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writings concerning kasumigaseki issues and others: 新春鼎談

2005年

前編

1号
新年あけましておめでとうございます。 当サイトオープン以後、年の初めも3回を数えまして、私たち3人の出番も3回目となりました。 今年もよろしくお願いいたします。
主任
昨年はうれしい誤算で、財務省の大規模為替介入に日銀の当預残高引き上げという大規模金融緩和−正直、あれは金融緩和を大規模にやればインフレターゲットの設定はいらないんじゃないかっていう議論につながるかと思ったのだが−に好調な外需も手伝って、とりあえずは景気の腰折れが避けられたけど、今年は本当に危ないんじゃないかね。 景気循環的に見ても、定率減税の段階的廃止に代表される可処分所得の減少にしても。
2号
今年要警戒なのはやっぱ財務省でしょ。 福井日銀は、能動的に景気回復には動かないという意味では腹が立つけど、速水時代のゼロ金利解除がいい薬になっていて、能動的に景気頭打ちにつながる愚行はしないという意味では信頼できそうだから。 それに比べて財務省は、財政再建優先路線をはっきり復活させてきてる。 まあ財政赤字総額を気にするのはあきらめるとして−マクロ経済政策を担うプライドを失った、単なる予算屋に落ちぶれたっていうことだよ、これ。 念のため(笑)−、個別の政策論によけいな口を挟むのは勘弁してくれって感じ。 代表例を出せば、片山さつき防衛担当主計官のアホさにはあきれたね。 「自衛隊にも構造改革が必要だ」(中央公論2005.1号、pp156-163)って、そういう軽佻浮薄な煽りは政策新人類の眷属の専売特許のはずだったのにねぇ・・・。
1号
まあ片山主計官の主張については、そのペーパーで防災は自衛隊の仕事じゃないといったという報道に反論するなど、一部メディアで不当におとしめられてる面はありますけどね。 ペーパー自身、シビリアン・コントロール関係は「枠組み」については正しいことを言っているわけですし。 2ちゃんねる軍板なんかで言われているような、制服組は官僚に従えってことを主張しているわけではなくって、行政府の意思決定である閣議決定には行政府の一員として制服組も服するべきだってことだから。 ただ、その閣議決定自体、片山主計官が解釈するようにBMD用の予算は従来装備の削減により捻出すると明記しているわけではなくって、あくまでそうしたリストラ努力もしつつ防衛関係費を抑制するっていうのが文面だから、一介の主計官があの閣議決定をそう解釈すること自体にどこまで正当性が認められるかって問題はあるし、BMDに金を使うぐらいなら従来型の人や装備に金を使った方がいいという主張を制服組がすること自体をシビリアン・コントロールの危機というのはどうかと思うけど。
2号
つーか、事実関係の記述はともかくとして、意見の部分でまあ及第点なのってそこだけじゃん。
主任
相当言いたいことがたまってそうだから、しばらくつきあってやるか。
2号
彼女の軍事知識のなさについて一番わかりやすいのは、その中央公論のペーパーからは外れるけど、「曽祖父は旧陸軍の軍人で、日露戦争では騎兵。 二十世紀初めに、もはや大砲や騎兵の時代ではないと言って、いち早く退役した。 その子孫の私が、大砲は古いと言って縮減を迫っているのには因縁を感じます」って発言だね。 曾祖父が本当にそんなアホなことを言っていたかどうかは裏がとれないし、文脈によってはアホではないわけだけど、文字通りこんなことを言っていたならアホだし、文脈をくめば本意は違っていたとしても、こんな不肖の曾孫をもったことを草葉の陰で悔やんでください。
主任
20世紀初めに大砲の時代じゃないっていうのは間違いなく的はずれだけどね。
1号
現に、第1次世界大戦の西部戦線や朝鮮戦争の鉄の三角地帯を巡る攻防は砲撃命だったわけですし。 かのスターリンに言わせれば、砲兵は戦場の神。
2号
騎兵だって、少なくとも日露戦争で使えないことがわかったわけじゃないよ。
主任
大胆だねぇ。 軍オタだってたいていは、騎兵はともかくって言い方なのに。
1号
そこが文脈によるってところなんでしょうけど。 とりあえず、日露戦争の次の大国間戦争である第1次世界大戦では、ほとんど騎兵は無用の長物となってたわよね。
主任
でも、アラビアのロレンスで有名なパレスチナ戦線ではけっこう活躍してるし、東部戦線でも西部戦線ほど使い物にならなかった訳じゃないのは事実。
2号
そう、なんで西部戦線では使い物にならなかったかと言えば、基本的には総動員態勢により空前の兵力投入が可能となって戦線に切れ目がなくなり、迂回機動が封じられたため。 さっきも話に出たように、西部戦線は砲撃しまくりだからまともに馬が走れるような地面じゃなかったってこともあるし。 迂回機動が可能な局面ではそれなりに使い道があるのよ、騎兵には。
1号
で、そういう戦訓を得られるようなものでは日露戦争はなかった、と。
2号
そのとおり。
主任
日露戦争の戦訓として、ボルトアクションライフルの性能向上や機関銃の本格導入による歩兵隊の火力増強があって、これにより騎兵は歩兵に対抗し得なくなったってことはあるけどね。 かの曾祖父はそれを言っていたのかねぇ。
2号
だとしたらやっぱり曾祖父はアホなの。 十分な火力を持つ歩兵に真正面からぶつかったら騎兵に勝ち目はないなんてことは15世紀にヤン・ジシュカがフス戦争で明らかにしている。 有史以来人類最強の兵科であった遊牧民族の騎兵ですら、16世紀にはオスマン・トルコの火力の優越により、チャルディラーンでサファヴィー朝が、マルジュ・ダービクでマムルーク朝が敗北を喫している
1号
まあそこまで遡ると近代兵制における騎兵とは同列に論じられないかもしれないけど、近代の戦争でも、ワーテルローでのネイ元帥の騎兵突撃とか、クリミア戦争中のバラクラバの戦いにおけるカーディガン卿の騎兵突撃とか、悲惨な実例はあるわけで。
主任
そりゃ、15世紀や16世紀以降、歩兵が有する火力はどんどん増強されるけど、それに見合うだけの騎兵の戦力増加はないからね。 確かに日露戦争では火力の顕著な増強が明らかにはされたけど、なんつーか、それまでの延長線上であって、何か革命的な変化があったわけではないとも言える。
1号
要すれば、日露戦争における強大な歩兵火力のデモンストレイトも相対的なものでしかないと。
2号
そう。 だから、確かにそれにより騎兵の活躍の場がさらに狭まったのは事実だけど、決定的に息の根を止めたのは自動車や鉄道により歩兵の機動力が向上し、騎兵の機動力優勢が失われたこと。 機動力の優勢があれば、火力で劣っていても何とかなる局面はあるわけで。 サルフの戦いにおけるヌルハチの作戦が典型だけど。
1号
だからこそ、騎兵は最終的には第2次世界大戦において機械化部隊によってリプレイスされたと。
主任
確かにそういう戦訓は日露戦争では得られんわな。 自動車なんて国産化以前だし、鉄道だってロシア軍の退却には活用されたけど、タンネンベルグのドイツ軍のように戦術移動に用いられたわけでなし。
2号
だから、そんな曾祖父の発言を引いて得々としゃべる時点で、彼女の底の浅さが透けて見えちゃう。 まあ、曾祖父が主観的にどのような理由で退役しようとそれは個人の人生だけど、国策を論じる以上どのような理由でもいいとは言えないっすよね。 さて、彼女はこの程度の軍事知識しか持っていないんだってことをバックグラウンドとして、中央公論での主張を批判しましょう。
1号
せっかくネットでやっているんだから、先人の貢献は最大限活かしましょう。 片山主計官の主張に対する批判としては、まとめサイトや2ちゃん軍板のコテハンミリ屋哲氏運営のミリ屋哲の酷いインターネットで連載されている反論がよくまとまっているので、それを読んでいただいているという前提で、そこに載っていないものをお願い。
主任
あと、マッチポンプがどーのとか、リークがこーのとかいう部分に踏み出すのもむなしいだけなので、その辺もパスしてくれ。
2号
じゃあ一番しょーもない部分を指摘しましょう。 その中央公論のp161で、どれだけ主要先進国で軍縮が進んでいるかっていうことを延々彼女は数字を並べているわけだけど、彼女がRMA云々といっているのは、究極的には軍事費の削減を目的としたものであって、人員等の削減はその手段に過ぎない。 じゃあ軍事費はどうなっているのよ、ってことをsipri(Stockholm International Peace Research Institute)がまとめた1994から2003までのNATO各国の軍事費の推移を見てみると、どうなってる?
1号
あらまあ。 ものの見事に微増。
主任
片山女史の出している数字とは期間が違うし、ドルベースの実質値だから単純には比較できないけどね。
2号
にしたって、あのペーパーを読む限り、最初の方ではさんざん軍事費削減だといってるから、人員等が削減されてるって話が出てくると当然それに伴って軍事費も減ってるもんだと読んでしまうけど、それはとんだごまかしだってこと。
1号
sipriのデータは他にもおもしろいのがいっぱいあるよね。 冷戦後はどこも軍事費を減らしているようなことを片山主計官は言っているけど、実際に減っているのはヨーロッパだけで他は世界中どこでも増えているとか(これもドルベースの実質値だけど)。
2号
ともかく、あのペーパーでだって、防衛庁が単に軍拡を要求しているわけではなくって、戦車・火砲部門の削減を歩兵に回す、要すれば「スクラップ・アンド・ビルド」をしているとは書いてある。 つまり、本来あり得る選択肢というのは、RMA化をそれほどには推進せずある程度の人員を維持するか(これが防衛庁案)、それとも人員をある程度削減してその分RMA化を進めるか、どっちにしても軍事費はそれほど減りようがないものしかない。
主任
じゃあ、人員を減らしてRMA化を進めることにより軍事費を削減するっていうのは・・・。
2号
彼女の脳内世界だけだね、そんなのが成立し得るのは。 だいたいRMA化ってのは、いわば歩兵一人一人にGPS端末やら情報処理端末やらを持たせた上で、それらをネットワーク化して集中管制を図るものなんだから、どう考えたってそんなにコストが減るわけないだろう。 まして、ソフトウェア開発なんてどうすんだ?
1号
で、今の日本がおかれている防衛環境を考えれば、その選択肢なら前者の方がよっぽどましですね。 イラクでのアメリカにしたって、結局今の方が戦争しているときより兵力を増加させているってことは、攻撃よりも防衛の方がより多くの兵数を要するってことの端的な証明ですし。 攻撃側は攻撃する時間・場所を選べるから容易に局地的優勢を確保し得るわけで、日本みたいに専守防衛を謳っていれば、そう簡単には兵力を減らしちゃいけないはずです。
主任
まさか片山女史も真の意味でラムズフェルドに共鳴する徒として、RMA化した自衛隊で某国を先制攻撃しろといいたいわけではあるまいし(笑)。
2号
結局彼女は、中央公論のp161が典型だけど、日本と西ヨーロッパではまるで戦略環境が違うはずだっていう問いから逃げてるんだよね。 ソ連崩壊以降の情勢の変化ってのは、イギリスやフランス、ドイツから見れば東欧諸国、さらには旧ソ連のベラルーシやウクライナという新しい兵力・緩衝地帯を手に入れたに等しいということ。 これに相当する状況ってのを東アジアで想像すれば、北朝鮮が西側入りした上、ロシアの沿海州、中国の満洲や山東省、上海市、福建省や広東省が独立・西側入りしたようなものであって、そうなって初めて西ヨーロッパの事象を日本に当てはめることができるようになるわけ。
1号
考えてみれば、片山主計官の言う冷戦型の従来の戦力っていうのは、米軍と協同して旧ソ連の上陸侵攻に対抗する−類型としては朝鮮戦争−ためのもので、独力で旧ソ連を撃退するようなものではなかったはず。 他方、ゲリラ・コマンドウには基本は独力対応だから(もちろん在日米軍基地が巻き込まれるような事態なら別ですが)、自衛隊の規模を維持したとしても、実際に戦場で発揮される戦力は下がることになります。
主任
だいたい、BMDは文字通りballistic missile、つまり弾道弾用の装備であって、決して従来の装備を代替するものではないのだから、単純にスクラップ・アンド・ビルドを当てはめるのが間違い。
2号
結局問題は、BMDの導入に行き着く。 従来は、アメリカの核の傘を前提に、弾道弾は撃ち込まれない前提、逆に言えば、撃たれちゃったらお手上げという戦力だったのが、BMDを導入して、撃ち込まれても撃ち落とすべしと要求水準が高くなったわけだ。 BMDが本当に有効かどうかは眉唾だけど、まあとにかくそうしろという政治決断、もちろんこれもアメリカへの配慮とかいろいろ事情はあるが、そういう決断にはシビリアン・コントロールに基づき従うべき。 でも、弾道弾にも対抗しろ、海外派遣も積極的に、災害対応はもちろん、ゲリラ・コマンドウ対策も怠るなと言われたときに、それをやるにはこのぐらいの戦力が必要ですという専門家の判断は尊重されなきゃいけないんです。
主任
片山女史の案が、専門家をうならせるようなものであればともかく、とにかくRMA化すれば人は減らせるんですっていうものだからねぇ・・・。 それも結局は論理のすり替えで、本当にRMA化を進めれば結局防衛費自体は削減できない可能性が高いっていうのに、予算を切るのが絶対目標だから、多分この案が実現すればエセRMA化で人数も戦力も落ちるハメに。
1号
せめて、どうやっても○○兆円しか防衛費には出せないから、その中でなんとかしろというならわからないでもないんですけど。 まあそれでも、いわゆる「従来」のミッションが横ばい・増加する中で、それに一切寄与しないBMD導入を理由に削減するっていうのは、少なくとも現場の人間は釈然としないでしょう。
2号
彼女の理屈が正しいなら、増税を理由にして増員が認められた国税庁の定員が、減税ばっかりしている最近でも減らないのはおかしいってことになる。 ましてや、BMDならぬロボマルサ(笑)をアメリカが開発中だから、その開発協力のための予算を人減らしで捻出しろなんてことになったらどうなることか。 ロボマルサが導入されれば少人数でも効率的に徴税できますから、って(笑)。
1号
このペーパー、陸上自衛隊しか触れていないからよくわからないけど、空自・海自も大変だったんでしょうねぇ。 例えば、中国がSu-27ジュラーブリク(とその改修型のSu-30。 フランカーって言い方は嫌いなので)を増強しているような状況で、尖閣諸島なんてどうやって防衛していくのか・・・。 沖縄米軍基地の縮小は政治的課題として中長期的には実施されることになるでしょうけれど、米軍がフィリピンのスービック基地・クラーク基地から撤退した後に中国がスプラトリー諸島を占領した前例などを考えると、今からきちんと対策を考えておかないと。 特に日本は、韓国による竹島の軍事占領・実効支配を事実上許容している前例があるから、もし米軍が沖縄から全面撤退なんてことになったら危ないんだけど。
2号
「従来型」のF-15(MSIPを含む)じゃなくて最新型のF/A-22ラプターでも導入しろってことになるんじゃないの。 例によってそのコストや予備部隊の重要性を無視して頭数を減らすことだけ考えて主張して、決定後にこんなに単価が高いとは知らなかったとか言って更に機数を減らすの(笑)。 ・・・しかし、こう考えてみるとホントにこの女クソだし、こんな無能な働き者をこんな重要なポストにつけている財務省もクソだ。 そんな財務省が構造改革の旗頭としてもてはやされている小泉政権もクソだな。
主任
ところがどっこい、そう考えるのは早とちりかもしれないぜ。
2号
えっ、どーゆーことよ。 国債30兆円枠だの道路特定財源の見直しだの、小泉総理が財務省の代弁者のように振る舞ってきたのは政権発足当初からのことじゃない。
1号
・・・でも、今具体例で挙げた2つとも実現してないよね?
2号
あっ・・・。
主任
ま、次回はその辺りから議論を続けようか。 今回は2号の趣味につきあったせいで当サイトのいつもの方向性から随分それたので、軌道修正して(笑)。 とりあえず2号への宿題として、竹中大臣の定率減税縮小・廃止に対するネガティブな態度をどう考えるのか、という問題を挙げておこう。

(2005-01-11記)