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2007-01-22

[politics][book]佐藤優「自壊する帝国」

年頭の決心を早速実現してみました。国の興亡は人の本性を明らかにし数多くの劇的な展開を含むテーマですから、戦国時代や幕末維新がドラマやゲームの舞台となることが多いようにも表れているように人気が高いわけです。まして本書で取り上げられるのはソヴィエト連邦という20世紀において主役級の存在感を示す国家で、著者は大使館職員としてその中心に触れ得る立場にいたのですから、面白くないはずがありません。

さらには、先に出版された「国家の罠」の実質的な前史にあたる部分についての著作であり、両者をあわせて著者の半生記として見れば、「国家の罠」がより深く味わえる、というおまけもあります。外務省嫌いな人にとって燃料となる外務官僚の生態も描かれていますし(笑)、買って損のない本であるのは間違いないでしょう。

しかしながら、本書には大いに気になる点があります。p188からp190にかけてのエピソードですが、ネタバレを避けて曖昧に記すなら、あるAという人物について、Bという人物からある情報を入手した後、Cという人物からそれは違うとの情報を得、日本に打電しようとしたところ、逆の話を送るようでは大使に至るまでのクレディビリティが傷つくので差し止められた、というものです。

最後の差し止めの話を除けば、諜報の世界ではありふれた話でしょう。有能なスパイが誤情報には目もくれず真実を突き止める、なんていうのはフィクションの世界にしかない話です。webmasterは諜報部門に籍を置いたことはありませんが(笑)、もろもろの見聞きしたことからすれば、玉石混交のできる限り多くの情報をまずは集めた上で、それらを相互に検証しあいながら背景を探っていくというのが実態ですから、その意味では、この部分こそが実態を描き、その余の部分は逆に実態を伏せていると言えるわけです。

では何が気になるのかといえば、この部分以外ではそうした記述がないところです。その理由は何か、考えなしにかいたというのは一番あり得ないでしょう。筆者とて諜報に携わった身、いかなる情報を出し入れするかの重要性は知り抜いているはずで、書いた以上は、とりわけ特定箇所に限って書いたということには、必ず何かの意味を込めているに違いありません。

#著者が本書で書かれているような情報入手の見返りに何を話したか、なんてことは一切触れられていませんが、これとてもちろん、著者の意志がそうだからこそ何も書かれていないに決まっています。

諜報にはそのようなことがあるのだということを示すためというのであれば、上記のエピソードは本書の本旨には関係が極めて薄く、他方でおそらくは重要な局面で同様のことがいくらでもあったはずですから、わざわざこのエピソードを選ぶ理由がありません。また、この場合、ひとところでしか書かない理由もありません。

差し止めたという上司(webmaster注:本書では実名記載です)への復讐でしょうか‐諜報の分野で上記のようなことを言ったということが公開されれば、素人として(少なくとも他国の関係者からは)まともに相手にされなくなるでしょう。これとて、本当にそのようなことを言うような人間であればとっくに相手にされなくなっているでしょうし、単に嫌がらせがしたい(笑)のであれば、トイレ掃除のエピソード紹介のような形で可能なネタが他にいくらでもあることでしょう。

となると、一般読者は眼中に無く、特定の者に対する特別の意味のある記述だということぐらいしかwebmasterには思いつかないのですが、深読みのし過ぎかなぁ・・・。

本日のツッコミ(全5件) [ツッコミを入れる]
PK (2007-01-23 13:33)

この本は読んだ。
佐藤はマルキストでヘーゲル主義者でロシア語の使い手だ
日本の外交官は共感場過ぎて相手の文化や言語に飲み込まれる人間が多いように思う。佐藤はもう顔に出ている。
自分の入手した対人的情報など一次情報をマルクスやヘーゲルで再構成するのは危険すぎる。もともとドイツ思想は反英米のイデオロギーが隠されていて、日本流に言うと超克だの弁証だの相手=米英を打倒したいという隠された欲望があるのだ。

Satsuki (2007-01-23 23:32)

なぜこのエントリにはコメントが少ないのでしょう?他のエントリとは毛色が異なる内容のせい?(笑)
さて、該当部分を読みました。勝手に想像するなら、Cの話が真実であった確信を筆者が持っているとか、Cの話が当該上司(又は外務省・日本政府全体)にとって都合が悪いが故に打電されなかったことを暗示したいとか、色々思いは巡りますが、いずれにせよ推測に過ぎません。
「知っている者は語らず、知らない者が語る」と言われるこの世界、確かに佐藤氏の文章は興味深いのですが、どうしても「私怨」の香りが抜けきれず、すんなりとは読めません。また、同書の帯にあるように、同氏が「情報のプロ」であるならば、特定の政治家と近くなることにも賛否があるでしょう。

bewaad (2007-01-24 06:50)

>PKさん
そっちの影響が強いのは否めませんが、それは使う側の器量の問題かな、とは思います(何とかと鋏は使いよう、ってやつです)。そっちの影響が強いからこそ食い込めた、という面もあるでしょうし。

bewaad (2007-01-24 06:52)

>Satsukiさん
PKさんへのお応えでも書きましたが、それらをひっくるめて使う側がきちんと使えるか、という問題であるように思います。有能な人物は毒にも薬にもなるわけで、毒にも薬にもならない人間を使うよりはよっぽどましなのかなぁ、と。もちろん、上司が有能である限りにおいては、ですが。

PK (2007-01-26 12:49)

こいつは、大川周明まで持ち出して反米英感情丸出しだぞ
マルクス主義もアジア主義も糞だ


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