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新春鼎談

2003年
前編
後編

2003年

前編

鼎談者ご紹介及びご挨拶(?)

主任研究員(主任)
腹の出てきたベテラン、酒飲み、ちょっと臭い(♂)「ごちゃごちゃした細かいことなんかほっときゃいい!」
研究員1号(1号)
キャリア志向を公言、でも一見癒し系、しかし実は癒されたい系(♀)「へ〜っ、それでいいんですか?」
研究員2号(2号)
半分見習い、理屈屋、世間知らず(♂)「そういうの、間違ってますっっ!」

1号:え〜っと、webmasterからのメッセージです。 「検閲なしで載せてやるから、思うぞんぶん好き勝手にしゃべってくれ」

2号:webmasterもセコいですよね。ここで書いたことがはずれても自分のせいじゃない、ってことでしょ。 好き勝手にやれ、ってのは。

主任:まあせっかくなんだから、いいじゃないの。 遠慮なくやらせてもらいましょう。

1号:2人ともいつもは遠慮してるんですか? あれでも・・・。

2号:それでは、日本経済を中心に今年を展望することにしましょう。 webmasterも、"It's the economy, stupid!"と曰わまってますし。

主任:このままじゃどうしようもないだろ。 つっても、国内要因はってことだから、外需がのびれば救われるかもね。 それより、webmasterのセンスはなんとかならんのか。 10年以上も前のアメリカ大統領選のスローガンを記念すべき最初の言葉に持ってくるなんて。

1号:(主任も他人のセンスをあれこれ言えるような人では・・・)これだけでは不親切もいいところなので、きちんと補足しましょう。 今の日本経済に対しては、構造改革が重要だとか、マイルドインフレが必要だとか、政界・学会・財界でも見解が大きく分かれていますが、原因は需給ギャップだ、という点では概ね一致しています。 つまり、作るほどには使われないから、使う量にあわせて作る方が縮んでいっているということ。 いきなりみんなの生き方が変わって狂ったように消費を増やす、といった話を脇におけば、財政政策・金融政策ともに、現時点では、これまでの方針を今年も続けるようですから、需給ギャップは解消されず、景気はよくならないでしょう。 ただし、海外の景気が好調に推移して輸出が伸びる、という形での景気回復の可能性はある、ということですね。

2号:そういえばさ、話がそれるけど、なんでメディアの連中は金融機関の不良債権をどう処理するかって類の話題について、「金融政策」の言葉を当てるのかわからん。 多少なりとも経済学の素養があれば、「金融政策」="monetary policy"、日銀のやることに決まってるのに。 金融行政でも何でもいいけど、きちんと言葉を使い分けるべきだ。

主任:んなこたぁどうでもいいだろう。 文脈でわかるんだからさ。 金融政策がらみの報道をどうこう言うなら、日銀があれほどやるべきことから逃げてることを批判するどころか、精一杯やっているんだからたいしたもんだ、ってな意見がまかり通っていることの方がよっぽど問題だろうに。

1号:・・・そう言葉足らずな言い方しないで、きちんと説明してくださいよ。 もう一度だけサポートしますけど、これが最後ですからね。 不況時の金融政策は、伝統的・正統的なものとしては短期金利の引き下げになりますが、今の日本のようにゼロ金利まで下がってしまうと、金利はそれ以上引き下げることができません。 なぜなら、マイナス金利にしたところで、現金というゼロ金利の代替物がある以上、マイナス金利には応じる人がいませんから(例えばマイナス金利の預金があったとしても、そんな預金を使うぐらいならタンス預金=現金保有にしますよね、ってこと(決済サービスとか、そういった金利以外の付加価値はとりあえず捨象します))。 でも、金利の引き下げというのはあくまで手段であって、目的は金融緩和=お金を余らせることなので、ゼロ金利の世界でも、他の手段で金融緩和をすることができます。 今、日銀がやっている中で一番効いているのは長期国債購入ですが、日銀自身は、これ以上の金融緩和を実現するのは副作用(=インフレになったら大変!)があって難しい、と言ってます。 これに対して、もっと長期国債購入額を増やすべき、とか、他の金融資産(外債、ETF(株式市場全体を金融商品として売買するようなもの)、REIT(不動産を金融商品として売買するようなもの)などがよく言われてます)を購入すべき、といった意見があって、主任は後者の立場から日銀を批判しているわけです。

主任:1号ちゃーん、そんな堅いこと言わないで、これからもよろしくお願い、ネ!

1号:つつしんで遠慮させていただきます。 需給ギャップに話を戻しましょう。 需給ギャップがある、つまり、作るほどには売れないので売れ残って困ってるというのが現在の日本経済の状況ということで。

2号:世の中の経済主体を民間と政府と外国の3つに単純化すれば、その解決のためには、(1)民間がもっと使うか、(2)政府がもっと使うか、(3)海外がもっと使うか、しか選択肢はありません。 政策対応としては、(1)は減税、(2)は財政支出の拡大、(3)は輸出増、というのが代表的な具体例。 主任が、外需がのびれば救われるというのは、(3)で回復、ということです。

主任:落第。まだまだ修行が足りん。尻の蒙古斑を早く消すように。

2号:えっ、なんでですか?

主任:それは・・・残念ながら次回に続く(笑)。

(2003-01-01記)

後編

2号:さぁ、1週間も待ったのだから、どこが悪かったのかとっとと教えてくださいよ。

主任:というか、1週間経ったのだから、どこが間違っていたか気づきましたということにはならんのかい。

1号:主任も、人情の機微とか、そういったものがわかってないんですね。 2号の性格を考えれば、この1週間は主任からこう言われたらこう言い返してやろう、なんてことを考えてたに決まってるじゃないですか。

主任:本当?

2号:ええ。そのとおりです。どこが間違ってると思ってるのかはっきりさせてください。

主任:面倒だなぁ・・・。 輸出増ってのは政策対応なのかよ。 アメリカやヨーロッパが農業でやってるような、輸出補助金をくっつけて輸出増やすようなことやって、それで需給ギャップが解消するとでも思ってるのか?

2号:輸出増といえば、為替レートを引き下げの方向にずらすことに・・・。

主任:決まってない。輸出補助金は為替レートを引き下げるとでも言うのか? それに、前回1号が言っていたが、外国の景気が良くなった結果として輸出が増えることだってある。 「輸出増」が政策対応ってのは、特にそれが為替レートの引き下げを念頭においているなら、過程と結果を混同してるんだよ。

1号:頭の中に描いていた政策対応はずれていなかったんだから、新人をそこまでいじめなくてもいいでしょう。

主任:いじめじゃあない。 教育だ、教育。

2号:そうですよ。 いじめられただなんて思ってませんから。

後で、「主任がきついこと言ったからやめる」なんてことになったら私が雑用から解放されないんだから、そう言った以上は何言われても泣きつかないでよ!

主任:いじめてるのはどっちなんだか・・・。

1号:何かおっしゃりました?

主任:いや、別に・・・。 それより議論を先に進めよう。 前回若干触れたことではあるが、現在日銀は本来やるべき規模での金融緩和をしていないという意味において金融を引き締めている。 購買力平価(為替レートは物価水準によって決まる)、金利平価(為替レートは金利水準によって決まる)、いずれの立場にせよ、金融政策が引き締め傾向であれば為替レートは円高に振れる。

2号:だから、このままでは外需も伸びないから需給ギャップは解消のしようがない。

1号:一応付け足しておくと、名目GDP(Gross Domestic Product, 国内総生産)成長率が長期金利を下回っている現在、政府収入≒税収はに比例して、国債残高が長期金利に比例して増えていくため、このままでは国債残高が発散せざるを得ないことを考えれば、前回2号が内需拡大のための政策対応として例示した減税や財政支出の拡大=国債残高の増加が中長期的に望ましくないことは明らか。 現政権のようにデフレ下で緊縮財政というのは馬鹿げている(サッチャー政権やレーガン政権の例を引いて緊縮財政を正当化する向きもあるけど、インフレに苦しみ供給過少だった状況に対応した政策を、デフレに苦しみ供給過剰な状況に当てはめるのはいったいどうなんでしょう?)けど、カンフル剤的に減税や財政支出拡大を行うとしても、中長期的には持続可能ではないのだから、財政・金融のポリシーミックスを考える際には、どうしても金融政策に傾斜せざるを得ないということになります。

主任:じゃあ、その調子で不良債権処理礼賛派にも一言。

1号:不良債権処理で景気回復という意見は、「ゾンビ企業に死を」といった感情的意見を除くとして、経済学的には供給を減らして需給ギャップを解消しようというもの。 今の需要に見合うレベルまで供給を落とせば、今よりももっと高い失業率が経済構造に組み込まれ、恒常的なものになってしまうのだから論外でしょう。

2号:だいたい、「供給は需要を生み出す」セーの法則を誤解して批判する人間がいるからこまったもの。 供給=所得なんだから、供給を減らせばさらに需要が減ることぐらい自明でしょう。

主任:訳知り顔で「今はもう需要が満たされているから、これからは経済成長だけを追い求める時代ではない」なんて言う輩が跋扈してるからな。 本当に需要が満たされてるなら、何でモノに値段の差がつくのだ。 市場の需要が全て満たされているのなら、これ以上はどれだけ金を払ってもモノはいりませんということだから、全てのモノの価格はただにならなきゃおかしい。 例えば、発泡酒を飲んでいるのは、ビールの味より発泡酒の味が好きだからじゃなく、発泡酒が安いからに決まってる。 ここだけ見たって、本来ビールを飲みたいのに発泡酒で我慢しているという満たされない需要があるというのに。

1号:今年の日本経済を左右するのが金融政策であるとすれば、やはり焦点は次期日銀総裁人事ですね。

主任:本来、日銀総裁の任期は5年もあるんだから、現状への対応方針だけで決めるのは危険なんだがな・・・。

2号:といっても、現総裁は、根っこは金融政策における更なる金融緩和への後ろ向きの姿勢と同じだけど、「円は品格のある通貨であるべき」とか言ってますし。 それでアジアを円圏にして円をアジアの基軸通貨にしようって、マンデルの最適通貨圏理論ぐらい勉強しないとね。 今、イギリスが何でユーロに参加していないって、ポンドへの愛着云々もあるけど、経済的には金融政策の自由度・独自性が失われることへの抵抗感なんですから。 イギリスとヨーロッパ大陸諸国以上に、日本と他のアジア諸国は経済の動向が連動していないんだから、円圏を作って金融政策の自由度・独立性をみんなで放棄するなんて絵空事もいいとこ。 とにかく、誰がなっても現総裁よりはましでしょう。

1号:新しい日銀総裁が金融緩和派で、今以上の金融緩和が実施されれば、一つにはこれまで論じてきたような外需の拡大があるし、それに加えてインフレ期待が醸成されれば、これまで賃金の下方硬直性や名目金利のゼロ下限でゆがんでいた市場における資源配分が、インフレに伴う個別の価格上昇や金利上昇におけるスピードの差という形で正しく機能するようになるわけだから、その分内需の拡大も見込まれるでしょう。

2号:逆に言えば、新しい日銀総裁の下でも、なお日銀が金融引き締めを継続するような事態になれば、本当に外需だけが頼りになりますね。 外需というとよくアメリカの景気が話題になるけど、昨年前半の景気回復は結構アジア諸国向け輸出の寄与度が高かったから、アジア諸国の経済情勢が悪くなれば最後の頼みの綱が切れちゃいますね。

主任:まあ、今年はそれ以外にも自民党総裁選があるから、日銀に対してもっと毅然とした態度でものが言える政治家が首相になるチャンスもあるし、もちろん小泉首相がそうなってくれてもいい。 自国経済が完全に外国頼みというのも情けない話だしな。 とにかく金融政策が今年の日本経済のキーポイント。それ以外は、特殊法人がどうなろうが、経済特区がどうなろうが、産業再生機構が成功しようがしまいが些細な話。

1号:それでは結論が出たようですので、このあたりで2003年新春鼎談、お開きにしたいと思います。

(2003-01-05記)

bewaad<webmaster@bewaad.com>

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