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2006-10-13

[politics][media]週刊誌の記事に基づく国会質問への批判

11日の参院予算委員会で、民主党の森裕子氏の質問に、安倍首相が怒りをあらわにする場面があった。

森氏の質問は、今週発売の週刊誌の報道を取り上げたものだった。

「私もさっきもらったばかりで、よく分からないが」と切り出した森氏は、「『安部晋三は拉致問題を食いものにしている』という週刊誌の記事だ。事実関係についてどう考えているか」と問いかけ、首相に記事の信憑性をただした。

首相は顔をこわばらせて答弁に立ち、「まず、よく分かっていないことを質問しないでいただきたい。私はいちいち、そうした記事を読んでいない」と語気を荒げた。記事を掲載した週刊誌についても「(拉致被害者の)有本恵子さんの両親が言ってもいない、私に対するコメントを載せたことがある。その程度の話だ」と切り捨てた。拉致問題に真摯に取り組んできたと自任する首相にとって、この問題での"誹謗中傷"は許せなかったようだ。

この質問に対しては、与党側が強く抗議。尾辻秀久委員長が「速記録を調査の上、適当な措置を取る」と引き取った。だが、引き続き質問に立った森氏は、「私の質問の趣旨がよく伝わってなかったようだ。『事実無根である』と答弁すればそれで済んだ」としれっと言ってのけた。

民主党では、出所の不明確な電子メールを根拠に今年2月の衆院予算委員会で質問した永田寿康氏が、議員辞職に追い込まれた。国会の信用低下を招いたとして、党もダメージを受けた。

週刊誌の記事を右から左に取り上げた森氏の質問は、永田氏のケースと本質的には差はないと言っていい。永田氏が本物と信じて質問したのに対し、最初から「よく分からない」と言いながら質問した森氏は、さらに悪質だと言える。

(略)

民主党にとって、偽メール問題はもう過去のことなのか。有権者が未熟な国会論戦に愛想を尽かすような事態を招くことになれば、日本政治にとっては大きな損失となる。

(吉山一輝)

読売「民主・森氏、週刊誌根拠に質問 首相憤慨/偽メール問題教訓生かせず」

マスメディアの事実誤認報道を前提とした国会質問に苦しめられることも少なからずある霞が関の住人にとっては、個人的利害のみを考えるならうれしい論調ではありますが、本当にそれでいいの、と不安にもなります。まず、この記事の趣旨を敷衍するなら、

  • 対象が政治家の個人的事象である場合に限らず、役所の組織的対応についても、週刊誌の記事のみを根拠として質問することは問題であるということになり、また、
  • 週刊誌の記事に限らず、新聞記事のみを根拠としても質問するということは問題ということになります。

いや、そうではない、役所に対してはかまわないんだとか、新聞記事ならばデスクがしっかりチェックしているのでどんどんそれらに基づいて質問してくれというなら、明らかにダブルスタンダードです。いや、そうしたダブルスタンダードに無自覚に準拠しそうな気がしてならないのですが(笑)。

でまあそのようなダブルスタンダードはないとして、報道を受けて「このような報道があるがどうか」という質問ができないとすれば、さぞかし野党は困るのではないかと、webmasterは自らの個人的利害を離れて言えば思うのです。世の中の情報の流通において、将来的な見込みについては様々な意見があるでしょうけれど、現時点においてマスメディアがその相当程度を担っていることは事実です。

となれば、政府に関する情報の相当程度の部分については、報道された段階でマスメディアのみが追及権を独占でき、野党はそれを指をくわえて見ていろ、といったことになってしまうわけです。野党の対策としては、極端なことを言えば、野党はマスメディアに対して、政府への批判に使えるようなネタは報道する前に自分のところに教えてくれ、などということをお願いしなければならないという妙なことになってしまいます。

問題は報道された事項を取り上げることではなく、吉山記者の言葉を借りれば「右から左に取り上げた」ことだとの主張もあるかもしれません。きちんと野党が独自に裏取りをしたものならば質問の材料としていいけれど、そうでなければ質問には使うな、と。確かに永田前議員のメール問題の教訓の一つは、質問の材料を吟味して変なネタには飛びつくなということでしょうけれど、それにしても段階に応じてのことではないでしょうか。

メール問題にしても、このような情報があるがどうか、という質問に対して事実無根だとの回答があり、それで終わっていればどこがおかしいのか、ということでしょう。そうした回答に対して、嘘だ、自分は証拠を持っていると言って泥沼に嵌っていったところがおかしいのであって、単に事実を確認する段階において求められる挙証責任と、政府の説明を虚偽であると追及する段階において求められる挙証責任は異なっているを考えるのが合理的でしょう。

結局のところ、本件は「よく分からないが」という言葉に安倍総理ともども吉山記者が釣られたということで、明らかに質問の核心ではないその部分を除けば、森議員の言葉として紹介されている、「『事実無根である』と答弁すればそれで済んだ」ということに尽きるとwebmasterは思うのですが、いかがでしょうか? 安倍総理がぶち切れるのは似通った立場に置かされることもあるwebmasterとしては感情的には理解できますが(だからといって感情をあらわにすることが是か非かは別問題ですが)、メディア自身がこの程度のことを問題視して野党の質問に枷をはめようとすることに加担するのは、いかにも近視眼的であるような気がしてならないのです。

本日のツッコミ(全12件) [ツッコミを入れる]
ひろ (2006-10-14 00:10)

ビデオ見たんですけど、誰かが言ってたようにヘンなんですよねこの質問。
出た直後ならともかく、間に日もあったのに「よくわからない」という質問者。
なんか読み方もしどろもどろだったし。。

週刊誌に書いてあるんですけど、本当のところはどうなんですか?という質問の仕方は調査能力の面から低レベルだと思いますが、許されるものだと思います。

アルベルト (2006-10-14 02:49)

原則論としては、「森氏の質問の仕方はアフォ過ぎたが、別に週刊誌の記事に基づいて質問すること自体はいいじゃないか」ということでいいんだと思いますが、これ実態というか裏側としてはどうなんですか?
あまたあるワケワカラン(ものも多数含む)記事の中から国会質問として取り上げるからには、ネタ元なり記事書いた記者なりと何らかつながりがあって、「これは臭い」と思うからこそあえて質問するのであって、例えばタイゾーみたいな議員が駅売りの週刊誌買って電車の中で読んで、「さっき読んだんですけど〜」みたいな質問したら、それは与野党問わずやめてくれと思いますよ、やはり。

通行人 (2006-10-14 03:27)

「教えてくれてありがとう。早速、週刊誌の発行元に対して法的手段をとる事について検討いたします。なお、法的手段をとる事については個人的な事柄なので、これ以上の答弁は控えさせていただきます。」って答えたら問題になるかな?

truly_false (2006-10-14 09:12)

というかミンスの質疑のセンスが問題なんじゃないかと…(↓
nikkansports.com
美しい国を逆さに読むと「憎いし苦痛」
http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20061013-
103295.html
>「美しい国」は「憎いし、苦痛」−。13日午後の衆院本会議で、テロ対
>策特別措置法改正案の趣旨説明に対する質問に立った民主党の山口壮氏は
>安倍晋三首相のキャッチフレーズ「美しい国」を取り上げ「逆から読むと
>『憎いし、苦痛』」と痛烈に皮肉った。

でも、これはさすがにアホらしかったのか、
>答弁に立った首相は取り合わず「論争」には至らなかった。

モトネタの画像(↓
中日新聞10月4日付夕刊
http://karutosouka1.hp.infoseek.co.jp/tyunichi.jpg

peace (2006-10-14 13:10)

週刊誌の記事を元に質問することは特に問題ないが、その情報の裏を取ってこないと相手にされませんよ、という所で落ち着けばいいのですが、なにやら懲罰動議云々という話はキナ臭いですなぁ。
裏を取るという意味で某週刊誌や某夕刊紙が民主党と連携して与党を攻める、という展開ならwktk出来るのですが、そういう話も聞かないですしねぇ。

talleyrand (2006-10-14 16:57)

支持率が65%(報道各社バラつきはありますが)ということで、世間が安倍氏に対して比較的好意的に捉えている中、こうした質問は結果的に民主党の足を引っ張ることになるのではないかと。
「他に質問することはないのかよ」という感情が、国民一般で共有されますと、ますます民主党の浮上は遠のくことになる気もします。
まあ、森先生の場合は、定数2なのに民主現職も2という来年の選挙に備えたものであったのでしょうが。

bewaad (2006-10-14 18:30)

>ひろさん
党の政調の事務局とか秘書に記事を教えられて急遽質問した、ということだったのかもしれません。真相は関係者のみぞ知る、ということではありますが。

bewaad (2006-10-14 18:37)

>アルベルトさん
パターンとしては、次の3つぐらいなのかな、と思います。
(1)クェスチョンタイムの例としてよく引用された、その日の生鮮食料品の値段を引き合いに出して、というものと同様に、話の枕として最近の報道に触れる。
(2)国民的な話題となっている記事について、国民の疑問を代弁する。
(3)(ご指摘のように)特定の記者との繋がりから質問する。これはさらに、
(3-1)記者が記事に出来ないようなネタを売り込む(永田前議員のメールはまさにこの例かな、と)。
(3-2)もともと多くの記者にコネがあって、党の調査能力の低さを補うために持ちつ持たれつの関係を築いている(この場合、議員の側からも記事に出来そうなネタを提供する、といった関係になります)。

bewaad (2006-10-14 18:40)

>通行人さん
たいていは記事のことは知っている(本人が不愉快で読まないとしても、秘書などの関係者はきちんと読んでいる)ので、「教えてくれてありがとう」とはなかなかなりませんが、「週刊誌の発行元に対して法的手段をとる事について検討いたします」、あるいは「名誉毀損で訴えております」という答弁はままあります。

質問者としては、「事実ではない」という言質をとれば最低限の成果は確保できたということになるので、そういった答弁でも通常は許されます。永田前議員のような「通常」でない人もたまにはいますが(笑)。

bewaad (2006-10-14 18:41)

>truly_falseさん
ご賢察いただけるかと存じますが、センスの悪さを否定しようとはこれっぽっちも思っておりません(笑)。

bewaad (2006-10-14 18:42)

>peaceさん
懲罰動議はポーズ、あるいは貸しを作るための仕込みだと思いますけれどもねぇ。本気だったら、おっしゃるとおりきな臭い話だと思います。

bewaad (2006-10-14 18:46)

>talleyrandさん
truly_falseさんへのお応えに半ば重なりますが、利巧か愚かかといえば愚かな話だということにまったく異論はありません。ただ、安倍総理に対してはともかく、役所に対してはああいった質問でも選挙民の受けはいいという話は聞いたことがありまして、トホホな気分ですorz。ま、そのノリでやってしまったのかな、と(だとすれば本当に空気が読めてないなぁ、と)。


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