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余は如何にして利富禮主義者となりし乎

來し方篇

壹、序

ちなみに、「利富禮」ってのは「リフレ」の当て字。 縁起がいいだろう。

さて、今でこそいっぱしのリフレ政策を主張するwebmasterだが、バブル崩壊後しばらくの間は、そんな考えは全く持ってなかった。 不景気だって言うけど、週末の新宿や渋谷を見れば、日本以外のどこの国の人だってそんなこと信じるわけないじゃん、といった感じだったわけだ。 それが、なんで今のようなものの見方をするようになったのか。 webmaster自身がここで改めて振り返って考えを整理するわけだが、これを読むことによって、今の日本経済に対して関心を持っている人にとってなにがしかのインプリケーションを得てもらえればと思う。

最初にデフレに対する問題意識を持ったのは、日銀が1999年にゼロ金利政策を導入してしばらくたった時だった。 「これで金融政策は手詰まり」といった雰囲気が漂ってきたわけだが、「ゼロで足りなければマイナスがあるだろ」と反射的に考えた。

だが、待てよ、と。 確か大学時代に経済学(法学部生だったのであくまでも初歩的なものだが)を勉強したとき、「流動性の罠」なんて言葉を聞いた気がするな。

「流動性の罠」がどういうことかということ自体は、とてもシンプルな概念だ。 銀行が預金の金利を0にしたら、誰も預金などせず現金で持っておくだろう。 ましてマイナスならなおさらなので、金利の引き下げという金融政策の手段には、ゼロ金利という下限があるということだ(ちなみに、当座預金は0金利ではないかとの指摘もあろうが、あれは手形・小切手を使うといった当座預金に付属するサービスの対価が込みでゼロ金利ということ(それがまっとうな価格かどうかは疑問だが)で、つまり、理論的には、預金部分にx%の金利がついている一方で、-x%のサービス対価が徴収されるので、差し引きでゼロ金利になっていると考えられる)。

そうはいっても、日銀は中央銀行、つまり政策の執行機関であり、マイナス金利で日銀が銀行に貸し出すとすれは金利分だけ損するわけだが、政策のためのコストと割り切れば、民間企業であるまいしコストを負担できないわけではあるまいと考えていた。 つまり、銀行からの貸出金利がマイナス金利となれば、銀行から借り入れてそれを預金し直すだけで儲かる(既述のように、ゼロ金利の場合預金と現金が代替可能となるので、預金金利はゼロ金利が下限だ)わけで、さすがにそれは行き過ぎだろうが、貸出金利をゼロ金利としても人件費などのコストをまかなえる利鞘がかせげるようになるまでは日銀が公定歩合を引き下げることは可能なはずで、「流動性の罠」まではまだ余地があり、必要とあれば日銀が損を出しさえすればもっと踏み込めるはずだと思っていたわけだ。

ここで考えるべきは、日銀が損失を負担する=銀行に対して実質的に補助金を出すことによる政治的な軋轢や、銀行が資金調達を日銀に頼ってしまうといういわゆる官業の肥大化といういわば政策コストと、それに対するマイナス金利政策による政策効果で、後者が前者より大きいのであれば導入すべきということになる。

そんなことを素人考えしていたときに、webmasterの人生を変える出会いがあった。(次回に続く)

(2003-02-01記)

貳、利富禮との出逢

それは、「調整インフレ」という言葉で紹介され始めた。 webmasterが最初にそれを読んだのがいつだったのか、定かではない。 しかし、それなりに人口に膾炙したこともあり、その存在を知ること自体は、結構早かったような気がする。 「それ」とは、ポール・クルーグマンの一連の著作だ。

「調整インフレ」で今の日本の問題は解決可能と聞いたときには、今となっては恥ずかしいものだが、「人為的にインフレを起こすなんて・・・」というのが正直な感想だった。 一応当時であってもフィッシャー方程式を知ってはいたのだから、前回紹介した「マイナス(名目)金利政策」とねらいは同じ(でもより副作用が少ない)ものだってことぐらいわかってもよさそうなんだけどね(なぜそうなるかは後述)。 それも、実際にクルーグマンのテキストを読んで判断したわけではなかったし。

ネット上であれこれ経済に関するテキストを読みあさるうちに、山形浩生によって一連のテキストが翻訳されているのを見つけた。 その中でももっともまとまっているのは「復活だぁっ! 日本の不況と流動性トラップの逆襲」(webmaster注:リンク先はpdfファイルです)であろう。

これを一読して、はたと困った。 書いてあることが当たってるのか間違ってるのか、判断することができない。 それがなぜかって、経済学をしっかりわかっていないからだ(より本質を言えば、数学がわかっていないからである。 経済学に触れて間もないものの数学がわかっている人が書いた覚書(webmaster注:リンク先はpdfファイルです)を見ると、数学がもっとわかればなぁと・・・)。

クルーグマンのテキストは達意な文章だし、山形浩生の翻訳も十分こなれているので、その主張がわからないわけではない。 論証に用いられている数式を検証できないのだ。 「調整インフレ」論(クルーグマン自身は「管理インフレ」と言っているが)への否定的な第一印象がただしいのかどうか、それを確認するためにも、もっと経済学を勉強しなければと遅まきながら思い立ち、webmasterは引き続きネット上をさまようこととなる。(次回に続く)

(参考)「マイナス金利政策」と「管理インフレ」:フィッシャー方程式を知らない方へ

デフレということで、企業は、今後1年間につき物価が3%ずつ下がっていき、比例して売上高も(同じ量の商品を販売したとしても)1年間につき3%ずつ下がっていくと予想していると仮定する。 現在日本の銀行は平均して200bp(=2%)の利鞘をとっているので、ゼロ金利政策を前提とすると企業への貸出金利は2%となり(信用リスクや期間概念は捨象)、企業は2%以上の売り上げ増が見込めない投資は行わない(他のコストが一定であるとすれば、売り上げ増より金利負担が大きい。 なお、売上高は年3%の自然減なので、売れる商品の量の増減率で図ると、約5%の増加が見込める投資である必要がある)。

ここで「マイナス金利政策」により銀行の調達コストを例えば-1%に引き下げることができれば、利鞘が一定であれば企業への貸出金利は1%となるので、ゼロ金利時代には行われなかった投資が行われることとなる。

他方、「管理インフレ」により物価が年1%ずつ上昇するようになり、それに比例して売上高も年1%ずつ上昇するようになれば、売れる商品の量について約1%の増加が見込めれば金利負担とつりあうこととなるので、ゼロ金利政策&デフレ時代には行われなかった投資が行われることとなる。

借金自体は将来の消費の先食い(借金した分だけ将来消費を減らして返済しなければならないから)に過ぎず、その点だけに着目すれば「朝三暮四」だが、借金金利を上回る投資収益による所得増加があるので、いずれの施策も景気にプラスとなる。

なお、「マイナス金利政策」が「管理インフレ」に劣る(と現在webmasterが自覚している)点は以下の通り。

(2003-02-09記)

參、苺との遭遇

「いちごびびえす」という掲示板がある(webmaster注:2月16日現在、サーバダウンでアクセス不可)。 そこをwebmasterにつないでくれたのは、黒木玄のウェブサイトである。

前回書いたように、クルーグマンペーパーに出会って、どうやって読み込んでいったらいいのか模索する中で、黒木サイト中にクルーグマンによる日本の経済政策批判というコーナーを見つけたのだ。 そこのリソースを読んだり、掲示板での議論を眺めたりして、いろいろと考えをめぐらせていた。

ふと、そのリンク集に、「いちごびびえす」なる妙な名前の掲示板での議論の数々が並んでいるのを見つけた。

「敷居もそんなに高くはなさそうだし、ちょっと覗いてみるか」

「いちご」の経済板webmaster注:2月16日現在、サーバダウンでアクセス不可。コテハン諸氏はmegabbs経済板に一時疎開中)を軽い気持ちで覗いてみた。

新たな発見の連続。

例えば(webmaster注:リスト中のリンクは、「いちご」サーバダウンにつき、関連する他サイトのページに張ってあります)、

「いちご」は匿名掲示板であり、webmaster同様の素人も参加しているがゆえに、プロからアマチュア向けの噛み砕いた説明もあり理解が進む。 いろいろと物事を知り、少しずつ理論武装も進み、自信がついてくる。 経済学の面白さに目覚めた、幸せな時間であった。

だが、そう簡単にいくほど経済学は甘いものではない。 その事実を思い知らされる、幼年期の終わりが来るとは想像すらしていなかったあの日は、今となっては遠く懐かしい思い出である。(次回に続く)

(2003-02-16記)

肆、ザモデルの衝撃(前編)

そいつは、突然「いちご」にやってきた。 時は2002年6月4日、13時11分。

第一声は「議論が不毛過ぎる」で、「ズレテいるというのを通り越して、ちょっとレベル低いんじゃないの?」と締めくくられていた。 所は「いちご」の「経済板」、「ポストケインジアンについて」スレの139番であった。

後のザモデル氏(この書き込みは名無しだったので)、降臨の瞬間である。

ザモデルは、のちのち明らかになるのだが、実はwebmasterと同じ霞が関の住人で、しかしwebmasterとは異なり、どこぞのアメリカの大学(シカゴ大学?)で経済学博士号を取得していた。 webmasterと経済学の理解においてレベルが違うのは当然であるが、議論に穴を見いだしがたかったコテハン諸氏ですら歯が立たないというのには目を見張った(ザモデルの発言は、上記ポストケインジアンスレの他、「"ザモデル"で経済を語るスレ」スレに豊富に見られる)。

その後の「いちご」での議論を見るに、ザモデルの投げかけは、数学(と経済学)の素養のある人間にとっては非常に示唆に富んでいるものであり(例えば前々回にもクルーグマンペーパーとの関連で紹介したが、経済学には素人と自称する一夢庵のレジュメの数々は、今のwebmasterには手の届かないものである)、逆に言えば、受け止める側にもそれなりのレベルを要求するものだった。

将来的には少なくとも議論をフォローできるようにはなりたいものだが、現時点でwebmasterがザモデルの指摘をそれなりに受け止め、活かしているのは、「ルーカス批判」である(「ルーカス」とは、いわずと知れたノーベル経済学賞受賞者のロバート・ルーカスである)。 「ルーカス批判」とは何かの正確な説明は専門家に譲らざるを得ない

素人なりの解釈を示せば、経済政策は人間を対象としているので、政策が人間の行動を変化させてしまうことも考えなければ、その効果の予測は不可能である、ということだ。 簡単な例を出せば、不況時に財政支出を増やしたとしても、「政府がやる気を見せているからきっと景気は良くなるだろう」と捉えられるか、「もう財政赤字は限界だから、政府の破産も近いな」と捉えられるかでは、効果は異なってくる(が、それ以前のケインズ経済学ではそうした点の分析が(少なくとも明示的には)なされていなかった)。

政策論議をするときにはそうした点に常に留意する必要があるとwebmasterに気づかせてくれたことを含め、ザモデルは、受け手のレベルに応じて何がしかのインプリケーションをもたらしたなかなかの人物であった(しかし、「いちご」のレベルで何度も切れかかったところを見ると、霞が関での省庁間協議や与党折衝などはさぞかし耐え難いことなのだろう。 一度、そうしたところでぶち切れているザモデルを生で見てみたくて仕方がない。 さて、内閣府の人間だとは想像するのだが、いったい誰なんだろう)。 にもかかわらず、ザモデルは当初「いちご」コテハンに拒否感を与えたし、実は、webmasterもちょっと信頼できないと思っているところがある。

口調がぞんざいだということも大きかったのだろうが、何よりも、その高度な分析手法を用いて出てきたデフレ対策というのが、RCCへの日銀出資としての量的緩和(インタゲは付録)+抜本的不良債権処理「ポストケインジアンについて」スレの149番)という代物だったからだ。 産業再生機構関連法案の国会審議が始まり、この構想は実現に向かっている(ザモデルからすれば、日銀出資もなさそうだし、規模も10兆円程度とのことなので、換骨奪胎されたといいたいだろうが)わけだが、どう考えても、この政策、うまくいく可能性はきわめて低いと言わざるを得ないのだ。(次回に続く)

webmaster注:いぜんとして「いちごびびえす」はサーバダウン中(2003-02-23現在)なので、今回の内容については苺ばっくあっぷ(byろしあんぶる)にお世話になっております。)

(2003-02-23記)

伍、ザモデルの衝撃(後編)

さて、前回紹介した現在の日本経済に対するザモデルによる処方箋は、次のようなものだ(一部誤字があるが、すべて原文の通り)。

149: 並盛梅雨だく名無しさん 2002/06/04(Tue) 15:10 
	>>146
	そう。それが正しいクエスチョン。
	答え?
	正しいと思われるザ・モデルはここでは、さすがに既述しきれないので、
	正しいと思われる政策のみ。

	RCCへの日銀出資としての量的緩和(インタゲは付録)+抜本的不良債権処理。

	思いきって抜本的な不良債権処理を進め、何割かの銀行を閉鎖するような経営責任の
	追及とともに、RCCの損失を日銀出資で補填する。軽く50兆は要るだろう。
	損失以外の残った優良部分は、株式投信に替えて証券会社の窓口で販売して最終処理。
	これで一発で経済は回復軌道に乗る。

これがいかにダメな政策案かを明らかにしよう。

まず、webmasterの本職である法律系官僚としてのツッコミ。

次に、無謀なる(相手は経済学博士みたいだし)経済学的なツッコミ。

それでは、webmasterはどのような対策がよいと考えているのか。 次回以降はそちらに話を移すことにしたい。(次回に続く)

(2003-03-01記)

bewaad<webmaster@bewaad.com>

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