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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2006-03-14

[economy][BOJ]水野審議委員挨拶@滋賀県金融経済懇談会

量的緩和解除後初めてのテキストとなった日銀幹部の見解表明です(福井総裁の国会答弁はまだ議事録化されていません)。というわけでそれ関連のものから。

量的緩和政策を維持する目的は、「時代の変遷とともに変化してきた」と思います。量的緩和政策を採用した当初の2001年3月時点では、(1)金融システムの安定化、(2)金融システム不安に起因するデフレ・スパイラルの回避、でありました。金融市場の一部からは、「デフレ克服が主目的になったのは、国債買い切りオペの増額や当座預金残高目標の引上げによって『デフレ・ファイター』の役割を果たすことを宣言してからである」とか、「日本銀行が当座預金残高目標を段階的に引き上げる際、その理論武装や情報発信をしているうちに、量的緩和政策は変質し、非常にポリティカルな金融政策の枠組みになってしまった。」とみられたこともありました。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

量的緩和が金融システムの安定化を狙ったものだとはよく言われることですが、webmasterにはさっぱり理解不能です。個別の金融機関に流動性不安があればロンバート貸付で対応すればよい話で(担保が必要ですが、それは通常の買いオペでも実質的に同じことで、無担なら特融しかありません)、量的緩和の必要性は何らありません。

前からwebmasterが申し上げているように、日本語で金融政策というと日銀ならマネタリーだけでなくプルーデンスを含むかのような誤解を招いているように思うのですが、水野委員までそう思ってやいませんか? 金融政策はあくまでマネタリーポリシーであってフィナンシャルポリシーじゃないんですけどねぇ・・・。

量的緩和政策という異例の枠組みを採用した背景は、金融システム不安に起因するデフレ・スパイラルの回避でありました。現在のように金融システムがまずまず安定し、コアCPIインフレ率がゼロ近辺にあるような金融経済情勢ならば、恐らく、2001年3月に量的緩和政策は採用されなかったのではないでしょうか。2004年1月にかけて当座預金残高目標を30〜35兆円程度まで引上げた措置は、株安等を背景とする金融システム不安を回避する上で一定の効果があったと思います。ただ、2005年4月にペイオフ全面解禁に踏み切った背景には金融システムが安定したとの判断があったわけですから、30〜35兆円程度という巨額な当座預金残高目標を維持する意味は薄れていました。私は、そのような判断から、昨年4月以降、量的緩和政策の枠組みは維持しつつ、当座預金残高目標を3〜5兆円程度引き下げることを提案してきました。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

量的緩和のおかげで金融不安が治まったって? そう思うならどのようなメカニズムで金融システム不安解消に貢献したのか説明していただきたいもので。くどいようですが、流動性不安への対応ということなら必要なかったのですから。

この半年の債券市場の動きを振り返ると、昨年9月以降、ボードメンバーの情報発信に対して、政府の一部から「量的緩和解除は時期尚早である」旨の発言があったとの報道が多くみられました。これを受けて、市場参加者の間では、政治的圧力を受けて、日本銀行は量的緩和政策をなかなか解除できないとの観測が広がり、金利先高観が後退する局面がありました。しかし、その後、昨年10〜12月期のGDP等の経済指標によって、日本銀行の経済・物価見通しが裏打ちされたこともあって、政府側から3月時点での量的緩和解除を容認する声が出始めたとの報道が多くなり、2月下旬から国債イールドカーブが大幅にベア・フラット化しました。

こうした一連の動きについて、個人的には、政府要人から金融政策に注文がついたと市場参加者が捉えたことで、無用なボラティリティーが高まり、債券運用の損失額が膨らんでしまった面があるのではないでしょうか。このことは、債券相場を展望するうえでは、経済・物価見通しに立ち返ることが重要であることを改めて示唆していると思います。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

日銀の見方が正しく政府のそれが誤りだとの前提に立つもので、そのような前提に立脚した議論の意義を否定するものではありませんが、前提を当然視するのはいかがなものかと。福井総裁以下が誘導を図ったからこそヴォラティリティが大きくなったという可能性も同様にあり、その両者を比較するのが公平な判断というものでしょう。

#当事者に公平性を求めるのも無粋ではありますが。

量的緩和政策は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ以上となるまで、政策の枠組みを変更しない異例な金融政策運営であったため、債券市場では、知らず知らずに、ゼロ金利が半永久的に継続することを前提とした長期金利見通しがコンセンサスになりがちであったように思います。実際、2003年6月頃に新発10年国債利回りが0.4%台まで低下した際には、「国債バブル」が発生したほか、株式市場の一部新興市場でも2005年末に局所的な「株式バブル」が発生していた可能性があるのではないかとみています。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

出ましたバブル認定。バブルと判断すべき資産価格上昇とそうでない資産価格上昇をどう区別するのかご見識をお伺いしたいもので。

日本銀行は、昨年10月末の展望レポートを公表した時点では、潜在成長率を1%程度と想定していました。しかし、このところの株価上昇や高めの実質GDP成長率は、潜在成長率の上振れを示唆している可能性があります。民間エコノミストの間でも、「潜在成長率は+2.0〜+2.5%程度あるのではないか?」という見方が出てきました。個人的には、全要素生産性の上昇等を受けて、潜在成長率が+1.5〜+2.0%程度まで上振れている可能性は否定できないと思います。潜在成長率の上振れは、均衡水準の実質金利の上振れを意味します。

景気中立的な政策金利が、「均衡水準の実質金利」と「望ましいインフレ率」の合計であるとすると、「景気中立的な均衡実質金利」が上振れしているならば、金融緩和的である政策金利の上限も上振れすることになります。ゼロ金利の継続は、期待インフレ率上昇に伴う実質金利の低下と相俟って、金融緩和効果を増幅していきます。もっとも、ゼロ金利が長期に亘って続くという期待が過度に強まってしまうと、需要刺激効果が強まりすぎて、景気の振幅が大きなものとなり、それを受けた政策金利の変動も大幅なものになってしまう可能性があります。今後の金融政策運営において、景気の持続性という観点から実質金利の低下をどこまで容認するかは重要な課題となります。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

2段落めはおっしゃるとおり。しかし前提となる潜在成長率の把握がめちゃくちゃといいますか盗人猛々しいといいますか。全要素生産性、平たく言えば技術発達やイノヴェーション、経営効率化といったものをイメージしてもらいたいのですが、半年足らずで0.5から1%ポイントも上昇したと(笑)。まだ昨年10月の想定を間違いだと認めるならともかく、それも正しければ今の潜在成長率の見積もりも正しいだなんてことを言って恥ずかしくないのでしょうか。

また、別の観点から、中央銀行の金融政策運営において、主観的な確率分布をイメージして政策を運営するのではなく、最悪の結果だけは回避するように政策を運営するという考え方があります。これは、最大損失の最小化を目指すという意味で、「ミニ・マックス・アプローチ」と呼ばれます。これは、『2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検』の第2の柱の考え方に近いものです。

政府内では、「デフレに逆戻りするリスク」に十分に注意すべきで、金融政策を転換する時期は早すぎないようにすべきだ、との見解が多いように思います。しかし、個人的には、「デフレに逆戻りするリスク」と「景気の先行きに過度な期待が高まり、資産価格が急騰するリスク」は均衡していると判断しています。「景気の先行きに過度な期待が高まり、行き過ぎた資産価格上昇が発生するリスク」についても目配りしておくべきだと思います。「リスク・マネジメント」的な金融政策運営を行った場合でも、次第に超低金利政策を長期化させるリスクが高くなってくると思います。金融市場では、再び「デフレ」に戻らない「インフレ率の糊しろ」の議論が盛んであるが、将来の景気減速局面で機動的に対応できるマクロ経済政策として金融政策を位置付けるのであれば、「政策金利の糊しろ」は不可欠です。量的緩和解除後は、「透明性と機動性のバランスがとれた金融政策運営」を目指すべきだと思います。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

ミニマックスなら逆でしょうに(笑)。どこまでが行き過ぎでない資産価格上昇でどこからが行き過ぎた資産価格上昇とお考えかは知りませんが、これだけデフレが続いてなおデフレの害をそこまで見くびる人間が中央銀行のボードメンバーにいることをどう嘆いたらいいのでしょうか。

「政策金利の糊しろ」というのもふざけた話で、なぜかと言えば次のkoiti_yanoさんのまとめが的確かつ簡潔に説明しています。

著者は2001年年末に読んだ一つの論文のことが今も忘れられない。Lawrence Summers, "How Should Long-Term Monetary Policy Be Determined?"である。

(略)

これだけでは普通の人には何を言っているのか分からないと思うので少し解説しよう。

  1. 中央銀行は不況期には名目金利を下げて景気回復を助ける使命を担っている
  2. 通常、名目短期金利はインフレ率と正の関係にあり、インフレ率が極めて低い(ほとんどゼロに近い)場合、名目短期金利もほぼゼロになってしまう
  3. インフレ率が極めて低い(ほとんどゼロに近い)場合、名目金利を下げることができない(名目金利はマイナスにはできない)ため、景気回復を助けるという使命を果たせない
  4. そういう事態(the zero interest rate trapと呼ばれる)を避けるために、中央銀行は常日頃から2%から3%のインフレを目指しておくべきである

これがSummersの論じていることである。名目短期金利は中央銀行にとっての制御変数であるから、Summersの言っていることはまさに「制御変数は状態変数に応じて柔軟に変化できるようにしておかねばならない」ことを意味している。

「パン屋の寓話」(@ハリ・セルダンになりたくて3/13付)

つまりは論理が逆転しているわけで、適正なインフレ率や経済成長を達成しているからこそ金利に糊しろを確保する余裕が生まれるわけです。このロジックはゼロ金利解除のときにも使われましたが、その失敗からは何も学んでいないということで、学習能力のなさはもうなんと評してよいやら。webmasterはそれがなぜかを考える気も起きないので、「Baatarism仮説」をご紹介しておきます。

僕がゼロ金利解除失敗から得た教訓は「デフレ下で利上げするな」ということなのですが、日銀が得た教訓はそうではなく、「利上げしたいなら誰がなんと言おうと無視して利上げしろ」ということのようです。

だから、日銀は強引に量的緩和解除を早めたのだと思います。そしてここから予想されるのは、日銀は日銀当座預金残高の削減が終了して利上げの準備ができ次第、誰が何と言おうと利上げを行うということです。

「日経新聞「ドキュメント日銀−攻防 量的緩和解除」」(@Baatarismの溜息通信3/12付)

心の底から外れていて欲しいとは思いますが、救いがないのは外れていたところで真実は同様にろくでもないことだけは間違いないことです。

量的緩和政策を解除する際もそうでしたが、解除した「後」の金融政策運営においても、ひとつの物価指標だけを注視するのではなく、「総合判断」で行うことが基本となります。物価上昇圧力が抑制された状況が継続すると判断されるなか、「漸進的なアプローチ」によって「金融政策の正常化」を進められる可能性が高いと思います。また、バブル期に政策対応が遅れた日本銀行の苦い経験、そして、市場機能の活用が経済の活性化や構造改革を後押しするとの持論を忘れずに、「フォワード・ルッキングな金融政策運営」及び「透明性と機動性のバランスがとれた金融政策運営」を行っていきたいと思います。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

バブル期に政策対応が遅れたのは事実ですが、その際には著しいマネーサプライの増加があり、いわゆる過剰流動性の問題が生じていました。マネーサプライ伸び率に回復の兆しが何ら感じられない現在、バブルの苦い経験を持ち出すのは筋違いもいいところです。他方、バブルをつぶすために過剰な引締めを行ったことや、先に触れたゼロ金利解除の苦い経験は言及すらされずですか。見たいものしか見ない姿勢もここに極まれり。

ところで、CPIだけをみて量的緩和を解除したことと、「ひとつの物価指標だけを注視するのではなく、『総合判断』で行うことが基本」との見解がどう矛盾なく水野審議委員の脳内で両立しているのか、webmasterには不思議でなりません。

なお、量的緩和解除と直接の関係はありませんが。

世界経済は好調を持続するとみられますが、財政再建は、その進め方によっては、景気をオーバーキルするリスクがあります。主要国の中央銀行は、こうした先行きのリスクにも配慮する必要がありますが、現時点では、潜在的なインフレ懸念に対応するため、「金融政策の正常化」を目指していると考えられます。中央銀行の最大の目標は「物価の安定」ですので、インフレ圧力の高まりが懸念される状況が続けば、海外の中央銀行は金融引き締めを続けざるを得ないのではないかと思われます。

「最近の金融経済情勢と金融政策運営」──滋賀県金融経済懇談会における水野審議委員挨拶要旨──

他人の領分に偉そうな講釈を垂れる前に、「金融政策の正常化」とやらによる景気をオーバーキルするリスクにも目を向けていただきたいものです。

本日のツッコミ(全8件) [ツッコミを入れる]
Koiti Yano (2006-03-14 08:17)

日銀には「中央銀行にとって何が状態変数(通常はインフレ率であって資産価格ではない)なのか」についての混乱があると思います。

紹介したSummersの論文は明確で「ああ、Summersって(少なくとも経済学者としては)有能なんだな」と思いました(個人的に好きかと聞かれると矢野としては困りますけど^^;;)。

・・・というまじめなネタを考えたんですが。

いや、webmaster、そんなことよりも山田優ちゃんのALLIEのCMはご覧になりましたか!いや〜今年もせくしーなCMができましたよね。
http://www.kanebo-cosmetics.co.jp/allie/html/
次期日銀総裁には山田優、副総裁にはエビちゃんと長谷川潤、委員に太田在を選出することを進言します!

Baatarism (2006-03-14 09:48)

Baatarism仮説と命名されてしまいましたか。(苦笑)
ただ、あの仮説の元ネタは日経新聞の記事なので、もし間違っているのであれば、日銀には日経新聞に抗議してもらいたいところです。w

ただ、こうでも考えないと日銀が量的緩和解除を強引に3月に前倒しした理由が説明つかないんですよね。資産バブル対策が理由ならば、今の状況では解除が一ヶ月遅れたくらいで大きな差があるとも思えないので、それだったら市場や政府の流れに沿って4月解除を選ぶと思うんですよね。

pon (2006-03-14 12:16)

自民総裁選までに金利を上げたいというのも、日銀にとってはあるでしょう。
次の自民総裁が小泉首相みたいに比較的日銀に対して友好的であるとは限りません。

いろいろ考えると、今回の緩和解除は、日銀にとっては当然の判断だったのかな、と理解できます。

Baatarism (2006-03-14 12:44)

>ponさん
実はBaartarism仮説(笑)では、何故解除が3月でなくてはならず、4月ではダメだったのかという疑問に対する理由付けが、まだ弱いと思っていました。
日銀が自民党総裁選を睨んで8月までに利上げをしたがっているのであれば、誰がなんと言おうと無視して3月に量的緩和解除を行った理由が説明できますね。ドラめもんさんが以前指摘したように、4月解除だと8月利上げはスケジュール的に難しいですから。
さらに8月までに日銀が利上げをした場合、この仮説が妥当であるたことが立証されます。
というわけで、この仮説をBaatarism-pon仮説と呼んでよろしいでしょうか?(笑)

bewaad (2006-03-15 03:49)

>Koiti Yanoさん
混乱していればまだましといいますか、資産価格だと迷いなく信じていたら厭ですが、その可能性が否定できない気も(笑)。

サマーズのキャラは前に当サイトでも取り上げたことがありますが、相当嫌味なキャラのようで(笑)。

ALLIEのCMはよいのですが、売り上げはANESSAに負けるんだろうなぁと思うと悲しくもあり。ところでその人選では、押切もえファンから石投げられませんか(笑)?

bewaad (2006-03-15 03:52)

>Baatarismさん、ponさん
正直なところを申し上げれば、政府与党から異論が出たからこそ、という点も無視できない気がします。彼(女)らの頭の中では、中央銀行の独立性が手段ではなく目的になっているでしょうから。

小僧 (2006-03-16 00:27)

ネタです。

「いちゃもんを付けられたくない」の言い替えとしての独立性と主体性について。
``バブル''というイケイケドンドンな``態度''について。
後付けの短評とその「科学」性について。

bewaad (2006-03-16 07:33)

>小僧さん
ネタをネタとして見抜けないメディアの程度について(笑)。

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いつもの気軽なマイナー小ネタblogに戻りたいんですけど、量的緩和解除にまつわる話題がなかなか途切れてくれないので、困っています。 で、今日は日銀の水野審議委員が「政策金利の糊しろ」が必要だと述べたという話題について。 金融市場では、再び「デフレ」に戻らない..


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