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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

2005|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2006|01|02|03|04|05|06|07|08|09|10|11|12|
2007|01|02|

2007-01-01

[notice]新年のご挨拶2006

あけましておめでとうございます。昨年はいろいろお世話になりました。今年もよろしくお願いいたします。

[notice]2006年を振り返る(5)‐当サイトアクセス数分析

#本シリーズの他エントリは「『2006年を振り返る』シリーズ・ラインナップ」をご覧下さい。

まずは昨年も出した数字からいきます。年間のユニークアクセス数ですが、合計でのべ

1,158,447(対前年+501,582)(1日平均3,173.8(対前年+1,318.4))

でした。続いて各月の集計です。

ユニークアクセス数1日平均
Jan79,8362,575.4
Feb76,5392,733.5
Mar87,2622,814.9
Apr79,8452,661.5
May87,5622,824.6
Jun98,4773,282.6
Jul103,8163,348.9
Aug91,6982,958.0
Sep104,9083,496.9
Oct117,6923,796.5
Nov108,8373,627.9
Dec121,9753,934.7

3、7、10、12月と4回のピークをつけ、それぞれにおいてそれ以前のピークを上回る状態でした。1月や4・5月、8月の落ち込みは、職場でご覧いただくことが多い=長期休暇に弱い(笑)当サイトの特徴をよく表していると思います。続いて日別のアクセスランキングを見ると次のとおりです。

順位月日ユニークアクセス数理由
112/265,296「視点・論点『まん延するニセ経済学』」がご好評をいただきました。
210/245,0879/5付エントリ(「新卒就職をし損なうと一生祟るようです、やっぱり。」)に張られたfinalventさんのリンクから多くのアクセスをいただきました。
39/54,913「新卒就職をし損なうと一生祟るようです、やっぱり。」がご好評をいただきました。
412/274,80412/26から引き続き多くのアクセスをいただきました。
512/114,739天下り問題を論じた2日目です(切込隊長さんからも(リンクは張られていませんが)言及いただきました)。
612/144,574天下り問題に関連して引き続きアクセスをいただく中、「態度と大義‐Winny事件地裁判決」がご好評をいただきました。
712/124,540天下り問題に関連して引き続きアクセスをいただく中、「小松秀樹『医療崩壊』」がご好評をいただきました。
89/64,5249/5から引き続き多くのアクセスをいただきました。
912/194,495天下り問題について、山口浩さんの問題提起を受けて再度論じました。
1012/104,460天下り問題を論じた1日目です。

12月のアクセス数が多かったことを如実に裏付けているといえるでしょう。さらに、ツッコミ(コメント)数でランキングをまとめてみますと次のとおりです。

順位月日ツッコミ数
15/19100
12/23100
311/2099
44/2298
56/1468
64/1967
710/2664
86/3063
94/759
9/159

昨年同様webmasterによるものを除いていない点においてノイズが混ざっていますが、トップ10の数字は大きなものとなっています(昨年のランキングの数字を持ってきた場合、2位以下は圏外となります)。きちんとカウントしたわけではありませんが、平均的にも大きくなっているような気がします。

次は曜日別です。

曜日ユニークアクセス数1日平均
148,2402,797.0
171,8233,304.3
179,1583,445.3
175,8653,382.0
175,0153,365.7
167,9353,229.5
140,4112,700.2

土日が少ないというのは昨年から引き続いての傾向ですが、昨年曜日別ではもっとも多かった月曜日が少なくなったのはよくわかりません。祝日の影響ならば、昨年も同じでしょうし・・・。

最後に、昨年はまとめませんでしたが、はてなブックマークのコメント数ランキングは次のとおりです。

順位エントリコメント数
1「視点・論点『まん延するニセ経済学』」(12/26付)79 users
2「日本国憲法第13条、第14条、第18条、第19条あたりに抵触するような‐2006年自民党総裁選・その5」(9/10付)62 users
3「サラ金にノーベル平和賞を!」(10/14付)57 users
4「『格差』を考える 第2回:日本の所得格差は国際的に見てどうなのか」(1/19付)50 users
5「新卒就職をし損なうと一生祟るようです、やっぱり。」(9/5付)43 users
6「追い詰められたYouTube、あるいはGoogleが2,000億円の価値を認めた理由に関する一考察」(10/23付)38 users
7「経済学1.0のススメ」(11/3付)36 users
8「日本の財政の維持可能性試算‐バランスシートアプローチ」(10/6付)33 users
「社会科学系の「擬似科学」対策の各種試み」(11/29付)33 users
10「「『天下りあっ旋全廃に反対したらもう自民党には票を投じない』バトン」への懐疑」(12/10付)32 users

このようなことをあれこれ分析できるのも、ひとえに皆様方のご愛読の賜物です。引き続きよろしくお願いいたします。


2007-01-02

[science]webmasterへのお年玉?‐うれしい復刻

かつてwebmasterは、次のようなことを書きました。

#さて、あこがれの鹿野さん(ちなみに何度か当サイトで触れている、現代は情報量が多すぎて人は狭く深く情報を集め、社会的に共有される情報が少なくなりコミュニケーション不全が起こりがちである、というアイデアも、実はかつて鹿野さんの記事で読んだものです)にtrackbackします!

「『科学常識チェック』のチェック」(2005/5/11付)

ここで紹介した鹿野さんのテキストが、なんとご自身の手により復刻(?)です。

改めて読み返してみても、深い洞察に驚きです。鹿野さんご本人はもう23年前に書いたコラムで、さすがに今読み返すとちょっと恥ずかしいとご謙遜ですが、そこからのインスピレーションであれこれ今になってものを書いているwebmasterなど、大いに恥ずかしさを感じるべきということになってしまいます(笑)。

とまれ、まだお読みになったことがないという方々(が過半だと察しますが)には、大いにお薦めさせていただきたい、すばらしい文章だと思います。23年前に書かれたというのがまことに驚きといいますか、いくつかの名詞を入れ替えれば、今のテキストとしても高い評価に値するものでしょう。

[joke][politics]日本の真髄3選

山口浩さんからは天下り問題についての示唆に富むエントリをお寄せいただいているのですが、そちらへの対応を差し置いて別のネタに食いついてしまいます。

今年から、「美しい国」作りのアイデアを国民から募集するプロジェクトが始まるらしい。2006年12月31日付の讀賣新聞に出ていたのだが、「首相がイメージする『美しい国』に、具体的なイメージがわかないとの指摘も多く、コンクールなどを通じて国民から直接アイデアを募ろうという試み」だそうだ。

(略)

「日本の真髄100選」。なんともすごいタイトルだが、こういうことらしい。

着物やゲタ、初詣でやおせち料理、ひな祭りや七五三などの伝統文化や慣習が候補として想定されそうだ。「新幹線」や「省エネ」など日本が誇る技術力、日本人の美徳や謙譲の精神の具体例なども含めて広く募集したい考えだ。

ふうんなんでもいいわけね。それなら私もというわけで、100は無理だが5つぐらい考えてみた。

「「美しい国」の真髄5選」(@H-Yamaguchi.net1/1付)

山口さんがお考えになった5つの真髄が何かはリンク先をご覧いただくとして、webmasterもいろいろ考えてみました。発想の貧困ゆえに3つしか思い浮かびませんでしたが・・・。

裏切り
ご恩がなければ奉公なし、何度も裏切るとはいろんな者から必要と認められ受け入れられる証として誇りでもあったはずのわが国の価値観が、支那の一思想、それも女真族に押し捲られていじけていた時代のそれを徳川幕藩体制を固めるために輸入して以来、「貞女は二夫に従わず、忠臣は二君に仕ず」などと入れ替わってしまったのは嘆かわしい限りです。現政権になってすぐに、造反組の復党を受け入れたことを見れば、きっと総理もこの価値観の復権を願っているのだとwebmasterは信じています。
幼児性愛
最近では多くの外国の陰謀が暴かれ、「美しい日本」への妨害工作の存在が明らかになっているのですが、未だ告発がなされていないのが、児童ポルノ規制による文化侵略です。わが国が世界に誇る「源氏物語」でも、光源氏が紫の上を幼少の頃から拉致監禁していたわけですが、このままでは近い将来「源氏物語」を待つのは発禁か黒塗りということになってしまいます。断固として児童ポルノ規制は拒まなければならないでしょう。
中身より外見重視
天皇家の祖である瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)は、子孫の長寿より相手の美しさを選んだ結果、木花咲耶姫(コノハナノサクヤビメ)を娶り磐長姫(イワナガヒメ)を親元に送り返しました。皇室の存続が国民的関心事となっている現在、その祖に価値観を見習うのは急務といえましょう。竹内一郎「人は見た目が9割」が注目を集めたのもこうした集団的無意識の作為でしょうし(有識者からはそうした本ではないとの指摘がありますが)、何より目指すは「『美しい』国」なのですから。

[WWW][book]多くの人々にとっての2006年の本

blog上で発表されたもののほか、マスメディアをも網羅するためになるリンク集ですが、当サイトにもリンクを張っていただきました。

「ブロガー」にてご紹介のリンク先を一通り拝見しましたが、佐藤優「自壊する帝国」は今からでも買って読もうと思いました。

本日のツッコミ(全10件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>kogeさん それでは裏切りが悪いことのように描かれてしまいます(笑)。やはり裏切り・変節とは「再チャレンジ」であ..]

小僧 [新年快樂! 流通している文字の量で情報量を評価すればそうなるでしょう。 さて、シャノンのエントロピーやコルモゴロフの..]

bewaad [>小僧さん 確かに情報エントロピーでみれば、名目(?)情報量ほどには増えていないのは確かでしょうし、狭い分野で情報を..]


2007-01-03

[joke][BOJ]フィナンシャル・タイムズの2007年予測

12月: (略)
@東京。日本の消費者物価が前年比0.04%高に上昇。日銀は、これで日本経済は駆け足のハイパーインフレに陥ってしまったと警告し、金利を10%に引き上げる。

gooニュース(フィナンシャル・タイムズ)「2007年のアジアはこうなる?? フィナンシャル・タイムズ(2)」

いちご経済/経済学板経由ですが、こういうグローバルスタンダードに基づく日銀への冷たい目線は、ぜひとも国内標準になってほしいものです。

#国内標準になるという予測は、ジョークとしても荒唐無稽で成立しませんが(笑)。

[misc]吉澤ひとみ、モー娘。卒業を発表

歳のせいかモー娘。ネタにそもそもついていけなくなりつつあるのですが、これでついていこうという気もなくなりますねぇ・・・。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

通行人 [FTの2007予測。他の件は一目で笑えるのに、これだけは妙にリアルなのは何故でしょう。金利が10%でなく1%だったら..]

bewaad [>通行人さん 12月、というのが最大のジョークで、現実はそんなにゆっくりはしていないというような気が(泣)。]


2007-01-04

[government][book]森田朗「会議の政治学」

年末年始の休みを利用した積読処理の中で、一番面白かったものです。審議会等に委員として参加する側からの審議会の分析ですが、本書でいう事務局側から審議会に携わったことのあるwebmasterからみても、その中身はおおむね納得できます。

具体的な内容としては、

  1. 第一章は「会議の政治学」として審議会の場で起こる出来事を分析し、
  2. 第二章は「会議の行政学」として事務局がどのような役割を果たしているかを解き明かし、
  3. 第三章は「会議の社会学」として審議会が世間でどのように受け止められているか、とりわけメディアとの関係に力点を置いて見解を疲労披露(1/6訂正)する、

構成となっています。

著者自身が何度となく、審議会に隠れ蓑としての性格があるのは否定できない、としていることからも、審議会というものを否定的に見て、本書で描かれているような運営の実態についても、何らかの詐術、あるいは非効率な営為として批判する向きも多いかもしれません。しかし、著者は審議会を基本的には肯定的に評価していることを抜きに論じるのは、webmasterはフェアでないように思います。

審議会の存在意義について、著者は最終的な政治の場への決定の負荷を減らすための「前さばき」の場として形成されてきた人間社会の知恵(p179)としています。ここで言う「知恵」とは、政治的には立法府等の政策決定の場の質を高めるということですが、会議のあり方として政治的色彩を抜くなら、時間コストの評価が低い組織における会議ほど、非生産的・非効率的なものはない。たしかに時間をかけてじっくりと皆が納得するまで議論をすることは、有意義なことではあるが、その機会費用が大きいことは忘れてはなるまい(p175)という問題意識への対応とみるべきでしょう。

つまり、著者の言う会議の手続や運営体制が仕組として洗練されている(p4)というのは、限られた時間の中で、何らかの答えを出すという目的に向けて効率化がなされたことに他なりません。確かに、そうした効率化がなされた結果として、本書で描かれているようなさまざまな運営術が編み出され、ときとして議論を形式的なものとすることもあったでしょう。それは、この目的を達成するために必要なコストというべきものです。

今となっては、このコストは意味のないものであるかのごとく受け止められる場合も多いのは事実でしょう。では、このコストを捨て去ることで、あわせて目的が達成されなくなることをどう捉えるのか・・・従来型の審議会(ないしそれに類似した運営がなされる会議)ではない新たな合議体形式を模索するにせよ、本書はその成果を測る物差しとして、きわめて有用なものであるとwebmasterは思います。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]

一国民 [年末年始、休んでいるブログが多い中、お疲れ様です。 上記構成紹介の部分、3. ... 見解を「疲労」→「披露」と思い..]

bewaad [>一国民さん ご指摘ありがとうございました。訂正させていただきました。 意味ありげな変換ミスは、無意識のなせる業(..]


2007-01-05

[economy]元橋一之先生らによるTFP推計

econ-economeさん(1/5訂正)経由ですが、3点ほど。

第1点ですが、日本においては非製造業のTFPが低いというよくある指摘が実証されています。

日本の産業別競争力を生産性によって他国に対してベンチマーキングすると、一般的に製造業においてその優位性が高いことが分かった。特に、エレクトロニクス、輸送機械、精密機械などの組み立て型産業において高い生産性レベルにある。その一方で建設、金融・保険、電力などの非製造業において日本の生産性は低くなっている。生産性レベルが高い輸出型産業と低い内需中心の非製造業が共存する日本経済の二重構造がここでも確認された。その背景には非製造業における規制改革が十分に進んでいないことが影響していると考えられる。1990年代後半以降、電力・ガス、電気通信、小売などの業種において規制改革が進み、生産性への影響も観察されているが、OECDの調査によるとOECD諸国において日本の規制レベルはまだまだ高いものとなっている。マクロレベルの生産性に対しては、医療サービスや教育などの公的サービス分野についても、適切な競争メカニズムを導入して生産性の向上を図っていくことが重要である。

生産性の国際比較による産業競争力のベンチマーキング

しかしながら、TFP推計手法をみると、ソロー残差の拡張のようなもので、生産成果から資本コスト、労働コストを差し引くことに加え、原材料コストとエネルギコストを差し引いて求めているようです(webmasterが素人であるゆえの誤読であるならご指摘いただければ幸いです)。この推計手法ですと、需要が細って稼働率が下がるような場合にも、それが諸コストの低下に反映されない限りは、TFPの悪化という形で表出してしまうのではないでしょうか。

日本の個別分析において、ほとんどの産業において80年代に比べて90年代が大いに減速している(Figure 5)のも、このことを裏付けるのではないでしょうか。RBC的には因果関係が逆で、TFP低下が平成大停滞をもたらしたということになるのでしょうけれども。

もちろん比較優位に相対的に特化している輸出型産業は、そうでない非製造業に比べてTFPは高いものであるとはwebmasterも考えます。しかし、絶対水準を比較するに当たっては、上記のような需要面に起因するブレを除去しない限り、需要が不振であった産業分野のTFPを過小評価してしまうおそれがあるともwebmasterは思うのです。貿易財・サービスに比べて非貿易財・サービスの効率性が劣るのは、比較劣位が残ることから必然であって、それを「日本経済の二重構造」というからには、このようなあるべきTFPから見ればノイズに当たる影響をきちんと除去した上での国際比較による検証が必要でしょう。

第2点ですが、上記のような推計手法であることの反射的効果として、各国の労働コストが集計されています。具体的には日米中台韓の5ヶ国(地域)での相対価格が産業別に集計されているのですが(該当論文のtable 5)、日米比較を取り出しても、全32産業アメリカの方が高価なものは2産業、日米が等価なものも2産業ということで、残る28産業は日本の方が労働コストが高いということになっています。

#当然ながら、他の3ヶ国(地域)に対しては、全産業において、日本の方が高くなっています。なお、デフレによる労働分配率高止まりの影響もあるでしょうから、自然体でこれほど日米格差があるかについては、留保が必要でしょう。

主として労働法制の違い(アメリカの方が労働者保護が薄くその分だけ賃金が安い)と移民の存在によるものではないかとwebmasterは推測しますが、とまれ、財界の労働コスト引下げ要求はこの辺りに起因するものと考えてよいでしょう。先日も書きましたが、これは本末転倒であって、少なくとも製造業についてはより資本集約・技術集約型にシフトしていく「構造改革」が必要だとwebmasterは思うのですが・・・。

第3点ですが、先にも触れた日本の個別分析をみると、1980-2000の分析期間における産業別平均TFP上昇率において、"Government"が"Electrical Machinery"、"Communication"、"Motor Vehicles"に次ぐ第4位につけています(Figure 1)。どこまでが"Government"に含まれるのかがわかりませんし、絶対水準としてどうかという議論は当然あるでしょうけれど、役所が非効率だとは限らないことのひとつの証拠になるのではないでしょうか。少なくとも、"Electrical Machinery"ら3産業以外から、リストラが足りないなどと言われる筋合いはないよなぁ(笑)。

#先にも触れた国際比較では、なぜか"Public service"("Government"はないのですが、これが相当する事項でしょう)は項目だけ掲載され数値が掲載されていないのですが、それがどういった数字になるのか、気になるところです。

[WWW]雪降らず 二十世紀は遠くなりにけり(字余り)

1/2に引き続いて、宿題を放り出して山口浩さんの別のネタに・・・。

先日に引き続き、ゼミ選考のために集めた学生のエッセイ第4弾。今回はすっぱいのと甘いのと。

まずは1つめ。

カップラーメン+?

by P.N ☆

中学時代、友人5人と「カップラーメンにお湯を入れる代わりに他の飲み物を入れたらどうだろう?」と言う話になり、好奇心からお湯の代わりになりそうな飲み物をカップラーメン(醤油)に入れて食べたことがある。

こうして始まった新しいカップラーメンの開発(?)
最初に入れたものは牛乳だった。

(略)

これが成功したので他のものでも試してみよう!ということで近所のスーパーへ行き、アセロラジュースとお茶を買っていざ挑戦。

(略)

そこにいた全員がやる気をなくし、たった2回の挑戦ながら『やっぱりカップラーメンにはお湯だよね』という結論に至り、カップラーメンへの挑戦(?)は幕を閉じたのだ。

(略)

カップラーメンを食べるとき、いつもこの時のことが『ふっ』と蘇り、笑いがこみ上げてくる。
そして中学校のアルバムを開いては思い出に浸っている。

ぐえぇ。まったくなんてことを。
牛乳はともかく、アセロラジュースとは。しかも元のしょうゆ味の上にそれを足すと。中学生とはいえ、日本が誇る発明品であるカップラーメンに対してこのような狼藉に及ぶとは、まさに神をも恐れぬ振る舞いであろう。

「学生のエッセイ その4」(@H-Yamaguchi.net1/4付)

うーん、あの一世を風靡した(?)「爆裂! カップメン」(続き物になっていますが、1ページ目から2ページ目へのリンクのみURIが誤記されていますので、当該ページには直リンクを張っておきます)は、もはや知る人も少なくなってしまったのでしょうか。書籍化もされたんですけれどもねぇ・・・。

#ちなみに、アセロラジュースはまずいものの、お茶は結構いけるそうです。アセロラジュースで挫折せずにお茶まで試していれば、山口さんの教え子の若き日の挑戦はさらに続いたのかもしれません(笑)。

ひょっとして、当サイトの読者におかれましても、「爆裂! カップメン」や、さらには例えば先行者なども、ご存じないという方々のほうが多いのでしょうか?

[sports][media]箱根駅伝中継

5区を走った順天堂大学の今井選手を「山の神」と呼ぶのが普及しているようですが、人に対して「山の神」と使う場合には、恐妻家が用いる配偶者の呼称というのが一般的なわけで、マスメディアの言語センスも、いまさらながらではあるものの、いかがなものかとwebmasterは思うわけです。もうほとんど忘れてしまいましたが、例えば「一緒に並走」のような重言がやたらとあったようにも感じましたし。

本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>solidarnoscさん ↓のような試みもあり、あれこれ努力はなされているのだと理解しています。 http://..]

Rosewood [>bewaadさん ご教示ありがとうございました。]

bewaad [>Rosewoodさん 実は、あの論文を読みつつ、人件費削減の程度も計量化してくれないかなぁ、とは思ってました。TF..]


2007-01-06

[economy]竹中平蔵先生の自家撞着

何が自家撞着かといえば、個別の事項についての正しい指摘が、引き続いての改革が必要との中心をなす主張の根拠を自ら否定してしまっていることを指しています。対象は「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」なのですが、個別の事項についての正しい指摘とは、

  • 日本の潜在成長率+国際的に見て平均的なマイルドインフレを実現すれば、増税なしで財政再建が可能、
  • インフレターゲティングを導入すべき、
  • 多重債務問題について上限金利規制で対応するのは間違い、

といったところです。これらは当サイトでも繰り返し申し上げていることで、webmasterも諸手を挙げて賛成する主張です。このうちの第1点が改革が必要との主張の根拠を否定しているのですが、まずは具体的な表現を見てみます。

NBO 竹中さんは、名目で4%の経済成長率を維持できれば消費税を上げなくてもプライマリーバランス(基礎的財政収支)はゼロに持っていけるとおっしゃっていますね。

竹中 必ずしも4%なくてもいいですよ、3%台だっていいんです。日本は既に実質成長率2%強ぐらいの成長率まで回復しているんです。OECD(経済協力開発機構)のGDP(国内総生産)デフレーター、つまりインフレ率は平均2.2%です。今の実質経済の状況に、OECD平均の、つまり“人並み”のデフレ克服、インフレを加味すれば、3.6%とか4%の成長はできるんです。私は普通のことをやってほしいと言っているだけなんです。

「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」(1/4)

現政権において構造改革が必要である根拠とされているのは、現在の日本の潜在成長率は1%台しかないので、1%程度のインフレ率を前提とした場合、名目で3%以上の成長率を実現するためには、潜在成長率を2%台まで引き上げる必要があるというものです。現状の分析として潜在成長率推計が適正かどうかについてwebmasterには異論がありますが、その前提を受け入れるならば、潜在成長率を引き上げるための施策=構造改革が必要だという政策割当ては妥当といわざるを得ません。

#その場合であっても、中身が構造改革=潜在成長率の引上げを目指すものとして適当かどうかについては議論があり得ますが。

しかし、竹中先生は潜在成長率(という単語は用いていませんが、「実質成長率2%強ぐらいの成長率」という表現の含意はそう理解してよいでしょう)を引き上げなくとも、名目4%成長は可能だとされているわけです。もちろん潜在成長率を高め得る諸施策は恒常的に推進していく必要があるでしょうけれども、改革だと大上段に振りかぶって行うような話ではないはずです。竹中先生は何をどうしようとおっしゃっているのでしょうか?

本テキストで具体的に言及されているのは、歳出削減が中心であるように見えます(たとえば今回の予算について新聞は非常に厳しい評価をしていますが、私はよくできていると思います。もちろん税収が増えたために組みやすかったということはありますが、小泉路線の歳出削減をきちんと踏襲しています(2ページ目)など)。竹中先生は経済財政政策担当大臣時代、財政再建にはまず歳出削減を、と主張されていたわけですから、確かに以前の言動と整合的ではあるのでしょう。

現政権での認識はといえば、少し前に紹介しましたが、平成19年度予算を前提としたプライマリーバランス赤字は9.5兆円と推計され、その解消は歳出削減のみで可能で増税が不要になってしまうのではないかという議論がありました。ふむふむ、竹中先生のご主張は現政権のスタンスとも軌を一にしているなぁ・・・とは問屋が卸しません。なぜなら、現政権の数字の前提にあるのは、2011年度に名目成長率が3%に達するという見込みだからです。

本テキストにおいては、竹中先生は次のようなことをおっしゃっています。

NBO プライマリーバランスの回復を計画よりも前倒すというような話が出てくるのは、増税派に対する牽制なんですね?

竹中 もちろんそうでしょう。経済というのは、ちょっとした傾きの変化で2年後、3年後の姿が大きく変わってくるんです。GDPの成長率が1%違うと、10年度のGDPは10%、つまり50兆円にもなる。GDPが50兆円増えると税収は8兆円増える。消費税に換算すれば4%分です。成長率が1%高まれば消費税を4%引き上げなくていい。逆に成長率が1%下がれば消費税を4%引き上げなければいけなくなる。だから、成長を追求するということは大事なんです。

「2007年を斬る: 竹中平蔵からの直言/貪欲なまでに「成長」を追求する気迫を忘れるな!」(3/4)

2%強の潜在成長率に2.2%のGDPデフレータを足して、名目4.5%成長とすれば、2011年度に達成ではなく2007年度から名目3%成長というのが政府の立場だったとしても、1.5%ポイントの差が5年間にわたって継続することになります。竹中先生と同様に発射台となる名目GDPを500兆円(2006年度)と置くとしても、この成長率の差が生み出す名目GDPの差は、2007年度の7.5兆円に始まって2011年度には43.5兆円に達し、5年間の累計では124.2兆円にも上ります。

竹中先生がおっしゃるようにGDP50兆円当たり8兆円の税収増とすれば、5年間の税収増は19.9兆円になりますから、歳出削減どころか10兆円以上の歳出拡大をしたところで、プライマリーバランス赤字は解消可能ということになってしまうわけです。改革なんて、少なくとも改革のモメンタムが本物かどうかという問いに対する明確な回答も求められます(4ページ目)というほど重要なテーマではないということを、間接的に証明してしまっているようにしか見えないのですが・・・。

このように読み解いていると、本テキスト、一見すると安倍政権にエールを送っているかのような感が漂うのですが、実ははしごを外しまくってるのでは(笑)。裏にどのような事情があるかはわかりませんが、意図的にはしごをはずしているのであれば、それがために自らの主張にも矛盾をきたしてしまっているわけで、人を呪わば穴二つといいますか。


2007-01-07

[economy][WWW]釣られるのが生き甲斐としか思えない豪快な釣られ方をする量産型魚拓(by 切込隊長)リターンズ

いちご経済/経済学板経由で。

そういうところで醜い出来事がもう一つ経済ブログ界で起こった。それは、「水からの伝言」(水にありがとうと呼びかければ良い結晶が生まれる)という似非科学的(サンマーク出版的な)道徳訓が学校のなかで蔓延していること理系科学者が極めてディセントな語り口で批判したことへの、パロディーだ。言いたいのは、官僚経済ブログとしてエスタブリッシュしているsvnseedさんのパクリ。元の「水伝」批判と言うのは、まずは通り一遍的に「それはありえない」というものでありながら、結局は科学者としての態度としてそういうものを真偽としてきっぱり分けることはできない(条件や定義のおき方によっては正しくないとはいえない)、むしろそういう態度を忘却して、絶対的事実のように科学を取り扱うことに、この「水伝」の学校道徳で使うことの問題があると言うものだった。それは、理系よりも、われわれのような社会科学系においてこそ、よりあり得るし問題足りえると思う。(俺のトピックな不当廉売では、変に1960年代までのゲームや情報を抜いた経済学が法曹界で1980年代後半から圧巻して、現実というか具体的な訴状をさほど検討せずに門前却下と言うのが続いている。)

ともかく元はディセントだった水伝批判を、 svnseedさんは単にキムタケとか在野エコノミストが経済学として偽の命題を立てているという批判に落とし込めてしまった。あれは非常に醜い。少なくとも法学部官僚の彼よりも経済学でのキャリアを取ってしまっている身から言うのはおかしいけれども、経済学と言うものに権威を置きすぎている。たしかにキムタケのキャピタルフライト論はおかしいかもしれない。しかし、既存の経済学の知識からだけで権威を傘に着て批判する。というか知識を持っているなら持っているでキムタケの言いたいことを理解してフォーマライズする能のない連中に比べれば、キムタケのほうが自頭で考えるだけよほど経済学者的ではなかろうか。ほら、リカードだって在野の商人だったわけだし。

はっきり言って怖いのは、専門性の中で生きていくなら、些細に思えることの精緻化か、あるいはトンデモにおもえるかもしれないこと、まずはワーキングペーパーなり単なる未定稿なりで出して行くところから始まり、そこで名を成し、陰で(審議会なり、あるいは純粋にアカデミックな貢献から)社会に応えて晩年に評価を得るというパスになるだろうに、くだらない連中が専門家ぶって早々に既存の、しかも彼らの嗜好と彼らに理解できる範疇で、評価をつけられることだ。あんな連中はどうでもいいのかもしれない、特に本当に専門家の中だけで生きるのならば。しかし、ゆっくりと専門の中できちんと業績を積み重ねながら一般社会に出て行こうとするときに、彼らこそわれわれの代弁者になってしまっている。(あまりにもそれはいけてないから、というまでは言わなかったけど、少しずつ今の院生レベルから引き抜いていくべきだということは某雑誌の人に既に言った。たとえば松井先生とか十分に面白く書ける人はいたわけだし。)

経済学で修士を取った今は官僚の友人がもっとお前らが啓蒙にエネルギーを使わないといけないと言われたけれども、そもそも専門自体の中でエスタブリッシュされなければ、それは単にえらくなると言うことでなくて、きちんと頭の使い方を習得しなければ、啓蒙なんてできないと思う。そして、そんなのキリがない。キリのなさ加減が、元の水伝批判のメッセージだったと思うが。(あと、更に言えば、啓蒙にエネルギーを費やして、金になるのかと。たとえば40代でああいう2流大学教授ブロガーに落ちたときに、お前さんほどの年収が稼げるのかと。それこそ、別に啓蒙に逃げなくても、十分にあんたら国の制度は院生なり留学生に理不尽な=つまりはよくわからない会計制度上の=負担を押し付けているのに。他方で内部の官僚留学生の恵まれてることよ。うちの学部はあまりにも官僚出身のドロップアウトがひどいけど。)

「くだらん」(@Advancement of LazyZoo1/3付)

webmasterが経済学の素人であることは、これまで当サイトでも何度も公言していることですし、その内容について専門の方々からご批判をいただくのは、自らの誤りを正す機会を与えていただくことなのですから大歓迎であると、これまた何度も申し上げてきております(引用文の対象であるエントリにても、本職の経済学者等から見れば、お前の書いていることもニセ経済学だ! という部分もあろうかと存じますので、加除訂正すべき点などご教示いただければ幸いですと書いております。為念)。まずは経済学の院生という(webmasterよりも相対的に)専門性の高い方にお取り上げいただいたことを感謝いたします。

しかし、その内容にはまったく納得できません。確かにwebmasterのやったことは、専門家から見れば「能のない」「くだらない連中」が「彼らの嗜好と彼らに理解できる範疇」で書いた「非常に醜い」ことなのかもしれません。ではそんなことは止めてしまえばいい、ということなのでしょうか。

現実を見れば、「きちんと頭の使い方を習得し」た「専門自体の中でエスタブリッシュされ」たれ人々による経済学的思考の普及活動が十分にはなされていなからこそ、マスメディアや、さらには政府の政策決定においてすら、少なくともwebmasterから見ればおかしな議論が少なからずまかり通っているのでしょう。webmasterから見ておかしいとは思わないような議論がほとんどであれば、当サイトで何かしら書こうという気になる話もずいぶんと少なくなるはずです。

シンプルに問題を整理するなら、webmasterが聞きかじった経済学を用いた言論活動を止めた方がよいというのは、

  • 平均的に、マスメディア等の論調がwebmasterの言論よりも経済学的に見て妥当なことが多い、
  • 「専門自体の中でエスタブリッシュされ」た人々が優れた言論活動を十分に行うので、webmasterごときがしゃしゃりでる必要がない、

場合のいずれかでしょう。前者でないとすれば、LazyZooさんご自身でも、あるいはお知り合いの優れた人々にお願いしてでもかまいませんので、ぜひ高い専門性を活かした十分な言論活動を行っていただきたいものです。そうなればwebmasterだってわざわざ時間とコストをかけてあれこれ書こうとは思わなくなるでしょうし、そもそも読み手だってそちらに流れることでしょう。そうでないならば、結果的には世に経済学的に見て妥当でない論調をはびこらせることを助長することになってしまいます。

正直なところ、bystander CPRを試みたことに対して、救急の専門医から手際が悪いと謗られたような不愉快さを感じます。手際が悪かろうと、現にそこでCPRなくしては命の危機に瀕した人間がいるなら、できるだけのことはやってみるというのがあるべき対応ではないでしょうか。専門医が到着するまで素人は手は出すな、ということでは、ほとんどのそうした患者は命を落としてしまうでしょう。

象牙の塔の中の価値観こそが重要なのであって、その余は何であろうと二の次に過ぎない、という「地獄変」の良秀的な姿勢というのは、実はwebmasterも嫌いではないのですが、そこまでの覚悟があってのご主張なのでしょうか>LazyZooさん。

[book]カタツムリには「天使の囀り」が聞こえたのか?

ちょっとばかしネタバレになってしまうわけですが、

を見て思い出したのが、

だったわけです。貴志さんの元ネタはこれだったのかしらん?

[misc]ポッキーCMあれこれ

ガッキーの映像に餓えている人々(コメント欄参照)が念頭にあったりするわけですが、こんなポッキーCMもあるんです!!

・・・これだけだとうらまれそうなので(笑)、本人による振り付け指導もありますよ、と。

本日のツッコミ(全46件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>nennpaさん 主観的観測では、理系よりも文系の方がその手の活動は活発でないように思います。学問体系としての歴史..]

Naoki [bewaadさんもガッキーにヾ(*´Q`*)ノ萌え〜のご様子ですな(笑)]

bewaad [>Naokiさん koiti_yanoさんがエビちゃんエビちゃんと言ってた頃からですから(笑)。]


2007-01-08

[government]山口浩さんの「民間の知恵」について(上)

というわけで、これまで先送ってきた山口さんのエントリを取り上げたいと思います。本日はエントリ本体、明日はエントリに付された(webmaster宛の)コメントを取り上げます。

(略)それから、公務員の仕事の中には、実はけっこう単純な作業だったりして、付加価値が高くないものがかなりある、というのも。となれば、公務員の業務の中でどの仕事をどの職種の人に担当させて、どの職種にどのくらいの給与が必要かをきちんと精査する、というのはまず必要のはず。

どこをどういじれば質の低下を最小限に抑えられるかとか、どこはキープしなきゃいけないかとか。役所に行くとたいてい島型にレイアウトされた机から離れて窓際に一列に並んでる机があるがあそこに座ってる人は全員必要なのかとか、役所のアルバイトは楽で待遇がいいというのはおそらく単なる都市伝説ではないはずだとか、学校給食のおばさんは大事な仕事とは思うが給料は本当にあの水準まで必要なのかとか、勲章待ちの外郭団体の役員さんなんかは肩書きだけあればいいんじゃないかとか。真剣にやれば、かなりの余地があるはず。

内容がちがうから直接比較の対象にはならないが、マクドナルドは95%の従業員がアルバイトだがそれでもちゃんと回っているし、同様にほとんどの店員がアルバイトである多くのコンビ二なんかでも、単なる物売りだけでない数多くのけっこう高度な業務をこなしたりしている。TDRのアルバイトのモチベーションの高さは有名だ。航空会社の契約制スチュワーデスの対応が悪いという話も聞いたことがない。どれも、区役所の窓口での「袖カバー・スリッパ組」のもたもたしてる割にぞんざいな対応よりはるかにいい。少なくとも、質は金額によってのみ決まるのではない、という点で参考になるのではないか。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

非常勤職員をどこまで取り入れるかは、それこそ民主的政策決定プロセスで決めればよい話ではありますが、webmasterの個人的経験則ではかなりの程度それが可能だとは思います。トレードオフは2つ思いつくのですが、

  • 時給制だとかえって高くつく、
  • 管理職には管理能力としてより高度なものが求められる、

ということでしょう。前者については、非常勤で代替可能な職務‐コピー取り、ワープロうち、調査、諸連絡要員、等‐として平均的ないわゆるキャリア(国I事務系合格組)の係員を想定し、その勤務のモデル例として月320時間勤務(定時8時間@1日×21日@1月+時間外勤務150時間)を仮定した場合、派遣の一般事務職(関東)の昨年12月平均の時給1,522円を乗じると48.7万円の月給となります。年収に換算すれば584万円ですが、キャリアの係員でこれほどの給料をもらっている人間はいません。

後者については、現状、霞が関の管理職は均質的な人間関係に依存して組織を管理している面があり、端的な例を出すならサービス残業であろうと「キャリアなら当然だろ」というプレッシャー(口に出すか出さないかはさておき)に頼っていることは否めません。そうした前提が崩れた場合、より高度な組織管理が求められるわけで、現状において他の案件に振り向けている労力を割いて管理に集中する必要がでてくるでしょう。それが許されるならばよいのですが、ということになります。

#「他の案件」って何よ、というのは後でまとめて論じます。

続いて、人事異動の間隔を長くするというwebmasterの私案において、それだと縦割りが進むだろうという見込みへの反論です。

事情に疎いのだが、「縦割り」というのは、これまでキャリア官僚が短期で人事異動を繰り返していくことの弊害として指摘されてきたことではなかったのか。(略)

(略)

つまり、人事異動の間隔を短くしても長くしても縦割りが進むということになる。

では民間企業ではどうやっているのか。民間企業でも、同様の問題があるところは少なくないと思う。キャリアトラック組とノンキャリア組ベテランの間の情報の非対称性に起因する縦割り問題だ。私の乏しい経験から推察するに、この種の問題への民間企業の代表的な対応は、「それをうまくこなせる人を管理者にする」だと思う。口の悪い経営者なら「甘ったれるなそれが上司ってもんだ」ということになろうか。みもふたもない話だが、たとえば忙しい中でも現場を回って担当者と直接対話する企業経営者はたくさんいる。部門横断的なプロジェクトチームでノンキャリア組にも高い視点で仕事をさせる企業もたくさんある。人事異動の間隔を短くしても長くしても縦割りが進むというのは、たいへん申し訳ないが、もはや説得力のある理屈とはいえないのではないかと思う。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

縦割りが短期の人事異動ゆえ、というのはwebmasterの管見では誤りです。この問題についてお薦めできるのは今村都南雄「官庁セクショナリズム」ですが、そこでの分析を乱暴にまとめるならば縦割りの原因は背負っているミッションの違いであって、企業で言うならば例えば研究開発部門は必要なお金をくれないと十分に業務が果たせないといい、財務部門はお金には限りがあるのだからそれをわきまえろ、と対立するようなものです。

webmasterの主観的観測で恐縮ですが、今は各部局の技官キャリアやヴェテランのそうしたミッションへの忠誠と、局等をまたがって異動して上位のポストを占める事務系キャリアとのパワーバランスにおいて、これでも相当程度縦割りは緩和されているのだと思います。客観的根拠は挙げられないのですが、現場にいる身としては、事務系キャリアまでもが今以上に個別のミッションに浸る場合、割拠はより深刻になるようにしか思えない、ということのみを申し上げさせていただきます。

もちろん有能な管理職であればそれを乗り越えられるのでしょうけれど、有能ならば大丈夫だというのはある意味当たり前の話であって、平均的に見てどの程度有能なのかというのが問題なのではないでしょうか。民間に比べて霞が関の管理職が平均的により無能だというならば、それこそ給料を上げてでもより有能な者に来てもらうべきなのでしょうけれど、実態がそうなのかどうか。これまた後でまとめて論じます。

#なお、癒着の弊害が大きくなるおそれについては、お認めいただいたものと理解しています。

続いて高齢者を現場に投入することについて、それでは作業効率が落ちるとのwebmasterの見立てへの反論です。

これもたいへん申し訳ないが、日夜がんばっている民間企業職員の皆さんの代わりにいわせていただきたい。若年層公務員の仕事が同年齢層の民間企業職員のそれより厳しいというのは、まちがいとまではいわないが、少なくとも一般論ではない。「少ない睡眠時間で連日働く」ことに関して、公務員にひけをとらない民間企業職員は少なくないと思う。彼らは霞ヶ関の人たちのように都心の公務員宿舎も深夜に公務員宿舎まで送ってくれる連絡バスもないから終電に揺られて帰ったりカプセルホテルに泊まったりするし、たとえ前の晩に明け方まで仕事をしていても重役出勤みたいなものは許されないから朝はいつもどおり9時にはちゃんと出勤したりするわけだ。

年をとると体力がなくなってきてきつい仕事ができなくなるのは誰しもそうだが、すべての仕事がそうだとも思わない。実際、多くの民間企業では、その人たちに適した仕事をしてもらうかたちで多くの中高年のノンキャリア系職員を働かせていると思う。体力がない分は経験と知恵で補うわけだ。それから、ふうふう息を切らしながらも若い人といっしょに「体力仕事」をこなしている中高年企業職員の方も少なくない、ということも付記しておきたい。

もし仮に、やはり若いうちでないと課長補佐級までの仕事はできないのだとすれば、自衛隊と同様、若年定年制を導入するという手もある。または中高年公務員間のワークシェアリング(給料も、だ)なんかも。もっといえば、後で処遇に困るような採用は最初からしないで済ませることができないかを考えることも必要かも。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

これについては、webmasterも他業態のことをよくわかっているわけではありませんが、たとえばソフトウェアハウスでのデスマーチも、あれこれ聞きかじる範囲内では、やっぱり体力的な問題ゆえに多くの人は年齢的な限界があると思うのですが、それと似通った面があると思いますと書いたように、それ自体を否定するものではまったくありませんが、やはり限界はあるのでしょう。高年齢層に適した仕事を割り振ることができればそれがいいことは否定しませんが、総定員の縛りがある以上、定年まで雇う高年齢官僚に割り振るべき仕事は、現状若年層が担っている部分に食い込まざるを得ません。

根本論としては、民間でこれだけ頑張っているのだから官僚も、ということ自体があまり健全ではないようにwebmasterは思います。先に例示した月320時間労働に12ヶ月を乗じれば年間3,840時間労働となり、ゴールデンウィークや盆暮れ正月の休暇を考えればもう少し下がるでしょうけれども、にしても年間3,000時間は越えるでしょう。一応、政府の年間労働時間目標は1,800時間ということになっているわけで、若手官僚に伍して長時間働く民間労働者の存在というのは、日本の労働環境の貧困さを示すものに他ならず、あっちが3,000時間働いているのだからこっちもそれだけ働け、というのは足の引っ張り合いでしかないように思うのです。

もし仮に、やはり若いうちでないと課長補佐級までの仕事はできないのだとすれば、自衛隊と同様、若年定年制を導入するという手もある。または中高年公務員間のワークシェアリング(給料も、だ)なんかも。もっといえば、後で処遇に困るような採用は最初からしないで済ませることができないかを考えることも必要かも。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

このご指摘については、ぐるっと回って最初の問題に立ち返ってしまった感があります。若年定年制ならば問題がなく、肩たたきであれば問題だというのは、形式的な違いをことさらに取り上げてしまっているのではないでしょうか。ワークシェアは総定員の縛りがありますし、採用抑制は結局はwebmasterの私案と同じことで、その悪影響を緩和しようという話が循環してしまっています。

となると、ここは一発、政府間競争を導入する、という大胆な案も検討に値するのではないか。もちろん、日本政府を2つ作るわけにはいかないから、文字通りの競争にはならないかもしれないが、それでもやれることはある。たとえば国と地方の間の競争や、自治体間の競争だ。後者は、電気やガスなどでよくある地域分割型競争モデルに似ている、といえようか。国鉄や電電公社など、かつて官庁の「仲間」だった組織は、これをやったのだ。市場化テストも、「官か民か」だけではなくて、「官1か官2か」というのを入れてみたらいい。競争相手の前では、今まで大問題だったあれやこれやが小さく見えてくるのではないか。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

JRにせよNTTにせよ、人員削減やら労務管理の改変が進んだのは、競争の結果ではなく、利潤追求に組織の目的を改めたことの結果です(独占市場と完全競争市場の違いは、供給される財・サービスの価格の違い(とそれに応じた需要量の変化)であって、利潤追求を旨とする以上コスト削減努力は変わりません)。民営化=利潤追求組織化により大いに「効率化」が進んだわけですが、それは何かを捨て去ったことの見返りでもあります。

その捨て去ったものとは何か。このテキストの前半で後で論じるとしてきたことでもありますが、webmasterが最近読んだ本の中に、その手がかりとなる記述がありました。

1994年に米国スタンディッシュグループが発表したCHAOSレポートは、IT業界に衝撃を与えました。このレポートでは、成功プロジェクトとは「費用」「要件実現率」「納期」の三つが計画通りだったプロジェクトであると定義されており、成功しているプロジェクトはわずか16%にすぎないと報告されています。

(略)

このような試みが成果をあげ、2003年のCHAOSレポートでは、プロジェクトの成功率は34%に上昇しています。しかしながら、その一方で失敗プロジェクトの悪化の度合いは凄まじく、費用超過プロジェクトは63%から82%に増加し、要件実現率は67%から52%に低下しています。

荒井玲子「UMLは手段」、pp3,4

霞が関住人として素直な感想を申し上げるなら、民間での成功率とはその程度のものですか、というものです。客観性のある統計データはありませんが、この成功プロジェクトの定義を援用するなら、霞が関での諸プロジェクトの成功率は100%近く、安全を見て低く見積もっても8割は超えるでしょう。

具体的には、まず「費用」は予算で上限が画されていますから、増えようがありません。少なくとも残業が増えた結果として人件費増のために補正予算を、なんて話は聞いたことがありません(笑。サービス残業がなければ「失敗」になるのは事実でしょうけれど)。「要件実現率」は、法案を例に取れば要件が実現されていなければ与党が認めませんが、与党で合意が得られないことがあればニュースになるぐらいですから、法案で言えば100本に1本ぐらいでしょう。「納期」も同様で、提出を公言した国会に出せない法案があれば以下同様、で同じく100本に1本ぐらいでしょう。

#国民の批判を浴びたら失敗と定義すればもっと成功率は下がるでしょうけれど、それは引用文でいえば納品したシステムに基づく業務がうまくいかなかった事例に相当するわけですから、官民比較でいうならその物差しを用いるのは適切ではないでしょう。

霞が関の業務においていろいろ存在する非効率性の存在意義を考えると、結局はこの成功率上昇のための備えであるということであるようにwebmasterは思います。世論の高まり、あるいは政治家による政治決断の結果、何らかの答えを出すよう求められた場合、リソース(時間にせよ、人員にせよ)が足りないから無理です、ということは事実上許されていません。そのために、ルーチンの業務に充当する人員を厚めにしておいて、いったんプロジェクトを立ち上げる必要性が生まれた場合には、それをかき集めて対処しているのが霞が関の実態です。

ですから、ルーチンの業務だけを見るならば、相当程度の余裕があることは事実です。当該業務の効率化だけを考えるならば、その余裕を剥ぎ取ってしまっても、それほど問題なく運用することは可能でしょう。ただし、それは突発的なプロジェクトへの対応余力を失うことに等しいわけですから、そのトレードオフを是としてくれるんでしょうねぇ、ということと等値です。

30〜40%の成功率とは、利潤追求を旨とする組織において、それ以上成功率を上げることに費やすコストと、成功率が上がったことによる収益増がバランスする水準がその程度だということを意味します。これ以上成功率を上げるならば、それはコストに見合わないパフォーマンス改善なのですから、民間企業では行われるはずもありません。民間並みの効率化とは、この「過剰品質」の引下げを伴わなければ達成されるものではないでしょう。

ではどの程度引き下げればよいのでしょうか。30〜40%までではない、とwebmasterは思います。というのも、民間企業には撤退の自由があり、効率的にできないのであれば止めてしまえばよいのですが、政府に対して何とかしろという要望があった際には、それは許されないからです。非効率を承知でやらなければならない部分がある以上、その分だけ効率性は下がらざるを得ないからです。

それがどれだけかは定量的にはわからないので存在の可能性にのみ言及するとしても、webmasterの100%近いという観測が当たっているなら約2/3、安全を見た80%の成功率を発射台にしても半減というのが、効率性向上の代償となる成功率の減少でしょう。あとは民主的政策決定プロセスでの判断の問題です。果たして、行政の効率化のために、どの程度の「品質」の低下が妥当だと思いますか?

#そもそも行政のやっていることは効率的フロンティアの線上にないという向きもありましょうが、以前のwebmasterの推計にせよ、先日紹介した"Government"のTFP向上率にせよ、仮に線上にはなくともその近傍にはあることをうかがわせるデータであるとwebmasterは思います。

本日のツッコミ(全31件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>同業者さん どうも非常勤は、部署によってかなり活用度合いが異なるので、半径5mなことをいうと墓穴を掘りかねない気も..]

文系の人 [> とにかく何が何でも競争入札にしろ、という流れになっています。 私の業界だと、しばしばこれで酷い目に遭うのは安く..]

bewaad [>文系の人さん 競争入札のロジは私も何度かやったことがありますが、絶対赤が出てるだろうなぁ、ということもありますよね..]


2007-01-09

[government]山口浩さんの「民間の知恵」について(下)

昨日の続きということで、山口さんのエントリに付されたConsultingさんのコメントを取り上げます。このコメントは、

bewaad氏の議論に関して思うのは、

・霞ヶ関官僚に特有の、「自分たちは非常に待遇が悪い。本来であれば(民間に行けば)もっと良い処遇が得られた」という、生涯ベースで見れば間違った認識を持っておられるということです。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

から始まる一連のものです。ポイントは、

・ただし、重要なことは生涯賃金であり、生涯賃金で見ると、霞ヶ関官僚は5億〜7億所得を得ているが。大手金融機関の幹部候補生である有名大出身者でさえ、生涯賃金は3億円〜4億5000万程度に収まるという事実は見逃すべきではない。

「民間の知恵」(@H-Yamaguchi.net2006/12/29付)

というところでしょう。民間の生涯賃金については、webmasterには特に何らかの知見があるわけではないので、Consultingさんのおっしゃるとおりであるとして以下議論を続けます。で、対するに「生涯賃金で見ると、霞ヶ関官僚は5億〜7億所得を得ている」のでしょうか。

ソースが日刊ゲンダイであるとお断りした上で紹介しますと、次のようなデータがあります。

元特殊法人労連事務局長でジャーナリストの堤和馬氏は言う。

「02年度の俸給ベースで試算した場合、年金局長時代の吉武氏は月給108万2000円をもらっていたことになる。年収は2057万円。72年に入省し、32年2カ月の在職で得た退職金は6700万円、合計3億6000万円。現在はベースが若干低くなったとはいえ児童育成協会など今後も年収1800万円の天下り生活が10年は続くと考えられる。生涯賃金は5億円を超える計算になるのです」

サラリーマンの平均生涯所得は約2億5000万円。超一流企業のサラリーマンでも5億円がせいぜいだ。それが、70歳代まで天下り生活を送って、退職金も含めれば7億円に迫るのである。年金官僚にはこんな連中がゾロゾロいる。別表は堤氏が試算した天下り官僚の生涯給与の一例だ。8億円以上もらった元事務次官もいるから驚く。

「年金官僚の天下り先は地方も含めると数千あります。事務次官クラスは年収2000万円級の天下り先が保証されています」(堤和馬氏=前出)

デタラメな年金運営で国民の負担を増やしながら、自分たちはヌクヌクというのは詐欺同然ではないか。

丸田和生(57歳)医療安全局長→厚生年金事業振興団常務理事
生涯給与等4億3640万円  官僚時代 3億8095万円 天下り先 5545万円
近藤純五郎(61歳)事務次官→年金資金運用基金理事長
生涯給与等5億3623万円 官僚時代 5億1148万円 天下り先 2475万円
丸山晴男(60歳)環境庁官房長→年金資金運用基金監事、のち理事
生涯給与等 4億5074万円 官僚時代 4億0200万円 天下り先 4874万円
伊藤雅治(61歳)医政局長→全国社会保険協会連合会理事長
生涯給与等 5億3096万円 官僚時代 5億1033万円 天下り先 2063万円
吉原健二(72歳)事務次官→厚生年金事業振興団理事長ほか
生涯給与等 7億9238万円 官僚時代 4億8919万円 天下り先 3億0319万円
加藤陸美(73歳)環境庁事務次官→全国国民年金福祉協会連合会理事長ほか
生涯給与等 8億6680万円 官僚時代 4億9256万円 天下り先 3億7424万円

(堤氏による試算)

年金官僚 生涯賃金8億円のデタラメ[日刊ゲンダイ]

ソースの信頼性に難があるのは否めませんが、官僚の厚遇を批判する記事であり、意図的に低く見積もるインセンティヴはないと考えられ、この文脈ではそれは安全な方に作用しているでしょうから、とりあえずこの試算が正しいとして議論を続けます。また、この記事は2年ほど前(2004年11月)のもので、今ではさらに給与等が下がっていると思いますが、安全を見て今でもこのとおりだと仮定します。

ここでの数字は、一昔前の者‐当時70台‐でこそ8億円前後の生涯賃金をたたき出していますが(といっても事務次官経験者で、平均よりも相当程度高いのが実態です)、直近の者‐当時50〜60台‐では、4億円台半ば〜5億円台半ばとなっています。これに依拠するなら、「5億〜7億」というのは相当の過大評価といわざるを得ないでしょう。

加えて、ここで出ている者は事務次官・局長級のみであることに留意が必要です。局長以上のポストにまで残る官僚は、全体の2〜3割程度に過ぎませんから、平均はもっと低いものにとどまることになります。平均的な者のモデルとして、上記の例から、

  • 局長時代に得る給与を差し引くため、局長のモデル年収3年分、
  • 局次長級に最後まで残ることもないので、局次長級の推計年収2年分、

を減じてみましょう。人事院が示すモデル給与例を見れば局長級は年1,746万円、局次長級は示されていないので局長級と課長級の平均を用いれば1,457万円となり、それぞれの3年分・2年分を足し合わせれば、8,152万円を差し引くことになります。

退職時のポストが低くなれば退職金や天下り先での給与も低くなるのが一般的傾向ですから、それらもあわせて合計で8,500万円を差し引くとすれば、先の例でいえば3億5,100万円〜4億5,100万円といったところでしょう。つまり、「大手金融機関の幹部候補生である有名大出身者」と同水準ということになるわけです。

さらには、定量的に示すことはwebmasterにはできないのですが、

  • 長引くデフレによって現在民間の待遇はボトムに達していると考えられますが、現状においてそれと同水準ということであり、中長期的な平均値としては格差が生じるであろうこと、
  • 官僚は「経費で落とす」ことがないこと、

を考えれば、官僚が官僚として得られる生涯賃金は、官僚以外の職業を選んだ場合に比べると、一般的傾向としては劣るとも優らないであろうと見込むことは、Consultingさんがおっしゃるような霞ヶ関官僚は、基本的に、内輪で「自分たちは待遇が悪い。虐げられている」と話し合って、データを見ることなく、そう思いこんでる人が少なくありませんと評されるような話ではないとwebmasterは思うのです。

本日のツッコミ(全23件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>通りすがりさん とおるさんがお書きのとおり、エントリでの計算上は生涯賃金(推計)に天下り分を含んでおりますが、引用..]

bewaad [>とおるさん 補足ありがとうございました。]

bewaad [>柘植さん キャリア官僚(というかインテリ一般?)の悪弊として、本音と建前の使い分けが下手だ、というのがあると思いま..]


2007-01-10

[government]防衛「省」の意義

「庁」が「省」になることのメリットとして、次のような解説がまことしやかになされているわけですが、

防衛省はこれまでの内閣府の外局から独立したことで、内閣への閣議開催の要求や財務省への予算要求を内閣府を通さずに直接できるようになった。英語表記も「Agency(庁)」から「Ministry(省)」に変わった。

朝日「防衛省が発足 海外活動、本来任務に」

「内閣府を通」すといってもあくまで形式的な話で、そのために何か実際に困っていることはないはずです。ひょっとしたら片手の指で足りるぐらいの人数の担当が、若干決裁文書関連で手間が増えているかもしれませんが(笑)。法案提出(代表的閣議案件です。為念)の最大のハードルである内閣法制局審査と与党根回しにしても防衛庁職員が直接やっているのであって内閣府はノータッチですし(政治的重要性等の理由で官邸があれこれ絡むことはあるでしょうけれど、それは「省」でも同じことです)、予算折衝だってそれは変わりません。

一応他の証言も載せておきます。

【質問】
防衛庁が防衛省になると,どういう変化が起こるのですか?

【回答】
石破の目に感動の涙が流れる.

あと,防衛庁は元々独立性が高いのに,シビリアン・コントロール等の問題のために省にされなかった.
これまでは内閣府の外局という立場だった.
で,現在,これは名目だけそうなっている,という状態.
なので省に昇格するというよりは,今までの矛盾を是正し,実態に即した形にするのが目的.
庁よりは予算についてある程度優遇を受けることができ,なおかつ政府内での発言力も向上するかもしれない.もっとも,省の中でも末席に位置されるが.

大きく変わる部分は,国際協力支援に基く後方支援活動が,自衛隊の本来業務になるという点.
ただしこれは,省になったからそうなるというのではなく,省への昇格と抱き合わせで,そういうふうに自衛隊法を変えるから.直接の相関関係はない.

また,防衛施設庁が2007年度で廃止される点も大きな変化.防衛省内の一組織に変わる.
しかしこちらも,談合事件の影響によるものなので,直接の相関関係はない.

軍板常見問題/東亜FAQ/日本・自衛隊FAQ/組織

若干異見を付すなら、「庁よりは予算についてある程度優遇を受けることができ,なおかつ政府内での発言力も向上するかもしれない.もっとも,省の中でも末席に位置されるが」というのはまったくあり得ない(といいますか、「省」か「庁」かには関係ない)ことだとwebmasterは思います。例えば、

  • 警察「庁」は治安関係の業務において極めて影響力が強いこと(それこそ防衛省について言えば、警察予備隊から始まったという自衛隊の経緯上、特にその初期にはさまざまな警察流がまかり通っていた由)
  • 末席というのは建制順(府省庁間では国家行政組織法別表第一に掲げられた順、府省庁内では各設置法に規定されている順)で考えればということでしょうけれど、それは極めて形式的な話であること(省庁再編前の筆頭であった法務省の力はどうだったのよとか、旧通産省・現経産省は建制順では後ろの方ですけれど力は強いですね、といった事例を見れば・・・)

という実態があるわけです。

ではなぜこれが語られているのか、おそらくは担当が「庁から省になると、実態として何が変わるのですか?」とメディア等から聞かれて、これぐらいしか思いつかないので仕方なくそう答えた、ということではないかと思います。現場では何も変わりませんよ、では格好がつかないですからねぇ(笑)。これまた現場の声を念のため掲載しておきます。

【珍説】
省への格上げの一番のメリットは現場の人の指揮の向上だと思います.(原文ママ)

【事実】
おそらく「指揮」ではなく「士気」かな?
それで意味が通じる.

で,現場はそんなので士気は上がりませんが何か?

実際に現場に関係がないといっている人間が居る.そう言ってるだけだ..
そしてそれは私の知り合いの大半が同じ見解.

ちなみに2000名あれば母集団としては十分.
そして私は2000名じゃきかないだけの人数と意見交換してるが?

Cpt. hige in mixi

まぁどっちかと言うと,防衛庁の対外的(対他省庁)な実質的な地位と,現状違う格付け地位の適正化でしょうね.
相変わらず省の中では肩身が狭いでしょうが.

椋鳥 in mixi支隊

士気を上げるだけだったら,コピー用紙の裏面利用と定数打ち切りを無くしてくれるだけで士気は上がったろうなぁ・・・
他に思いつく士気向上策は・・・

  • 青森だからって,食事のフルーツもジュースもりんご一色は止めてほしい
  • パンツやシャツは自腹でもいいから,作業着はせめて頻繁に交換できるようにして欲しい,PXで買うと高い
  • サイトまでの草刈くらい民間委託できんのか?
  • 隊舎に越冬のカメムシが入らないようにしてほしい

・・・どうですか? 十数年前に比べて,いくらか改善されましたか?

EF63-24 in mixi支隊

軍板常見問題/東亜FAQ/日本・自衛隊FAQ/組織

結局は、シンボリックな政治的意義がもっとも大きいのだとwebmasterは思います。上記はいわゆる制服組の意見ですが、これは背広組でも変わらないはずです。といいますか、特殊法人等に関連する行革などではよく「看板の架け替えに過ぎない」なんて批判があるわけですが、なんで本件ではそうした声がでてこないのやら(笑)。本件こそ「看板の架け替え」の最たるものなんですけれどもねぇ。

念のため申し上げるなら、以上は防衛庁がいわゆる大臣庁(厳密にはその長官に国務大臣が充てられる庁を指しますが、担当大臣が置かれている金融庁も実質的にそうだと言ってよいでしょう)であったためで、今度なくなってしまう社会保険庁のように長官が事務官(官僚)である庁であったならば、省=専任大臣をいただくということで、大いに状況は変わったことでしょう。事務官がトップでは、そのトップは所属する府省の事務官のトップ(=事務次官)よりも下、ということになってしまいますので。

本日のツッコミ(全25件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>消印所沢さん 掲載いただきありがとうございます。何ら不都合はございません。 なお、同業者でも私とは異なり、次のよ..]

消印所沢 [ 追加情報ありがとうございます.  収録させていただきました.]

bewaad [>消印所沢さん 丁寧なフォローありがとうございました。]


2007-01-11

[government]山口浩さんの「民間の知恵」について(下)・改

先日の官僚生涯賃金推計に対して、いちご経済/経済学板で次のようなご指摘をいただきました。

92: 名無しさんの冒険   2007/01/10(Wed) 19:24

BEWAADさんへ

57歳の官僚の、その時点までの獲得報酬(官僚生活+わずかな期間の天下り生活)をもって生涯賃金を議論してもあまり意味はないんじゃないでしょうか。
今の官僚は57歳で天下りが終るわけじゃないですよね。
70台の人たちと大幅に生涯所得で差がついてるのは、天下り完全終了時まで含めた生涯所得の人と、まだこれから特殊法人・公益法人等で役員になる生活が続く人達の違い、ということが大きいように思います。
BEWAADさんは、今までの議論の仕方をみても意図的に情報操作をするようなタイプじゃないのはよくわかってるから、多分勘違いか見落としだと思うんだけど、この点どうでしょうか。
最近の人に限って、天下りは一回のみ、総額3000万程度というのは実例に照らす限りどう見ても現実と不整合なように思うのですが。

いちご経済/経済学板「トンデモ経済学家元追求委員会vol.8」スレ・レス92

引用元に何の留保もなく「生涯賃金」と書いてあったので、ちょっと少ないよなぁと思いつつ用いたのですが、ご指摘を受けて見直してみれば、確かにそのような定義で「生涯賃金」を使っているように思えてきました。他方で、現役時代に受け取る賃金試算は逆に多いのではという気もする(例えば伊藤元局長は現役中に5億円以上受け取っているとされていますが、勤続30年と仮定して年平均1,600万円というのは、退職金込みの数字であることを踏まえても多すぎの感があります)ので、改めて別の方法で試算してみます。

試算の方法としては、飯田泰之先生が「官僚・マスコミ……そして大学教員の生涯賃金」にて大学教員の生涯賃金試算に用いられたもの、すなわちモデル的な生涯を設定して、それにモデル賃金を当てはめていく形でおこなってみたいと思います。というわけで、まずはモデル的な生涯の設定ということで、現役時代の職歴を考えてみます(単位:年)。

肩書き年数年数(累計)
係員33
係長36
課長補佐1016
室長521
課長526
局次長127

22歳新卒就職で55歳にて肩たたき、ということであればこんなものでしょう。これに人事院が示すモデル給与例を当てはめるわけですが、次のような変形が必要でしょう。

  • 係員は「25歳・独身」を用います。
  • 係長はヴェテランを念頭に置いたと思しき年齢・家族構成設定となっているので、係員と課長補佐の平均値を用います。
  • 室長は課長補佐と課長の平均値を用います。
  • 局次長は課長と局長の平均値を用います(前回に同じ)。
  • モデル給与例には時間外勤務手当(残業代)が含まれていないので、係長〜課長補佐については、その相当額として20%増とします。

以上の変形を加えた数字を先の表に加えると次のようになります(既出のものを除き、単位:万円)。

肩書き年数(a)年数(累計)モデル賃金モデル賃金(残業補正後)(b)総報酬(a×b)
係員33301.8362.21,086.5
係長36513.0615.51,846.6
課長補佐1016724.1868.98,689.2
室長521946.3946.34,731.3
課長5261,168.41,168.45,842.0
局次長1271,457.41,457.41,457.4
合計2723,652.9

以上が現役としての生涯賃金ですが、これに退職手当を加算する必要があります。この職歴を人事院による国家公務員の退職手当の解説に当てはめて退職手当を試算すると、

  • 784,000(指定職俸給表2号俸月額)×59.28(勤続25年以上の調整率)+(62,500(指定職二号俸の調整単価)×12(指定職2号俸在職月数)+51,450(行政職(一)俸給表10級の調整単価)×48(60−指定職二号俸在職月数))=49,695,120(円)

になります。先の現役期間中の総報酬と足し合わせて、28,622万円が官僚として受け取る賃金の総額ということです。

これに天下り先からもらう給与を加える必要がありますが、その推計は山勘で行わざるを得ません(何せろくな公表データがないので)。webmasterの根拠のない感触ではせいぜいが最終俸給の半額×10年といったところではないかと思うのですが、そんな安いはずがないとか退職金を何度ももらうだろうといったご指摘もあろうかと思いますので、その額が最低レヴェル、最終俸給×10年が最高レヴェルとして試算するなら、

  • (1,457.4÷2)×10=7,287万円≦天下り先から受け取る総報酬≦14,574万円=1,457.4×10

ということとなります。先の官僚としての賃金総額を加えると、

  • 35,909万円≦官僚の生涯賃金≦43,196万円

ぐらいが平均的なところではないでしょうか。

[economy][BOJ]やっぱり日銀はデフレターゲット‐BEI(Break Even Inflation rate)の最近の動向

当サイトでは何度となく日銀はデフレターゲティングを導入したのだと警鐘を鳴らしてきたのですが、またぞろその証が。日経金融「ポジション/長期金利2%の壁厚く/物価低空飛行、市場織り込む」(菅原誠吾記者)にて取引指標である期待インフレ率(BEI=十年債と物価連動債の利回り差)は昨年5月には約1%まで上昇したが、8月の消費者物価指数(CPI)基準改定の影響などで大幅に低下。直近は0.5%前後で低迷したままだとの指摘がありました。

BEIについては、昨年10月に当サイトでも触れましたが、その際にはまだ0.6%でした。財務省の資料を見ても、その後さらに下がって0.5%程度で推移している様がはっきりと表れています。

にもかかわらず、昨年末に当サイトで紹介し、さらには新年早々読売新聞が報道したように、日銀は今月の金融政策決定会合にて利上げを狙っているようです。常識的には、これら報道は日銀のアドバルーンであり、利上げに対する世の中の反応を探るためのリークであると考えるべきでしょう。

これら日銀の決意(暗黙のコミットメント)が市場に織り込まれて期待インフレ率が一定の範囲で安定して推移しているわけで、まさしくインフレターゲティングは有効であると日銀自身が実証しているのが現状でしょう。問題は、その「一定の範囲」が生鮮食料品を除くCPIベースで見てコンマいくらという世界、すなわちデフレターゲットに他ならないというところなのですが・・・。

蛇足ながら、実際に利上げが行われた場合、日銀はフォワードルッキングを言い訳にするのでしょうけれど、フォワードルッキングであればまったく引き締めの必要はないことをこのデータは表しているのだ、といいますかむしろフォワードルッキングであれば緩和すべき状態にあるということを、予め申し上げておきます。

[government]夕張市の行政サービス

4月から財政再建団体に移行する北海道夕張市で、早期退職希望数と定年退職者の総数が職員(309人)のほぼ半数にあたる152人になったことが10日、分かった。

今年度で見込んだ退職者数は83人だったが、2009年度当初目標に到達した。

背景には、給与の平均30%カット(最大35・4%)や、段階的に退職金を最大4分の1にまで削減するなど、「事実上の解雇通告」(市幹部)という厳しい再建計画(骨子)がある。42歳モデルで年収が4割減の370万円程度になるなど、「子どもを進学させられない」などとして、市外へ出る職員も。残る職員には「行政サービスが継続できず、これでは街の再生にならない」との声が根強い。

読売「夕張市の退職者、職員のほぼ半数に」

ちなみに370万円で子どもの教育を考えた場合、42歳ということで小学生・中学生一人ずつだったとすれば、教育費で小学生が約25万円(人口規模5万人未満、対平均▲21%)中学生(公立)が平均約47万円で小学生と同じ人口補正をかけて約37万円の合計で62万円必要です。

その他生活費が相当程度切り詰めて1日当たり子ども1人1,000円だとしても、1年当たり2人で73万円ですから、先の62万円とあわせて135万円、370万円から差し引けば残るは235万円、しかもこれは税引き前でしょうから、相当厳しいのは否定し難いのではないかと。それなりの責任感があったとしても、残るとの決断には躊躇するのが人間というものでしょう。

で、行政サービス低下を補う策としては、次のようなものが考えられているようです。

しかし、一斉退職により、市役所の組織、体制整備が再建への新たな課題となることは必至の情勢だ。道は専門職の派遣などの検討に入っているほか、市議会内では、市職員の再任用制度の活用論も浮上している。

北海道「夕張市 全部長・次長退職へ 本年度末に職員半減」

菅義偉総務相は29日に財政再建団体入りを表明している北海道夕張市を視察し、再建に伴う住民負担の軽減を検討する考えを示した。同市が行政改革の努力をすることなどを条件に、再建計画案に盛り込んだ高齢者のバス料金引き上げなどを見直す。ただ、安易な負担軽減策を取るなら他の自治体の財政再建努力を緩めかねないとの批判も出てきそうだ。

総務相は視察後の記者会見で「一定水準の住民サービスの維持は政府が約束する。特に高齢者と子供には配慮したい」と指摘。再建計画案の見直しを「検討していい」と述べた。ただ「同規模の自治体の頑張りと同程度の努力をすることで国民の理解が得られる」とも語り、同市に職員数の削減など徹底的な行革努力も求めた。

日経「夕張市の再建、高齢者と子供に配慮・総務相が表明」(webmaster注:「29日」とは、昨年12月です)

前者は地元の自助努力ということでwebmasterとしても大いにやっていただきたいと思うのですが、ひどいのは後者です。その手の要素を勘案して全国統一基準にしているのが交付税交付金(の積算根拠となる基礎財政需要額)ですが、それを不透明だなどといって人口・面積基準の新交付税交付金を推進しているのが総務省です。そんな理由で、それこそ裁量に基づく不透明な支援をするなら、最初から従来の交付税交付金を維持した方がよほどましです。

webmasterは寡聞にして、この総務大臣発言に対するそのような批判を知りません。現状の交付税交付金を批判して新交付税交付金を称揚するような人間は、こぞってこの発言を批判すべきでしょう。地方財政についてあれこれ言うのに知らないとするなら不勉強の極みですし、知っていてこの問題に気付かないなら新交付税交付金導入論がいかにいいかげんな思い付きであるかの証明ですし、気付いていて指摘しないなら自らの不利になることには頬かむりをするという不誠実の表れ以外の何物でもないのですから。

本日のツッコミ(全35件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>kumakuma1967さん これまた伝聞情報で客観性が疑わしいのですが、結構各社間には「格」の差があって、記者の..]

bewaad [>アルベルトさん おお、確かになんとタイミングがいいのでしょう(笑)。 これで(本社の)役員以上になれば、さらに上..]

bewaad [>とおりすがりさん 結局、「一定水準の住民サービスの維持は政府が約束する」という場合、それをどう決めるのか、というこ..]


2007-01-12

[history][book]田村洋三「沖縄の島守」

サブタイトルに「内務官僚かく戦えり」とあるように、沖縄戦当時の島田叡県知事と荒井退造警察部長の動きを追ったノンフィクションです。二人ともその献身的な働きで、内地出身であるにもかかわらず沖縄県民の敬慕を集めたとされる人物ですから、本書で描かれるその働きぶりは、素晴らしいとしか申し上げようもありません。また、戦史や県民伝承が中心となって語られる沖縄戦について、現地を丹念に当たり当事者を訪ね、語られない歴史を再構成する著者の努力もまた、頭が下がる思いです。

本書の味わい方としては、著者の二人への思いに浸りながら、その高い評価を素直に受け入れるというものであるべきでしょう。著者もそうですし、また著者の取材に答えて当時を証言する生存者もそうですが、知られざる二人の働きを後世に留めたいという気持ちがひしひしと伝わってきますし、それを過去を美化しているのでは、なんて腐すのは失礼だとwebmasterは思うのです。とりわけ生存者にとっては、それはまごうかたなき真実なのですから。

他方、それを事実だと信じ込めばよいというわけでもありません。例えば、pp133-135においては、水際作戦から持久作戦への転換が沖縄県民の悲劇を招いたとされていますが、サイパン島の惨劇を見れば、水際作戦だったら住民が安全であるわけでもありません。戦場に民間人がいれば、多かれ少なかれそうした事態は不可避です。

したがって、多くの沖縄県民を塗炭の苦しみに突き落とした最大の原因は、疎開が十分に行われなかったこととなるわけですが、真実と事実の違いとも関連して重要なのは島田知事の前任である泉守紀‐本書では、名が伏せられI知事となっています‐の評価でしょう。彼が軍と対立し、軍がサイパンの惨劇を繰り返さないために計画した疎開の実施にも齟齬をきたしたことが、疎開の不十分さの原因であると一般には思われ、当然ながら本書もその立場から厳しく批判しています。繰り返しとなりますが、それが当事者にとっての真実であるのは否定できません。

最終的には敵前逃亡と言われても仕方がない形で沖縄を離れたこともあり、彼を弁護する声を探すことは困難です‐本書(p215)によれば、反戦の態度を評価する向きもあるようですが。しかしながら、一方の当事者の真実を事実として認識してしまってよいのか、悪評紛々であるだけにwebmasterは気にかかります。

まして、二人のような生き方は文字通り有難い‐存在をめったに期待できない‐からこそ貴重なわけで、人間として普通なのは泉知事なのは間違いありません。彼への悪評とは、自らのうちに潜む醜さをその存在が突きつけざるを得ないからこそ、違うと言い聞かせたいことの裏返しでもあるかもしれません。野里洋「汚名―第二十六代沖縄県知事 泉守紀」を読みたいな、という気分にさせるのもまた、本書であるということです。

#公平を期すために申し上げるなら、本書巻末の参考文献リストには野里本も掲載されており、著者はそれを読みもせず彼を批判しているわけではありません。

蛇足ながら。

3月に入り空襲が始まると、県庁を首里に移転し、地下壕の中で執務を始めた。以後沖縄戦戦局の推移に伴い、壕を移転させながら指揮を執っていた。軍部とは密接な連携を保ちながらも、およそ横柄なところのない人物で女子職員が洗顔を勧めると「お前が命懸けで汲んできた水で顔が洗えるかい」といい、他の職員と同様、米の研ぎ汁に手拭いを浸して顔を拭っていた。

島田叡‐Wikipedia(webmaster注:強調は原文によります)

本書のp310に依拠した記述と察しますが、当該部分を読む限り、このエピソードは荒井警察部長のものであって島田知事のものではありません。島田知事も似通ったエピソードを残していますが、あくまで別の話です。念のため。

「(略)例えば朝の洗面に使う水です。敵の空襲や艦砲は朝、夕の六時から一時間だけ、彼らの食事時間だったのか、ピタリと止みました。壕で使う水は、その時を狙って若い警官や女子職員が繁多川の井戸や安里川へ汲みに走りましたが、知事さんはほんの少ししか使われない。『命がけの水汲みの苦労を思えば、あだやおろそかには使えないよ』とおっしゃって。(略)」

p309

「(略)私も毎日、水汲みに行き、部長さんに洗面をお勧めしましたが『お前が命がけで汲んできた水で顔が洗えるかい』とおっしゃって、皆と同様、お米のとぎ汁に手ぬぐいをひたし、ぬぐっていらっしゃいました」

p310

[government]医療行政も崩壊?

今現在でも医者を続けた方が高給というような待遇の悪い医系技官の職務に、給与の安さを補うだけの魅力を付加できるかどうかが課題なんでしょうけれど。
※聞くところによると、結構辞めているそーで。>医系技官

WHYな日々〜アル公務員の日常〜(1/9付)

医療崩壊の前に、医療行政の方がどうにかなってしまうのでは、という気がします。医者側からは厚生労働省の技官に対してあれこれ言いたいこともあるでしょうけれど、多分あれでも(霞が関の中では)医者側の事情をもっとも理解する者ではあるわけで、それが手薄になるというのならば、より行政側の事情(財政事情とか)が押し付けられてしまうおそれが高くなるのではないでしょうか。

ブラックに言うなら、だからこそ医者側の待遇を悪くして相対的な技官の待遇改善を図っていたりして、なんて下衆の勘繰りも(笑)。

本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>tontonさん どの団体が強いか弱いかというような話題は、私も印象論を超える根拠を持っているわけではないので、と..]

tonton [>医師会の弱さではなく、勤務医の主張を医師会がくみ取れていないところに原因 医師会は労組ではなくあくまでも業界団体の..]

bewaad [>tontonさん 情報提供ありがとうございます。 なお、勤務医云々は、小松本を読んだことなどから得た私の思いでし..]


2007-01-13

[law][WWW]"2ch.net"ドメインに係る強制執行

#webmasterは弁護士ではなく民事執行実務にはまったくなじみがありませんし、大学でその手の講義を受けたわけでもないので、その程度のものとしてお読みください。

既にご案内の向きも多いかもしれませんが。

ネット界激震!! 賠償命令を無視し続けてきた日本最大の掲示板「2ちゃんねる」(2Ch)の管理人、西村博之氏(30)の全財産が仮差し押さえされることが12日、分かった。債権者が東京地裁に申し立てたもので、対象となるのは西村氏の銀行口座、軽自動車、パソコン、さらにネット上の住所にあたる2Chのドメイン「2ch.net」にまで及ぶ見込み。執行されれば掲示板の機能が一時停止するのは必至だ。

(略)

西村氏が出廷してこないまま同9月に開示を命じる仮処分が出たが、何ら対応が得られないため、間接強制で1日5万円ずつ制裁金を科すこととなった。それでも西村氏の法廷無視は続き、決定から100日を経て債権は500万円に膨れあがった。

(略)

今後、西村氏の異議申立期間もあるが、これまでと同様に出廷しない場合、早ければ再来週にも強制執行が始まる。

今回の仮差し押さえは、西村氏個人はもとより、1000万人ともされる2Chユーザーにも大きな影響を及ぼす公算が大きい。東京地裁の「値段がつくものは差し押さえ可能」との判断から、「日本国内では前代未聞」(ドメイン登録機関)とされるドメインの仮差し押さえも行われるからだ。

手続きが進んでドメインの所有権が移り、2Chというサイトがネット上の住所を失ってしまうと、ユーザーが従来の「2ch.net」にアクセスしても、何ら閲覧できなくなる。

運営側が掲示板の継続を望むなら、新たなドメインを取得して全システムを引っ越す必要があるが、「2Chはリスクを分散するため、50台ものサーバーが各自独立しており、全体を統括するサーバーがない。データの書き換えは容易でなく、引っ越しに2週間は必要だろう。さらに新ドメインを周知するのが大変だ」(IT業界関係者)。

ZAKZAK「ユーザーショック…2ちゃんねる、再来週にも強制執行」

この記事を受けて、壇弁護士が次のように書かれています。

もっとも、ドメインに対する執行をやるとすれば、どのような手続になるのだろうかがとても疑問になった?
執行というからには、裁判所で競売手続をして、競落人が決定して代金を支払ったら、ドメイン登録者を書き換える手続をすることになるであろう。

この場合、登録の書き換えはどうやってやるのだろう?
ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)に対して、裁判所が決定を送るのであろうか?
それとも.netドメイン管理機関のVeriSign社か2ch.netのレジストラのTucows社に送るのだろうか?
いずれも応じるとは思えないのであるが…。
外国法人に対する執行手続きをするには、それなりの国家間の協定が必要なので、条約でも無い限り難しいような気がする。

「ドメインの差押え」(@壇弁護士の事務室1/12付)

確かに海外当局の強制力を借りて執行するには協定・条約が必要でしょうけれども、当事者が自主的に応じる分には問題がないのでは、と思います。では当事者が自主的に応じるのか、という問題ですが、

第3節 ドメイン名登録の抹消、移転、および変更

当レジストラは、下記に該当するときに、ドメイン名登録の抹消、移転または変更の手続を行う:

a.第8節の規定に従う限りにおいて、登録者またはその権限ある代理人から、かかる旨の書面または適切な電子手段による指示(instruction)を受領したとき;
b.適正な管轄権を有する裁判所または仲裁機関から、かかる旨の命令(order)を受領したとき; および/または
c.ICANNが採択したこの処理方針またはその改訂版に基づいて実施された、登録者が当事者となっている紛争処理手続において、その紛争処理パネルが下したかかる旨の裁定を受領したとき。(下記第4節(i)、(k)を参照。)

当レジストラは、さらに登録合意書の規約または他の法律的要請に基づいて、ドメイン名登録の抹消、移転または変更の手続を行うことができる。

統一ドメイン名紛争処理方針(UDRP(Uniform Domain Name Dispute Resolution Policy)、参考訳)

とあるので、このbを根拠に応じることも十分考えられるでしょう。ただ問題は、そもそもドメイン名は競売→配当という強制執行にふさわしいのか、ということではないでしょうか。

ドメイン名が何を表すのか、壇弁護士も、

そもそも、ドメインって執行法上も財産として扱ってもらえるのだろうか?財産として動産なのか不動産なのか債権なのか。それぞれ、手続が違うのであるが考え出すときりがない。執行法というのは、ベテランの弁護士の先生には執行法をろくに知らないという場合もあるくらい、ややこしく使い勝手の悪い法律である。その使い勝手の悪さは、著作権法の比ではない。

「ドメインの差押え」(@壇弁護士の事務室1/12付)

とお書きになっていらっしゃいますが、少なくとも売買される際に買い手が金銭を支払うのは、当該ドメイン名についてDNSシステムが照会を受けた際に、特定のIPアドレスを返す部分でしょう。つまり、登録者が有する債権の内容は、自分が指示するとおりに特定のドメイン名に対して特定のIPアドレスを返せというものになるわけです。

民事執行法を読む限り、金銭債権であれば転付命令を得ること等を通じて直接履行を受けることができますが、作為を目的とするものは(まさしくドメイン名に係るものがそうでしょう)、代替執行あるいは間接執行によってその作為を実現することが想定されています。間接強制とは冒頭の記事にあるとおりいわば罰金を科して執行を促すものですが、それに実効性があるならばそもそもこのような事態になっていないわけで、意味がないでしょう。ただし、これらによって実現される作為は、ドメイン名であればレジストラ等が適切に登録せよということですから、あくまでひろゆきさんに対して何らかの強制執行をしようという本件に適用されるような話ではありません。(1/14訂正)

そもそもの議論をするなら、本件の債権者にとって、ドメイン名登録の登録者名義移転そのものは目的ではなく、その換金価値に着目して賠償金を得ることが目的になっているわけです。言い換えるならば、登録者名義移転はお金を得るための手段に過ぎないわけで、その点がDan Kogaiさんも引用の、"goo.co.jp"ドメインの移転とは話が違ってきます。

とはいってもそれしか債務者(本件で言えば、ひろゆきさん)に換金可能な財産がないなら、動産と類推解釈する等により実務上なんとかならないこともないのかな、という気はします。しかしながら、報道を見る限り、銀行口座の差し押さえ等にも着手しているようですから、そこから500万円を回収して、ドメイン名には手付かずで終わるのではないかな、とwebmasterは思うのです。裁判所だって、あえて危ない橋を渡らなくても目的が実現できるなら、そちらで行くよう誘導するでしょうし。

言い換えるなら、国際的にどうとか、債権の内容がこうとかいうのではなく、作為債権の競売による金銭回収を(日本の)民事執行法が想定していないがゆえに、差し押さえは実質的な意味を持たないのかな、ということです。このあたり、詳しい方のご指摘をいただけるとうれしいのですが・・・。

さらに考えるならば、仮に競売→移転ということになっても、競落する人間が"2ch.net"に別のIPアドレスを割り当てることがなければ、今までどおりのアクセスが可能となります。2ちゃんねるの財産的価値がそのページヴューにあると常識的に考えるならば、落札者はひろゆきさんから手数料を受け取る等の形で財産的価値から利益を得ることを選ぶのであって、別のIPアドレスを割り当てるようなことはしないのでは、と予想されます。一時的に多くのアクセスを集めたところで、2ちゃんねるでない"2ch.net"のページヴューなど、瞬く間になきに等しいものになってしまうでしょうから。

本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]

Before...

bewaad [>規制業種さん http://d.hatena.ne.jp/rna/20070113/p1 やそこで紹介されているも..]

小倉秀夫 [閉鎖に追い込む気なら、こちらの事例問題の方が参考委になるでしょう。 http://benli.cocolog-nif..]

bewaad [>小倉先生 私個人としては、閉鎖して欲しいとは思っておりませんので・・・。もちろんひろゆきさん個人がどうこうとは別の..]


2007-01-14

[economy]小売業のプロによる消費低迷分析

経営者としての鈴木敏文セブン&アイHD会長の手腕に物申せるようなwebmasterではないのは当然ですが。

――景気の回復に対して消費がなかなか盛り上がらない

「今の景気は輸出に頼っている。本来なら企業から従業員の所得に回り消費に跳ね返る。だが、今回の景気はその循環になっていない。消費が伸びないのは、消費が飽和状態にあるからだ。あわててものを買わなくてもやっていける。あれもほしい、これもほしいという状態なら借金をしてでも買う。だが、買うものがない分、珍しいものや価値のあるものを求めている。高いものが売れる半面、今後も消費は簡単には伸びない」

――消費を喚起する上で必要なのは

「預金金利を上げることだ。政府は金利引き上げに消極的だが、これは景気への配慮ではなく、むしろ、財政面で有利とみているからだ。そのしわ寄せが消費者に来ているとみた方がいい。給与の引き上げは大企業にできても、中小企業はついていけない。金利を上げる心理的効果の方が大きい。遅過ぎるくらいで、すぐにも上げるべきだ」

産経「今年に賭ける セブン&アイHD・鈴木敏文会長」

消費の飽和論については、これまでも何度か触れたことがありますが、典型的な例を取り上げるならば、発泡酒(や第3のビール)を買っている人々はビールより発泡酒等がおいしいという理由で買っているのでしょうか、という疑問を呈さざるを得ません。感覚的には、ビールは高いから発泡酒等で我慢している、という理由の方がありそうです。

なかなかそれを直接的に示すデータはありません。間接的にそれを裏付けていると思われるのが、これらのお酒の課税数量(大手5社ベース)(下表において、単位万kl)です。

ビール類総課税数量うちビールうち発泡酒うち新ジャンル
199671869127
2001712489223
2002693435258
20036503952550.3
200465538823532
2005634357176101

2003年の総量の急減は発泡酒増税によるものと考えられますが、注目すべきは2004・2005年における発泡酒の急減と新ジャンルの急増です。念のため両者の合計を示すなら、2003年が255.3万kl、2004年が267万kl、2005年が277万klということですから、この変化は従来発泡酒を飲んでいた層が大挙して新ジャンルに移行していることを示しているように思われます。

もしこの見込みが正しいのであれば、発泡酒や新ジャンルを買っている層というのは、少しでも値段の安いビールっぽい飲料を求めているのであって、懐に余裕があるならば、相当程度はビールを買うのではないかと予測するのは合理的でしょう。消費が伸びないのは、飽和状態にあるからというより、懐に余裕がないから、と考えられます。

では、金利を上げれば金利収入の増加によって懐に余裕ができるのか、実態を見てみましょう。

総務省「家計調査」によれば、勤労者世帯の平均月間経常収入(給与や内職、利子などの定期的な収入)は、ピークだった97年から02年までに▲11%、月間平均6万3千円余り減少した。このうち約6万1千円が勤め先収入の減少であり、月給やボーナスなどの減少が家計に大きな影響を与えたことが分かる。

このため、可処分所得(実収入−税・社会保険料等非消費支出)も97年から02年までに▲9%、月間平均約4万5千円減少した。

このような家計収入の落ち込みに対し、消費支出は前述と同じ5年間で▲7%、月間平均約2万6千円の減少にとどまった。

家計は、前述のような収支の変化に伴う可処分所得減少と消費支出削減との差額(不足)分を、貯蓄を約1万9千円減らすことによって、対応した。(後略)

最近の消費行動と消費ローン(農林中金総合研究所)

若干データが古いですが、97年から02年までの変化で言えば、低金利政策による利子収入の減少は、どれだけ多く見積もったところで2千円/月に過ぎません。失われた6万1千円の給与等の減少を補うだけの利子収入増加があるとして、1%の利上げでそれを賄うためには、年73.2万円必要なわけですから、その元本は7,320万円必要だということになります。そんなに貯蓄を持っているなら、今でも十分消費できるでしょう(笑)。

そこまでいかないとしても、わずかでも利子収入が増えるならば、その分だけ消費は増すだろう、ということはいえるかもしれません。ただし、それが成り立つためには、他の条件が同じならば、という前提が必要です。鈴木会長は「あれもほしい、これもほしいという状態なら借金をしてでも買う。だが、買うものがない分、珍しいものや価値のあるものを求めている」とおっしゃっているわけですが、現に「借金をしてでも買」っている人々はいるのです。

「家計調査」の年齢別、所得別、貯蓄額別の消費者信用の利用実態データによれば、低所得層を中心として家計が近年、資金不足をおぎなう手段の一つとして、消費者信用の利用を増やしている傾向が観察される。

たとえば、年収300万円未満世帯の「消費者信用(注4)(ママ)」は、96年から02年までの間に5,983円から10,945円へ83%増え、可処分所得に対する比率は5%程度になっている(図2)。この間、年収300万円未満の世帯の可処分所得は5,450円減少しており、減収分のほとんどを消費者信用の借り入れで相殺していることが分かる。

(注2)家計調査における「分割払・一括払購入借入金」と「他の借入金」の合計。他の借入金には奨学金や親族からの借入も含むが、大半が消費者信用に該当する借入と思われる。

また、「家計調査」(貯蓄・負債編)の01年一世帯当たり消費ローン残高(注3)を年間収入別にみると、200万〜250万円の階層の消費ローン残高が26万円と最も多い。また02年の世帯当たりの消費ローン残高は平均8万円であったが、年収階層別では250万〜300万円の階層が19万円と最も多くなっている(図3)。

(注3)土地・住宅以外の負債で銀行等金融機関以外からの借り入れ。

最近の消費行動と消費ローン(農林中金総合研究所)

これらの人々は、金利が上がれば借金返済負担がそれだけ増すので、とてもではありませんが消費を増やす余裕などないでしょう。グレーゾーン金利上限にひっかかっているので金利は上がらないのでは、との意見もあるでしょうけれど、消費者金融の資金調達コスト上昇分は、貸出金利に転嫁できない以上は主として信用コストの削減で補わざるを得ないでしょうから、借りられなくなってますます消費が減るだけのことです。

加えて、純資産のある人(資産よりも借金が少ない人)に話を限るとしても、金利が上昇したからといって金利収入が増えるのは、変動金利の資産のみです。固定金利の資産は、世の中の金利が上がったにもかかわらずそれについていけないので、元本の評価額はその分だけ下がります‐金利が上がったら銀行の保有国債にキャピタルロスが生じる、といわれる類の話です。収益が金利に連動しない資産‐株式(配当)、不動産(地代)など‐についても同じことですが、金利の上昇によって得をするには、こうしたキャピタルロスを埋め合わせてなお余るだけの金利収入の増加が必要です。

金利変動の影響は、以上のような金利の収受等の資産に係るもののほか、現在と将来の消費の相対関係に係るものもあります。金利が0.25%のとき、今の10,000円は1年後の10,025円に等しい価値があるわけですが、これが0.5%に上がった場合、今の10,000円は1年後の10,050円に等しい価値となります。言い換えれば、金利が0.25%の場合の1年後の10,000円の現在価値は9,975円ですが、金利が0.5%に上がった場合、1年後の10,000円の現在価値は9,950円に下がりします。

つまり、金利が上がった場合、将来の同額の消費の現在価値が「安く」なる‐先の1年後の10,000円の例で言えば、25円の値引きに相当します‐わけですから、金利が上がる前に比べれば、より「安く」買い物をしよう=消費を先に伸ばそう、というインセンティヴが働きます。違う言い方をすれば、金利が高くなったのだから使うよりも貯金しておこう、ということに等しいのですから、当たり前といえば当たり前の話ですが、とまれ、金利収入等の増加があった人についても、この効果を勘案してなお収入増の影響の方が大きいという者のみが、金利上昇により消費を増やすと言い得るのです。

まして、金利上昇による景気減速があれば、失業の増加や賃金引下げといった波及が考えられます。理屈ではなく経験則ですが、古今東西の金融政策において、金融引き締め(利上げ)は景気の過熱を冷ますために行われてきているわけで、金融を引き締めたら狙いに反して景気が過熱したなんて例がごろごろしているならば、金融政策の運営は現在のようには行われているはずもないでしょう。

というわけで、以上のとおりあれこれ検討してみますと、鈴木会長のご主張が実現した場合、かえって消費が減るのではないか、というのがwebmasterの考えです。

#以上とはまったく別の議論となりますが、そもそも消費が飽和しているならば、金利収入が増えたって消費が増加するわけでもなく、ご主張に矛盾があるようにも思うのですが・・・。

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bewaad [>通りすがりさん 論文はおおっ、と思いましたが、一応名目では3年間合計でマイナスにはなりますね。可処分所得の増に比べ..]

通りすがり [仰る通りですが、論文としては非常に興味深い内容でした。 多分、消費デフレーターの金利感応度が高くなりすぎているのが原..]

bewaad [>通りすがりさん エントリを書きながら、何か適当な計量データはないかと探していろいろいじくってみたのですが、うまく裏..]


2007-01-15

[BOJ][economy]17・18日の金融政策決定会合で利上げ?

WARNING!!!

[東京 12日 ロイター] 日銀は1月17、18日に開く金融政策決定会合での追加利上げに向け、最終調整に入った。日銀は昨年10月の展望リポートで、企業部門主導の景気拡大が次第に家計部門にも波及していくという基本シナリオを示しており、今回の決定会合で行う中間評価で、同シナリオの維持を合意する見通し。ただ、利上げの時期については、消費者物価(CPI)の上昇が鈍いことなどから賃金動向などもう少し見極めるべきだとの意見が日銀内にあり、1月利上げで多数意見が集約されるかどうか、決定会合の行方はなお流動的だ。

ロイターの取材によると、1月利上げに踏み切ってもいいのではないかとの意見は、決定会合のメンバーである審議委員の多数を占めている。総裁・副総裁の3人が利上げの判断を固めれば、政策委員会の大半が利上げに賛成する展開が予想される。

ロイター「〔焦点〕日銀は月内利上げ視野に最終調整、CPI動向判断がカギ」

引用部の冒頭にあるとおり12日の報道ですが、これを機に週末は各紙で利上げの可能性が高いとの報道が相次ぎ、その手の雰囲気が形成されてきているようです。どのようなロジックで利上げしようとしているのか、当サイトの読者であれば先刻ご承知という向きも多いでしょうけれど、ロイターが丹念に取材をしてくれていますので、確認いたします。

昨年12月の決定会合では、消費がなお弱いとして日銀は追加利上げを見送った。これについて日銀の複数の幹部は、夏場の消費落ち込みは一時的な現象と確認できたとし、「10月展望リポートで示したとおり、企業部門がエンジンとなってやや弱めの家計部門にもいずれ徐々に波及していくとの基本シナリオに狂いはないことが確認できた」という認識を示している。

昨年10月の展望リポートで示した06年度の国内総生産(GDP)とCPIの見通しは、下振れがほぼ確実になっている。これについて日銀では、GDPの下振れは05年度からのゲタ(成長率算定の基準)が低くなったという技術的な側面が背景にあり、CPIは原油価格と家賃の低下が主な理由と判断。景気拡大とともに物価が緩やかに上昇していくという基本的なシナリオは維持されているとみている。また「市場の1月利上げへの織り込みもかなり進んでいる以上、やらないことの方が不安定要因となる」との指摘も日銀内にはある。

ロイター「〔焦点〕日銀は月内利上げ視野に最終調整、CPI動向判断がカギ」

2005年のゲタが低くなったのを技術的というなら、これまでの量的緩和・ゼロ金利解除は本来低かったゲタが技術的に高かったときに高いことを理由に行ったことを撤回すべきでないの、ということは日銀は思わないのでしょう。CPIが低調であるのは原油価格と家賃の低下が主な理由だというなら、これまた量的緩和・ゼロ金利解除時にだって(とりわけ原油価格により)CPIは上げ底だったということになるわけで、その場その場で都合のいい面だけをつまみ食いするのは勘弁していただきたいものです。

現状についても、景気拡大基調は変わらないと見込んでいるようですが、たとえば、

内閣府が11日発表した2006年11月の景気動向指数(速報値)は、景気の現状を示す一致指数が、景気判断の分かれ目となる50%まで2か月ぶりに低下した。

(略)

一方、半年程度先の見通しを示す先行指数は20・0%と、2か月ぶりに50%を割り込み、市場関係者の間では今年前半の景気減速を懸念する声も出ている。

読売「11月の景気動向指数、一致指数が50%まで低下」

といった状況でもあるわけです。

しかしながら、この点については、bank.of.japanさんが昨年11月の時点で、今を見越したかのような観測を発表されています。

私自身は、「景気が見通しシナリオ通りなら利上げが必要」とのロジックは基本的にはポーズに過ぎないと思う。このロジックは「錦の御旗」のようなもので、簡単には降ろせない。降ろすと量的緩和の解除やゼロ金利解除の判断が誤りであったことにつながりかねず、これからも掲げ続けないといけないロジックである。景気が足踏みしても恐らくは掲げるだろう。

(略)

「景気がシナリオ通りでも利上げが必要」と断じてしまったため、例えば年明けになって利上げしないと景気がシナリオ通りになっていない、という見方が強まる恐れがある。こういうとき日銀は『信認』にこだわりやすい。景気シナリオへの信認、そして政策運営への信認を確保するため、データや市場が追い風でないのに、利上げを強行するリスクはないではない。

この場合、日銀はフォワードルッキングを強調するだろう。ただし、これは「やりたいようにやる」との方便であり、EURO SELLERさんは「実効性の無い発言で狼おじさんと言われてしまいそう」と指摘されたが、日銀はまさに狼おじさんではないことを証明するための利上げをやってしまうわけだ。将来の景気過熱論は、利上げしたいための方便と化す。

「フォワードルッキングは「やりたいようにやる」の方便=利上げのための景気過熱論」(@本石町日記2006/11/7付)

#これを受けて、このリスクは「ないではない」どころではなく多いにあり、それが外れるとしたら量的緩和解除・ゼロ金利解除の引締め効果で明らかに景気が本格的に腰折れたときしかないのではないかwebmasterも書かせていただきました(webmaster注:「このリスク」とは日銀が利上げを強行するリスクを指します)が、こういう外れてほしい予測ほど外れるものです(泣)。

「『市場の1月利上げへの織り込みもかなり進んでいる以上、やらないことの方が不安定要因となる』との指摘も日銀内にはある」というのも、利上げの機運を盛り上げたのに果たせなくては鼎の軽重が問われるというこの伝でしょう。先の読売の記事にも「市場関係者の間では今年前半の景気減速を懸念する声も出ている」とあり、先日取り上げたBEI(Break Even Inflation rate)の動向もあり、市場が利上げを織り込んでいるのは、利上げをすべき環境にあるからではなく、日銀が環境を無視して面子にこだわるだろうという姿勢を見てのことだとwebmasterは考えます。

といいつつも、正直なことを申し上げるならば、円高シンドロームを消極的に支持する‐つまり、実際に円安防止のために日銀が金融政策を決定しているかどうかは措くとしても、円安の程度は金融政策引き締めのよい物差しであると考える‐身としては、現在の実質実行為替レイトを見る限りにおいて、さらなる引き締めはさもありなん、ということになるわけですが・・・。

[BOJ][politics]日銀vs中川自民党幹事長‐日銀法改正?

上記エントリのような日銀の動きに対して、中川幹事長が過激とも受け止められる発言をしています。

自民党の中川秀直幹事長は14日、愛知県豊川市で講演し、日本銀行が利上げに踏み切る方向となったことについて、「政府の景気判断に変更はない。12月に(利上げの)判断を見送った日銀が、今月政策変更する合理的な理由は見あたらない」と述べ、日銀を強く牽制(けんせい)した。さらに中川氏は、日銀が利上げに踏み切った場合、政府が日銀の議決の先延ばしを求めることができる「議決延期請求権」を行使すべきだとの考えも示した。

安倍政権が掲げる経済の「成長重視戦略」の旗振り役を自任する中川氏としては、政府がデフレ脱却に取り組む中での利上げは景気の拡大を阻害する要因になりかねないと懸念。政府方針に足並みをそろえるよう日銀に異例の「最後通告」を突きつけた形だ。利上げについては大田経済財政相も14日のテレビ朝日の番組で「消費は弱くなっている。これが事実。この認識のうえで、日銀が責任をもって判断すると期待する」と述べており、17、18両日の金融政策決定会合に向け、日銀の最終判断が焦点になる。

中川氏は、講演で「政府・与党は今年3月までにデフレ脱却させると公約した。ここは政府・日銀が共同責任で頑張らないといけない」と指摘。さらに、日銀法が定める議決延期請求権に触れ、「日銀が抵抗するなら、政府は権利を行使する義務がある」と強調した。速水優前総裁時代の00年8月のゼロ金利政策解除の際、利上げを決めた日銀に対する議決延期請求を日銀が拒否した経緯にも言及し、「そういう道を繰り返すならば、重大な法制度の欠陥ととらえざるを得ない」と述べ、日銀法を改正する可能性も示唆した。

朝日「日銀利上げ「合理的な理由ない」 自民幹事長が強く牽制」

もちろん本件についてはwebmasterは中川幹事長を応援したいのですが、この論理展開では弱いのではないか、という気もします。中川幹事長が当サイトをご覧になることはないと思いますが、どなたか近しい人が見てくれることを祈りつつ(高橋洋一さんとは申しませんが、高橋さんにつながりのある人とまで範囲を広げれば、おひとりぐらいは・・・)。

  • 政府の景気判断に変更はないとなると、例のいざなぎ越えという話になってしまうわけで、安部政権になっても景気はしっかりしているという見解を維持する限り、主張がゴリ押しと受け止められてしまう可能性が高いでしょう。
  • 今回は議決延期請求権を行使するとしつつ、量的緩和・ゼロ金利解除の際にはそうしなかったことにも疑問が残ります。もっとも簡単な説明は首班が代わって現状評価も変わったというものでしょうけれど、それは採り難いでしょう。となると、
    • 昨年の夏よりも今は景気の腰が弱いとでも説明することで、一番目の点とあわせて見解を変更してしまうのが無難でしょう。もうひとつ、
    • 0.25%までの利上げとそれを超えての利上げでは効果が違う、というものも形式論理的にはあり得ますが、舌を噛むでしょうねぇ・・・。
  • でまあせっかく法改正を持ち出すのでしたら、インフレターゲットと同様の効果を持つようにやってみたらいかがでしょうか。つまり、
    • 適当な期限を設定し(5月末までに、ぐらいでしょうか。なぜ5月末なのかは後述します)、
    • その間に一定の達成すべきインフレ率(生鮮食料品とエネルギ関連を除くベース)の幅を定め(個人的には(プライスレヴェルターゲティング的な意味も込めて)7〜10%とでもしたいところですが、世に受け入れられるのはせいぜい1〜3%でしょう)、
    • 仮に期限までに達成すべきインフレ率の幅が実現できなかった場合には、インフレターゲティングの導入とターゲット未達の際の総裁解任規定を盛り込んだ日銀法改正法案を今国会に提出する(ので期限は5月末となります)ことをコミットします。
    • これならば、そのような法改正は日銀は絶対に実現を阻止しようとするでしょうから、インフレ率の実現は多くの人が期待するところとなるのは間違いなし、と(笑)。
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2007-01-16

[notice]本日はお休みとさせていただきます。

昨晩は体調がはかばかしくなかったものですから・・・。たっぷり寝たら回復しましたので、明日からは大丈夫だと思います。

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Before...

猿マシーン [お大事に。]

bewaad [>西麻布夢彦さん、猿マシーンさん お気遣いいただきありがとうございました。無事回復いたしました。]

bewaad [>一国民さん 毎日何かしらは書くという決め事を一度破ってしまうとずるずる書かなくなりそうなので、なんとか守ってみまし..]


2007-01-17

[economy][WWW]釣られるのが生きg(ry リローデッド

LazyZooさんのエントリを受けた先日のエントリについて、shunkunさんから反論をいただきました過敏に反応拡大解釈して勝手に怒る勘違いして怒ってキレてるようにしか読めないなどとお書きになられていることから、こちらが何を書いてもヒステリックに逆ギレしているようにしか受け止めてもらえないのだろうなとは予想するので、なるべくsvnseedsさんを見習って華麗にスルーと行きたいのですが、webmasterはそれほど人間ができていないので(笑)、不当な中傷だと思う点に絞って物申します。

もとの菊池誠先生の話のどの部分を重視するかという話にもなるんですが,こと「水伝」については「とんでもないことが主張されている」「とんでもない「科学」が道徳のために(善意から)とはいえ教育や躾に使われている」「とんでもない「科学」は分かりやすいが科学的でない」というあたりがポイントではないかと思います.在野のエコノミストがきらいな人にとって見れば,「おおこれこそ」といって食いつくところなんですが,LazyZooさんが嫌悪感を覚えたのはたぶん,「とんでもないことを「とんでもないこと」と批判できるのかコラ」という点ではないかと思います.本人知らないんで違うかもしれませんか.「批判できんのかコラ」というのは,ひとつには「テメエに言われたくない」というのと「意外にトンデモじゃないかもしれない」という2点があるのではないかと思われます.違うかもしれませんが.

(略)

いやしかし,「啓蒙活動なるもの」を止めろと言われたとまで拡大解釈して勝手に怒るというのは,どうなんですかね.勘違いして怒ってキレてるようにしか読めないですけど.困ると「経済学の素人」を強調するのもなあ,と思うんですが,まあ自発的なブログなんでそこらへんは読み手の責任なんでしょうな.

「ニセ科学(続きの続き)」(@だからちがうんだってば.1/11付)

第1点は、「テメエに言われたくない」というのは(webmasterに対する)「『啓蒙活動なるもの』を止めろ」という意味が含まれていると解するのは被害妄想なんですかねぇ、ということです。LazyZooさんのエントリにおいては、webmasterのエントリ(「視点・論点『まん延するニセ経済学』」(2006/12/26付))を個別の問題として取り上げたものではなく、一般的な風潮としての専門に対するリスペクトの欠如を歎ずる文脈において、例示として出されています。

つまり、webmasterが書いた事柄について具体的にあれがおかしいといった話ではなく、素人が知ったかぶりをして乱暴な話をし、それがあたかも専門家の代弁であるかのように受け止められるのは嘆かわしい、ということがその趣旨であったと理解しています。ひとつあのエントリに対してではなく、webmasterが聞きかじった経済学を権威あるものであるかのように書き散らかすこと全体に対して、「テメエに言われたくない」ということではないのでしょうか?

逆に言うなら、「テメエに言われたくない」という趣旨の言葉を投げつけられた身としては、それ以外にどう解せばいいんでしょうかねぇ? LazyZooさんが示すひとつの道は専門でエスタブリッシュされてから、ということになりますが、エスタブリッシュされるまで口を出すなということであれば、それは事実上素人は何も言うなということに等しいわけです。それとも、経済学を聞きかじるのを一切やめて、非経済学的な言い振りに特化しろとでも?

第2点は、「困ると『経済学の素人』を強調」しているわけではないということです。本件について時系列を整理するなら、そもそものエントリに素人云々は書いてあったわけで、LazyZooさんからご意見をいただいてから(今般の文脈においては、これが「困る」ということでしょう)素人だと言い出したわけではありません。

もう少し意味のある話をするなら、一般的には、批判されるべき素人を強調する言説というのは、素人の言うことなのだから大目に見ろとしたり、専門家から指摘を受けた際にそれは大人気ないとする逃げ道を確保したりするものでしょう。webmasterはそうした意味で自らを素人だとしたことはありません‐webmasterの書くことには誤りが含まれている可能性が高いので、気をつけて読んで欲しい、というメッセージを込めているわけです。だからこそ、誤りがあれば指摘して欲しいと書き、現に諸賢のご指摘をいただいて訂正したことも数え切れないほどあります。

言い換えれば、webmasterが素人云々とよく書くのは、本件の文脈に即して言うならば、それこそ世の中そう単純ではないよということに注意を喚起するためです。ネット上ではさまざまなコピペが飛び交っていますが、その信頼性は玉石混交で、webmasterが書いたテキストとて、たとえそれが専門家から見れば噴飯ものであったとしても、権威あるものとして流通してしまう可能性はゼロではありません。そのすべてをどうこうすることなどもちろん不可能ですが、少なくともソースに当たろうとする人間にとっては、専門的にきちんと検証されたものではないのだということをわかっていただけるでしょう。

こういう文脈での素人だとの注意喚起がおかしいというならば、「本人知らないんで違うかもしれませんか」「違うかもしれませんが」というshunkunさんの断り書きにしたっておかしいということになるでしょう。メタ的には同様の機能を果たしているのですから。

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2007-01-18

[WWW][computer]ブラウザの思い出話

一般人は常に「お気に入り」を表示している!
http://plaza.rakuten.co.jp/catfrog/diary/200701140026/
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://plaza.rakuten.co.jp/catfrog/diary/200701140026/

らしいんですが、自分はもっぱらURL直打ちですね。どのブラウザでも使えるし。

「お気に入りをサイドバーに常時表示させてない人はどうしてるのか」(@最速インターフェース研究会1/15付)

webmasterも(IEを使う際には)常に「お気に入り」(に限らず他の何であれ)は表示していないのですが、どうも世の中の多数派はそうではないようです。ツールバーですらカスタマイズして面積を最小化し、ページ表示面積を最大限確保するようにしているのですが、そんな中常時表示などしようとも思わないわけです。

では代わりにどうしているのかといえば、現在はRSSリーダとタブブラウザの開けっ放しの組み合わせです。この体制になったのは、RSSリーダを使うようになったのがより最近ですので、ここ1年といったところでしょうか。それ以前はタブブラウザのみが頼りで、その開始は正確にいつぐらいかは記憶していないのですが、Operaを導入してからですから、Ver.6.x時代だったので、おそらく2001年ぐらいだったのでしょう。

それ以前はといえば、やっぱり基本はwebmasterもURIベタうちでしたが、さらに履歴も使っていました。なぜそうだったのか、「お気に入り」は整理が面倒ですが、履歴であれば見なくなったサイトは自動的に消え、巡回するところだけが残っていくのが便利に感じたからです。今から振り返るならば、ある意味、野口悠紀雄先生の「超整理法」と同じ発想だといえるでしょう‐時系列整理重視、日常の使用頻度による自動的優先順位付けという要素がありますから。

脱線から戻りますと、98系からDOS/V互換機(って言い方も最近はしないよなぁ・・・)へ乗り換えたのが96年でしたが、当時のIEはVer.3.xで、当時にしても「お気に入り」は使っていなかったのですが、履歴もまた現在のようにサイドバー表示ではなく、別ウィンドウ表示でした。この場合、履歴を表示させてもHTMLページの閲覧自体は全く変わらず、タスクバーでウィンドウを切り替えて使用していたわけです(履歴ウィンドウでクリックすると、ブラウジング側でページが切り替わります)。

そんな快適(笑)なネットサーフィン(って言い方も、これまた最近はしないよなぁ・・・)の転機となったのは、IE4の登場でした。翌1997年、IE4にヴァージョンアップが行われると聞き、延々時間をかけてダウンロード(当時はナローバンドでしたから)し、インストールしたところ、履歴を見ようとしたらサイドバー表示へと変わってしまっていたのです!

そんなことは聞いてない、ヴァージョンアップなんてしなければよかった、と悔やんでも後の祭り。巡回先をひととおり、なんていうときは泣く泣くサイドバーに履歴を開き、狭さに不満を抱きつつ閲覧するということにならざるを得ませんでした(巡回先を見終わったらサイドバーを閉じていました)。タブブラウザに出会ったときには、この長年の不満が解消されると、本当にうれしかったものです。

・・・とまあ、そのようなことを思い出してしまったのでした。

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Before...

bewaad [>とおりすがりさん ご指摘を受けたからには、直近のコメントはhtmlドキュメントの構成どおり冒頭列挙にするようCSS..]

ぽんこぽこりん [便乗で一つ突っ込みを,IEでこのブログからリンク先へ飛んで戻ってくるとブログの一番先頭に戻ってしまうので非常に使いづ..]

bewaad [>ぽんこぽこりんさん 私自身が別ウィンドウで開いてばかりなので、そういう点には気付きませんでした。でも、当サイトでは..]


2007-01-19

[BOJ][economy]日銀(とりあえずは)0.5%への利上げせず

事前にそのような報道が出まくっていましたので、結論自体には違和感はありません。しかし、いかなるロジックでそうしたのか、ということが重要でしょう。当サイトの主張のように、そもそも量的緩和にまで遡って過ちであったと認めるはずもなく(笑)、現時点で出ている情報から探ってみます。

−利上げ見送りの理由は。

「経済、物価情勢はこれまでのところ、見通しと比べてやや弱含んでいる。先行きについては生産、所得、支出の好循環が維持されるとの見方に変化はないが、強弱さまざまな経済指標があり、経済情勢をさらに見極めるのが適当との結論に至った」

中国「政府や与党への配慮ない 日銀総裁一問一答」

見通しに変わりはないけれども、現状がやや弱含んでいるから利上げせずというのは、フォワードルッキングを強調してきたこれまでの姿勢からすればおかしな話です。現在の指標からすれば、先行きの見通しの蓋然性が変化してきた、というのがあるべき理由でしょう。「経済情勢をさらに見極める」という場合、何を見極めるのか、ということです。いや、webmasterとしては、先行きの見通しに変化はないけれど見極めないと、といってずっと利上げしないということでもいいのですが(笑)、ふつうそうした場合には見通しが外れたということになってしまうのではないでしょうか、老婆心ながら。

逆に言えば、先行きの見通しは外さなかったという評価を変えないためには、どこかで利上げをしなければならないということを示唆していることになります。日銀が素直に「見通しを外しました」というような組織であるならば、そういう邪推はする必要もないわけですが・・・。

−今後の政策運営は。

「緩和的な金融環境を維持しながら、徐々に金利水準を調整するという基本的な考え方に変わりはない」

「あらかじめ何らかのスケジュール感を頭に置いて考えるわけではない。特定の経済指標の強弱が政策判断には結び付かない。物価上昇率が低くなったから利上げが遠のくなどと、単純ではない。(消費や物価の改善に)確証が持てれば即座に行動する」

中国「政府や与党への配慮ない 日銀総裁一問一答」

物価安定をその使命とする中央銀行が、「物価上昇率が低くなったから利上げが遠のくなどと、単純ではない」というのは、webmasterには理解不能です。物価上昇率が低くなったのなら、利下げを検討すべきではないの? この見解に賛成しろといっても日銀には受け入れられないであろうことぐらいはwebmasterだって予測可能ですが、物価上昇率が低くなった場合でも利上げすることがあり得るとすることを撤回することですら、期待するのは贅沢だというのでしょうかねぇ(泣)。

そうした事態が絶対に起こり得ないと断言する勇気もwebmasterにはありませんが(テクニカルな要因や、著しい期待の変化によってはあり得ることは否定できないでしょう)、基本線は、あくまで物価が上昇すれば利上げ(引締め)、下落すれば利下げ(緩和)であるはずです。インフレターゲティング導入を想定した際に、どの程度上昇(ないし下落)した場合にそうした行動に移るべきかにおいて見解の相違があるのはかまいませんが、これはそれ以前の問題なわけで・・・。

#といいますか、「即座に行動」とは利上げしか念頭に置いていないのは明らかなわけで、本当に予断を持っていないなら利下げだってあり得るでしょ?

−3人の政策委員が利上げを求めた。

「(景気が緩やかに拡大するという)将来の見通しでは全員が一致したが、経済の姿をなお丹念に検討していこうという判断と、もう十分判断できるという立場で、わずかに意見の差が残っている。判断の方向が違うわけではない」

中国「政府や与党への配慮ない 日銀総裁一問一答」

今般の一連の動きの中で、唯一といっていい肯定的評価が可能な点が、この賛否が分かれたという点でしょう。全会一致でいきなり変わるというのは、例えばイングランド銀行を見れば問題であるのは明らかでしょう。諸所の講演会などで地均しするのではなく、そうした票数の変化でこそ、金融政策決定会合における判断の移り変わりは示されるべきだとwebmasterは思います。手続ではなく内容に着目するならば、次回での利上げの可能性を大いに感じさせるため悲しいことではありますが・・・。

−政府や与党に配慮したという見方がある。

「そうした要素が入る余地はない。ただ、政府との十分な意思疎通は今後も万全を期す。日銀の判断と責任で(金融政策の)運営に努めるのが国民の信頼を得る道だ」

中国「政府や与党への配慮ない 日銀総裁一問一答」

聞くだけ野暮というもので、仮に配慮していたのが事実だとしても、はいそうですとは答えるはずもないでしょう(笑)。

ところで、メディアでは中川自民党幹事長をはじめとする利上げ反対の声は、選挙目当てだという解説が多くなされています。いい意味で選挙目当てだ(例えば、多くの選挙民にとってプラスとなることだ)という文脈ではなく、悪い意味で使っていると解すべきでしょう。なぜ悪いのかといえば、webmasterが推測する限り、目先は多くの者が喜ぶけれども、長い目で見ればかえって日本全体にとってマイナスになるというロジックだとしか思えません。

この推測が当たっているならば、どこまで意識的かどうかはさておき、メディアで発言する者の多くはバブル再発の懸念を有しているということになるのでしょう。しかも、バブルが再発すればなぜ悪いかといえば、バブルで浮かれて必要な改革をサボり、結果としてバブル崩壊後に多大なるツケを払わされるという理由であるように見えます。

結局のところ、この見方を覆すことができない限り、多数派は(実際に景気が悪くならない限りは)日銀を支持するのかなぁ、とwebmasterは思うのですが、いかがでしょう?

−利上げを予想した市場関係者も多かった。対話は十分か。

「経済情勢を分析して議論を詰めると繰り返してきた。利用可能なデータを分析して将来を予想するのは、われわれも市場関係者も同じだ」

中国「政府や与党への配慮ない 日銀総裁一問一答」

少し前に取り上げたばかりなので繰り返しませんが、市場が織り込んでいるのは利上げすべき状況にあるということではなく、状況がどうであれ日銀は利上げするだろうということであるとしか思えません。その意味で、市場との対話は十分すぎるぐらいに行われているのが現状でしょう。

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a-kun [確かBloombergは会見の音声ファイルを公開しているんだよな。有料会員制だから一般には流れないけど。それでもここ..]

bewaad [>BUNTENさん お疲れさまでした。]

bewaad [>a-kunさん 退任に当たって、記者は勝手なことを書くなら信頼できない、テレビを通じて直接国民に語りかけたいとした..]


2007-01-20

[misc]よくわからないメガマック人気

日本マクドナルド株式会社は、1月12日(金)から期間限定販売している「メガマック」が当初の販売予測を大幅に上回る売上を記録し、販売開始の12日(金)から15日(月)までの4日間で当初168万食の販売見込数が、実際にはその約2倍の332万食の販売数となりました。

「メガマック」の販売に関して/〜記録的な需要による数量限定販売開始と販売期間延長〜

もちろんとっくに食べてみたのですが、分厚すぎて食べづらい、というのがwebmasterの正直な感想です。ビッグマックなら一口で上から下まで食べられますが、メガマックはそれをやろうとするとあごがつらいのです(笑)。上下交互に食べていくと、ただでさえ積み重なったものが多く、その分だけ横ずれの可能性が高くなっているのに、力の係る点が入れ替わるのでますます横ずれしがちです。

仮に肉の量が人気の源だというのなら、ウェンディーズのビッグトリプルの方がファストフードのあるべき方向性だと思うのです。気軽に食べられてこそのファストフードであって、崩れやしないかと気をつけながら食べるようなものではないですよねぇ。

#でも、ビッグトリプルはビッグトリプルで、トマトが入っているのが気に入りません。水分の多いものを挟むと、逆側から垂れてくることを気にしなければならなくなりますし、なによりバンズがふやけて不味くなるので・・・。

[misc]マクドナルドの略称はやっぱりマックでしょう

と、上からの流れで関西文化圏の人々に喧嘩を売ってみました(笑)。なぜそうかって、マクドナルド自身が「メガマック」と名付けはしても、「メガマクド」とは絶対にならないでしょうから。

今までこの理屈をぶつけて、関西文化圏の人々から反論を受けたことがありません(メガマックを持ち出すのは今回が初めてですが、レギュラー商品でもビッグマックやらチキンマックナゲットやら・・・)。納得いかない方々からのコメントをお待ち申し上げております(笑)。

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通行人 [特盛はメガマック相当の商品名であってオプションではないという事でorz]

bewaad [>とおりすがりさん 汗だくはまずそうで厭だなぁ(笑)。 真ん中が「さ」だとアクセントが置けないとか、いろいろ奥が深..]

bewaad [>通行人さん 了解です(笑)。]


2007-01-21

[economy][book]兪炳匡「「改革」のための医療経済学」

当サイトでも何度か取り上げている権丈先生の一連の著作と重なるところの多い本書ですが、webmasterが気になった相違点は次の2つです。

まず、今主流の経済学研究スタイル(と書くと語弊もあるのでしょうけれど)への違和感からイギリス留学を選択し、著作においても人文的な物言いが豊富に盛り込まれている権丈先生に対して、素直(?)にアメリカ留学を選択した著者の記述スタイルは、第1章が「忙しい読者のための総括」であることに典型的に表れているように、学生のレジュメ的なシンプルさで一貫しています。あくまで相違であって良し悪しの問題ではありませんが、時間の確保がなかなか難しい読者などには、本書の方が向いているでしょう。

#権丈本は、専門論文や学生向けテキストを採録したものである一方、本書は(おそらくは)より広い読者に向けたものですから、想定する読者層の違いも大きいでしょう。

続いて、いずれにおいてもニューハウスの医療費に関する研究(1977)が基本的文献として取り上げられ、そこから論考が組み立てられているのですが、

このニューハウスの研究は、医療費増加の「犯人に疑われた5つの要因について、医療費上昇への寄与率を各要因別に定量化・数値化しました。この5つの要因とは、(1)人口の高齢化、(2)医療保険制度の普及、(3)国民所得の上昇、(4)医師の供給数増加などの医師誘発需要、(5)医療分野と産業における生産性上昇率の格差です。これら5つの要因の寄与率を全て合わせても、(略)米国の総医療費上昇率(1940〜1990年)のせいぜい25〜50%しか説明できませんでした。医療費上昇に50〜70%も寄与した「主犯」は、定量(数値)的な測定が困難な「その他の要因」に含まれてしまったわけです。ニューハウスは「医療技術の進歩」が主犯ではないかと推測しています。(後略)

p119(webmaster注:括弧付き数字は、原文では丸付き数字です。また、句読点は、原文ではカンマとピリオドです)

とされている本書に対して、権丈本では、たとえば彼は、医療費の水準は所得により90%程度説明されることを根拠にして、医療費に影響を与えると考えられている他の要因は量的には重要ではないと考える再分配政策の政治経済学I(第二版)、p192(webmaster注:「彼」とはニューハウスのことです。また、読点は、原文ではカンマです))とされているのです。webmaster自身で原典に当たって確認すべきことではありますが、実際のところがどうなのか気になります。

webmasterがこれらの相違点を挙げたのは、両者の差を強調するためではなく、これらの違いにもかかわらず、その政策的インプリケーションが極めて似通っていることの意味を重く考えるからです。昨今の医療を巡る政策の方向としては、

  1. 高齢化による医療費増(と財政悪化)を踏まえた医療費削減
  2. 1により医療サービスの水準が低下しないよう、その生産性・効率性を向上させるための競争原理の導入等の規制緩和

が主なものだとwebmasterは認識していますが、そのいずれも誤り(である可能性が高い)、と両者は共に主張しています。1については、高齢化によっては医療費はほとんど増加しないということが実証されていますし、2については、前提が違うのがそもそもの問題ですが、皆保険制度に大いに影響が出てくるのは避けられないと考えられます。

規制緩和に反対というと、一般的には抵抗勢力のレッテルを貼るという反応が見られますが、少なくとも八代尚宏先生や福井秀夫先生といった学界の論者にあっては、本書(や権丈本)の指摘に対して、きちんと学問的に対応することが倫理的に求められるのではないでしょうか。とりわけ、「官の詭弁学」であれだけ大見得を切った福井先生におかれてはぜひ(笑)。

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bewaad [>市井の勤務医さん バカは想像もできないような失敗をしでかすからこそバカなのでして、7割とはそのベテラン先生もバカを..]

ティファニー マグカップ 価格 ["Well then, Mastro Geppetto," said the carpenter, toshow h..]

NIKE スニーカー 店舗 ["This has come in the nick of time. I shall use it tomake ..]


2007-01-22

[politics][book]佐藤優「自壊する帝国」

年頭の決心を早速実現してみました。国の興亡は人の本性を明らかにし数多くの劇的な展開を含むテーマですから、戦国時代や幕末維新がドラマやゲームの舞台となることが多いようにも表れているように人気が高いわけです。まして本書で取り上げられるのはソヴィエト連邦という20世紀において主役級の存在感を示す国家で、著者は大使館職員としてその中心に触れ得る立場にいたのですから、面白くないはずがありません。

さらには、先に出版された「国家の罠」の実質的な前史にあたる部分についての著作であり、両者をあわせて著者の半生記として見れば、「国家の罠」がより深く味わえる、というおまけもあります。外務省嫌いな人にとって燃料となる外務官僚の生態も描かれていますし(笑)、買って損のない本であるのは間違いないでしょう。

しかしながら、本書には大いに気になる点があります。p188からp190にかけてのエピソードですが、ネタバレを避けて曖昧に記すなら、あるAという人物について、Bという人物からある情報を入手した後、Cという人物からそれは違うとの情報を得、日本に打電しようとしたところ、逆の話を送るようでは大使に至るまでのクレディビリティが傷つくので差し止められた、というものです。

最後の差し止めの話を除けば、諜報の世界ではありふれた話でしょう。有能なスパイが誤情報には目もくれず真実を突き止める、なんていうのはフィクションの世界にしかない話です。webmasterは諜報部門に籍を置いたことはありませんが(笑)、もろもろの見聞きしたことからすれば、玉石混交のできる限り多くの情報をまずは集めた上で、それらを相互に検証しあいながら背景を探っていくというのが実態ですから、その意味では、この部分こそが実態を描き、その余の部分は逆に実態を伏せていると言えるわけです。

では何が気になるのかといえば、この部分以外ではそうした記述がないところです。その理由は何か、考えなしにかいたというのは一番あり得ないでしょう。筆者とて諜報に携わった身、いかなる情報を出し入れするかの重要性は知り抜いているはずで、書いた以上は、とりわけ特定箇所に限って書いたということには、必ず何かの意味を込めているに違いありません。

#著者が本書で書かれているような情報入手の見返りに何を話したか、なんてことは一切触れられていませんが、これとてもちろん、著者の意志がそうだからこそ何も書かれていないに決まっています。

諜報にはそのようなことがあるのだということを示すためというのであれば、上記のエピソードは本書の本旨には関係が極めて薄く、他方でおそらくは重要な局面で同様のことがいくらでもあったはずですから、わざわざこのエピソードを選ぶ理由がありません。また、この場合、ひとところでしか書かない理由もありません。

差し止めたという上司(webmaster注:本書では実名記載です)への復讐でしょうか‐諜報の分野で上記のようなことを言ったということが公開されれば、素人として(少なくとも他国の関係者からは)まともに相手にされなくなるでしょう。これとて、本当にそのようなことを言うような人間であればとっくに相手にされなくなっているでしょうし、単に嫌がらせがしたい(笑)のであれば、トイレ掃除のエピソード紹介のような形で可能なネタが他にいくらでもあることでしょう。

となると、一般読者は眼中に無く、特定の者に対する特別の意味のある記述だということぐらいしかwebmasterには思いつかないのですが、深読みのし過ぎかなぁ・・・。

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bewaad [>PKさん そっちの影響が強いのは否めませんが、それは使う側の器量の問題かな、とは思います(何とかと鋏は使いよう、っ..]

bewaad [>Satsukiさん PKさんへのお応えでも書きましたが、それらをひっくるめて使う側がきちんと使えるか、という問題で..]

PK [こいつは、大川周明まで持ち出して反米英感情丸出しだぞ マルクス主義もアジア主義も糞だ]


2007-01-23

[media][BOJ]ゼロ金利解除騒動に関するFinancial Times社説

日本語で読めることを感謝すべきか、それとも日本メディアで出てこないことを嘆くべきなのでしょうか。はてなブックマークでも多くの関心を集めているようで、いまさらながらではありますが、webmasterもまっとうすぎる社説。まともすぎて涙が出てくる(泣)と思うのです・・・。

日本銀行は18日、短期市場金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を0.25%のままで維持すると決めた。これについて、日銀の判断は正しかった。しかし日銀は市場には利上げを期待させていただけに、金利据え置きを求めた政治圧力に屈したとの印象を与えてしまい、その結果、日銀がこれまで必死になって守ってきた、中央銀行としての独立性や独自性を損ねてしまった。

(略)

金融政策をもっと緊縮的にするべきだという強い必然性があるのなら、日銀のあいまいな態度もまだ理解しやすいが、そんな必然性はない。食料品とエネルギーの価格を除けば、日本はまだデフレ状態にあるからだ(そして食料とエネルギー価格についても、原油価格の下落に伴いやがて下落し始める)。

円安が輸入品の価格を押し上げているにもかかわらず、デフレなのだ。円安レベルは輸出業者にとって朗報で、日本経済を支える収支と投資を拡大させている。しかしこの輸出中心型成長は、国内で給与レベル上昇や内需拡大が大々的に長続きするという現象につながっていない。それがなければ、今後いずれインフレになるという期待は定着しないし、何か衝撃の事態が起きれば、日本経済はたちまちデフレ状態に舞い戻ってしまう。

(略)

しかしもっと大きな問題は、日本の金融政策を今後どう運営していくべきかだ。日銀は金融政策の実施を通じて物価安定を図る責務がある。政策金利を決めるのは、日銀執行部の3人と、民間選出の審議委員6人からなる政策委員会だ。

日銀はあたかも、素晴らしく優秀だが恥ずかしがりな数学者のようで、コミュニケーション能力に問題がある。それが一番の問題だ。「物価の安定」とはどういう状態だと考えているのか、きちんと説明するのが下手だったし、自分たちが考える物価安定状態にどうやって到達するつもりか説明するのも下手だった。福井俊彦総裁は日銀の透明性や情報公開を高めたいと常々言うが、政策枠組みを出版したり、記者会見の回数を増やしたとしても、その中身があいまいだったり不正確だったりしたら、役に立たない。

日本政府はぜひとも、明確なインフレ目標を設定するべきだ。しかし日銀は、金融政策環境が混乱していては目標達成は難しいと懸念するだけに、目標の明示はできるだけ避けようとしている。また政府側にしてみれば、経済で何かまずいことがおきると日銀のせいにできるのは実に好都合だ。だがこのようなゲームを続けると、日本の回復を脅かす危険がある。日本経済は力強さを取り戻しつつあるが、しっかり確かなものになったとはまだ言えないからだ。世界第二の経済を運営する人たちには、もっとしっかり仕事をしてもらいたい。

gooニュース(Financial Times)「日銀、大混乱―フィナンシャル・タイムズ社説」

全文転載を避けるため一部を略しましたが、そこに書いてあることも頷きたくなることばかりですので、まだご覧になっていないという方がいらっしゃいましたら、ぜひ原文に当たってください。

本日のツッコミ(全9件) [ツッコミを入れる]

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bewaad [>アルベルトさん あと、WSJよりも。日経に比されるのがFTよりもThe EconomistやWSJであるのが不幸、..]

bewaad [>nuffyさん でも、一時期はグリーンスパンらを差し置いて世界最高とか言われていたわけで、それに比べれば随分メッキ..]

bewaad [>通行人さん 下を向けばこぼれる涙はあるのですね(泣)。]


2007-01-24

[notice]トップページの表示日数を変更します。

サーバ負荷の関係上エラーがでていたりもしますので、負荷軽減のため、現在トップページにおいては5日分のエントリを表示していますが、これを3日分に変更させていただきます。よろしくご理解ください。

[misc]勉強の動機は愛

どうして勉強しなきゃいけないの、という質問が以下に見られるように盛り上がっているようですが、

どれを読んでも(ただし、分裂勘違い君劇場の元ネタであるはてなの質問への15番の回答を除いては)、webmasterは違うのでは、という気がします。というのも、これらは抽象化するならば、いずれも勉強をすると得する(しないと損する)ということを述べているように思うのですが、それらは「しなければならない」理由ではないからです。

勉強をすればいいことがある、ということを言うにしても、勉強に費やす時間を他に振り向ければ子どもにとってはもっと「いいこと」があるかもしれません。することのメリット・しないことのデメリットという道筋で説明する限り、なにを「いいこと」とするかは人によって違うという壁に行く手をさえぎられる可能性は常に付きまといます。

言い換えれば、勉強と、そのために犠牲にする何かのいずれが「いいこと」かという選択において、勉強の方が「いいこと」だといくら説明したところで、それは私にとっては違う、という反論には根源的にはなす術がないのです。「いいこと」だという説明を聞いて納得する子どもに対しては有効なのかもしれませんが、そこで納得が得られなければ終わりです。

勉強が「いいこと」だと説得する背景を整理するなら、

  • 説得しようとする者が「勉強が『いいこと』だ」と考えているということのほかに、
  • 説得の相手方に「いいこと」が実現してほしい、

という構造があるはずです。勉強しないと困る可能性が高いとして、困ってもらっても一向に構わない人に対しては、勉強したくないならばどうぞご自由に、ということになるはずです。「どうして勉強しなきゃいけないの」と問われて、なぜならね・・・、と答えるからには、勉強して困ってほしくないのが説得者の心情でしょう。

逆に子どもの側の受け止めを考えた場合、この手の話者の立場のあり方には、一般的に敏感であるといえるでしょう。あたかも子ども本人のためであるかのように語りながら、実は話者のための話をしていると感じたならば、耳をふさいでしまうというのはよくある話です。

本件について敷衍するなら、こうした話者の立場をきちんと伝えることが、説得力を増すひとつの柱ではないかとwebmasterは思います。同じことをしゃべってもある人は成功しある人は失敗すると言うのは、語られる理屈を支える話者の態度が無意識的にではあれども反映した結果だということが多いのではないでしょうか。この場合、勉強のメリット・不勉強のデメリットをいくらわかりやすく語ることができても、それによる改善は期待できません。ボトルネックは別の箇所に存しているのです。

つまり、「私はあなたを大切に思っているから、あなたにいい目にあってほしい/困った思いをしてほしくない」ということがきちんと伝わった上でこそ、勉強すればいい目にあえる/勉強しないと困ったことになる、という言葉を素直に受け取ってもらえるのだとwebmasterは考えます。勉強のメリット・不勉強のデメリットについていろいろと言い方を考えることはもちろん必要ですが、そればかりに傾斜するのは片手落ちでしょう。

「どうして勉強しなきゃいけないの?」と子どもに聞かれたら、まずは「しなきゃいけないわけではないけど、してほしいんだ」と答えましょう。「あなたに幸せになってもらいたいから」と。親/教師/・・・として外聞をはばかってなどということではなく、あなたを愛するひとりの人間として、愛するあなたには幸せになってほしい、ということが伝わるなら、それで説得は成功したようなものです。当然ながら、日ごろから子どもからも愛され、子どもがそうした思いを素直に受け止めるような関係を築いていることが前提ではありますが。

子どもに勉強しなきゃいけないなと思わせられるものは、愛なのです。

#本当に子どもを愛しているなら、勉強しなくても、それはそれとして受け止められるのでしょうけれど。

[history][movie]フランス最後の王妃?

「マリー・アントワネット」のポスターに標記の語句が見られるのですが、フランスの(現時点での)最後の王妃はマリー・アメリー(夫は7月王政のルイ・フィリップ)だってば。

#ぐぐってみたら、映画のみならず書籍でも同様の煽りは多いようですがorz。

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bewaad [>ねずみ王様さん 学問の府としての大学でしたら、本来なら「したくなきゃ中退すればぁ?」と返してしかるべきなのでしょう..]

bewaad [>西麻布夢彦さん 禁止された方がやりたくなる、ってことはあるかもしれませんね。]

bewaad [>Rosewoodさん 私の書いたこともあくまで抽象論ですから、具体的な当てはめにはさまざまなご苦労があると思います..]


2007-01-25

[government]夕張市への裁量的支援策と総務省批判

先日懸念したとおり、ナショナルミニマムをどうすべきかという広範な議論のないまま、泥縄的かつ場当たり的に夕張市に対する国の支援が固められました。

総務省は二十二日、財政再建団体入りする夕張市に対する支援策を固めた。道が同市への財政支援の軸にする三百六十億円の低利融資をめぐり、金利1・5%の三分の一に当たる0・5%を国が負担する。また石炭博物館の存続に向けて国が協力する。同省は夕張市が職員人件費削減などの経費削減努力を十分に行っていると評価し、財政支援などに乗り出すことに踏み切った。

道は夕張市の二○○六年度赤字決算の全額に当たる約三百六十億円を市の代わりに金融機関から調達してまた貸しする。財政破たん状態にある市が直接調達するより金利を1%以上軽減できる効果がある。道が資金調達する際の金利は年1・5%だが、市には0・5%で貸す。この差1%のうち、国は0・5%に相当する金利額を特別交付税として道に支給し、国と道と市が0・5%ずつ負担するかたちにする。

石炭博物館は、道内の観光業者や市民有志らが運営の継続を探っている。総務省は展示施設を維持するための補助金支給などを検討し、民間業者らが施設の運営に参加しやすい環境をつくる考えだ。

また総務省は、市が昨年十一月に策定した再建計画枠組み案では、お年寄りと子供へのしわ寄せが厳しいと判断。市が二月にまとめる再建計画案では、高齢者向けバス料金の補助制度の存続や小中学校統合の先送りなどの修正を認めることを決めた。これに関連して安倍晋三首相は二十二日夜、官邸で記者団に「政府としては子供たちやお年寄りに影響がないように配慮をしなければならない。住民の皆さんが将来に夢や希望を持てるように地域の再生にも力を入れていく」と述べた。

北海道「道の夕張金融支援 国も0.5%金利負担」

菅義偉総務相は23日の閣僚懇談会で、財政再建に取り組む北海道夕張市に対する支援を関係省庁に要請した。雇用対策や中小企業対策、観光振興などの施策を同市で重点実施することを念頭に置いている。同市の再建では北海道が低利融資などの支援を表明済み。総務相は閣議後会見で「総務省も道に協力していきたい」と述べ、財政的な支援も含め検討していることを明らかにした。

夕張市は昨年末に財政再建の基本的な考え方をまとめたが、負担の急増に住民が反発。今年に入り、住民負担の軽減策を打ち出した経緯がある。総務省は同市に全国最低水準まで行政サービスを切りつめるよう求めていた。

日経「菅総務相、夕張市への支援を関係省庁に要請」

まずは支援の内容に問題があるでしょう。具体的に指摘するのも品のない話ではありますが、石炭博物館は到底ナショナルミニマムだとは思えません。仮にその内容が文化振興等の観点から意義があるというのであれば、そもそも昨年10月に休館した時点でそのような話が出てこないのはおかしな話ですし、なぜ文部科学省の補助金でないのか、ということもあります。

まして、総務大臣の呼びかけに答えて各省庁が公共事業や補助金において夕張市関連の案件を優先採択するようなことがあれば、各事業の政策目的とは異なる観点で優先順位をつけるということになるわけですから、その運用のあり方としてほめられた話にはなりますまい。政策目的実現の観点からは、より効率的・効果的と考えられる案件が、予算制約に服する中で、よりそれらに劣る夕張市の案件に押し出される可能性が出てくるからです。

これら以上に深刻足り得るのは、モラルハザードの問題です。引用した日経の記事にもあるように、総務省は全国最低水準まで行政サービスを切り詰めるよう求めていたとのことですが、今般の支援によりそれよりは上の水準になるということは、裏を返せば支援を受けた夕張市よりも行政サービス水準が低い地方公共団体が存在するということに他なりません。

そうした地方公共団体には、当然ながら報道のような支援措置は講じられません。であるならば、財政破綻しないように頑張るのが馬鹿馬鹿しいということになってしまうでしょう‐破綻すれば支援が得られ、行政サービス水準が上がる可能性があることになるのですから。少なくとも経済合理性だけを考えるならば、今般の措置は地方公共団体の財政規律を緩める方向に働くことは必定です。

少し前に金融機関に公的資金が導入された際には、さかんにモラルハザードが語られましたが、あちらの場合は経営者に民事(賠償請求)・刑事(背任罪、証取法違反等に係る告訴)上の責任追及がなされており、モラルハザードを抑止していました(預金者には確かにモラルハザードが生じていたでしょうけれど)。他方で、地方公共団体にはそのような枠組みはないので、財政破綻のレッテルを貼られることはプライドが許さないとか、その程度のものにしか頼れません。

こんなことをやらかす総務省が、他方で財政破綻状態の地方公共団体について、財政規律を高めるために債権カットを認める法制を検討しようというのは、支離滅裂であるとしか評することができません。債権カットを認めれば貸し手が地方公共団体をチェックするのだという理屈を捏ねているようですが、マッチポンプもほどほどにしろということでしょう。そんなことをする前に、今般の措置がどれだけ財政規律に悪影響を与えるのか、よくよく省みて欲しいものです。

といいますか、報道のとおり夕張市が財政破綻を理由に金利格差が付けられているのならば、債権カットを導入するまでもなく貸し手のチェックは(部分的ではあるかもしれませんが)働いているということになるのですが(笑)。既述のモラルハザード防止措置の有無もそうですが、以前懸念したように、総務省はうわべだけ金融関連のスキームをなぞる程度の知識・知恵で政策立案をしていると思わざるを得ないですねぇ・・・。

[WWW]Gapminderが楽しい

econ-economeさん経由ですが、各国のいろいろな変数(一人当たりGDP、平均寿命、CO2排出量、都市人口など)を縦軸・横軸で組み合わせてプロットするものです。思わぬ相関が見つかるなど、なかなか遊びがいがあるページですので、ぜひお試しを。

本日のツッコミ(全1079件) [ツッコミを入れる]

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RobertPhoke [dxclppf http://www.overdriverockband.co.uk/ray-ban-wa..]

Williamsenue [ctegczv http://www.hiqube.it/625-polo-moncler-bianca...]

HenryReami [lkepaxf http://www.aktion-cash.de/191-nike-air-max-th..]


2007-01-26

[economy][BOJ][book]齊藤誠「成長信仰の桎梏」

本書におけるゼロ金利政策・量的緩和政策に対する「積極的(すぎる)」「(途方もなく)拡張的」といった評価は、本書の論理展開に照らしても誤っているとwebmasterは考えます。以下、具体的に3つの矛盾について論じます。

まず、いかなる状態をもって「積極的」等と評するか、明示的に定義への当てはめが行われている部分はないのですが、

ここまでの議論では、金融政策の長期的な中立性を想定しながら、ヘリコプター・ドロップによって長期的な貨幣供給を行っている場合の物価水準やインフレ率の決定メカニズムを見てきた。

こうした前提で見るかぎり、1990年代半ば以降の日本銀行の貨幣供給に消極的であるという判断はなかなかできないように思える。日本銀行は、名目GDPの拡大のテンポを上回って長期国債買い切りによる貨幣供給を行ってきた。むしろ、金融政策の物価やインフレ率に対する影響力が限定的な経済環境にあって、積極的すぎる金融政策を展開してきたとさえいえる。先に述べたように、1995年以降、年率0.5%を下回る水準に翌日物オーバーナイト金利(銀行間貸借金利)を誘導してきた超低金利政策は、日本銀行の長期的な物価制御能力さえも奪ってしまったといってもよい。

p93

という記述を見る限り、「名目GDPの拡大のテンポを上回って長期国債買い切りによる貨幣供給を行っ」たことが「積極的」等に該当するものと整理されていると考えて差し支えないでしょう。そしてその含意は、積極的な金融政策の趣旨が、機動的な公開市場操作による「前向きの資金循環」から貨幣数量関係に依拠した「物価水準への積極的な働きかけ」へとその軸足を移していった(p110)ということですから、デフレ脱却を意図したマネタリーベース拡大であったと整理できます。

では、筆者の整理によれば、「貨幣数量関係に依拠した『物価水準への積極的な働きかけ』」とは、どのような形で実際に物価水準に影響を与えるとされているのでしょうか。

以上の議論をまとめると、現在の物価水準を引き上げようと思えば、現在の名目貨幣供給を引き上げるばかりでなく、拡大した名目貨幣供給をずっと維持しなければならない。実質貨幣需要の名目金利に対する感応度が高いほど、将来にわたって名目貨幣供給を高水準で維持する必要性がいっそう高まる。

(略)

以上で見てきたように、長期国債買い切りを通じた貨幣供給は、中央銀行がきわめて長期的なコミットメントを要していることになる。中央銀行は、貨幣市場に参加している人たちに対して、中央銀行は「長期国債を保有し続け、その借り換えにも応じる」と約束し、その約束をずっと守らなければならない。

pp78,79

ここに、第1の矛盾があります。先に示したとおり、著者が日銀の金融政策を「積極的」等と評するのは、あくまで「名目GDPの拡大のテンポを上回って長期国債買い切りによる貨幣供給を行っ」たことを捉えてもののですが、「現在の物価水準を引き上げようと思えば、現在の名目貨幣供給を引き上げるばかりでなく、拡大した名目貨幣供給をずっと維持しなければならない」のであるならば、「現在の名目貨幣供給を引き上げ」たことをもって「積極的」等とするのはおかしな話です。

いったん著者の評価そのものを離れ、評価基準のみを用いて実際の日銀の金融政策を見てみましょう。「拡大した名目貨幣供給をずっと維持」することのコミットメントとして、著者は「『長期国債を保有し続け、その借り換えにも応じる』と約束し、その約束をずっと守らなければならない」とありますが、そのような約束を果たして日銀はしているのでしょうか。

日銀の平成16(2004)年度決算及びそれ以前の決算においては、日本銀行が保有する長期国債のうち償還期限が到来したものについては、引続きTB(1年物)により借換え引受けを行ったほか、平成15年度中に長期国債より借換え引受けを行ったTB(1年物)のうち16年度中に償還期限が到来したものについては、売却分を除き、その全額につき現金償還を受けたと明記されています(なぜか平成17(2005)年度決算では触れられていないのですが)。

一目瞭然でしょうけれど、日銀は「『長期国債を保有し続け、その借り換えにも応じる』と約束」はしておらず、1年間だけ短期国債借換えでつないだ後に現金償還を受けると「約束」していたのです。著者の基準に照らせば、日銀は「積極的」等ではあり得なかったといわざるを得ません。「拡大した名目貨幣供給をずっと維持」することのコミットメントは借換えに限らないので、他の手法でコミットしているかを念のため確認してみましょう。

日銀は、既にご案内の向きも多いでしょうけれど、量的緩和政策の採用に当たり、これまでの「長期国債買い切りオペは銀行券に対応させる」という考え方を守り、銀行券発行残高を長期国債保有残高の上限とする明確な歯止めも用意しましたということを明らかにしました。当然ながら、この「明確な歯止め」は、将来における貨幣供給量に確固たる上限を設けるものに他なりません。

つまり、日銀は「貨幣数量関係に依拠した『物価水準への積極的な働きかけ』」をしたかどうかでいえば、全くと言っていいほどしていなかったのが実情です。目先は派手にマネタリーベース拡大をしていたとしても、それは天井に達するまでの間でしかないとコミットしていたのですから、中央銀行が長期国債買切りに当たって要されると著者が整理したコミットメントとは正反対のものです。にもかかわらず、この点に目をつぶって「積極的」等と著者が日銀の金融政策を評したこと、これが第2の矛盾です。

以上見てきたように、日銀のゼロ金利政策・量的緩和政策がデフレの克服については無力であったことは、著者の整理から明らかです。なぜそれらの政策がデフレ対策として機能しなかったのか、それは長期的なマネタリーベース拡大のコミットメントに欠けているどころか、逆にマネタリーベース拡大停止のコミットメントをしていたから、ということになるわけです。

にもかかわらず、これら政策の効果について、著者は次のように整理します。

インフレと超低金利の組み合わせで実質金利を低めに誘導しようとする金融政策については、いくつもの重要な問題が提起されてきた。たとえば、ゼロ金利環境のもとできわめて積極的に貨幣供給を拡大したのにもかかわらず、すなわち、金利面でも、貨幣供給面でも、精一杯の拡張的な政策を実施したにもかかわらず、強く望まれたインフレはまったく生じなかった。

p67

また、2001年以降、量的緩和政策の一環として日本銀行による長期国債買い切りのテンポを加速したが、通常以上の速度で買い取られた長期国債は、日本銀行がその保有を継続するとはにわかに信じられなかった。

従来、日本銀行は名目GDPが拡大するテンポに歩調を合わせて長期国債の買い切り規模を決定してきた。しかし、2001年以降の長期国債買い切りの拡大テンポは、低迷する名目GDPの推移を大きく上回った。通常のパターン以上に買い込んだ長期国債は、早晩、債券市場に売却されるであろうという観測が根強かった。日本銀行の長期的なコミットメントが市場参加者に受け入れられなかったことになる。

p81

なぜかこれらの部分では、日銀はマネタリーベース拡大の長期的コミットメントをしていたにもかかわらず、デフレ脱却ができなかったことになってしまっています。「日本銀行の長期的なコミットメントが市場参加者に受け入れられなかった」って、その理由が明らかでないのなら、著者自身のモデルにしたがって、長期的なコミットメントはそもそもなかったと結論付けるのが自然ではないでしょうか。これが第3の矛盾です。

以上に合理的な説明がなされない限り、著者は結論先にありきで現実に目をふさいだのだと評されてもしかたがないでしょう。

#蛇足ながら、量的緩和はマネタリーでなくプルーデンスだとする日銀の説明は、わかった上での議論のすり替えだとwebmasterは考えていたのですが、本書を読むうちに、本気でプルーデンスだと考えていたような気がしてきたのですが・・・。

[WWW]サーチエンジンmooterをしばらく試してみる

カネゴンさん経由ですが、軽い上に見掛けがスッキリしていていい感じです。webmasterの属人的な用法として、Googleではsiteオプションをよく使うので、それを実装してくれたなら真剣に乗換えを検討するかも。

本日のツッコミ(全1790件) [ツッコミを入れる]

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2007-01-28

[notice]サーバトラブルにてご迷惑をおかけしております。

一昨日来、閲覧に多大な支障が生じておりますが、サーバの過負荷(スラッシング)が原因です。抜本的な対応を考えておりますが、暫定的にApacheの起動を絞る等の措置を講じておりますので、引き続きInternal Server Errorなどが生じるかと察します。事情をご理解いただければ幸いです。

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2007-01-29

[notice]いただいたコメントへのお応え(2006/10/6、1/22、1/25)

サーバ周りが未だ安定しないので、まとめて行わせていただきます。

2006/10/6

初心者さんへ

上方硬直であれ下方硬直であれ、まったく変わらないというものではないでしょう。現に昨今の労働分配率低下は、下方硬直が破れて中長期的なスパンで調整が行なわれていることを示唆します(確かに絶対値はソースによってさまざまですが、トレンドはどれで見てもほぼ同じ傾向を示しているはずです)。バブル前の傾向からすれば、今後もう一段の下げはあり得るでしょう。

で、ご指摘のような事実はあれど、他方で今後日本においては労働力人口の大幅な減少が予想され、これは平均的には賃金の増加圧力となります。こうした諸々をあわせて考えれば、総じて経済全体と賃金は(多少のタイムラグを伴って)同調的に推移するというのが妥当な見通しでしょうし、マイルドインフレが生じている中で賃金のみが上方硬直であり続けるというのは、私は採りません。

1/22

PKさんへ

そっちの本は読んでないもので・・・。

ちなみにわたくし、マルクス主義にもアジア主義にも与さないと自認しております。

1/25

とおりすがりさんへ

昼休み中に、昼食時間を切り詰めて書きました。

ダイエーは、しかしながら経営陣自身が行いたかった再建計画は否定され、実質的に別の経営体に変わってしまったわけで、too big to failという場合の"fail"は、倒産ではなく清算と考えて差し支えないと思います。

西麻布夢彦さんへ

薬殺される野犬のことは忘れて、たまたま崖っぷちにいる犬は救済するのと同じ理屈です。

うまい表現ですね。なるほどと思いました。

本日のツッコミ(全67件) [ツッコミを入れる]

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2007-01-30

[BOJ][economy]円高シンドロームは死なず

日銀のなかで、とにかく利上げを急ぎたい人は焦っている。これまでの引き締めの論拠が崩れかけているからだ。

(略)

論拠を示してきた調査統計局など事務方は前提が崩ずれた(ママ)とは認めたくない。今月開いた支店長会議ではまず事務連絡の形で本部の景況判断が示された。

通常は支店長の報告が先で、それを本部が総括する。順序の変更がどう響いたか計るのは難しいが、焦点の消費について支店からは「総じて底堅い」(東北)、「持ち直している」(北陸)と明るいトーンが相次いだ。

それを受け利上げ推進派は、1月の金融政策決定会合での利上げを探った。これまで調査統計局は消費統計は振れが大きく、中期的な傾向を見極める必要があると主張してきた。福袋がよく売れた程度の改善では、利上げ理論のほころびは覆い隠せなかった。

利上げ見送りを英フィナンシャル・タイムズ紙は社説で「ディスコンボビュレーティッド(混乱させた)」と論評。計画の失敗などの際に使う戯言的な言い回しで、理の通らない利上げの試みが失敗したことを失笑するようなトーンになっている。

(略)

2月の決定会合までに、日銀が論拠を立て直すだけの材料はそろわないのではないか。会合の前に発表される昨年10‐12月期の国内総生産(GDP)は、やや高めの成長が予想される。それを利上げ材料に振りかざすと、これまで言ってきたフォワードルッキングの姿勢と相いれない。

このため日銀内でも利上げに向かおうとするなら、別の角度の論拠が必要との指摘が出てきた。その候補が超低金利を背景とした円安である。欧州やアジアからは円安批判が出始めている。円が一段と下がれば、国際的な不均衡是正にも逆行するというわけだ。

日程を見ると、2月上旬の7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議、3月の国際決済銀行の中央銀行総裁会議など国際金融会議が続く。そうした席で円安が俎上(そじょう)にのぼれば、2月以降、円安阻止の利上げ論が展開できるとの思惑がある。

(略)

奇をてらった手法で利上げを狙えば、再混乱は必至。消費者物価に騰勢はなく、時間的な余裕は十分ある。日銀に必要なのは、これまでの論拠や政策の枠組みと整合性のとれた行動である。さもなければ揺らいだ信認は戻らない。

(編集委員 太田康夫)

日経金融「ポジション/「円安阻止の利上げ」難しく/米国内にドル全面安懸念も」

どう見ても結論先にありきです。円安阻止で利上げなんて本当ですか、と思いきや・・・

武藤敏郎日銀副総裁が25日、自民党本部に中川秀直幹事長や丹羽雄哉総務会長ら幹部を訪ね、利上げ見送りを決めた先の日銀金融政策決定会合の内容などを説明した。

(略)

ただ、武藤氏は丹羽氏との会談で「国際金融の世界で厳しい立場に置かれている。円安の問題があり、各国から批判を浴びている」とも指摘した。「円安の原因は日本の低金利」との構図を訴えて、利上げの地ならしを始めたのでは、との憶測も呼びそうだ。

日経「日銀・武藤副総裁/中川氏らを訪問/自民幹部と関係修復?」

少なくとも徴候は認められるようです。要フォローといえましょう。

日銀はバブルを反省してやたらに金融を引き締めたがるということなのでしょうけれど、そもそもバブル前の金融緩和は国際協調を前面に押し出して行われたのですから、反省の仕方が間違っているのでは? いいかげん円高シンドロームは治癒してほしいといいますか、他国のことよりも、まずは自国の経済運営を優先しましょうよ。

[music]1980年前後生まれ男性にとっての演歌とは?

B'zやTMネットワーク、BOOWYって演歌だよなあ、というのをカラオケに行くたびに感じる。これらを熱唱する団塊ジュニア世代の姿は、演歌や軍歌を熱唱する壮年の男性にだぶる。

(略)

次の世代は何になるんだろう。渋谷系? カラオケ熱唱対象は思春期や20代前半に聞いた音楽がなると思うんだけど、熱唱するためにはやはりある種の暑苦しさが必要なので、その辺で渋谷系は弱い感じ。

「団塊ジュニア男性にとっての演歌」(@ARTIFACT@ハテナ系1/29付)

ハロプロ、に一票。たとえ男性であっても。

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bewaad [>本石町日記さん 日銀マンの現場感覚がそのようなものだとすると、幹部とそれ以外で温度差があるのかな、という気がしま..]

a-kun [bewaadさん> 株にせよ、債券にせよ、もちろん為替でも、大きな投資家の登場により、市場の雰囲気が大きく変わって..]

bewaad [>a-kunさん そのあたり、英米に期待してしまいますね。とりわけアメリカは、ドルの独歩安を嫌がっているようですか..]


2007-01-31

[economy]円を求める外圧!?

外圧があるかも、という不安。

[ブリュッセル 29日 ロイター] ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)議長を務めるルクセンブルクのユンケル首相兼財務相は29日、きょう開かれた財務相会合について、円安問題が協議されたとし「日本の現在の景気回復は為替相場に反映されるべきだ」と述べた。

同議長は、「(前回の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれた)シンガポールの会合でも、(欧州は)日本の景気回復が為替レートに反映すべきとの見解を示した。今夜も私は同じことを言った。最初のときよりも、より強く表明した」と述べた。

来週開かれるG7で円が協議される可能性について、「為替に関する全ての側面を協議した。特にユーロ/円についてもそうだ。これはG7でも話し合うことになるだろう」と述べた。

ロイター「日本の景気回復は円相場に反映されるべき=ユーログループ議長」

[ブリュッセル 30日 ロイター] フランスのブルトン経済財務産業相は、ユーロ圏の財務相らが、円相場を含む為替相場について議論したことを明らかにした。30日開かれた欧州連合(EU)財務相会合の記者会見で述べた。

同相はまた、円相場について「円が日本経済の実態を反映すべきとの見解で全員が一致した」と語った。

ロイター「ユーロ圏は、円相場が日本の経済情勢を反映しているかどうか議論した=仏財務相」

[ブリュッセル 30日 ロイター] ドイツのシュタインブリュック財務相は30日、7カ月財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、間違いなく為替について話し合われる、との見方を示した。

同財務相は、日本とユーロ圏の金利格差が小さくなれば、円の下落を反転させる要因になりうると思うかとの質問に対し、為替相場や金利について公に議論したことは決してないとしながらも、「エッセンで開かれるG7では、間違いなく為替の問題について協議することになる」と述べた。

ロイター「G7では間違いなく為替について話し合われる=独財務相」

外圧はないかも、という希望。

[ロンドン 30日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)のリプスキー筆頭副専務理事は、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙とのインタビューで、キャリートレードがもたらし得る円安を懸念していない、と述べた。

リプスキー筆頭副専務理事は、円安について「資産バブルのように話題にはしやすいが、日本の貯蓄超過が外に流れ出ているという構造的な側面がある」と指摘。

「日本の貯蓄者はデフレ期に対外投資をしなかった。しかし、日本人はいまや円以外の資産への投資を選好する姿勢に転換している」ことを挙げ、「そうであれば、(キャリートレードというものは)過渡的(transition)なものだ」と述べた。

リプスキー筆頭副専務理事は、エネルギー価格の下落や米住宅市場の落ち着きにより世界経済のリスクは低下しており、金融市場が誤った織り込みをすることを懸念する余裕さえ出てきたと述べる。

ロイター「円安を懸念していない─IMF筆頭副専務理事=FT」

1月の日銀利上げ見送り後、イールドカーブのフラット化とともに進んだのが、円キャリートレードの拡大と円安の進展だ。冒頭の外資系証券の関係者は「欧州で円安をけん制する発言が出ているが、米国がけん制しない限り、円安ポジションのリスク拡大にはつながらない」と話す。

国際金融筋とも近いある市場関係者は、2月の7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも、米国は円安けん制をしないだろうと予測している。その根拠として「円安の結果、ユーロ高/ドル安がドル全面安につながることを防ぎ、米国が最も神経質になっている資金流入の減少という事態を回避している。あえてドル全面安のリスクを拡大させるような円安けん制を米国がするはずがない」と説明する。

(略)

先の市場関係者は、G7で円安方向の懸念に関連した文言が入ったのは、1997年4月のG7まで遡り、そのときのドル/円は125円台だったことを例に「2月G7では、米国が円安けん制をせず、共同声明には、円安への言及はないだろう」と予測している。

ロイター「〔クロスマーケット〕利上げ不透明でリフレの思惑、金利スティープ化と円安進展か」

ECBはCPIベースでのインフレ率が2%程度だというのに利上げを継続する姿勢を見せていますが、自爆するなら他人を道連れにしようとしないでくれ、と言いたいところです。円が弱含みであるにせよ、ユーロ高は過剰なECBの引締めの結果という一面もあるわけで、何ゆえにその副作用を緩和する責任が他国に押し付けられなければならないのか、到底納得できる話ではありません。

ECBにその遺伝子を残したと考えてよいブンデスバンクは、戦後の先進国の中で随一のインフレ抑制実績を残し、中央銀行の模範として自他共に認める存在ではありましたが、それも60年代をピークとする各国の高度成長という環境の中では、という限定を付すべきなのでしょう。日銀もまたブンデスバンクに倣えとばかりに日銀法改正その他を推し進めてきたわけですが、それはいわば中央銀行1.0の世界の話であるようにwebmasterは思います。時代は今や、BOEに倣うべき中央銀行2.0の世界に移り変わってしまったのではないでしょうか。

[government]霞が関の宇宙官庁(笑)

上記に関連して(?)、内閣官房方面から聞こえてきた話。

霞が関の宇宙3官庁…宮内庁、警察庁、外務省
(理由)霞が関のルールが通じない。やってることがどこむいているかわからない。

宮内庁:内閣の一員との意識なし。賢所しか見ていない。
警察庁:法令協議では異様に粘着。国会でたまに答弁が当たると「捜査中なのでお答えできません」。
外務省:世界は自分を中心に回っている。唯我独尊。法令協議も頓珍漢。

ワラタ。関係者におかれては、意見、反論等あればぜひお示しいただきたく。

続・航海日誌(1/28付)

実際そうだと思うのですが(笑)、なぜそうか、ということについてwebmasterの考えを述べれば次のとおりです。

宮内庁は、対象(というより、principalと言った方が正確かも)が国民でない唯一の官庁ですから、行動原理が異なって当然です。所掌が重なったりすることもほとんどなく、したがって共管をどうするとか、割り振りをこうするといったような他省庁との接触もないので、価値観を異にしているのだということを実感する場すら少ないのです。そんな関係で、内閣の一員との意識が生まれるはずもありません。

#ま、そもそも「霞が関」にはないんですけどね、宮内庁は(笑)。

警察庁は、法令協議については、(以前もどこかで書いたような気がしますが)違法行為の取締をどうするか、全国で足並みを揃える必要がありますので、粘着するのもやむを得ないでしょう。現場から「○○を××法第△条違反で逮捕したいのですが、そういう解釈で問題ないですよね」と聞かれた場合に是非を答えなければならないのですから、自分が疑問に思ったことは全て解消しておきたい、ということになるわけです。法令協議を適当に済ませる代わりに現場からの問い合わせが直接各省庁に行くことを考えれば、webmasterは現状は合理的であろうと思います。

捜査中についても、他省庁でも現在進行形の事案については、調査中なので答えられないといったことはよくあります。その基本線上において、どこまでリップサービスをするかの違いがあるのでしょうけれど、全国でいくらでも捜査が進行していてリップサービスをしだすときりがない警察と、そうでない他省庁の差によるところが大きいのではないでしょうか。

外務省は、大使になれば同僚がいないということが大いに影響しているでしょう。大使は一国を代表する存在で、日本から閣僚が行くようなことがない限り、外務省の案件に限らず全省庁の案件を背負うのですから、格上意識を持つのも自然なことでしょう。そうは言っても各省庁の専門知識と同等の知識があるはずもないので、そりゃまあ頓珍漢にもなろうというもの(笑)。専門知識として外務省が他省庁に圧倒的に優位に立つのは、プロトコルとかそういうものであって政策の中身ではありませんし。

[economy]「真の失業率」推計最新版(2006-12現在)

年月   完全  真の  高齢化等 15歳以上 就業者数 完全   真の   高齢化等
     失業率 失業率 補正後  人口        失業者数 失業者数 補正後

1990   2.1%  3.2%       10,089   6,249   134   204

1991   2.1%  2.4%       10,199   6,369   136   155
1992   2.2%  2.2%       10,283   6,436   142   142
1993   2.5%  2.8%       10,370   6,450   166   183
1994   2.9%  3.4%       10,444   6,453   192   228
1995   3.2%  4.0%       10,510   6,457   210   266

1996   3.4%  4.1%       10,571   6,486   225   276
1997   3.4%  3.8%       10,661   6,557   230   262
1998   4.1%  5.1%       10,728   6,514   279   348
1999   4.7%  6.3%       10,783   6,462   317   435
2000   4.7%  7.0%       10,836   6,446   320   485

2001   5.0%  7.9%       10,886   6,412   340   551
2002   5.4%  9.4%       10,927   6,330   359   660
2003   5.3%  10.0%       10,962   6,316   350   700
2004   4.7%  10.0%       10,990   6,329   313   705
2005   4.4%  9.8%       11,007   6,356   294   688

2005/Q4  4.3%  9.8%       11,015   6,356   287   694
2006/Q1  4.4%  10.9%       11,014   6,283   286   766
2006/Q2  4.2%  9.0%       11,014   6,418   280   631
2006/Q3  4.1%  8.9%  6.5%   11,021   6,426   273   627   448
2006/Q4  3.9%  9.3%  6.4%   11,029   6,400   261   659   440

年月   完全  真の  高齢化等 15歳以上 就業者数 完全   真の   高齢化等
     失業率 失業率 補正後  人口        失業者数 失業者数 補正後

2006/1  4.5%  11.1%       11,013   6,269   292   779
2006/2  4.2%  11.0%       11,006   6,272   277   772
2006/3  4.4%  10.6%       11,021   6,308   289   745
2006/4  4.3%  9.6%       11,002   6,368   284   673
2006/5  4.1%  8.5%       11,015   6,448   277   602
2006/6  4.1%  8.8%  6.5%   11,025   6,438   278   618   449
2006/7  4.0%  9.0%  6.6%   11,020   6,421   288   632   454
2006/8  4.1%  8.9%  6.4%   11,019   6,427   272   625   443
2006/9  4.2%  8.8%  6.5%   11,024   6,431   280   624   446
2006/10  4.2%  8.8%  6.3%   11,030   6,437   281   622   434
2006/11  3.9%  9.2%  6.4%   11,034   6,410   292   652   439
2006/12  3.7%  9.9%  6.6%   11,023   6,354   244   701   448

2005/12  4.0%  10.4%       11,012   6,315   265   733
2004/12  4.1%  10.4%       10,995   6,306   270   731
2003/12  4.5%  10.1%       10,967   6,307   300   712
2002/12  5.0%  10.1%       10,929   6,291   331   704
2001/12  5.0%  8.9%       10,913   6,362   337   622
2000/12  4.4%  7.4%       10,864   6,440   298   513

    C/(B+C) D/(B+D)       A     B     C  D=Ax0.64-B

(直近月次ボトム)
     5.8%  11.6%        --    6,193   385   818
    (03/3,4)(04/2,05/2)           (03/2)  (03/4)  (05/2)

(注)
・単位は、%を付したものを除き、万人。
・ソースは総務省統計局の「労働力調査」(http://www.stat.go.jp/data/roudou/2.htm)。
・月次データは原数値を用いている(季節未調整)。
・「真の」値は労働力人口比率が0.64(直近ピーク(1992年))であると仮定した場合の値。
・「高齢化等補正」についてはhttp://bewaad.com/20060729.html#p02を参照のこと。

#過去の計数は以下のとおりです。

2005
03040506070809101112
2006
0102030405060708091011
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bewaad [>wassenaarさん 検察(検事)は自ら法解釈を行うプロフェッショナルですから、現場の警官とは違って自分たちで..]

bewaad [>通行人さん タイトルのご指摘はありがとうございました。 基本的に市場介入(人為的相場形成)はよくないという..]

bewaad [>PKさん おっしゃるとおりだと思います。柳沢大臣の発言が辞任だとかいって騒がれて、こちらはそういう流れになってい..]


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