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2006-02-18

[economy][politics]国会における経済論戦 その4

先日メディアでも取り上げられた2/6の衆・予算委員会における名目成長率を巡る議論がようやく議事録としてネットで公表されましたので、詳しくその内容を見てみたいと思います。

○中川(秀)委員 いよいよ本予算審議が始まりました。自由民主党の中川秀直でございます。

私は、この我々の国が今直面する最重要の課題というものは、国内では人口減少社会が始まった、また隣国では中国が大変な経済的な発展、台頭している、十年後には日本並みの経済規模になるかもしれない、こういう状況下において、いかにこの日本全体を勝ち組にしていくかということにあるのではないか、こう考えております。

二〇三〇年まで中国は年率六・八%の成長力を持つ、これは内閣府の二十一世紀ビジョンでございます。そういう中で、十年後に日本がアジアの一周辺国に甘んじてしまうのか、まさに重要な岐路に立っている、こう考えるのでございます。

やるべきことは、まず経済力の再生ではないかと考えます。だからこそ、我々は、日本より豊かな米国の潜在成長率が二〇三〇年まで三%台、こういうふうに見込まれておるのに、なぜ日本は、二〇三〇年まで二十五年間一%台半ば、その半分なのか、これも内閣府の二十一世紀ビジョンで示されておるところであります、そういう問いかけを始めなきゃいけないと思うのであります。

今、専門家が指摘する日本の二十五年間の成長率一・五%台、これで行くのか、あるいは、日本よりも豊かな米国のように三%台まで持っていくのか。これだけで、税制も年金も全く制度設計が変わってまいります。格差社会がどうなるかということも変わっていくわけでございます。

自由民主党は、さきの党大会の新しい綱領で小さな政府の旗を掲げたわけでございます。潜在成長率が小さいということは、民間活力が足りないということであります。だから小さな政府にする必要があるわけであります。

規制の多さ、国家金融の大きさ、あるいは政府保有資産の大きさ等々、世界的に見ても日本は大きな政府であります。規制ゆえに、いろいろな民間経済活動に手かせ足かせがはめられている。情報化もまだ始まったばかりだ。官から民へで潜在成長力を上げることは十分に可能だと私は確信します。役所がやっているうちは何ら富を生まない、ただの制度であります。また、ただの国有財産であります。しかし、それが民間に移り、産業になることで、富を生み、生産性を上げていく、こういうことではないかと思います。

総理も御存じのように、戦後、ドッジという人が日本の経済再生のためのアドバイスをしにやってまいりました。彼が、一九四九年、昭和二十四年に出した声明は、いわく、富は、まずこれを創造してからでなければ分配できない、こういうことでありました。

郵政民営化によってやっと小さな政府への突破口ができたわけであります。この小さな政府を目指してもう一度成長国家をつくる、それが我々の使命ではないか、こう考えるわけであります。

まず、きょうはそういったことを考えながら、総理に、また関係閣僚にお尋ねしたいと思いますが、そのためにも、この国会、我々は行革国会、改革国会と位置づけまして、昨年の総選挙で国民の皆さんが選択した小さな政府路線を形あるものにして次の時代に正しく継承しなければならない、そういう国会にしなきゃいけないと思っております。

しかし、どうも国会冒頭から、安全国会の名のもとに改革を失速させようとする、まあ、野党の諸君が皆そうだとは申しませんが、隠れ大きな政府を主張するような意見が息を吹き返しまして、ようやく、改革の結果、光が差し始めた日本経済を再び暗やみに引きずり戻し、世界の負け組に転落させられる、そういう危険性が出てきたのではないか、こんなふうに考えます。

先ほど申し上げましたとおり、私は、改革の加速化こそが諸問題の唯一の解決方法である、こう考えるわけであります。今申し上げた基本認識について、総理の御所見を簡単にお伺いします。

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

名目成長率ターゲット論者であり、それがためにリフレ政策に理解があるのではと期待される中川政調会長ですが、怪しいですねぇ(笑)。そんな彼でもましに見えるのは日銀その他の敵役の存在の賜物ですけれども(笑)、どんな問題があるかを以下簡単に。

  • 遠からず中国に経済規模で抜かれるのは間違いないでしょうけれど(1人当たりでは抜かれっこないのもまた間違いありませんが)、仮に抜かれたところで日本は依然として世界第3位の経済大国です。それが「アジアの一周辺国」「世界の負け組」というのは随分なアジテーションで。
  • 潜在成長率が1%台半ばであるというのが改革が必要であるとの理論的根拠になっていますが、「専門家が指摘する」というものの、日本の潜在成長率が2%台であるというのは経済学者のコンセンサスです(昨年8月11月に紹介しました)。内閣府が1%台半ばという数字を出したときの大臣は竹中大臣だったわけですが、内閣府の事務方にそれを止めようとする良心はなかったのか、ましてや諮問会議民間議員である吉川先生は曲学阿世の徒ではないかと。なお、本当にそうかどうかは次エントリでちょっと触れます。
  • 結局小泉内閣のいう大きな政府とは財政赤字のことを指すとしか解釈できないわけですが、財政赤字=国内貯蓄−国内(民間)投資−対外投資である以上、増税や歳出削減による財政赤字縮小は所得の減少による国内貯蓄縮小によって最終的にバランスすることにならざるを得ません。「富は、まずこれを創造してからでなければ分配できない」とは逆向きです。

○中川(秀)委員 先進国で経済発展に成功したところは、税制、税率というものはなるべくフラットにしていく、単一のものに近づけていくというのが主流であります。私は、それが正しいのではないかなと基本的には思います。

ただ、人的控除、その中には、長く申し上げる時間はございませんが、日本でも、二十三歳から六十四歳まで働いていない方々、障害を持ってもいない、健常者であって働いていない、この親に対して扶養控除をつけている、こういうものは見直すべきじゃないかな。あるいは老親、親御さんと同居をしていないが同居控除がついている、こういう人たちはそういう控除はもうやめるべきじゃないかな、私はそんなことは感じます。そこは見直していいと思いますけれども、税制はなるべくフラットにというのが正しいのではないかと考えております。

私は、先ほど申し上げました、貧しい者を引き上げる自由主義、独占や閉塞感を打破する自由主義、こういう政策とは、今、先進国で常識的な財政金融政策をやることだと思っています。その結果、名目成長率四、五%を達成することは、常識的な政策でもできると考えます。

そこで、経済成長率についてお尋ねするわけですが、正規雇用の拡大の動きが出てきているように、経済成長こそが格差是正の良薬、一番の改善策になるということは確かであります。多くの人たちの夢や希望をかなえる条件を整えるのが経済成長であります。

パネルをちょっと用意しましたが、お手元の資料にもございますけれども、これはOECDのエコノミックアウトルックから取り出したものです。過去三年間、このちょうど真ん中の赤い字のところですが、日本は名目成長率は〇・九%だったのに対しまして、サミット諸国、G7諸国の平均の名目成長率は三・六%です。また、OECD諸国の平均の名目成長率は四・九%です。一番下の実質GDP成長率で見ますと日本は遜色ないんですが、何と申しましても、デフレ、真ん中の欄、マイナス一・二が足を引っ張って、日本はこのように低いわけでございます。

これに対して、内閣府が一月十八日に「改革と展望」の参考として財政諮問会議に提出した試算では、年平均で二・六%、最終年でも三・二%と、極めて低い数字になっています。

私の言う最低四%成長との差は〇・八%ございますが、かつて、一九一〇年代、二〇年代にアルゼンチンという国がございました。一九一〇年代ぐらいは、アルゼンチンという国は西欧諸国のどの国よりも一人当たりの国民所得が高かったんです。しかし、二〇〇〇年を迎えまして、八十年で、今や西欧諸国の一人当たりの国民所得の半分以下になっております。その約七、八十年の成長率の差は、たった〇・九%です。これだけの差でそんなふうになってしまうのでございます。名目成長率が内閣府の試算よりもう一%高ければ、十年後の名目GDPは、一〇%、約五十兆円大きくなります。その結果、税収は八兆円、消費税に直せば四%分ふえる計算になります。

与謝野大臣は、この前の経済演説を聞かせていただきましたが、成長力と競争力の強化の項を設けまして、悲観論や縮み思考では将来は開けないと、私は正しい御指摘をなさったと思っております。そして、今後、成長力と競争力の強化に向けたグローバル戦略、人材、産業、地域、対外政策、各分野でそういうものを盛り込む、こう経済演説でおっしゃいました。

この骨太の方針に盛り込まれるグローバル戦略の結果、当然ながら、経済成長率は「改革と展望」の試算よりは高くなり、私の唱える名目成長率四%に近づくものではないかと考えますが、いかがでしょうか。

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

所得税のフラット化の先頭に立ってきたアメリカではクリントン政権で累進性再強化が行われているのですが。

「先進国で常識的な財政金融政策をやること」は大いに賛成なのですが、先に引用した小泉賛歌とどのように中川政調会長の頭の中で整合性を保っているのかが大いに気になるところです。だって、今は非常識な財政金融政策をやっているということにならざるを得ないのですから。

ついでに、蛇足かつ揚げ足取りながらあまりにもおかしいので一言。「かつて、一九一〇年代、二〇年代にアルゼンチンという国がございました」って、今でもあるってば(笑)!

○中川(秀)委員 私は、右肩上がりの時代は終わったとか、人口が減少するから、確かに財政は深刻ではございますけれども、もう経済成長は無理だとか、そういう悲観論が、まさに夢も希望もない格差固定社会をもたらしてしまうのではないかと思います。

経済が成熟化していく中で、海外の資産収益を反映するGNP、これで経済活性化を考えるべきだという議論もございましょう。人口減少社会は、一人当たりの国内総生産、GDPがふえれば豊かな社会だということを忘れてはいけません。しかし、最も大切なことは、先ほどから申し上げている成長を重視することで私の言う名目成長率四%台ということが実現できれば、二十年弱、十八、九年で名目の国民所得は倍増するわけです。二倍になるわけです。かつて所得倍増というのがございましたが、あれは十年でしたけれども、二十年弱で、四%で倍増するわけです。年金や税負担での負担と給付の世代間対立も緩和する、そういうことのためにも必要でございます。

先ほど申しました我々のシンクタンクで、アメリカのノーベル経済学者も加えて、今この路線について本格的に研究しています。ここで、私自身の個人の案ですが、ちょっとパネルを用意いたしましたが、日本経済を上げ潮に乗せるための成長計画、経済計画というのはどういうものがあるんだろうかと、お手元に資料も用意しました。

経済成長、潜在成長力を上げていくというのは、労働力の要因と資本の要因と技術革新の要因と三つございます。何といいましても、これによって成り立つ成長を上昇させる各政策が必要だということと、金利を急上昇させないという政策の二つを両立させて、日本経済を全体として上げ潮に乗せる成長計画を推進していかなければ、これは実現できないわけであります。

その計画のまず第一の柱となるべきことは、やはりこれだけグローバルな社会になりましたので、新しい日本経済の国境概念というものを広げていくべきではないかと私は考えます。人口減少社会の日本にとって、BRICs諸国、ブラジル、ロシア、インド、中国等々、この市場はこれから本格的な市場になってくるわけですが、三十数億人です。インド、中国を含むアジア市場だけでも八・二兆ドルと申しますから、円換算で約一千兆円の市場というものになってまいります。

こういうマーケットを日本経済の発展にプラスしていくことが重要となりますが、そのための重要な手段が、今言われている自由貿易協定であり、あるいは経済連携協定でございます。

実は、韓国では最近、政府内にFTA推進委員会を立ち上げました。何と二〇〇七年、つまり来年までに三十―五十カ国とこの協定の締結を目指す。三十―五十カ国ですよ。十五カ国と同年中に協定を発効させるということを決めました。中国は、二〇一〇年にASEAN諸国とのFTAスタートで合意しまして、もう既に昨年から一部関税削減を始めております。また、インドと共同研究会設立で合意。豪州、オーストラリアと正式交渉を昨年開始しているのでございます。

官房長官、伺いますが、各省、FTAについてはいろいろな立場がありますけれども、この経済連携協定、自由貿易協定推進のために政府一体となった取り組みを進めなければ、もう日本は間に合いません。日本がやっているのは、シンガポールとメキシコのたった二カ国です。あと交渉中が数カ国あるだけです。こんなことでいいんでしょうか。

国益に沿った対応ができる万全の体制を総理のもとでつくっていくことが不可欠だと私は思います。そういう強力な官邸主導のリーダーシップ体制の確立、これについてどうお考えでありましょうか。

 また、アジア共同体構想におきますリーダーシップの発揮のためにも、ASEAN諸国や豪州、さらには隣国の中国や韓国との自由貿易協定を加速すべきであると考えますが、いかがですか。

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

ここでは非常にいいことを言っていると思います‐早く小泉総理に吹き込んでくださいまし。FTAについては以前論じましたが、webmasterも速やかな拡大を望みます。

○中川(秀)委員 (略)

外資についても一点だけ触れます。

実は、九〇年代、日本からの外国への投資を十とすると、外国からの日本への投資はその十分の一の一しかなかった。十対一だったんです。ところが、一昨年、外国から日本への投資額の方が日本から外国への投資額よりも多くなった。つまり逆転したんです。これは案外知られていないんですが、逆転したんです。ハイテク企業の研究所設立、RアンドD、それからアジア企業の対日進出も始まっています。

例えば、時差のないオーストラリアから、例の有名なニセコ、北海道のスキー場、オーストラリアのリゾート企業がこれを買収したんですね。そして、今後十五年で五、六百億の投資をして、年間二十万人ぐらいの集客をしようと、豪州の会社がニセコを買ったんです。

そういうように、今、日本の貯蓄率は、高度経済成長時代の二〇%からはるかに下がって、〇四年度は二・八%と、五十五年ぶりの低水準、十分の一になっています。今や、外資を敵視するんじゃなくて、したたかに利用する時代に来ているのではないかと考えます。総理も施政方針演説で、外国からの投資は地域の活性化や雇用の拡大につながる、また、技術に新たな刺激を与える、我が国にとって歓迎すべきもの、こう言っておられますけれども、今、したたかに利用する時代に入ったということについて、総理の御所見を伺います。

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

少子高齢化に伴い貯蓄投資差額における貯蓄超過が減少していくとの観察、それを前提として外資受入れの障壁をなるべく除去した経済を構築していくことの意義について異論はないのですが、一昨年の逆転とやらはミスリードでしょう。多分資本収支黒字のことを指していると思うのですが(正確には一昨年(2004年)ではなくその前の年(2003年)です)、あれは大規模為替介入という公的部門による(広義)資本収支の赤字があったため民間部門の(=狭義の)資本収支が黒字に転じただけのことで、為替介入がまったく行われなかった昨年(2005年)にはまた(狭義の)資本収支赤字に戻りましたから。

○中川(秀)委員 上げ潮計画の二番目、三番目の柱は、新しい産業展開と新しい産業基盤ということです。

ここにパネルを用意しましたが、製造業の生産性というのは、本当に遜色なく、日本は大きなものがあるわけです。しかし、下の段の赤線のところですが、サービス業、これは実質GDPの六割を占めているわけですが、商業もあれば農業、医療、教育、いろいろなものがありますが、この活性化、地域の活性化が何よりも必要であるわけでございます。まだまだこれは生産性を上げられる。きょうは時間がないので詳しく触れませんが、これには規制改革がさらに必要でありますけれども、この努力を続ければアメリカ並みに成長する可能性がある。これは経済の上げ潮の大変大きな要因になってまいります。

それから、上げ潮計画の第三の柱は新しい産業基盤でございます。

私は、今自民党のu―Japan特命委員会の委員長もしていますが、来月、ITによる成長戦略の考え方について取りまとめをする予定です。IT投資は企業の生産性向上に役立つと今まで言われてまいりましたが、これを生かして、IT経営ということで、産業インフラのコストを小さくし、また、日本に残る非効率な産業分野の効率化を図る、経済全体の付加価値、生産性を上げることができるという考え方でございます。そういうことでまとめていきたいと思います。

(略)

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

生産性の話はよく言われますが、それらのほとんどはマッキンゼーのレポートが元ネタです。このレポートの致命的欠陥は生産性を計測する際の分子に(日米比較のため購買力平価で換算した)GDPを用いている点。

経済学者がTFP(Total Factor Productivity、全要素生産性。先の中川政調会長の「経済成長、潜在成長力を上げていくというのは、労働力の要因と資本の要因と技術革新の要因と三つございます」の発言中、「技術革新の要因」のことだと考えていただければ)を計測するに当たって需要変動の影響を除去すべく細心の注意を払ってもなお需要変動の影響が除去しきれないとの批判を浴びがちだというのに、ナマのGDPを用いる割り切りのよさには感動です(笑)。よって需要変動の影響を受けざるを得ずこれで生産性を論じるなどナンセンスの極みなのですが、コンサルティングファームが「生産性改善のためには需要増加が必要です」じゃ商売にならないでしょうからねぇ(笑)。

真面目な話、貿易財は生産性に劣れば海外製品に駆逐されますから生き残るものは必然的に生産性が高いものとなり、他方で非貿易財にはそのようなことはありませんから、世界中のどの国だって非貿易財の生産性は貿易財のそれに比べて低いものとなります。需要変動の要素を除去してなお残るその格差が簡単に埋められるなら誰も苦労はしません。本当に政府があれこれやることで生産性を上げられるならノーベル経済学賞ものでしょう。

えっ、IT投資すれば生産性は上がるんじゃないかって? 政府が音頭をとっての特定目的投資の促進だなんて、キャプテンMUSE式ハイビジョン堯淵轡哀沺坊弉第五世代コンピュータプロジェクトみたいなことにならないといいですね(はあと)。

○中川(秀)委員 ありがとうございました。

時間がいよいよ迫ってしまいましたが、なるべく簡潔に、まとめて申し上げます。

最後の第四、第五は、新しい財政構造と新しい政策協調ということです。簡単に申し上げまして、この財政構造については、私ども政調会、自民党財政改革研究会でも検討中でございますが、デフレ克服、政府の資産・負債の圧縮、制度の改革、歳出削減、税制改革の順で議論すべきだと思います。就任当初から、デフレ脱却の一番打者がようやく打席に入ったところで五番目の増税がもう打席に入ろうとしているのはまだ早いと言い続けているわけは、そこでございます。

今年度名目成長率二%達成のためにも、財政再建のためにも重要なのはデフレの克服でございまして、デフレ下の増税路線をとれば、国民経済に取り返しのつかない致命的な打撃を与えるのではないかと危惧します。後で触れますが、二、三%の物価上昇率を政策目標とするのは世界の常識でございます。そういうことを踏まえて、今年度のデフレ克服を目指していくべきだと思います。

次に、政府資産圧縮ですが、日本の政府資産七百兆円は、今世界一の規模です。その半減を目指して、徹底的な洗い直しを行うべきだと思います。さすれば、眠っている国有資産が、民間に開放して富を創造して、経済を成長させていく資源となります。今国会、行革推進法案でさまざまな分野の改革の法案を出しているのは、極めて、この国会の最も大事な法案であろう、こう考えておるところでございます。

制度改革について言えば、世界の財政再建の教訓は、初めから増税に手をつけた国はむしろ失敗していて、公務員給与や社会保障などの制度改革を伴う歳出削減を行った国は成功するというものでございます。

私は、人事院制度の根幹をも聖域とせず、制度改革について真正面から検討すべきではないかと考えますし、野党の諸君にも大いにこういう点で対案を出してもらって、公務員制度改革も社会保障制度改革も、与野党で国民のためにこの改革を進めていくべきだと提案いたしておきたいと存じます。

(略)

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

デフレ克服に比べれば他のものなど後回しでかまわないということは昨年論じましたので繰り返しませんが、一点だけ。一番打者がようやく打席に入ったところなら、五番打者はもちろんですが二番打者や三番打者だって打席に入っちゃまずいのでは(笑)?

○中川(秀)委員 新しい政策協調ということでは、新しい成長社会ではいかにインフレを回避するかということが重要でありますが、インフレの場合に、早期に対応するための消費者物価、CPIの上昇率参照値、こういう制度の導入が私は検討されるべきではないかと存じます。

先般、ロンドンでイングランド銀行の総裁にもお会いをして、マービン・キングさんと申しますけれども、政府と中央銀行が物価上昇率目標を二%で共有して、市場の信頼のもとで、極めて安定的な経済政策を実現して成果を上げているという状況を伺ってまいりました。日本も参考にすべきだと思います。

最近、経済成長と財政再建の関係で、名目成長率を高くすると金利が高くなる、こういう主張が出てまいりますが、結果的に隠れ大きな政府となってしまう増税キャンペーンの一環にならないように私は願っております。

まず、長期的な事実関係がどうかというと、アメリカの有名な経済学者マンキュー、元CEAの委員長ですが、過去百二十年、七十年、五十年のアメリカの実績を紹介していますが、いずれも成長率が国債金利を上回っています。また、他の研究でも、他の主要国について、成長率の方が国債金利より高かったことが明らかにされています。日本でも、一九六六年から二〇〇三年、二年前までの平均値でとってみますと、成長率が国債金利よりも高かったことは歴史的な事実です。日本についても、一九六六年―二〇〇三年平均値は、成長率が国債金利を上回っているわけであります。

我々、これから財政再建は喫緊の課題ですけれども、成功した国は、GDP成長率が高くなって、長期金利が下がって、そして成功しているということを忘れてはなりません。

そういうことで、我々も党としてしっかり議論してまいりますが、またこの問題は、いずれ次の時代、我々でいえば自民党総裁選挙もございますが、大いに論争すべき政策の軸になる、そういう一環であろうと考えますので、これはというお志のある方は見識をぜひ示していただきたい、こう考えておるところでございます。

総理、いろいろ用意しましたが、総理がこの四年半やってまいりました諸改革、その成果は、最後の資料にもお配りしておりますけれども、不良債権比率、名目成長率、失業率、有効求人倍率、全国勤労者世帯消費支出、給与、昨年のボーナス、いずれも好転。有効求人倍率は十三年ぶりの高水準、昨年のボーナスは四・四%もふえた。

今、日本は明るい成長時代到来の前夜まで来ている。もう一回、次の時代に再び経済を大きくして、デフレ下の格差固定社会に戻るようなことにならないように、より光を輝かせる、そういう経済成長のパイの拡大で日本の将来を切り開いていくべきだ、これが、私の言う日本経済を上げ潮に乗せる成長計画の概略でございます。総理も新たな成長戦略のあり方を夏までに示すと述べられておりますが、まさに小泉改革の成果を次の時代の成長につなげていくことが重要だと思います。

(略)

第164回国会 衆議院予算委員会 議事録第5号(2006年2月6日)

とまあ中川政調会長の発言を追いかけてきましたが、リフレ政策と構造改革政策のキメラを見るようでwebmasterは落ち着きません。今の世論や小泉総理の嗜好を考えての方便として構造改革政策も同時に唱えているということならよいのですけれども、リフレ政策が借り物ではないかとの不安が拭い去れません。本気でデフレ脱却を目指すのであればともかく、後で言い訳(日銀が失敗した際に自分たちはきちんと指摘していた)するためじゃないかな、と。

[economy]2005年第4四半期GDP・一次速報

koiti_yanoさんの予測もあり注目していたのですが、ご本人もご確認のとおり予測的中でした。皆さん、これからはkoiti_yanoさんに注目ですよ!(って、既にそうなさっている方も多いと思いますが。)

ところで前のエントリで潜在成長率について触れましたが、内閣府推計では1.5%程度ということになっています(実質GDPベース)。潜在成長率とは何かといいますと、要すれば国内の労働力や資金、技術を適切に用いた場合に達成される成長率のことです。

今回の速報で2005年のGDP成長率が表に出てきましたので、時系列データのうち今世紀に入ってからの推移を見ると次のとおりです。

20010.4%
20020.1%
20031.8%
20042.3%
20052.8%

このとおり3年にわたり潜在成長率を上回る成長を遂げているということになります。であるなら、労働市場は売り手市場となり資金需給は需要超過になっていなければおかしいということになります。無理をして背伸びをしなければ潜在成長率以上の成長は達成できないわけですから。

ところが有効求人倍率が1を超えたのは昨年12月、国内銀行・信用金庫の貸出しが対前年同期でプラスになったのは今年の1月に入ってからです。上のエントリでも書いたように経済学者たちは日本の潜在成長率は2%台であるとし、当サイトでも2%台半ばではないかと何度か書いてきましたが、実質GDP成長率が2.8%となってようやくこのような指標が観察されるようになったということは、まさにこうした推測が当たっていたことの証拠となるでしょう。

内閣府の皆さん、引き続き日本の潜在成長率は1.5%程度だというなら、なんでもっと早く有効求人倍率や貸出実績が需要超過を示す数字にならなかったのか、納得できる説明をしていただけませんでしょうか?

[economy][politics][BOJ]だから小泉総理を信頼しちゃいけないんだってば!

[東京 17日 ロイター] 小泉首相は17日、官邸で記者団に対し、量的緩和解除の判断は日銀総裁に任せると述べた。

2005年10―12月期の実質国内総生産(GDP)は、年率5.5%の高成長となった。小泉首相は「予想以上に良いということだが、まだ、デフレ状況を脱却したとは言えない」との認識を示し「この良い状況をいかに持続させて、デフレを脱却するか、これからの課題だ」と指摘した。

「GDPの数字は量的緩和解除の追い風になっていると思うが、来月の解除はまだ早いか」との質問に対しては「それは良く日銀総裁が判断されるだろう」とし「日銀総裁に任せるのか」との重ねての質問に対しては「そうですね」と答えた。

小泉首相は、昨年11月に「(量的緩和解除は)まだ早いのではないか」と述べていた。また、福井日銀総裁が2月9日の会見で量的緩和解除に一段と踏み込んだ発言をしたことを受けて10日には「よく状況を見極めてもらいたい。デフレ状況を脱却したかどうか、そのうえでの判断だ」としていた。

ロイター「量的緩和解除、日銀総裁に任せる=小泉首相」

いやな予想に限って当たるんですよねぇ・・・。

[sports]トリノオリンピック・男子フィギュアスケイト

を見ていてふと思ったのですが、1回転から3回転までを「シングル」、「ダブル」、「トリプル」と呼ぶのに4回転になると日本語になって「よんかいてん」と呼ぶのに違和感はありませんか? 解説者が古株のMacユーザだったら「クワドラプル」って呼んでくれるのかなぁ・・・。

#部屋数もそうですよね(1LDK、2DKなど)。一部屋だと「ワン」ですが、二部屋だと「に」が「トゥー」を上回り、三以上は日本語読み。どなたか理由をご存知の方いらっしゃいますか?

これだけではなんですので、フィギュアにご関心の向きにアレクセイ・ヤグディン(ソルトレイクシティ金メダリスト)のインタビューをご紹介しておきます。一芸を極めた人の話は他芸においても大いに参考になり読んでいても楽しいです。

本日のツッコミ(全13件) [ツッコミを入れる]
すなふきん (2006-02-18 10:28)

同じことを何度も書くようで申し訳ないのですが、私はやはり世論もマスコミも今の回復傾向は「構造改革の成果」だという思い込みから抜け切れていない、というよりその信念をより強めているwのではないかと危惧するんですね。でもって、優先順位からすればデフレ対策なんてのは脇役であってどうでもいいぐらいにしか思ってないんじゃないですか。だから日銀が緩和解除ほのめかしても反対意見はほとんど出ないみたいで。逆に早く銀行利子上げてくれー、とか思ってるんでしょう。その割には日銀の発言と株式市場の動きが連動してるように思えてしょうがないのは皮肉なんですが。とくに外人は緩和解除警戒してるようにしか思えないんですが、このへん当たってるんでしょうか?

Baatarism (2006-02-18 19:15)

全くエントリーと関係ないネタですいませんが、最近、電気用品安全法の猶予期間が4月で切れるのに伴い、中古製品が販売できなくなることが問題であるという記事が出ています。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0602/14/news017.html

この法律は2001年施行で5年間の猶予期間があり、その間に告知が行われたということですが、今になって大騒ぎになっているということは、一般の国民の立場から見ると十分な告知が行われなかったとしか思えません。何故このような事態になってしまったのでしょうか?

Baatarism (2006-02-18 21:37)

今度はエントリーの内容にレスします。

>とまあ中川政調会長の発言を追いかけてきましたが、リフレ政策と構造改革政策のキメラを見るようでwebmasterは落ち着きません。

そもそもリフレ政策と構造改革政策は両立できるものなのでしょうか?それとも矛盾するものなのでしょうか?僕は需要の増大を目指すリフレ政策と供給の増大を目指す構造改革政策は、うまくやれば両立可能なのではないかと思うのですが。
bewaadさんは「キメラ」という言葉を使っていることから考えて、この2つの政策は相容れないものと考えていると思うのですが、その理由は何なのでしょうか?

sweetfish (2006-02-19 00:07)

 今日は盛り沢山ですね。

 残念ながらメダル騒ぎが出来なくなっているようですが、その埋め合わせ?でこのような記事が出てくるのは、日本のマスコミの一片の良心のようなものを感じます。フィギュアの伝統芸っていう発想は意外でした。
 ついでに、「オシムの言葉」読みました。おっしゃるとうりの良書でした。

 解除の判断は日銀が行うのは良いとして、解除後に想定される物価と経済の数字はほしいですね。
 連休前に解除し、小泉内閣後に金利を上げたとして、2007年の春でもGDPデフレーターがマイナスだったら、さて日銀はどう動くでしょうか?

 1番イチローが一番野球が上手いから、ベンチはフリーにやらせて、2&3番が早いカウントから動かないようにするってことですか?確かに一番得点の匂いがします。

 成長率ですが、当方のイメージは平均値で2%くらい(労働が-0.5%、資本は政府分は減って+1.0%、TFPは貯蓄を崩して+1.5%)で、2005年から2030年にかけては資本の寄与度が1.5%から0.5%くらいに減少していくかなと。
 ただ、25年後というのは大恐慌の時期に神武景気を考えるというのは極論ですが、論点に対する認識を数字で出しただけのもので、むしろ5年毎とかにでも検証することが重要かと。

 おもしろい論点ばかりで色々思いつきはあるのですが、長くなったのでこの辺で。

bewaad (2006-02-19 20:49)

>すなふきんさん
きっと小泉総理もそう思っていて、だから信じちゃいけないよと(笑)。やっぱり今の世論は構造改革支持ですから。

市場の動きについては、ドラめもんさんやbank.of.japanさんが最近よくフォローされていますが、ご指摘のような動きであるように思います。

bewaad (2006-02-19 20:54)

>Baatarismさん
電気用品安全法については本日(19日)のエントリに書きましたのでご覧ください。

リフレ政策と構造改革政策との両立については、一般名詞としてのそれであればともかく、小泉総理やその支持者が指向するものでは無理でしょう。ここは多くの方と意見を異にする点ですが、私は例のジェノヴァサミット発言から小泉総理の信念は変わっていないと思っています。景気が回復したら改革する気がなくなってしまうという考えと両立するはずもないですよね?

ちなみに為替介入等については彼の関心からはずれ、かつ、正面から彼の信念に歯向かうようなものでなかったがため、その存在を許されたのだと思います。

bewaad (2006-02-19 21:05)

>sweetfishさん
素人が美しいと感じる動きの根底にはそういう基礎があるんだろうなぁと>フィギュア。ミーシンが言うとおり、プルシェンコの強さも究極的にはそこに立脚しているのでしょう。

解除した後で悪くなった場合の対応は、ゼロ金利のときを見れば予想がつきます。何かの外部要因にかこつけて戻すのではないかと。

成長率は自分で計算する根拠もないので、エントリのように人の意見を引いてごまかしてます(笑)。

Baatarism (2006-02-20 09:54)

>bewaadさん
まあ意見が違うのは分かってますが、だとしたら何故小泉首相は任期中にデフレ脱却を目指すなんてことを言ったんでしょうか?
景気が回復したら改革する気がなくなってしまうという考えならば、景気回復に繋がるデフレ脱却など言うはずもなく、むしろ景気がこれ以上回復しないように、引き締め政策をもっと強めてくると思うのですが。
僕は小泉首相は改革には熱心だけど、景気については中立的で、好景気だろうが不景気だろうが改革に役立つならどっちでも良いという考えではないかと思います。

Koiti Yano (2006-02-20 18:27)

Bewaadさん、トラックバックをありがとうございます。

一回だけなら「まぐれ当たり」の可能性がありますので、今後の動向も見ていくことが必要・・・ということにしておいてください。

以下のサイトに日経新聞系列の会社による2006年度の景気予測が出ていますが、こんな感じで「2006年も景気が良い&デフレ脱却も近い」というのが世間の大勢でして、矢野のように「景気が悪くなる&デフレに逆戻り」なんて考えるのは異端もいいところですので。
http://www.nikkei.co.jp/keiki/gdp/

BUNTEN (2006-02-20 22:35)

願望としてはKoiti Yanoさんの予想はハズれてほしいんですが(失礼)、ここのところの日銀関係者の言動を見ても、予想としては当たる可能性が無視できないというか当たってしまう悪寒というか…。orz

Koiti Yano (2006-02-20 22:56)

BUNTENさん
矢野もはずれてほしいと思っています。矢野自身は大変なわけですが、多くの人にとって良いことなので、そう思います。

bewaad (2006-02-21 04:01)

>Baatarismさん
デフレ脱却というだけなら福井総裁も言っているわけで(笑)。

ニュートラルというのは定見がないないし方向性を持っていないという意味ではそのとおりだと思いますが、改革を持ち出されるとどちらにもぶれる可能性があるでしょう。竹中・中川路線の弱いところは、一定の名目成長が改革には必要とすると、これまでの実績に疑義が生じる点で、そこを突かれると口ごもらざるを得ないのがつらいところです。

bewaad (2006-02-21 04:03)

>Koiti Yanoさん、BUNTENさん
さぁみんなでカッサンドラの事跡を復習しておきましょうorz


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