白である。例えば03年の新年社説を賑(にぎ)わした「デフレ克服に政策総動員を」というたぐいの新聞論調(毎日新聞を除く)がいま思うといかに大げさだったかが立証されている。

ところで最近の巷(ちまた)で無批判に使用されている「デフレ脱却」とは一体何なのだろうか。数年にわたって上場企業は歴史上かつてない金融緩和の恩恵を受けて史上最高の利益を得ている。今年暮れには史上最長の「いざなぎ景気」(57カ月)をも超える勢いだ。

そうした経済実態がありながら「デフレ脱却」とは何を意味するのか。第一私たちの日常生活に使う安価な製品がどの国から来るのかを知ってデフレというのか。

毎日「政治語としての『デフレ』

ご自身が考えるデフレの定義を明示せずに他人の定義を難ずるのは保身のレトリックとしては褒められてもジャーナリストの倫理に照らしてどうかと思うわけですが、行間を読めば不景気をデフレとお考えであることは明らかでしょう。そんなことどこにも書いてないだろう、なんて幼稚な逃げは打たないでいただきたい。

不景気を英語で言えばどうなるか、通常はrecession、程度がはなはだしければdepression(恐慌とも訳されます)、あとはスタグフレーションの語源の1つでもあるstagnation(景気停滞ないし沈滞の訳語が充てられることが多い)ぐらいでしょう。deflationの場合には景気が下押しされるのは一般に観察されはしますが、景気そのものとは別概念です。曲がりなりにもペンで口を糊するなら辞書ぐらい引きましょう(笑)。

ではdeflationとは何かといえば、皆様には何を今更でしょうけれど、継続的な物価下落を指します。inflationの反意語であることからも明らかでしょう。というか玉置論説委員におかれてはインフレ=好景気の意味でお使いで? ま、経済学と英語の勉強ぐらいしてからお説教は垂れましょう。

「『デフレ脱却』とは何を意味するのか」って物価下落から上昇に転ずることに決まっています。後で玉置論説委員が持ち上げる福井総裁以下の日銀だってCPIが継続的にプラスになるならデフレを脱却したという考えですし、それに反対するwebmasterのような人間もCPIにはボスキンバイアス(CPIには技術の発展等をうまく反映させられないことから本来の物価動向よりも1%程度高めに数字が出る誤差)があるからプラスの絶対値が1%ぐらいでないと(ないしGDPデフレータのような他の指標でも確認されないと)デフレ脱却とはいえないという議論をしているわけです。日銀にとっても悪女の深情けでしょう、こんなロジック(笑)。

本筋からは離れますが、

  • 2003年当時にデフレを問題視していなかったことを自慢するのは毎日新聞ぐらいでしょうねぇ(笑)。
  • 「『いざなぎ景気』(57ヶ月)をも超える勢い」って、期間が長ければいいってものじゃないことぐらいわかっていただきたいもので。
  • 「私たちの日常生活に使う安価な製品がどの国から来るのかを知ってデフレというのか」って、今や絶滅危惧種の中国発デフレ論なんでしょうか。これまた巧妙な保身のレトリックで対象国も因果関係も行間に詰め込んでいるのが困りもですが。

「景気回復は大企業の話で中小企業や地方の企業の話ではない」。もしこの説が正しいならこういう仮説も正解ということになる。隅田川河川敷の「家なき生活者」が減っていないからデフレ経済はまだまだ継続しているのだ−−。

毎日「政治語としての『デフレ』

だから景気回復イコールデフレ脱却じゃないのですが。

ところでホームレスという言葉を避けたのは大阪の事件もありメディアお得意の自粛ではないかと下衆は勘ぐるのですが、言葉だけ変えても蔑視がなくなるわけではないといういい見本ですねぇ。ホームレスの増減をデフレかどうかの判断基準にしようとはwebmasterはまったく思いませんが、景気が回復と言っても問題は多いことの現われではあるでしょうに。最大限好意的に解釈すれば、ティンバーゲン流に別の政策割当てを求めているとも取れなくはありませんが・・・。

この国の経済政策はこうした人々の言動によって難渋を迫られている。喜ぶのはホリエモンのような「六本木ヒルズ族」だけだ。

いま日本に必要なのは正義の経済政策であってポピュリズムではない。悪巧みの土壌ともなっている超緩和政策は既に5年近い。

金融政策の最高責任者である福井俊彦日本銀行総裁はこうした政策を早くやめたいと考えている。しかし「デフレからの完全脱却」を口実に待ったをかけているのは政府・自民党首脳である。

ホリエモンらの台頭は規制緩和や市場原理主義という経済土壌の結果だという人がいる。批判すべき相手を間違えてはいけない。彼らをぬくぬく生存させているのは景気回復が進んでいる中での金融の超緩和であり、つまるところゼロ金利だ。マネーゲームはジャブジャブの金があってこそ可能だ。

毎日「政治語としての『デフレ』

出ました、本記事の白眉である「正義の経済政策」(笑)。清算主義的発想丸出しといいますか、中村先生の「経済失政はなぜ繰り返すのか」で丹念に描かれている大阪毎日新聞の頃からまったく進歩がないといいますか。そこまでおっしゃるなら、ホームレスへの蔑視の次はヒルズ族へのルサンチマンを煽ってそれぞれ小市民的切断操作を誘導することは正義だとお考えなのですか、と問わせていただきましょう。「ぬくぬく生存」って、テロの指導者の言葉といっても違和感がありません。

ところで、マネタリーベースもマネーサプライも伸びが滞っている昨今、「ジャブジャブの金」って何を指しておっしゃっているんでしょうかねぇ? webmasterには見当がつきませんが。

地球上の風向きを示す今年のダボス会議(世界経済フォーラム)の冒頭スピーチはドイツ初の女性首相であるメルケルさんだった。25日の演説を深夜のBBCのライブで見た。「ドイツが強くなるために英国のように規制緩和をしなければならない」と述べて「それがEU(欧州連合)への経済貢献になる」と締めくくった。

日本のいまの問題は規制緩和の行き過ぎではなく「金権思想をますます増長する」異常な金融緩和にある。東京地検特捜部の正義とは間接的に金融政策の正常化を促すことにあるように見えて仕方がない。

毎日「政治語としての『デフレ』

日本の政治家に対する冷たい態度とは裏腹にずいぶんとメルケル首相にはお優しいことで。メルケル首相の言葉が正しく、かつ、その趣旨が日本にも当てはまるという2つの条件を満たさない限り、ここで述べていることは文脈上無意味なのですが、そこまはた例の巧妙な保身レトリックということで。

「東京地検特捜部の正義とは間接的に金融政策の正常化を促すことにあるように見えて仕方がない」(笑)。まあなんでも牽強付会に時節の補強に使うずうずうしさにはいっそすがすがしい気分ですが、ジャーナリストの本分は権力の監視だとかいう御託はどこへ行ったんでしょうかねぇ? 相手が有力政治家であれば検察を正義と当然視してしまうことに同情の余地はありますが、今回はそういった事件ではなく、もし冤罪だったとしたらどう言い訳するのでしょう。

本日のツッコミ(全12件) [ツッコミを入れる]
truly_false (2006-01-31 10:35)

>玉置和宏(たまき・かずひろ)
>(中略)
>経済記者として大蔵省、外務省、日銀、経団連などを担当。ロ
>ンドンスクール・オブ・エコノミクス大学院(LSE)研究留
>学。週刊エコノミスト編集長、論説副委員長、特別編集委員を
>経て現職。

はああ… orz,...
LSEまで逝ってて、この体たらくですかそうですか。森嶋先生も、草葉の陰からさぞかしやお嘆きのことでしょう(ひょっとするとロビンソン先生にでも私淑なさっていたとか)

nm (2006-01-31 11:34)

拙著にご言及いただきありがとうございます。『昭和恐慌の研究』のときに,I先生から「何で朝日じゃないの?」と言われたのですが,あえて大阪毎日を取り上げたのは,現代への連続性を立証する上で良いケーススタディになったのかも・笑

しかし,だいぶ前から毎日新聞は記者の署名が入っていて,責任の所在がはっきりするのは結構なことです。戦前の大阪毎日には「署名」がないですから,誰が書いたのかなどまだまだ調べなければならないことが多いです。

ひろ (2006-01-31 22:45)

経済については、とんと素人ですが、こちらのエントリに思うところがあって、TBしました。
よろしければ、笑ってやってください。

bewaad (2006-02-01 03:56)

>truly_falseさん
そういう経歴だとすると(って知らなかったのは調査不足でした)、意見の部分はともかく、デフレの定義についてはわざとやっているということでしょうねぇ。エントリで保身のレトリックとしたのは、わかっていながらミスリードするためのレトリックだったということで。無知よりも悪質だなぁ・・・。

bewaad (2006-02-01 04:02)

>中村先生
記名式の点はご指摘のとおり特長だと思いますが、内容がこのようでは(笑)。

本来、先生の著作に現代的意義があるのは悲しいことで、あくまで過去の事象の研究としてのみ意義があるようになってほしいと思います。当面高望みに終わりそうですが・・・。

bewaad (2006-02-01 04:04)

>ひろさん
拝読いたしました。ちょうど中村先生がご自身のblogで関連するテーマを論じられていますので(エントリに引き続いてお世話になります>中村先生)、次のgoogle結果から読んでみていただければと思います。
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=site%3Achronicle.air-nifty.com+%E3%83%96%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%B3&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=lang_ja

アルベルト (2006-02-01 05:05)

学位(たとえ修士であれ)取ったとかいうならともかく、マスコミの持ってる研究員枠で一年いたとかであれば、人によっては長期休暇よろしく遊んでただけということもありえますから、LSEへの留学経験から陰謀論を導くのはどうかと・・・まあそうでなければただのバカということになるだけなのですが。
もちろん、研究員でも本職の学生以上に熱心に勉強されてる記者さんもいますので、彼らの名誉のために研究員生活の質は「人による」ことを強調しておきたいと思います。

ひろ (2006-02-01 19:48)

ご返事ありがとうございます。ブータンの話は、聞いたことがありますが、時期尚早だろう、と思ってました。
たとえば平均寿命が50歳程度という医療(生活?)水準を取ってみても、まだGDPを指標に使ったほうがいいだろうな、とは思います。
問題は、ある一定の生活水準を成就できるようになった国にあると思っています。

bewaad (2006-02-02 05:09)

>アルベルトさん
まあでもgraduateレベルではありませんからねぇ、デフレの定義って(笑)。

bewaad (2006-02-02 05:18)

>ひろさん
だいたい2,000万円ぐらいの年収を超えると収入が増えても、というのが多いらしいです。

ただGDPの欠点はあるにせよ、なかなかちょうどいい代替指標もないというのが現実であるように思います。

ひろ (2006-02-02 23:33)

>なかなかちょうどいい代替指標もない
失業率の話とは、言い分がお互い逆転してますね(^^;
今後とも、よろしくお願いします。

bewaad (2006-02-03 03:51)

>ひろさん
いや、代替指標が見つからんと投げているのがいずれもこちらで、少しでもよいものをと模索しているのがひろさんと、まったくどこも逆転しているわけではないと思いますよ(笑)。

こちらこそよろしくお願いします。

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こんばんわ、ひろです。 トンデモ#13:毎日新聞に流れる親デフレの血 何を持って、(国民の)幸福を測るのかって、難しいなと思います。 好景気、不景気に注目が集まるのは、GDPなるものと幸福の相関が強い、 という前提においてでしょう。 じゃあ本当に、それでいいのか..

なにが凄いって理解できるところが少しもない。全く、どっから突っ込めば良いんですか。とりあえず、あまり他の人が突っ込みそうにないところを。 マネーゲームはジャブジャブの金があってこそ可能だ。 ライブドアのニッポン放送買収の際の資金調達は外資から行っていたわ..


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