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(ここはbewaad institute@kasumigasekiの過去ログ倉庫です。コメント等は仕様上受付けを停止しておりませんが、こちらではご遠慮いただければ幸いです。何かございましたら、現行サイトにお願いいたします。)

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2007-02-08

[pension][economy]年金は経済だよ、兄貴!

兄貴とは誰かとはさておき(笑)。

厚生労働省が一昨日、「人口の変化等を踏まえた年金財政への影響(暫定試算)」を発表しましたが、これがなかなか味わい深い資料です。経済成長と出生率を変数とする年金の所得代替率見通しを示したものですが、厚生労働省資料では経済成長率が明示されていないので、朝日「年金額「現役の51.6%が基本」/厚労省、試算6分類公表/運用利回り4.1%想定 出生率は1.26」(webmaster注:ネットには掲載されていません)をベースに、そこに掲載されていない出生率1.76シナリオの計数を併せて示せば次のとおりです。

実質成長率\出生率1.061.261.551.76
1.0%49.4%51.6%54.2%55〜56%
0.6〜0.7%43.9%46.9%50.3%52〜53%

これについて、報道を散見する限り、例えば次のように、所得代替率50%以上確保という前回の財政再計算に基づく年金制度改正時の公約を守った体裁を取り繕うためのためにする試算ではないか、という見方が多いようです。

二〇〇四年の法改正で、現役世代の減少分や平均寿命の伸び率分を、物価スライドなどによる増額分から自動的に差し引き老若が負担を分かち合う方式の導入が決まった。これにより、所得代替率は徐々に下がるが、女性が生涯に産む子供の数(合計特殊出生率)を一・三九と見込み、将来とも50%が確保できると政府は確約していた。

昨年末公表の将来推計人口で、合計特殊出生率が一・二六で半世紀後も推移すると予測されることから、国民の年金への不安が高まり、厚労省は試算をし直した。それでも、所得代替率は二六年以降、51・6%を維持できるという。

出生率が予想を下回り、寿命が予想以上に延びてマイナス要因として働くにもかかわらず、好転した経済情勢に支えられ、物価や賃金、積立金の運用利回りの上昇、高齢者や女性の就労の増加などプラス要因に吸収されるとの見通しからだ。

だが、用いた今後の物価、賃金上昇率、運用利回りの数字は好都合すぎないか。達成するのは困難との見方もあり、50%以上を確保するための辻褄(つじつま)合わせといえなくもない。

東京「年金給付水準 数字の辻褄合わせでは」(2/7付社説)

しかしながら、この試算が示すのは、出生率を上げるよりはるかに容易であろう安定的な経済成長の確保により、年金制度は十分に安定的に維持可能である、という事実でしょう。試算では示されていませんが、仮に2%の実質成長を安定的に達成できるならば、(合計特殊)出生率が1.06にまで落ち込んだとしても、おそらくは所得代替率50%を維持できるはずです。

本件は、当サイトでは何度となく嘆いていることではありますが、実質成長率に関するこの悲観的な見方が、多くの議論をおかしくしていることの実例のひとつでしょう。実質成長率が1.0%であっても楽観的だというのが正しいならば、そりゃ消費税でも増税しなければろくな所得代対立は確保できないでしょうけれども、ねぇ。

もうひとつ蛇足を加えるなら、年金について第一次ベビーブーマー以上の世代は若年層の犠牲の上に多くをとりすぎである、という議論があるわけですが、この推計がほのめかすのは、現在/近い将来の受給世代にとって、その生涯において実現してきた経済成長を鑑みれば、不当なまでに多くを受け取っているわけではなかろう、ということです。そのような世代間対立は、結局は経済成長が低迷している中で、パイの取り分が限られているからこそのもの、ということでしょう。

仮に3%近くの(実質)経済成長が実現されるのであれば、おそらくは所得代替率は6割を超えてなお、年金財政には十分な余裕があるということになるでしょう。現在/近い将来の受給世代の生涯平均経済成長率は、それをはるかに超えるものでしょうから、それに見合う年金給付を想定するならば、それら世代にとっては、このようなみみっちい議論をする方がしっくりこなくて当然です。

もちろんその経済成長率は、高度経済成長期という歴史の「ボーナス」(多産多死から少産少死へのシフトの過程において、生産年齢人口比率がピークに達したこと)の賜物ではありますから、ある程度までは、彼/女らから今の現役世代が不当にけなされるべき事情にはないのも事実ではあります。しかし、3%弱の実質経済成長を成し遂げられないことについては、今の現役世代の責任といわれてもやむを得ないのではないでしょうか。

・・・って、バブル崩壊以後のマクロ経済政策を失敗し続けてきたのは、まさにその世代であり、その意味では、年金受給世代が不当に多くを取っていると批判されるのは、少なくともその世代に属する人々の責任ではあるのですが。若者を批判するより、同世代の無能な政策決定者をまず批判しろ、と現役世代からは反論させていただきたいのですが。

本日のツッコミ(全12件) [ツッコミを入れる]
PK (2007-02-08 08:31)

高齢化社会というのは兵役復帰不能の負傷兵を抱えた軍隊であり、軍事的動員のためには本来なら死んでくれた方が良い。しかも負傷兵は、モータリゼーションのために病院に集中するのではなく分散して存在している。しかも、負傷兵のために外国人看護婦を雇うことも嫌がって、なおかつ生産性向上を中心にすえて経済成長を企てようとする。これは無理というものだ。
(1)負傷兵をなるべく一箇所に集める
(2)同盟国の外国人看護婦の力を借りる
最低この二つができるなら、神兵は生産性向上で経済成長を達成する可能性があるだろう

Baatarism (2007-02-08 12:29)

昨日の少子化の話とも絡みますが、今後人口が減少していったとき、安定的な経済成長は不可能になるのか、それとも人口が減っても安定成長は可能なのか、どっちなんでしょうね?
少子化の危機を唱える人たちは前者の考え方なのでしょうが、本当にそうなのか?という疑問があるんですよね。
もし人口が減っても安定成長が可能ならば、少子化問題は放置しておいてもよいということになりますね。

PK (2007-02-08 20:40)

生産性を上げるのが最もうまいトヨタが何をやっているかというと、ラインとスピードを意図的に少し上げるんですね。そうして、さらに大きな枠組みでみると、トヨタがそのように生産性を上げたとしても日本の農業の生産性は上がらないのです。農業はトヨタのラインに載っていませんから。私は、少子化での成長は無理だと考えています。人モノ金の日本への移動を促す何らかの大きな仕掛けが必要ですね。それがあれば、生産性は上がります。

(2007-02-08 20:52)

所得代替率というのは現役世代の賃金との比率なわけだから、たとえ年金受給額が2倍に増えていても賃金が三倍になってたら下がるし、年金が1割減っていても賃金が2割減っていたら上がるものですよね。だから代替率に差がないとしても成長率が高いほうが賃金が高いので、年金額の差はもっと大きくなりますよね。今の所得代替率が6割で20年後に5割になるとしても実質成長率1%ですら実質賃金が2割以上増えるので、実質年金額は同程度でそれほど悲観的なものでもない気がします。
ただ実質成長率が高まった場合、実質年金額は増えるとしても所得代替率が上がるとは限らないような気がするんですが、なぜ試算では代替率が高くなるんでしょうか?

koge (2007-02-08 23:56)

>Baatarismさん
むしろ(日本の)人口の増減に関わりなく、先進国の安定成長自体が可能なのかという点が深層にあるんじゃないかと思います。
環境とか資源の制約の点で。いくら「成長なしには現状維持すらおぼつかないんだよ」といっても、「温暖化で島国の1つや2つ水没させてでもこれ以上の成長を目指す気か!」なんて言われたらその因果関係が正しいのかどうかという前に思考停止してしまいますからね。しかもBRICsとかVISTAとかがこれから日本を目指して高度成長に入るわけですし。
個人的には、「それを解決するための技術発展も経済成長を目指していちかばちか投資して行く中からしか生まれ得ないし、仮にそれが不可能だとしても生活水準を下げて『細く長く』生きるより『太く短く』、人類のQOLを保って生きたい」と反論したいですが。

PK (2007-02-09 12:04)

人口が一定で閉鎖的な条件で経済成長を遂げたのは、江戸時代の日本ぐらいしかありません。あとはだいたい国外にツケを廻す歴史でした。世界を救うのは技術革新ではなく、江戸時代があったという認識を世界のどれだけの割合の人間が知ることができるかに掛かっています。そのための最大の障害は中国です。

bewaad (2007-02-10 18:44)

>PKさん
生産年齢人口が不足するというのであれば、今後高齢者の労働参加は(女性のそれとともに)促進されることでしょう。

農業の生産性の低さは、農地や農作物の価格・供給に係る規制により、市場原理があまり働いていないことが大きいでしょう。

江戸時代を評価するにやぶさかではありませんが、そこまでいくとひいきがすぎるのではないでしょうか。

bewaad (2007-02-10 18:45)

>Baatarismさん
よく言われるのが、戦後(でも20世紀初からでも昭和初からでもいいのですが)の経済成長に比べ、人口増はいかばかりであったかといえば、人口増をはるかに上回る経済成長を成し遂げているわけで、人口の増減は経済成長に影響を与えることは事実でしょうけれど、世に一般的に思われているほどには影響を与えない、ということかと存じます。潜在成長率が2〜3%であるとして、単純に考えても生産年齢人口がそれ以上のペースで減らなければいいということですし、まして産業構造のシフトで労働集約型からの撤退が進めば、許容ペースの程度はさらに上がるはずです。

この場合、「もの作り」へのこだわりあたりが最大の問題ということになるのかも。「抵抗勢力」ですなぁ(笑)。

bewaad (2007-02-10 18:46)

>◆さん
>ただ実質成長率が高まった場合、実質年金額は増えるとしても所得代替率が上がるとは限らないような気がするんですが、なぜ試算では代替率が高くなるんでしょうか?

一番大きく影響するのは、マクロ経済スライドの存在ではないでしょうか。あと、関係しそうなものとしては、失業率とか。負担者の数に効いてきそうです。

bewaad (2007-02-10 18:46)

>kogeさん
仮に先進国は現状維持ないし微減でいいとして、発展途上国にそうしたことがいえるのか、ということですよね。発展途上国もまた現状で留まるとしない限り、先進国を止めたところで焼け石に水ですから。

霞ヶ関の通りすがり (2007-02-16 18:21)

代替率が高くなるのはマクロ経済スライドの適用期間が短くなっているからでしょう.暫定推計の方が一年短くなっています.

bewaad (2007-02-17 15:05)

>霞ヶ関の通りすがりさん
情報提供ありがとうございました。やっぱりマクロ経済スライドには留意が必要ですね。

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